- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062134781
感想・レビュー・書評
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「本の雑誌」9月号で北村薫が紹介していて、その熱のこもった書き方にひかれて読むことにした。北村氏はこの十夜がすべてCDとなったのを喜び、聴いてから読むとなお楽しいと書いていた。いやまったく、活字で読んでもその姿が目に浮かぶようなのだけど、実際の音を聞いてみたくなる。
志ん生や米朝といった名人についての思い出話が楽しいのはもちろんのこと、昔の寄席芸人や名もない大道芸人のことを語っているところが実に生き生きとしていて、そこがいかにも小沢昭一らしく、いいなあと思って読んだ。
ハーモニカを吹いたり、都々逸や浪曲を唸ったり、笑いであふれる賑やかな高座の雰囲気が伝わってくるが、一箇所、満員の末廣亭も静まりかえっただろうなあと思わせるくだりが第六夜にある。尺八の名人だったという立花屋扇遊師匠は、東京大空襲で亡くなったのだそうだ。
「隅田川の近くの方で、山のように焼死体が積み上げられた一番下から、扇遊師匠、出てきたの。丸焦げで。奥さんと手をしっかり握りあったまんま、二人で出てきたの。 …… 戦争を憎みます。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
▼2006年に小沢昭一さんが、新宿末廣亭の定席に出演したんです。十日間。そこでまあ漫談といか随談といか、をしました。連日記録的な大入りだったそうで。そこでしゃべったことを活字にした本。そしてこのうちの一日、僕も客席にいて聞いたんですよね。ただ、「どの日だったのか」がもう読んでも思い出せません(笑)。
▼新宿末廣亭は、2023年現在東京に四軒ある、落語演芸の「定席」のひとつ。つまり、年がら年中三六五日、興行をやっている。昼席と夜席に別れている。落語を中心に手品や漫才など色物もあり、それを並べてワンセット興行、入場料を取る。その興行内容つまり出演者は10日間セットで変わる。「○月上席の昼の部、トリはだれそれ」みたいなことになります。新宿以外、浅草演芸場、上野鈴本、池袋演芸場がある。昭和初期などは、もっともっといっぱい、百軒とかあったそうです。残っている4つでは、新宿がいちばん、建物がソレっぽくて風情があります。まああと浅草か。(ほかはビルの中でエレベーターに乗って入ったりする)
▼これの2006年6月下席夜の部に、小沢昭一さんが出ました。トリ(主任)は柳家小三治さん。小三治さんの依頼だったとのことです。
▼小沢昭一さんは俳優であり芸能研究者でありラジオパーソナリティー。1929年東京生まれ、2012年没。末廣亭では、戦前からの寄席演芸のこぼれ話から、ご自分の少年時代や流行歌など、まあ、とにかく縦横無尽自由闊達でした(僕が見たのは一晩だけでしたけど)。ただもちろん、そう見えてちゃんと計算されて設計されていたんでしょうが。
きっと、聞いた人が「また寄席に来よう」と思える話をする、ということだけ決めていたのではないかしら。
▼落語演芸の「オタク本」とは違う気もします。隨談、としか言いようがない気楽で味わい深い芸ですね。
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出囃子が良い感じ。想像できるし、あの特徴的な声もはっきり聞こえる感じです。
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3
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小沢昭一さんも偉いけれど
小三治さんも偉い
そして
末廣亭の席亭も偉い
文化は
人が担っていくものだ
の 見本のような
十日間の
貴重な記録ですね
いえいえ 中身が面白いのは
いうまでもありません。 -
夢のような10夜、その一日に参加できたことは業務僥倖。この11/21に立川談志もなくなり、元気なのは円蔵くらい。淋しくなるばかりです。
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目次
末広亭出演の記
【第一夜】青春の末広亭
【第二夜】志ん生師匠ロングインタビュー
【第三夜】面長といいますと
【第四夜】柳家小三治本日休演
【第五夜】ら・あさくさ
【第六夜】尺八の扇遊さん
【第七夜】流行歌のルーツ
【第八夜】「五十銭ください」
【第九夜】米朝和解
【第十夜】旅の夜風
「この温かさが寄席なんだ」柳家小三治