白洲次郎 占領を背負った男

  • 講談社 (2005年7月22日発売)
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本 ・本 (422ページ) / ISBN・EAN: 9784062129671

作品紹介・あらすじ

「不思議な存在感の持ち主――。それが、白洲次郎氏であった。その人物がどんな風に育ち、人格を形成していったかを、話題豊かに展開していく快著である」
城山三郎氏、本書を推す!

ある超名門ゴルフ・クラブのテラス。その大長老ともいえる人物に声をかけられ、私はその隣の椅子に。著名な政治家や財界人などが会釈するのに対し、その人物は軽くうなずくだけ。それに見合う不思議な存在感の持ち主。それが白洲次郎氏であった。この人の出自も結婚も、華やかそのもの。平然と官界、政界、財界、それに軍とも闘う。よく見て、監督し続ける。トヨタのトップには、「かけがえのない車を目指せ」とアドバイスし、政府に対しては、「何で勝手に勲何等とか決めることができるのか」と。その人物がどんな風に育ち、人格を形成していったかを、話題豊かに展開していく快著である。
城山三郎

第14回山本七平賞 受賞

感想・レビュー・書評

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  • 最初の章から白洲次郎のカッコ良さに引き込まれてしまいました。
    「育ちのいい生粋の野蛮人」と言われていた次郎。青年時代にイギリス留学して仕込まれた紳士道と国際感覚を持ちながら、サムライスピリットがある。GHQとの交渉においても対等な姿勢で強い個性と信念を持ち、自らの原則(プリンシプル)を貫いた人物です。

    GHQとの憲法制定エピソードは壮絶で読み応え抜群ですが、気性の荒い次郎のまた別の一面が垣間見れる家族との鶴川農業ライフもほっこりして興味深く読みました。溺愛する娘の結婚式の当日に熱を出す子供みたいな次郎がかわいい。

    それにしても現在にも残る日本国憲法。「押し付け憲法」と言われるくらい制定の際にGHQと日本政府側でこんな対立があったとは。近代的で平和的な憲法だなと思っていましたが、当時の日本政府は大きく反発したのだとか。大きな相違は天皇主権や軍隊保持に関することでした。GHQの目的は日本を骨抜きにすることだったけど結果的にはGHQの憲法は近代国家として妥当なものだったと評価できます。当時の状況がわかるとなんとも複雑な気持ちになりました。

  • 伊勢谷くんの主演ドラマで、しばらく白洲次郎ブームに入った時に手にとった本。とにかくカッコいい。
    「ノブレス・オブリージュ」という言葉は彼から教わった言葉だが、ワインを楽しむ暮らしを享受している私が、国境なき医師団や国連WFPの給食プログラムに寄付をする原動力となっている。

  • この本の書評などで
    「現在の日本には白州的な存在がいない・・・」
    というような「リーダーシップ不在論」をよく見るけれど、
    そんな、いうなれば「三人称な雰囲気」こそが、
    白州が最も危惧していた事態なのかもしれない。

    GHQから「従順ならざる唯一の日本人」と称されたように、
    自らの信念・価値観に基づく「プリンシプル」をもち、
    敗戦・占領下で国全体が意気消沈した雰囲気の中、
    占領跡の日本が「自立した国家」としてどうあるべきか、
    という長期的かつ大局的な見地から、
    憲法制定をはじめとする難局にあって何をすべきかを考え、
    相手が誰であろうと言うべきときには言うべきことを主張し、
    一方で、この人と決めたらどこまでも礼を尽くし、
    最後まで面倒をみるという姿勢で行動した様子は、
    日本人がどこかに置き忘れてしまった、
    「自分自身で考え、その考えに基づいて行動する」という
    いわば「人間としての基本動作」を思い出させてくれる。

    最近、特にネットの掲示板やブログの世界を中心として、
    「嫌中・嫌韓」的な発言が増えているような気がする。
    戦争責任追求論や韓国・中国における過剰な反日運動や、
    まるで日本のナショナリズムそのものを否定するかのような、
    自虐的ともいえる教育や報道への反発が、
    若い世代を中心として、そんな動きに駆り立てているように思う。

    しかし、短絡的な狂信的ナショナリズムに基づく言動は、
    これまた短絡的な謝罪外交や自虐史観と同じくらい、
    ナンセンスなものだと思う。
    なぜなら、両者にはともに「プリンシプル」がないから。

    先日話題になった「国家の品格」の帯には、
    「全ての日本人に自信を与える」というようなことが
    書いてあった。
    本書のあとがきには、白州の活躍に
    「任侠映画を観たあとのように胸を張りたくなる」
    というようなことも書かれている。

