獣の奏者 II 王獣編

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062137010

作品紹介・あらすじ

傷ついた王獣の子、リランを救いたい一心で、王獣を操る術を見つけてしまったエリンに、学舎の人々は驚愕する。しかし、王獣は「けっして馴らしてはいけない獣」であった。その理由を、エリンはやがて、身をもって知ることになる…。王国の命運をかけた争いに巻きこまれていくエリン。-人と獣との間にかけられた橋が導く、絶望と希望とは?著者渾身の長編ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • ファンタジーとは「歴史の物語」だ!

    以前、上橋菜穂子さんの『鹿の王』のレビューでファンタジーとは「地図の物語」だ!との名言を残した私ですが、それは良いファンタジー(面白いファンタジー)とは物語の表面に出てこないような細部に至るまで地図がしっかりと描かれている物語だという意味で、地図とは地形であり、気候風土、動植物の生態系、民俗や宗教のことを指していて、その土台がしっかりしていることが物語に広がりを持たせています

    本作で言えば、物語の軸である王獣と闘蛇の生態である
    その多くは謎に包まれているが、それは読者には明かされていないというだけで、詳細な設定があることは容易に想像され、そのことがこの物語の抜群の面白さに繋がっていると思う

    そして今回はそこに加えて、面白いファンタジーに必要な 要素として「歴史」を挙げたい
    歴史とは国の成り立ちであり、血筋であり、伝説や掟であり、恨みであり誉れそして戦だ

    これらの設定が見えないところまで作りこまれていることが物語に重厚感を生んでると思う

    本作で言えばリョザ神王国が生まれた伝説や、神王と大公の対立、霧の民が守り続ける戒律であり、獣王規範や闘蛇衆の掟ということになる


    地図は物語に広さを与え、歴史は物語に重さを与える

    地図が横の糸で歴史は縦の糸、織られた布がファンタジーて中島みゆきか!(ひどい結び)

    • 1Q84O1さん
      横の糸はひまわり師匠、縦の糸は土瓶師匠、布織れないな…
      横の糸はひまわり師匠、縦の糸は土瓶師匠、布織れないな…
      2023/02/15
    • ひまわりめろんさん
      ぜんぜん違うものできそう
      ぜんぜん違うものできそう
      2023/03/02
  • 一気に読み進めてしまう面白さがあった。
    エリンとリラン、イアルがこれからどうなっていくのか。
    予想はできそうやけど、その上を越える内容と圧倒的な読みやすさにハマってしまった。

  • (2015年4月15日 文庫で再読)

    初めて読んだときもすごく感銘を受けたけど、本当におもしろく深くてため息が出ちゃう。
    強くて頑固で努力家でやさしくて清廉で、でも人間らしいそんなエリンが好きです。

  • これはものすごい傑作なんじゃないでしょうか。多分この先何十年も色あせずに読み継がれていく。同時代に産まれたことを幸運に思います。万歳。
    上橋菜穂子さんの作品なら「面白くて当たり前」くらいな気持ちがあるけど、期待を上回っていて。

    想像力をかきたてられる王獣や闘蛇の描写、厚みのある世界観、登場人物たちの複雑な心の動き、躍動感のあるストーリー。
    本の世界にどっぷり入り込めるしあわせ。これぞ読書の醍醐味。

    そして、主人公。天真爛漫な美少女でもなく、無敵の魔法を使うわけでもなく、実は王家の継承者なわけでもなく、伝説の少女でもなく、最初はただの傷ついた娘にすぎない。
    苛酷な運命に放り込まれ、癒えない傷を背負い、迷いながら、それでも逃げずに己の頭で考え、己の手を動かし、己の足で一歩ずつ人生を歩んでいく。
    だからいい。彼女が信じたかったものに、物語はどんな答えを出すのか、わたしたちは固唾を飲んで見守る。彼女の信じたかったものを、わたしたちも信じたいと願いながら。

    生きることは甘くない。優しさと純粋さだけでは何も救えない。それでもきれいごとを言えるのは強さだ。
    いやほんと、最後のシーンは胸が熱くなりましたよ・・・。まさか泣くとは。

  • 感動。読み終わって暫くは現実に戻ってこれなかった程引き込まれた。

    ラストシーンは、心を打たれる。
    獣と人間が心を合わせることができる。
    人間同士でも、心を合わせることが困難なのに、それを獣と。

    エリン、彼女は素敵な人です。

    あの世界で生きていてほしい。

  • 本作は下調べせず読み始めたので、この巻で一旦完結すると知らなかった。そのことは残念ではなく、逆にたった2巻でワクワクできて、なおかつ3巻以降別の話が楽しめるなんて最高だ。黒幕はなんとなく目星ついていたが、庇って脱臼したから違うのかなと、まんまと作者にひっかけられた。1巻と同様、話の腰を折るような余計な記述がなくストーリーに集中できる。そのくせ文章を読んでいるとエリンとリランのシーンをはじめ、頭の中で物語を思い描ける感覚があり、とても素晴らしい。中学生でも十分楽しめると思う。ナウシカ、ハリポタ好きは是非。

  • エリンがセイミアとシュナンを結びつけ、真の大国を築くのか。 王獣と闘蛇はどうなるのか?

  • ページを!捲る手が!止まらないッ!
    涙を!拭うティッシュが!足りないッ!

  • ラストに感涙。決して生易しくないところに。
    何もかもがわかってすっきりハッピーな終わり方ではなく、どうして、どんな気持ちで、という探究心と一度は見失った親愛の情が感じられる終わり方。
    人と獣の間には冷たい壁がある。分かりあったつもりでいると、とんでもないことが起こることもある。その非情さをきちんと示してくれたので、信頼して物語にどっぷり浸かることができた。

  • 王獣リランと心を通わせ始めたエリン。しかし人に決して馴れない、しかし「国の権威の象徴」である王獣を馴らす方法の存在は、国を大きく揺るがすことに。人の作る権威や権力のために大自然の賜である獣を利用する人間、もしくはその集団の歪んだ意識が胸を痛ませます。力を欲する醜さ無情さは心を通わす優しさ美しさに見向きもしない。人と獣の壁。その不条理、あるいは真理にエリンは対峙します。一気読みでした。エリンを守るためのリランのこの巻最後の行動に胸が熱くなります。セィミヤ陛下もよく決心した!それでこそ真王!

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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