白洲次郎 占領を背負った男

著者 :
  • 講談社
3.99
  • (129)
  • (119)
  • (111)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 840
レビュー : 117
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062129671

作品紹介・あらすじ

白洲次郎=明治三五年(一九〇二年)兵庫県生まれ。神戸一中卒業後、英国ケンブリッジ大学に留学。戦前、近衛文麿、吉田茂の知遇を得る。戦後は吉田茂の側近として終戦連絡事務局次長、経済安定本部次長、貿易庁長官を歴任、日本国憲法制定の現場に立ち会った。また、いち早く貿易立国を標榜し、通商産業省を創設。GHQと激しく対峙しながら、日本の早期独立と経済復興に、"歴史の黒子"として多大な功績を挙げた。昭和六〇年没(享年八三)。紳士の哲学"プリンシプル"を尊ぶイギリス仕込みのダンディズムは終生変わらなかった。妻はエッセイストの白洲正子。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 破天荒な少年時代から”うるさ方”となった晩年までの彼の人生をぎっしり詰めた一冊でした。

    GHQをして「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめた白洲次郎その人の生き方全てが何しろ格好いい。
    「プリンシプルを持って生きていれば、人生に迷うことは無い。」
    実に簡単に言ってのけてくれるが、彼はまさにそれを人生全てにおいて体現している。
    自己の栄光を望まず、要職にも興味を示さず、只々日本の進むべき道を見据え、その卓越した先見性、天性のカンとも言える時勢を読む力を持って戦前戦後の動乱期に活躍していく。
    「葬式不用、戒名無用」の遺言からも推察出来るように、実に合理主義。
    それが死ぬまでそうなのだからアッパレとしか言いようがない。
    スマートな容貌に相反する照れ屋な性格、昨今”うるさ方”が居なくなったと憂いながら自らが”うるさ方”となって年上だろうが閣僚だろうがGHQだろうが構わず怒鳴りつける快刀っぷり、様々な白洲次郎が堪能出来る本です。

    確固たるプリンシプルと行動力で近衛文麿や吉田茂の信頼を得た白洲次郎。
    是非この本を手に取り、彼の濃密な人生に触れていただきたいと思います。
    損はしません!

  • もしも日本とアメリカの安全保障条約がなかったならと考えたこともなかった日本を想像する機会を持てました。今の日本の表舞台に立つ方に白州次郎のような考え方生き方を持つ人いるでしょうか。時代、社会が違ったとしても。世界(アメリカ)に対して対等に物が言える政治家がおられたらまた違った意味の強い日本の姿があるでしょうね。

  • 白洲次郎という人をこの本で初めて知った。

    プリンシプルに基づく筋の通った生き方。
    カッコいいと思う。
    読み物としてもとても面白かった。

    当然、これだけの強引な政治腕力がある人なら、
    賛否両論があるはずだと思う。
    この本は「絶賛」だが、「否」視点の本も読んでみたいと思った。

  • 白洲次郎の活躍を通じて、新日本憲法制定からサンフランシスコ条約締結までの歴史、独立を勝ち取るまでの軌跡が描かれている。

  • たまたまだが、終戦記念日に読了。
    「意志」の強さをベースに、その裏にある「計算」、それが掛け合わさって物事を実現に動かす。

    戦後直後の状況や、経済復興を歩んでいけた日本の裏側などもよく理解ができた。特に、トルーマンとGHQ(マッカーサー未満?)との確執などは以外であったし、赤化を防ぐことも戦後直後というよりはソ連との関係が深まるにつれて、ということも。敗戦国として世界情勢に振り回されっぱなしであったことが、よく分かる。

    こうした人物には決断の数も多いのだろうが、プリンシプルということをきちっと持っていたので、他の人とくらべて即断即決→準備に時間、ということなのだろう。確固たるベースを早い時期に作ってしまえたことは、白州次郎の強みだと思える。持つプリンシプルにもよるのだが、そこの内容が簡潔なので「格好いい」という印象になるのだろう。

    それにしても、やっぱり見た目の重要性を感じるこの頃。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:289.1||S
    資料ID:50600170

