恋愛の解体と北区の滅亡

著者 :
  • 講談社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062134200

感想・レビュー・書評

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  • 再読。
    話題の「ファナモ」、原作はこちらです。
    こちらの後半に入っています。
    原作というより原点というか、前日譚というか。
    おそらくまだファナモがそんなに普及してないだろうと思われる頃の、別のカップルのエピソードになっています。

    ファナモの利便性は、やはりその非・不潔感にあるのだろう。
    あくまでも「清潔感」ではなく、非・不潔感。
    その隣に握り寿司が置いてあってもつまんで醤油などをつけて小粋に口に運ぶことができるくらいの。

    恋人達の間ではお互いの体の一部としてそれを交換しあったり、アクセサリーにして身につけたり、
    別れの時にはまるで置き手紙よろしくテーブルの片隅に残していくやり方が流行るにちがいない。

  • ここに出てくる宇宙人のフェイクですらない存在感。一周して逆にヒリヒリするとか、そういうことでもない。

    ただそこにいることで、確実にその背景を支配してしまう存在でありながら、自覚もないし、主体性もない。登場シーンの段取りの悪さは、むしろ信頼に足るほど。

    僕は、作品と現実を対応させて読むという旧来の読書スタイルやリアリティに、読み手として、もうすでに無理を感じているところが大きい。

    スカした言い方をすれば、それはつまり、「ポストモダン以降の文学の前提」であり、この作品では、「宇宙人の記者会見」がその役割を担っていたと思う。

    そしてとにかく主人公の思考が些末。ここに共感を覚えずにはおれない。

    併録の、『ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ』では、女性目線で語られる自意識の現代バージョンに、細部でたくさん笑わせてもらった。

    八つ当たり的に、「転べ!」と念じるところなんて、もうなんかその気持ちが分かりすぎてカタルシスを得た。

    大災害のあったその日に株価の話をしている人間がたくさんいるような世界で、唯一の救いとなるリアリティとは、こういうものだ。

  • 全ての理由や根拠を求めてしまうのは、自分の存在意義を求めてるからかもしれない。
    そしてそこが見えないからこそ常に誰かを演じている。
    それは爆発しそうな自意識が根底にある。
    突然宇宙人によって滅亡するかもしれないくらい不安定な世界に生きていて、それくらい軽いものこそ本当に気にしているものである気もする。

  • 38度の熱がある時に、横になりながらこれを読んでる自分はなんだw 頭の中のセリフをそのまま文章化したような感じの文体。新感覚SFか。
    発想や設定は斜め上なようでいて妙に親近感を覚える。そこそこ共感はするけど…他のも読みたいかどうかはわからん…人を選ぶ小説・作者だと感じる。

  • 「恋愛の解体と北区の滅亡」4…宇宙人の侵略中にSMクラブに行く主人公。そのやりとりがリアルなほどおかしみが増していく。

    「ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ」3…美意識最優先のタクヤのいきざま。着想とタイトルだけで成立。

  • 「恋愛の解体と北区の滅亡」★★★★
    「ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ」★★★★★

  • 再読ですけれども、割かし面白かったですかね! 著者の…というか、主人公の思考がつらつらと書き綴られるんですけれども、それだけでもう、これは著者の力なのか…面白いんですね!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    宇宙人の設定とかねぇ…一応あるんですけれども、あってないようなものっていうか…ただ小説っぽくするためにこのような設定を設けたんでしょうけれどもね。

    ヽ(・ω・)/ズコー

    まあ、そんなわけで前田氏は本来、劇作家なんですけれども、文芸とかいった分野の外の人が小説を書くと意外と面白いものが出来上がるんだなぁ…みたいなことを思いつつ、さようなら。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • ちょうどこれを読んでいる時に、友人の自主映画の撮影の手伝いをしていて、宇宙人が五反田にやってくるという噂が流れるという物語だったので偶然かっ!と、嬉しくなった。
    主人公の思考が最初の目的からだんだん逸脱していく前田氏のワザは健在だった。
    宇宙人って、心理学でいう何かの例えなのかなぁと最後まで考えていたけど、分からなかった。考え過ぎちゃったよ。
    五反田団行くときって、いつも大崎から行っていたから、この前初めて帰り道五反田のほうを歩いたら、駅までの道のりに小説にあるような(?)お店や客引きが実際あって、引いた。

    「ファナモ」のほうは、彼氏がウンコっていうのを「ファナモ」って呼び方変えただけなのかと思っていた。
    他の方のレビューを見たら、成分自体を変化させたみたいだった。
    これが「男前力(りょく)」なのか、すごいな・・・。
    そういえば、ウンコの臭いをバラの香りに変えるサプリメントとかあったけど、それが「ファナモ」の前進みたいなものなのかな。
    そのうち「ファナモ」が実現しそうだな。と、思う。

  •  期待して読んだがいまひとつ。初出の2006年にブームだった、貧困小説、ニート小説のアイロニカルなパロディと評するのも当時は的外れではなかっただろう。

     しかし、絶望した男が売春婦に救われるモチーフは現代小説の王道であり、SMなど村上春樹のように一風変わった性的趣向を凝らしたところで目新しさは感じられない。

     宇宙人によって北区が滅ぼされようとしているという〈非日常〉設定も、男女間の〈日常〉的会話を引き立てることはなく、「非日常の中の日常」「日常の中の非日常」の演出としては宙ぶらりんな印象である。

  • 宇宙人に侵略されている近未来の話なのかと思いきやあくまでも日常を描いている。前田司郎さんは日常を切り取るのが本当にうまいなぁと思う。そして日常の中にある非日常を描くのもリアリティがある。好きな作品。ファナモのほうもファナモという概念をすんなり受け入れることができるし、かと言って押し付けがましくないし、日常で、素敵だった。

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著者プロフィール

1977年生まれ。劇作家、演出家、俳優、小説家。和光大学人文学部文学科在学中に劇団「五反田団」を旗揚げ。2005年『愛でもない青春でもない旅立たない』(講談社)で小説家デビュー。同作が野間文芸新人賞候補となる。2006年、『恋愛の解体と北区の滅亡』(講談社)が野間文芸新人賞、三島由紀夫賞候補、2007年、『グレート生活アドベンチャー』(新潮社)が芥川賞候補に。2008年には、戯曲「生きてるものはいないのか」で岸田國士戯曲賞受賞。同年、『誰かが手を、握っているような気がしてならない』(講談社)で三島由紀夫賞候補。『夏の水の半魚人』(扶桑社)で第22回三島賞。その他の著書に、『逆に14歳』(新潮社)などがある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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