    しかし、その程度の視点に留まっていては、
    昨今の日本に蔓延する、両極端で無責任な思想同士が、
    お互いを嫌悪する感情的な負の連鎖を繰りかえしながら、
    ますますその対立をエスカレートさせていくだけのような
    気がする。

    では、そんな中で自分自身は何をすべきかのか。

    せめて、確かな知識と、自らの考えに基づいて、
    しっかりとした議論と行動ができるようにはなりたい。
    いや、そうなれるように努力しよう。
    そんな叱咤激励に満ちた一冊として、
    この本を座右に置いておこうと思う。

  • 2014.0819
    「ブレない人間は格好いい。そのためには自分の生き方の「軸」を持っていないといけない。」白洲次郎は、この言葉を「プリンシプル」と口癖のように表現していたそうです。
    「筋を通す」
    人に好かれようとして思って仕事をするな。
    むしろ、半分の人には嫌われるように積極的に努力しなければいい仕事はできない。
    今の若い人に足りないのは勇気だ。「そういうこと言ったら損する」ってことばっかり考えている
    自分よりも目下と思われる人間には親切にしろよ。
    人事を握ろうとする人間の目的は、それをテコに自らの勢力を伸張させようというものだか、白州次郎の場合、「仕事を成功させる為には誰がベストなのか」人事の判断基準はこの一点のみ。
    人事権を握って君臨しようなどとは毛ほども思っていない。その証拠に次郎は仕事が成就するといつもその職をさっさと後進に譲っている。彼の生き方が実に格好いいのはここに理由がある。
    生涯自分を誇ることを好まなかった。
    「すみません」はダメだ、「ありがとう」と言え。
    すぐ謝るな。謝るのは本当に申し訳ない、他人に迷惑を掛けた時のみ。悪くないのにすぐ「すみません」と言うな
    人様にしかられたくらいで引込むような心臓は、持ち合わせがない。

  • 破天荒な少年時代から”うるさ方”となった晩年までの彼の人生をぎっしり詰めた一冊でした。

    GHQをして「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめた白洲次郎その人の生き方全てが何しろ格好いい。
    「プリンシプルを持って生きていれば、人生に迷うことは無い。」
    実に簡単に言ってのけてくれるが、彼はまさにそれを人生全てにおいて体現している。
    自己の栄光を望まず、要職にも興味を示さず、只々日本の進むべき道を見据え、その卓越した先見性、天性のカンとも言える時勢を読む力を持って戦前戦後の動乱期に活躍していく。
    「葬式不用、戒名無用」の遺言からも推察出来るように、実に合理主義。
    それが死ぬまでそうなのだからアッパレとしか言いようがない。
    スマートな容貌に相反する照れ屋な性格、昨今”うるさ方”が居なくなったと憂いながら自らが”うるさ方”となって年上だろうが閣僚だろうがGHQだろうが構わず怒鳴りつける快刀っぷり、様々な白洲次郎が堪能出来る本です。

    確固たるプリンシプルと行動力で近衛文麿や吉田茂の信頼を得た白洲次郎。
    是非この本を手に取り、彼の濃密な人生に触れていただきたいと思います。
    損はしません!

  • 筋と信念が突き通した日本人
    今、白洲次郎さんほどこんなに情熱を持って日本を変えようと思う人間はいないと思う。
    読んでると歴史上の有名人のオンパレード、まるで映画や小説を読んでるかのような怒涛の人生。
    白洲次郎さんほどかっこいい人間になれるように精進したいと感じる一冊だった。

  • 日本人なら一度は読むべき本だと思う。今をなんとなしに生きていられるのは、彼のような先人たちがいたからこそという事実を忘れてはならない。

  • 格好いい。現代にはいないな。
    読みながら魅せられてしまった。

    彼のような人が、同じ日本人だといいうことに誇りすら感じる。

    先人達の奮闘のおかげでのうのうとしか生きていない自分自身が情けない。頑張らないとなと思う

  • 日本国憲法はGHQが作ったイメージがありましたが、陰でこんなに奮闘していた方がいたとは驚きでした。

    横柄、短気なところもあったようですが、
    義理深いかっこいい方だなと感じました。

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著者プロフィール

昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。
著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』『佐治敬三と開高健 最強のふたり』(以上、講談社)、『陰徳を積む―銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)、『西郷隆盛 命もいらず名もいらず』(WAC)、『胆斗の人 太田垣士郎―黒四(クロヨン)で龍になった男』(文藝春秋)、『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)、『本多静六―若者よ、人生に投資せよ』(実業之日本社)などがある。

「2022年 『稲盛和夫伝 利他の心を永久に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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