  • 終戦から日本の独立まで大活躍した政治家および実業家の白洲次郎の一生を描いた本。重厚で詳細である。
    著者の専門は投資や金融方面らしく、この本を書くにあたって、相当の文献を読んだようだ。それもあって、ややまとまりがないというか、すべてを盛り込みすぎている感はある。
    白洲次郎は活躍のわりには、政府の要職など表舞台に名前を出さなかったので、貢献の内容はあまり知られていないかもしれない。むしろ妻の白洲正子のほうがエッセイストとして有名だ。富豪の家に生まれ、ケンブリッジ大学に留学し、外交官のように、日本政府を代表してGHQとの交渉役を果たした。特に、日本国憲法制定にあたって、ものすごい駆け引きがあったわけだが(それも本書で知った)、それをギリギリのところで落としどころを付けた。のちに彼は吉田茂首相のブレーンとなり、サンフランシスコ講和条約で日本の独立を成し遂げる。後年は日本の電力発電の分野を通じて、日本の発展に力を注いだ。
    本書の中にあるが、彼のすごさは「強引なまでの突破力にあると語られることが多いが、緻密な計算に裏打ちされた戦略立案能力こそ彼の本領であり、してやられた側の人間がのちに振り返ってその力量の違いに慄然とするところ」とある。
    戦後日本が今の国際的地位を築くにあたって、どういう人がどういう努力をしたのかがよくわかり、こういうドラマがあったのか、と感慨深かった。やはり功績を残すのは、まじめで情熱的な人が多いのだと思う。

  • 読後感は悪くない。あとがきに著者自身が語るように”任侠映画を観たあとのように肩で風を切って映画館を出てくる”というほどではないが、憧れの生き方ではある。

    若いころなら「よし俺も!」と奮い立つのかもしれないが、だがしかし、だ。どうにもいいとこだけを並べ連ねた胡散臭さがしてならない。こうして伝説は作られていくのだろうな、という気がする。

    かつては司馬遼太郎が”竜馬”という架空の偶像を日本史上最高の英雄として仕立て上げた。坂本龍馬については司馬以前にも、日露戦争時の「皇后の奇夢」として、坂本龍馬が日本海軍の守り神になると明治天皇皇后の枕元で言ったとか。これも、当時の土佐藩出身の宮内大臣(田中光顕)が日露戦争での国内機運の盛り上げと、新政府内で片身の狭い思いをしていた土佐藩閥巻返しを諮ったという噂のある話(これも司馬の『坂の上の雲』で語られていた)。それと似たニオイがプンプンする内容だ。

    それにドキュメンタリーの体裁なのか、近代史を扱った歴史小説の類なのか、非常に文体が曖昧なのが気になった。いかにも、臨場感を出すかのように、主人公の白洲次郎のセリフを使い、内面にまで迫った記述をしておきながら、学術レポートのように引用資料の羅列の箇所もあり、視点が定まらない。

    読みながら、城山三郎ならどういう風に仕上げただろうかと思っていた。図書館で借りた本なので帯はついていなかったのだが、このブクログでリンクされているAmazonのサイトにある本の表紙には城山の推薦文のある帯が付いている。城山が亡くなる2年前に上梓された本だったのか~。「快著である」と誉めているけど、城山はどうして白洲次郎を取り上げなかったかな、とふと思った。

    もっと徹底的に面白く書けたろうに、まだ題材として取り上げるには時代が近すぎたのかもしれない。すでに虚実ないまぜの内容であるが、もっと誇張した”虚”の部分に軸足を置いて、「二郎がいく」と題して、白洲”二”郎物語とすればよかったのに。

    良かった点は、GHQと憲法制定にまつわる確執を改めて読めたこと。日本人の思い、当時の国際環境下での判断、選択。憲法の本質、あるべき姿、アメリカ追随の世渡りの限界 etc. 現在の問題の根源が全てあの時代にあるということの再認識は無駄ではなかった。
    現行憲法が押し付けの憲法だとして全ては否定しない。良いところは良いと認めた上で、あるべき姿を探していくべき。改憲しないのもあるべき姿でもあるかもしれない。

