出口のない海

  • 講談社 (2004年8月6日発売)
3.81
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Amazon.co.jp ・本 (306ページ) / ISBN・EAN: 9784062124799

作品紹介・あらすじ

甲子園の優勝投手は、なぜ、自ら「人間兵器」となることを選んだのか。
人間魚雷「回天」――海の特攻兵器。脱出装置なし。

甲子園の優勝投手・並木浩二は大学入学後、ヒジを故障。新しい変化球の完成に復活をかけていたが、日米開戦を機に、並木の夢は時代にのみ込まれていく。死ぬための訓練。出撃。回天搭乗。――しかし彼は「魔球」を諦めなかった。
組織と個人を描く横山秀夫の原点

みんなの感想まとめ

この作品は、戦時中の若者たちが直面する運命と葛藤を描いています。主人公の並木浩二は、甲子園での栄光から一転、戦争の波に飲み込まれ、特攻兵器「回天」に乗り込むことになります。彼の内面には、死を覚悟した勇...

感想・レビュー・書評

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  • 飛行機の神風特攻隊は、日本人なら知らない人はいないであろう、第二次世界大戦の日本軍がまねいた負の象徴だが

    人間魚雷の回天(かいてん)は知らない人も多いのではないか。(自分もその1人。無知で恥ずかしい。)

    共通しているのは1人分の狭い操縦席があるということだけ。
    長い時間操縦することは想定されていない。
    片道だけ。

    大空を敵機を目指して突進していく。
    深い海を敵艦を目指してひたすら前進する。

    怖い。
    怖くて怖くて堪らない。
    それ以外にない。
    全くもってそれしかない。

    登場人物は、野球に打ち込む大学生たち。

    印象的なのは
    並木が、死ぬことを覚悟して出発に臨んだものの、整備不良?故障?で出撃ができなくなる。
    そこで、整備を担当した後輩にキレる。
    死を覚悟してその時を迎えたのに生きて戻ってきた。

    安堵ではなく、怒りを抑えられなくなるのだ。生きて帰ってきた、お国の役に立てなかった。
    不甲斐ないと自分で自分を責めるのだ。

    どんな思いで覚悟して操縦席に座り、しかしながら戻ってきたのか。

    怪我でエースになれなかった並木、世界情勢からでオリンピックの夢を絶たれた陸上ランナーの北。
    さぁ、これからどうしようかな、と考えることができない。

    若い人に将来がない、道を選択できない状況は絶対にあってはならない。

    常に生きる意味を考え、自分のできること、思いを伝えること(方法)を模索していた並木が最後に選んだ手段にはただただ驚愕しかなかった。


  • なんでもない日常を過ごしていると、
    ホントに戦争あったんやな~っていう感覚。今の日本の平和があるのも、戦争を選択した過ちがあったからこそ。もう二度と戦争しないように。

    思考を操作され、家族のため、日本のため
    特攻して死せよ。

    死にたくないと声を挙げれば、
    非国民と殴られ、思考を矯正される。

    その時代では、
    国のために死ぬことが正義だった。

    今怠惰に生きている毎日は、
    祖先が作ってくれた時代なんだなと
    気付かされました。

    ありがとうございます。

  • 終戦記念日付近で読めてよかったと思いました。

    甲子園で優勝した実力のあるピッチャーの主人公。

    大学生になり、大学での野球のリーグで活躍するかと思いきや、怪我をしてしまい、それからいい球を投げれなくなります。

    魔球を作る。と、前向きな主人公ですが、時代は戦時中。学徒出陣となり、大学生の主人公も軍隊へ。

    周りの状況に流され、特攻隊へ。

    残された短い人生、どう生きるか?何をするか?必死に悩みます。(結局、魔球にたどり着く)

    未来ある若い人が犠牲になるような戦争はしてはいけないと思いました。(しかし、世界から戦争は無くならない……)

  • 作家が渾身の力を込めて 書かなければならなかったものがここにあります。読み手の私は、それを知る喜びとともに、痛みを感じながら全力で受け止めようと思いました。

    人間魚雷、回天(カイテン)。
    爆薬を満載した 改造魚雷に乗り込み、たった一人 暗い海の中を操縦し、敵の艦船の横腹に搭乗員 もろとも 突っ込む壮絶な特攻兵器。

    第二次世界大戦時、海軍所属の、ひとりの心優しき青年が、なぜ自ら志願して“鉄の棺桶”と呼ばれる回天に乗り込んだのか?

    彼は元甲子園投手、並木浩二。大学でも野球部に所属。魔球の開発中だったのに、なぜ?

    その並木の視点で壮絶な心境が解き明かされていきます。


    作者は並木が乗り移ったように懊悩し、苦しみ、揺さぶられながら描いていったのでしょう。読み手にも充分伝わってきます。


    今 世界ではいくつかの国が戦争の真っ只中です。 並木のように、死を背負わされた青年が何人もいるでしょう。
    だから、本書 が伝えたかったことは、生きている者たちが覚えておくということ。

