明仁天皇と裕仁天皇

著者 : 保阪正康
  • 講談社 (2009年5月15日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062128582

作品紹介

「君主」の父、「民主」の子。二人の象徴天皇-それぞれの「戦争と平和」に秘められた昭和史の真実。

明仁天皇と裕仁天皇の感想・レビュー・書評

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  • 保阪正康さん『明仁天皇と裕仁天皇』(講談社)読了。
    中国で生活してた間、日本のことを考えてみたくなることがありました。
    この本はノンフィクションですが、二代に渡る物語が描かれていました。
    ますます惹きつけられました。
    「昭和」と「平成」は、二つが一組で語られる時代なのだと思いました。

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    「君主」の父、「民主」の子。
    2人の象徴天皇――それぞれの「戦争と平和」に秘められた昭和史の真実!!

    「今までは、勝ち抜くための勉強、運動をして来ましたが、今度からは皇后陛下の御歌のやうに、つぎの世を背負つて新日本建設に進まなければなりません。それも皆私の双肩にかゝつてゐるのです。」――<昭和20年8月15日 明仁皇太子が書いた作文より>

    「今度のやうな決心をしなければならない事情を早く話せばよかつたけれど 先生とあまりにちがつたことをいふことになるので ひかえて居つたことを ゆるしてくれ 敗因について一言いはしてくれ 我が国人があまりに皇国を信じ過ぎて 英米をあなどつたことである 我が軍人は 精神に重きをおきすぎて 科学を忘れたことである」――<昭和20年9月9日 明仁皇太子への昭和天皇の手紙より>

    講談社創業100周年記念出版
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  •  著者紹介の欄では、著者はノンフィクション作家・評論家となっているがむしろ「昭和の歴史家」として高く評価できると思っていたが、本書は突込みが甘い内容に感じ物足りない思いがした。
     本書は「明仁天皇と裕仁天皇」の時代状況の紹介と新しい天皇像に移行する過程についての考察なのだが、著者の知識と取材ならば、もっと厳しい内容が描けたのではないかとの感想を持った。
     昭和天皇も平成天皇も、戦前戦後の激動の時代を切り開いてきただけに、様々な摩擦を乗り越えて時代をつくってきたことは誰も否定できない事実だろうとおもう。その詳細な内実は、かつてはいわゆる「菊のカーテン」のベールに隠されてきていたが、昭和天皇没後20年以上を経過する中で昭和天皇側近の日記等が明らかにされる中で、多くの新事実が明らかにされてきている。A級戦犯の靖国合祀を取り上げた元宮内庁長官の富田メモなどもそのひとつだが、それらの中にはマスコミが取り上げる重要事実以外にも、著者ならばこそわかる隠された事実なども多いのではないかと思っていた。本書ではそのような最新の知見もあまり見当たらず、どうもありきたりな内容に思えて物足りない。
     さすが著者といえども、天皇家の内情に対しては筆が鈍るのだろうかとちょっと落胆した。本書は数少ない著者の残念な本ではないだろうか。

  • ●:引用

    ●「父」と「子」の相克 このような構図を見ていくと、そこに父と子という対立が生まれているということがわかる。この対立は、天皇という制度が不可避的に抱えているものであり、歴代の天皇は必ず父と子との関係で相克を起こすともいえるのではないか。誤解を恐れずにいえば、それは天皇と皇太子の個人的な感情という次元ではなく、それぞれの天皇は常に時代とともにあるがゆえに、皇太子には、父の時代にあってやがて来るべき自らの代にどのような軌道修正を行うかといった発想が、ごく自然に生まれるということでもあろう。むしろこのことは天皇制のバランスを保つための知恵ということにもなるはずだ。(中略)明仁天皇もまた昭和天皇に不満を持ったとしても不思議ではない。天皇家の父と子は、感情を抜きにして、天皇としてのその時代に対するそれぞれの責任、皇太子としてのそれぞれの目からの批判というものが必ずあるということであろう。この「父と子」という宿命の相克に対して、皇太子は父・昭和天皇の軌跡を理解しようと努めた。(中略)皇太子は前述のように父親・昭和天皇への不満を克服するために、改めて昭和史の基礎文献を昭和三十年代のある時期から徹底して読んだ、との証言がある。そして少しずつ、昭和天皇が置かれていた状況を理解していったように思われる。
    ●最大の平和勢力となる天皇家 昭和天皇が体感したあろう教訓のひとつが、皇統を守るためには二度と戦争という手段を選んではならないという決意ではなかったか。逆説的にいえば、天皇制は平和を堅持するための最大の勢力になる宿命をもったということになるのかもしれない。私は、現在の日本にあってもっとも純粋で、そして崇高さを兼ね備えた平和勢力は明仁天皇である、との理解をもっている。それが国民的諒解になることが望ましいとも考えている。すでに外国ではそのような理解があるとも聞いているが、このような視点をもって私たちは、明仁天皇の軌跡を見つめていくべきではないかとも思うのである。

  • どうしちゃったんだろう、というのが率直な感想。
    名著「秩父宮」を書いた人とは思えない。歯が浮くような賛美の嵐だが、ちゃんとした論者の本にはまず見られぬ浮薄なものである。

    タイトルにはこうあるが、メインは今上のほう。後者を肴に前者を語る…いや持ち上げる、という態。
    そのためか、まるで先帝を貶めるような記述もまま見られる。さすがに、イエロー・ジャーナリズム界隈で飛び交うものほどに下劣ではないが、言わんとするところは同じである。
    一例を挙げれば、著者は昭和を「君主制下の民主主義体制」の時代であったとし、それに対して今上は「民主主義体制下の天皇」たらんとしている、と言う。
    これ自体には何ら問題ない。問題なのは、著者が前者を悪(と呼ぶのが過激であれば、少なくとも「望ましくない」)、後者を善と、あからさまに色づけしていることである。
    現在左翼的と言われている媒体ほど、8.15以前にはものすごい大政翼賛報道をくり広げていたというが、戦後体制にどっぷり漬かった本書の論調もそれと同じで、見ているこちらが恥ずかしくなってくる。

    なんとかフォローを試みるなら、存命人物に材を採るのはやはり難しいのだな、と。
    それを思うと、近年皇族・旧皇族たちの興味深い伝記が数々出版されているのは、偶然ではないのかもしれない。

    2012/1/16〜1/18読了

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