天山の巫女ソニン 2 海の孔雀

著者 :
  • 講談社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062138338

作品紹介・あらすじ

魔法ではなく人間を描くファンタジー 待望の第2巻!

人と人、国と国。求める世界のありようが、ソニンの目を通して、私たちの生きる現代と重なり合う。

「ここにいる鳥は、みな雛のときに翼の先端をほんの少しだけ切られている。だから跳び上がることはできるが、外へ飛んでゆくことはできない。自由に飛んでいるようで、見えない大きな籠の中にいるようなものだ」――<本文より>

感想・レビュー・書評

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  • さて、一巻からぐぐっと惹き込まれたこの作品。
    サブタイトル「海の孔雀」とはこれ如何に。

    沙維の七人の王子の命を救ったソニンは、隣国のクワン王子から招かれて、イウォル王子とともに「江南」国へ赴きました。
    戦禍のあともまだなまなましく残る下町と、豪奢で極彩色の王宮との温度差や貧富の差に、疑問を感じるソニン。
    イウォル王子も、ソニンを見出した勘には拍手を贈りたいけど、所詮井の中の蛙。ソニンのことを都合のいい道具のようなつもりで自分の手元へと取り上げたことに思い至り、ソニンに謝罪しました。
    この物語は、ソニンとともにイウォル王子も成長していくお話なのですね。

    世の中にはいろんな考え方の人がいるということを、この作品は教えてくれます。
    そして、そういった他者との違いと自分と向き合うことの大切さも。
    まさしく、ソニンと同じ年くらいの子どもたちに読んでもらいたい良書だと思いました。まだ2巻だけど。

    にしても、表紙のイラストの雰囲気が素敵。とても好き。手元に置くなら、文庫より断然こちらです。

  • ソニンシリーズ、2作目。

    今回はお隣、江南へイウォル王子と一緒に留学するお話。
    1巻で王子の意識が変わり、江南で見たことがまた王子を成長させる。
    ソニンもイウォル王子も少しずつ成長していってます^^

    この物語、江南のミナ王妃の天真爛漫さが怖い、、、
    王妃という立場、指図をするでもなく望めば思い通りになるのが当然。
    その為に犠牲になった人がいたとしても、それは不運であり自分が幸運であったと思う無邪気さ。。
    国のトップがそういう人であるということにぞっとする反面、そういう人が居てもおかしくないということに気付かされる。
    児童書でいて、人間の深い部分も描かれているシリーズ。
    何だか色々考えながら読み進めてます。
    次巻も楽しみ^^♪

  • 図書館で KiKi が真っ先に訪れるのは「児童書」のコーナーです。  カラフルな本が多い中、このシリーズが目を引いたのは白地に銀色の文字というシンプルさがあったように思います。  そして表紙の絵もそのシンプルさを後押しするかのように水墨画を思わせるモノトーン。  図柄はアジアン・テイストとなかなかに魅力的なものがありました。  とは言え本の場合大切なのは中身です。  最低限の情報を得ようと表紙を開いてみると、扉部分にある解説に KiKi を食いつかせるに足るキーワードがありました。

    巫女  三つの国  落ちこぼれ  新しいファンタジー

    この中で KiKi の関心を最も引いたのが「落ちこぼれ」です。  と言うのも KiKi はここLothlórien_Blog を開設する前、「落ちこぼれ会計人の独り言」、「落ちこぼれ会計人の Music Diary」、「落ちこぼれ会計人の本棚」という3つの Blog を運営しており、長らく「落ちこぼれ会計人」というハンドルネームを使っていたからです。  で、「落ちこぼれ」という文字を見た瞬間にこの物語の主人公ソニンのことがもはや他人とは思えず、ついつい借り出すことにしてしまったという訳です。