    回天という人間棺桶があったことを。

    平易な言葉で綴られているので難しい内容ではありません。作者が、読みやすいように工夫したことが伺えます。読後に明るい光を感じさせる余韻がいいです。

  • 最期があっけなかったのが、また辛かった。何れにしても、いろいろ理由を付けて死んで逝くのが戦争だ。もっと自分を大事にして欲しい。

  • 人間が兵器の一部になり死んでいく。なんと恐ろしい兵器なのか、回天とは。しかも兵器の一部になるのは若い男性。夢も希望も打ち砕かれて祖国のために。感情を揺さぶられ、死を身近に感じて、やがて死ぬ理由を見つける。読んでいるこちらの感情も揺さぶられた一冊。回天の恐ろしさ、戦争の愚かさ、そして夢を成し遂げた並木の底力。涙無しには読めない。そして回天のことをもって知りたい。

  • 最初は野球メインでスポーツに疎い私はよく分からない部分もありましたが、読み進めていく内に戦局が悪化する描写がしんどかったです。
    誰が主人公だっけ?と思うほど心理的描写はなかったように思います。でも回天に乗って亡くなった方の本当の心情なんて分からないから当たり前なのかなと思います。
    普段ミステリーばかり読んでいるので特に驚きがあった訳ではないですが、読んでよかったです。

  • 一気に読んでしまいました。神風特攻隊の話は永遠の0で読んだことありましたが、人間魚雷の話は知らなくて、涙がとまらなかったです。こんな時代の日本、胸が痛くなります。子供にも、小学6年生の娘にも内容を話して聞かせると、自分で読んでみると娘に渡しました。

  • 太平洋戦争で日本軍が開発した人間魚雷「回天」という特攻兵器に乗り組むことになった青年の物語。
    確か映画にもなりました。

    戦争を舞台とした小説はあまり読まないんだけれど、これは戦争に巻き込まれていく青年達の心模様を良くとらえていると思います。

    横山作品は短編じゃなくても充分おもしろいです。

  • ちょっと綺麗すぎる戦時モノだが大学球児達が否応なしに戦争に巻き込まれていった話が人間魚雷「回天」を軸に語られる。かつて甲子園で優勝した投手が肘を壊して しかし魔球を創る夢を追い続ける。そんな彼もチームメンバーも理不尽な戦時体制の中に引き込まれて行く。終わりは絵に描いたようなエンディングですね。

  • 大学で野球部に所属していた並木は、太平洋戦争の学徒出陣で人間魚雷回天に乗ることになった。
    現在も生きた同窓生が再会を機に語った並木の思い出と、戦争の記憶。

    永遠の0で読んだ神風特攻隊に続いての回天による神潮特攻隊の話。
    今でもいるような、普通の大学生達の運命が、戦争により大きく変わってしまったという事実がとにかく辛い。
    前書にもあったように、今では特攻を志ざした人たちがお国のためにと、積極的に志願した訳では無いことは充分理解して読みましたが、並木の弟のように、学校での教育の元、軍国主義に染まりきった子供達も多数いたことに胸が痛みます。
    戦争は繰り返されてはいけない大きな過ち。
    とても読みやすい本でした。
    もっと多くの人に読んでもらいたい本だと思います。

  • 小説のいいところは、読み進める中で、自分の頭の中で、自由にその状況をイメージできるところが大好きで読書が好きですが、この小説は、その瞬間が辛すぎるくらい、涙した作品。横山さんは夢を描く青年が戦争という時代の悲劇に巻き込まれていくさまを見事に表現していると思いました。

  • 第4回ビブリオバトル全国大会inいこま準決勝Cで紹介された本です。チャンプ本。
    2019.3.9

  • 太平洋戦争で日本軍が開発した人間魚雷回天という特攻兵器に乗り組むことになった青年の物語。

  • 魔球の完成形が「ボールは大きく左に揺れ、そして、ふわっと浮き上がった」だったので、回天もそうなるのかと思ったが違った。
    機械も整備する人間も疲弊しきってたってことか。
    最後の、美奈子へ宛てた手紙には、じんと来てしまった。

  • 読了日2009/11
    今やミステリー作家として有名になった横山秀夫の世に出る前の作品。

    特攻隊ってゼロ戦で体当たりする神風特攻隊しか知らなかったけど、すごくいろいろな兵器があるそう。
    今まで知らなかったことが日本人として恥ずかしい。
    これは、回天という人間魚雷の特攻兵器の話。
    夢や希望を捨てて回天に乗る若者たち。とても胸の詰まる物語です。
    こんなことが数十年前の日本で行われていたなんて、ほんと信じられない。
    この時代の人たちが辛い思いをして、今の自分たちの生活があるのを思うと、もっと毎日を大切に生きなければいけないと思います。

    私、第2次世界大戦下の話にすごく興味があります。いつか、鹿児島の知覧に行ってみたいなぁと思ってたけど、回天の博物館が山口にあるそう。
    ぜひ、こっちにも行ってみたいな。

    ちなみに数年前、映画化になったけど、その時のロケ地がゆいの保育園がある大学であったそう。
    あとちょっと早く引っ越してたらなぁ~
    生海老蔵さん、見たかったぁ~!!

  • 自らの命と引き換えに敵艦を沈める、そのために考案された特攻兵器「回天」

    約束された死と向き合い出撃して行く搭乗員には、どれほどの覚悟が必要だったのか。

    戦争が終わり、時が経ち、平和が当然となった世の中で暮らす自分には想像も絶する世界だった。

    語り継がなければいけない、大切な日本の歴史なのだと思う。

  • 2017年4月9日に紹介されました!

  • 神風特攻隊のことは知っていたけど、回天のことは知らなかった。
    戦争で心を失い、ただの野球好きの大学生たちが球児から軍人へと変わる。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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