薔薇密室

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 375
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062125642

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めは、ゴシックホラー風味のBL物?!かと思い、辞書並みの557ページを読み通せるか不安になったが、一章を読み終えた頃には、自分が持った印象が全くの間違いだったと気づく。そのあとは、章立てがうまいこともあってか、グイグイと読み進められた。この長さが全く苦にならなかったのは、本当に驚き。

    ひとつの物語と別の話とが、時代、人物が微妙に交錯しながら進み、こちらとあちらが急に混じり合ったかと思えば、「いやいや時代がおかしい」と思い…。境目があいまいになり、時代が前後し…、結局なにがなんだかわからなくなってしまい、途中からはメモを取ることに。

    ファンタジーなのかと思いきや、エンディングでは、ほぼきちんと説明がつくという、ある意味ではすっきりとした展開。時代背景を踏まえながら、これほど骨太の物語をつくりあげる皆川博子はすごい。

  • 以前に双頭のバビロンを読んでから気になっていた作家さんでした。
    くっついた双子がまた(別人だけど)登場。そういうのが好きな人なんだなーと。
    薔薇と人の融合とか、素敵な設定だったけれど最終的には・・・という
    突拍子がないのに納得のラストですっきりしました。

  • 「物語を作る」ということをめぐる物語として現実と幻想が錯綜する中を幻惑されながら読んだ。時間かかったけど面白い。孤島の鬼ならぬ僧院の王という乱歩的な設定、欧州大戦と第二次世界大戦、大好きなテーマ。

  • いやあ、面白かったあ…!
    皆川さんの長編を読むと、少年や少女が大人になることを目撃でき、立派になったという感慨と感傷めいた切なさが襲ってきて言葉にならない…! 彼らはこれからもいろんな困難に直面し、厳しい現実を突き付けられていくだろうけど、そんな針のむしろでも生き抜いていく強さがあるんだ。そう感じられる強さを獲得してるんだよ。電車の中で読み終えた時思わずほう、と溜息をついてしまった。すごい物語を読んだなあ。

    あらすじ:
    第一次世界大戦期のドイツ。瀕死の美しき青年将校を救おうと、期せずして脱走兵となったコンラートが無我夢中で偶然駆け込んだ先は古い修道院だった。そこで薔薇と人間を融合させる研究をしている博士に出会い、脱走兵は青年将校を差し出す。失敗作元男娼の骸骨ヨリンゲルがまだ美しいままだと信じていること、生殺与奪権を持っていることに優越感を感じながら、コンラートは薔薇の世話にいそしむ。いつしか時は過ぎ、この古修道院にはハイニと呼ばれるドイツの男が着系の子供たちを囲うようになっていた。
    第二次世界大戦がはじまり、ドイツによってポーランドは再び消滅する。ポーランド人のルミカは空爆を受けおびえているところを、年下の少年ユーリクに助けられた。小さいのに頼もしいユーリクが支えになった。ある日彼が本屋のお兄ちゃんであることに気付いた。あのころから何年もたっているのに姿かたちが変わらないユーリクに唖然とする。同時に本をくれたお兄ちゃんとの思い出は美しく心に響いた。しかし家族を亡くしたルミカは彼女をかばったユーリクとも離れ離れになり、写真技師のドイツ人ホフマンにかくまわれる。突然現れては消えていく本や性病に侵され身罷かったか隔離されて「いない」はずのホフマンの姉に惑わされ、何が現実なのか解らなくなっていく。ユーリクを助けたいと願う思いが前進させるのだった。

    皆川さんにしては最後はややあっさりでしたが、嫌じゃない。むしろ強い衝撃で終わるのとは違う、感動がいつまでも続いた。冒頭に書いた強さを手に入れた子供たちに対する頼もしさだ。
    あの人(ネタバレになるため伏てます)がまれにみる勘違い男でイラついたけど、そんなのも今の彼らなら一発殴った後にっこりわらって「ごきげんよう」なんて言ってしまう潔さがある気がする。カッコいいぞ! 

    物語自体もすごく面白いけれど何が一番身につまされたかというと、戦争について何も知らなかったということだ。皆川さんの本は学校の授業で教わることよりも、濃縮され臨場感を感じられる一冊でもある。
    同じく敗戦国であるドイツだけれど、ドイツの戦争については本当に何も知らなかったんだなあ、とつきつけられた。かといって日本のことについてもそんなに知っているわけではないけれど…。
    ヴェルサイユ条約がどんなに屈辱的だったか、列強のどんな意図が隠されていたか、フランスの強盗めいた手口、ポーランドの勃興と分解と再生と消滅との繰り返し、ユダヤ人への差別のすさまじさ、ソヴィエト兵士の残虐さ……。
    特に、ポーランドって悲劇の国と言われ続けて、あのショパンなんかも怒りや悲しみをぶつけた曲が存在すると言われてるが、時代は違えどポーランドの歴史の悲惨さが伝った。もし日本が消滅してあの隣国とかあの大国とかになってしまったら、イヤだもん私だって。ポーランド人も差別されていたとは知らなかった。怠け者とレッテルを張られ、ドイツ人はアーリア人至上主義を守るため他民族の教育を制限し、制限されたがゆえに進学を許されたユダヤ人やポーランド人は必死に勉強し優秀な者となる。道理だがこれがまた反感を買う。悪循環だ。
    ユダヤ人への差別はとにかく悲惨だ。別の本だけれど、あの宗教改革の火付け役、マルティン・ルターもユダヤ人は豚と同じだとか殺してもいいとかなんとか書いているとか…(皆川さん「聖餐城」)。ルターはドイツ人ですから、ホロコーストまでの反ユダヤ感情が垣間見えた。とにかくヨーロッパ全土でユダヤ人は差別され、さらにソヴィエトの活動家たちはユダヤ人が多かったのも、あの時代の反ユダヤ感情を煽ったのだ。
    本当に濃密で濃厚な一冊だった。

  • 皆川さんのナチスドイツものは、つらい。

    死体を養分にきれいな花が咲く、という思考が妙に合理的な気がして惹かれる。

    きれいはきたない、きたないはきれい。

    ユーリクを想うと、とてつもない虚無感に襲われたラストでした。

  • 重い。しかも終わりもきつい。ドイツ、辛いよ・・・。

  • 09/03/11読了
    「不幸な人間には物語が必要だ」文中に出てくるけど、皆物語を持っている。物語を作ろうとする男が少し半端だったかなあ。

  • 男娼が一番エロかった。
    ヨリンゲルみたいなキャラが好きです。

    実は一番最初に読んだ博子先生の本でした。
    それから、私はずっと夢の中です。

  • 山間の僧院に住まう、1人の男。繰り返される禁断の実験。
    物語が歴史を凌駕する。驚愕の書き下ろし長編小説
    ドイツ・ポーランド国境に、人知れず建つ古びた僧院。そこは、咲き乱れる薔薇に閉ざされた
    狂気の世界だった。やがて外界は第二次大戦の波に呑まれ、僧院は接収されるが
    現と夢幻のあわいを貫く物語が、歴史をも従えて迸る

  • 美青年は薔薇となって生きるのですよ

著者プロフィール

皆川博子(みながわ ひろこ)
1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁・旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『開かせていただき光栄です‐DILATED TO MEET YOU‐』で第12回本格ミステリ大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。著作に『倒立する塔の殺人』『クロコダイル路地』『U』など多数。2019年8月7日、『彗星図書館』を刊行。

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