    このシリーズは全5巻、外伝を含めると7巻が発刊されているようで、図書館でも本編5巻が並んで書棚に鎮座していました。  思い切って5巻まとめて借り出そうか?と思いつつも、万が一つまらなかった時のことを考え、とりあえず3巻を、貸出上限5冊のうち残り2巻は「都会のトム&ソーヤ」(こちらは評判がいいというただそれだけの理由で)を借りてきました。

    さて、読み始めてみるとこれが期待以上に面白い。  そもそもソニンが修行していた天山の巫女の数が12人と聞けば何気に「十二国記」を思い出すし、ソニンが仕えることになった沙維の国の王子が7人で、謀略により燕になっちゃうあたりでは何気にアンデルセンの「白鳥の王子」を思い出すしとそこかしこにデ・ジャ・ヴ感を漂わせながらもオリジナリティがあるのが読んでいて楽しかったです。

    わかりやすい勧善懲悪な物語・・・・・となりそうなところを、ベースは勧善懲悪なんだけど、脇役たちもそれぞれの立場から善いことも悪いこともするあたりが結構気に入りました。  と同時にソニンのお父さんの言葉や悪役のレンヒ(彼女も実は落ちこぼれ天山巫女だった)の言葉がなかなかに深くて、唸らされます。 

    主人公のソニンは12年間も巫女修業ということで一般人とは隔絶した環境で育った割には、色々な物への順応力が高く、同時に巫女になるためには情に流されてはいけないという教育を受けてきたが故に、普通の人間社会で起きる様々なことにどこか淡々としている印象です。  でも決してしらけているわけではなくて、身の回りで起きる様々な出来事に対し、激しい拒絶・偏見もなければ極端な思い入れも持たず、常にある種の「ぶれない視点」を持って対峙している・・・・そんな印象で、設定年齢よりはどこか落ち着きを漂わせています。  そういう意味ではこのシリーズ5冊の中でどんな風に成長していくのか楽しみでもあります。 

    「落ちこぼれ巫女」という設定の割にはソニンには暗さがなく、自分のあるがままを素直に受け入れ、その時々で自分が置かれている立場で、自分に考えられる最善を尽くす姿が好印象です。  自分に与えられた環境の中で最善を尽くすというのは簡単なようでいて実はかなり難しく、同時にそれなりの知性が必要となる行いであることをさりげなく語っている物語だと感じました。

    さて、主人公のソニン以上に気になる存在が、彼女が下野して最初にできた友人という設定のミンです。  働かない父親、早くに亡くした母、自分が面倒を見なければならない弟という環境の中で、必死に生きているミンはある意味で普通とは言えない環境ばかり(天山然り、王宮然り)で暮らしているソニンと一般人を繋ぐパイプ役のようなところがあり、彼女自身がソニンと知り合ったことにより堕落からは免れたようなところもありで、この先も気になる存在です。

    派手なアクションも強力な魔法もない物語だけど、そうであるだけに逆にある種のリアリティを醸し出すことに成功しているファンタジーだと感じました。  登場するのが3国だけ(?)なので、物語がどこまで広がるのか?は現時点では不明ですが、楽しみにシリーズ全巻を読んでみたいと思わせる作品になっていると思います。

  • 【図書館本】イウォルとクワンがどちらも思ってたよりヒドい人間でちょっと驚いた。けどラストはソニンと一緒に成長してめでたしめでたし。
    姉と側近の結婚が早かったのにも驚いた。いいのかほんとにw
    ソニンもだけど、ミンが良い子すぎて泣ける。これから彼女にも苦難が待ち受けているだろうけど、頑張ってほしい。……ソニン以上に。

  • 「魔法ではなく人間を描くファンタジー 待望の第2巻!