  • 日本復興の切り札となった戦後最大の功労者白洲次郎の真の姿を描くドキュメンタリーもの。”プリンシプル”という言葉が心に残るキレキレの5☆です。裕福な家にて、何不自由なく育った次郎。大学受験失敗、英国留学、父親の会社の倒産、帰国そして父親との確執。と絵にかいたような波乱万丈の青春時代を過ごす。転機は、戦争の足音が聞こえてくる最中、時代の鍵を握る近衛文麿、吉田茂との出会い。復興に人生を賭すと心に決めた男が、GHQとの死闘、通産省の立ち上げ、日米安保条約の締結など、吉田茂と二人三脚で力の限りを尽くした様を格好良く描ききる。プラス見た目はもちろん生き方もダンディーな白州次郎の痛快なエピソードも満載。暑さを吹き飛ばす、読了後に清涼感をたっぷり感じるおすすめの一冊です。武相荘いってみ~よぅ。

  • この本の書評などで
    「現在の日本には白州的な存在がいない・・・」
    というような「リーダーシップ不在論」をよく見るけれど、
    そんな、いうなれば「三人称な雰囲気」こそが、
    白州が最も危惧していた事態なのかもしれない。

    GHQから「従順ならざる唯一の日本人」と称されたように、
    自らの信念・価値観に基づく「プリンシプル」をもち、
    敗戦・占領下で国全体が意気消沈した雰囲気の中、
    占領跡の日本が「自立した国家」としてどうあるべきか、
    という長期的かつ大局的な見地から、
    憲法制定をはじめとする難局にあって何をすべきかを考え、
    相手が誰であろうと言うべきときには言うべきことを主張し、
    一方で、この人と決めたらどこまでも礼を尽くし、
    最後まで面倒をみるという姿勢で行動した様子は、
    日本人がどこかに置き忘れてしまった、
    「自分自身で考え、その考えに基づいて行動する」という
    いわば「人間としての基本動作」を思い出させてくれる。

    最近、特にネットの掲示板やブログの世界を中心として、
    「嫌中・嫌韓」的な発言が増えているような気がする。
    戦争責任追求論や韓国・中国における過剰な反日運動や、
    まるで日本のナショナリズムそのものを否定するかのような、
    自虐的ともいえる教育や報道への反発が、
    若い世代を中心として、そんな動きに駆り立てているように思う。

    しかし、短絡的な狂信的ナショナリズムに基づく言動は、
    これまた短絡的な謝罪外交や自虐史観と同じくらい、
    ナンセンスなものだと思う。
    なぜなら、両者にはともに「プリンシプル」がないから。

    先日話題になった「国家の品格」の帯には、
    「全ての日本人に自信を与える」というようなことが
    書いてあった。
    本書のあとがきには、白州の活躍に
    「任侠映画を観たあとのように胸を張りたくなる」
    というようなことも書かれている。

    しかし、その程度の視点に留まっていては、
    昨今の日本に蔓延する、両極端で無責任な思想同士が、
    お互いを嫌悪する感情的な負の連鎖を繰りかえしながら、
    ますますその対立をエスカレートさせていくだけのような
    気がする。

    では、そんな中で自分自身は何をすべきかのか。

    せめて、確かな知識と、自らの考えに基づいて、
    しっかりとした議論と行動ができるようにはなりたい。
    いや、そうなれるように努力しよう。
    そんな叱咤激励に満ちた一冊として、
    この本を座右に置いておこうと思う。

全117件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ、東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家としてみずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞・累計47万部)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』、『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』(以上講談社) 、『陰徳を積む 銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『西郷隆盛 命もいらず 名もいらず』(WAC)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)などがある。

「2017年 『佐治敬三と開高健 最強のふたり〈下〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北康利の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
東野 圭吾
三崎 亜記
奥田 英朗
カズオ イシグロ
デール カーネギ...
有効な右矢印 無効な右矢印

白洲次郎 占領を背負った男を本棚に登録しているひと

ツイートする