- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062129633
作品紹介・あらすじ
建築・料理・デザインはもとより、人間の存在そのものにおいて、世界的に、日本の文化と美意識についての関心が高まっている。ともすれば日本人自身が忘れがちなその美意識を再認識するための必読書。
感想・レビュー・書評
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「八つの日本の美意識」黒川雅之
Less is more(神は細部に宿る)
ミース・ファン・デア・ローエ
日本人は人類愛より一人一人に恥じない生活をする事に価値を見出している。全身で感じ、実感が持てる事が大切。抽象的な哲学や見えない神よりも野生的な感覚、身体感覚で知る事を信じる。
西洋は罪の意識、東洋は恥の意識。
「間」の本性は人やモノが発する「気」
仏教の慈悲について、慈は楽を与える母の愛、悲は苦を取り除く父の愛。
現代建築は竣工時が最も美しいのは、自然と呼応してないから。自然と呼応する事で美しく風化する。
知性や視覚よりも触覚を優先するのが日本人。
シンプルにするのが目的ではなく、素材を生かそうとした結果、シンプルになる。
「微」は全体というマクロな視点を否定し、「並」は全体性を持つ構造を否定し、個々の自立性を主張する。「気」と「間」はそれ自体存在しない人か物か音の存在を前提にして生まれる受動的な概念。「秘」は隠す事で語るという、コミュニケーションの否定によって伝達する思想。「素」はできるだけ人の手を加えない。「仮」は固定的な秩序を否定するところから宇宙の秩序が得られるという思想。
日本人は、社会の調和感、秩序感、すなわち美意識の為に生きている。換言すると、「美や気持ちのいい事の為に生きる」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なるほど、と思う点が多々あった。コンパクトにまとまっていてとても読みやすかったし、勉強になった。
作者の意図に反して、この日本人の美意識が、まさに今の日本社会の苦しみや閉塞感を生み出している元凶なのだろうと考えずにはいられなかった。これらの美意識がある日本は素晴らしいとは素直に思えない。
でもだからこそ、八つの美意識をいちいち確認することに意義があるのだろうし、この本を読んで良かったと思う。 -
外資系で働いていると、日本人の良さより弱さに目が向きがちだが、それらを肯定的にとらえて解説している。日本人の習性や態度の裏にある価値観に気付きはっとし、また納得させられる。お勧めの一冊。
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建築家・プロダクトデザイナーの黒川雅之氏の著書である「八つの日本の美意識」を読んだ。
日本人は「美しさ・気持ちよさ」のために生きているといっている。
八つの日本の美意識は「微、並、気、間、秘、素、仮、破」という8つのキーワードから
身体の感覚に近い、心地よさともいうべき美の「意識」を述べている。
以下の印象に残ったキーワードを書く。
音楽を構築する作業の際に、改めて意識するととても参考になると思う。
(微)
恥じらいを持ってうまく他人と生活する姿
観念論でなく生理的・野性的な空間の理解
微細なものに全体が含まれる。
(並)
上下関係のない並列的な複数の細部の集合から調和が生まれる。
直列的組織:軍隊等の目標達成に向く
並列型組織:今の時代にあった瞬時の判断が必要なクリエイティブな組織
(間)
人間関係、時間、ものの配置、会話にも間を意識している。
陰陽でいうと、間は陰。受身的で曖昧。
陰は陽の存在が生み出した影。
日本人は神とではなく、他者との間合いを大切にしている。
(秘)
逆光によりシルエットを際立たせて、細部がよくわからないようにする「秘」。
(素)
自然のものは風雨にさらされることで環境になじむ。
人工物は劣化して汚くなる。
(破)
catastorophyの瞬間に最も生命的なことが起きる。
序破急(世阿弥)、守破離(千利休)
微、並、気、間、秘、素、仮を自分のものにし、
それらを破壊することにより日本の美意識が輝く。
間を開けてもう一度読み返したい本だ。併せて以下も参照したい。
http://www.nextmaruni.com/concept/concept_3.html -
これ、連続講義だったら、けっこう盛り上がるんじゃないだろうか、と思いつつ読んだ。
言いたいことはよく判るのだが、時折起きる、断言が必ずしも正しくない時にちょっと困ってしまう。日本の空間は、と語る時の日本の空間が日本の民衆が住んでいた状況ではないケースが多かったり(家が街路を向いている、という古地図が郭のものだったり…他の図を使いましょうよ)、ヨーロッパには都市だけでなく、村落も存在していることを無視しているし、とまあ、穴はたくさんある。
しかし、そんな議論はあまり意味はない。むしろ、これからの日本を見直すのにこういう視点があると言う主張にこそ意味があるんだと思う。