    人と人、国と国。求める世界のありようが、ソニンの目を通して、私たちの生きる現代と重なり合う。

    「ここにいる鳥は、みな雛のときに翼の先端をほんの少しだけ切られている。だから跳び上がることはできるが、外へ飛んでゆくことはできない。自由に飛んでいるようで、見えない大きな籠の中にいるようなものだ」――<本文より>」

  • クワン王子の妹、リアン姫と主人公ソニンの関わりが可愛らしいというか…癒しだった。
    あとは、ラストの方の
    「給金も休みもUPだから、働かね?」
    という感じに誘うところ(※上記は読者による要約)。
    ソニンの性質に心を動かされた、と捉えると面白かった。

  • ミン姐さん、真っ直ぐ物事を見る眼を持つ者よ! ずっとソニンのそばにいて〜。

  • 第二巻。天山から帰らされた巫女のソニンは、王宮の末王子であるイウォル王子に請われて侍女となって暮らしていた。隣国の江南の王子であるクワン王子からの招待を受け、イウォル王子は江南に留学することになった。半年を超しそうだったが、ソニンは王子について江南の国にへ出かけた。イウォル王子はクワン王子を頭から信頼していたが、ソニンは何となく不安な気持ちを抱いていた。「クワン王子をそんなに信頼していいのかしら?」と思うソニンだ。そしてそれは、江南の国に行って、しばらくするうちに強くなってきた。

  • 3:1巻に引き続き、あっさりめに見えて深く、暗さも内包したファンタジー。ソニンもイウォル王子もまだ子どもで、もがきながら成長してるんだなと大人になった今では温かく見守ることができますが、これを対象年齢の子どもたちが読んだらどう思うだろう、というのがすごく気になります。カタルシス! というのではなく、勧善懲悪! というのでもないのがこの作品の良さだと思うのですが、うまく伝わるのでしょうか。←と書くととても上から見ているようですが。
    私が中学生の頃はコバルトやホワイトハートなど、ラノベって言葉がなかった頃のラノベを読んでいましたが、それらの少女小説とは違う残り方をするだろうなあとは思います。

  • 物語の主な舞台は隣国の江南。1巻では多くが語られなかったクワン王子のバックグラウンドが明らかになります。

    ヒロインがソニンなら相手はイウォル王子なのでしょうが、影がある設定ながらもまだまだ幼く、人間的魅力は発展途上なキャラクターである印象でしたが、この2巻で少し成長します。1巻でのイマイチ感が、これからメキメキ成長してゆく土台なのだとしたら、この物語はどんどん面白くなってゆくのかもしれないと感じ始めました。

    さらに主人公であるソニンも、ただのピュアっ子というわけでもなく、欠落した部分も併せ持つ深みのあるキャラクターの香りがし始めました。
    王子に取り合いを繰り広げさせるというムフフな流れも、お決まりの色恋ではなく、あくまで侍女としての能力を評価されて、というのが気持ち良い。

    ソニンが見聞きすることの全ては、彼女が何にも染まっていないからこそ、余計な添加物にまみれることなくに読者にストンと落ちてきます。
    落ちてきた事実に対してこう思うべき、こう感じるべき、という誘導が薄い文章なので、読者が自分の心で考える余地を与えてくれているように感じます。この時期なので、小学生、中学生の読書感想文用の本としてオススメしたいと思います。

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著者プロフィール

1969年、福島県南相馬市生まれ。2002年、「橋の上の少年」で第36回北日本文学賞受賞。2005年、「ソニンと燕になった王子」で第46回講談社児童文学新人賞を受賞し、改題・加筆した『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』でデビュー。同作品で第40回日本児童文学者協会新人賞を受賞した。「天山の巫女ソニン」シリーズ以外の著書に、『チポロ』3部作(講談社)、『羽州ものがたり』(角川書店)、『女王さまがおまちかね』(ポプラ社)、『アトリと五人の王』(中央公論新社)、『星天の兄弟』(東京創元社)がある。ペンネームは、子どものころ好きだった、雪を呼ぶといわれる初冬に飛ぶ虫の名からつけた。


「2023年 『YA!ジェンダーフリーアンソロジー TRUE Colors』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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