我、拗ね者として生涯を閉ず

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 72
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (594ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062125932

作品紹介・あらすじ

「これを書き終えるまでは死なない、死ねない」
だが、最終回を残して、心血を注いだ連載は絶筆となった。読売社会部エース記者として名を馳せ、独立後は『不当逮捕』『誘拐』などの名作を生んだ孤高のジャーナリストは、2004年12月4日、この世を去った。

悲壮感というやつは嫌いなので、ごく軽く読み流していただきたいが、私はこの連載を書き続けるだけのために生きているようなものである。だから、書き終えるまでは生きていたい。正直なところ、寿命が尽きる時期と連載の終結時を両天秤にかけながら、日を送っているのである。――<第8部 渾身の「黄色い血」キャンペーンより>

両足切断、右眼失明、肝ガン、大腸ガン……病魔と闘いながら、「精神の自由」「人が人として誇り高く生きること」を希求し、現代人の心の荒廃を批判し続けた魂の叫びがここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 再読本。
    ハードカバー580ページの大作。
    そして著者最後の渾身の作品です。
    おとなしくしていたり、長いものにまかれたりしていれば何も問題が起きない人生に、ほとんど拗ね者として向かっていた著者。
    絶対的に弱者の視点を持ち続けてきてくれたことが、私は好きだ。
    左翼的と捉えられるかも知れないが、本田さんの視点こそが保守ではないかと思う。
    文春社長の田中健五氏と良好な関係をもちながらも、どうしても文春的思想とは決別しなければならないときっぱりと縁を断つ姿勢。
    正力万歳の紙面・社内体制に公然と反対する姿勢など、社会人として筋の通った生き方に、仕事の部分でも見習う箇所があった。
    もっともっとたくさんの人に読まれてほしい一冊。

  • 『不当逮捕』をはじめとした作品群で、ノンフィクションライターの草分けとして大きな足跡を残した本田靖春氏の自伝にして遺作。思想信条はともかくとして、著者のジャーナリストとしての姿勢に胸を打たれる。権力と戦うこと、弱者の側に立つということ、世の中に貢献しなければならんと信じること。「社会部が社会部であった時代」の最後にエースとして活躍し、腐っていく読売新聞に愛想を尽かしてやめることになっても、まだ心は「社会部記者」でありつづけた。その不器用さ、まっすぐさが、著者が多くの人から信頼を受け、愛された理由であろう。
     月刊誌の連載をそのまま載っけてあるということで、多少冗長な部分や、整理し切れてない部分もある。しかし、糖尿病で両足を切断し右目を失明し、肝ガンを併発し……という病床で書かれたものとは思えない力がある文章だ。
     連載あと1回を残し、著者は帰らぬ人となっている。その1回、書かれていれば現代の私たちへの最後の叱責となっていただろう。それを読めないのが残念だ。

  • 拗ね者としての著者の壮絶な人生と新聞社社会部記者の働きぶりが分かります。「お前たち、おれがバカに見えるだろう。それでいいんだ。親父なんてだいたい碌なもんじゃない。早く乗り越えてどんどん先に行けよ。親父がえらく見えているあいだ、お前たちはもっと碌でなしだからな」(P113)と子供にはなかなか言えないな。

  • ファンだったのに残念。社会部は良かった。良家の出身者が多かった、政治部はダメ、みたいな我田引水的な内容がちょっと。書いた時期と状況を考えればやむを得ないかもしれないが、この著者がこんなことを思い出のように書くなんて。

  •  読売新聞社社会部記者そして、退社後ノンフィクション作家として、あまりにも有名。 その本田靖春の、自伝。 売血制度廃止のために、自身、山野に乗り込んで売血を経験し、その経験などを元にキャンペーン記事を展開し、ついに、現在の献血制度の基礎を作る下りなど、圧巻。その後、糖尿病による両足切断、大腸癌などを患いながらも、執筆されたのが本書。 記者とは、そして、ノンフィクション作家とはどのような存在なのかが、自身の生い立ちと絡めて綴られた本書は、圧巻としかいいようがない。

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著者プロフィール

1933年、旧朝鮮・京城生。55年、読売新聞社に入社。71年に退社し、フリーのノンフィクション作家に。著書に『誘拐』『不当逮捕』『私戦』『我、拗ね者として生涯を閉ず』等。2004年、死亡。

「2019年 『複眼で見よ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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