新世界より (下)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2765
レビュー : 502
  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062143240

作品紹介・あらすじ

八丁標の外に出てはいけない-悪鬼と業魔から町を守るために、大人たちが作った忌まわしい伝説。いま伝説が、「実体」となって町に迫る。新しい秩序とは、おびただしい流血でしか生まれないのか。少女は、決死の冒険に身を投じる。

感想・レビュー・書評

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  • 一日で一気に読破してしまいました。
    こんなに夢中になって読書したのは実に何年ぶりだろうか。
    朝から晩まで動かずにもくもくとページをめくりました。

    衝撃の展開で早季や覚と同様に悪鬼と接触する度に
    何度も背中に冷たい物が
    流れ(感覚だけど)鳥肌が立ち、息をのむ。

    野狐丸(スクィーラ)の狡猾さに唖然とし、憎しみさえも抱いてしまった。
    ハラハラ・ドキドキの展開に手に汗をにぎってしまいました。
    悪鬼と言われた子の末路に涙しました。

    物語は練りこまれ複雑で後半は涙が出てきそうなほど
    切なく、スクィーラの「私たちは人間だ!」で、とめどなく涙が
    あふれてしょうがなかった。

    現代に警鐘を鳴らす作品だな…としみじみと自分の胸に手をあてて
    考えさせられ、「家路」がひたすら悲しく聞こえました。

    一見すると神様たちが主役の設定ですが、真の主役は“スクィーラ”たち
    バケネズミだと感じました。


    自分たちは今のままで生きていていいのか、人としての
    在り方を深くえさせられる作品です。

    「想像力こそが、すべてを変える。」

  • 物語は後半になって、さらにスピードアップする。そして主人公たちの命を懸けた冒険があって、大きな悲劇があって、切ない真相があって、意外な(私にとっては想定内の)真相があって、静かな余韻を持って終る、つまりはエンタメなSF大叙事詩であった。

    一応、この一千ページを超える小説の一番最後のセンテンスを書き記す。

    以下引用。
    この手記は、当初の予定通り、原本と複写二部をタイムカプセルに入れ、地中深く埋めることにする。そのほかに、ミノシロモドキにスキャンさせて、千年後に初めて公開できるような手段を講じるつもりだ。

    わたしたちは、はたして変わることができたのだろうか。今から千年後に、あなたが、これを読んでいるとしたら、その答を知っていることだろう。
    願わくば、その答えがイエスでありますように。

               245年12月1日。 渡辺早季

    蛇足かもしれないが、最後に全人学級の壁には貼られていた標語を、ここに記しておきたい。

    想像力こそが、すべてを変える。
    引用終わり。


    ここにある「想像力」とは、本来は「呪力(超能力)をコントロールする力」ということを意味しているだろう。しかし、作者が言いたかったことは、おそらく別のことである。つまり「私がここまでの世界を想像力ひとつで作って見せた。ぜひみんなも続いておくれ」という意味なのだろう。「人は実現可能なことしか想像することはできない」と言ったのはマルクスだったか。

    だから私は想像してみる。

    早季はなにを変えようとしていたのか。
    早季の世界では、日本はわずかに9つの小さな村しか残っていなかった。彼女はこの村通しの交流組織を作ろうとしていた。そしてその足かせになる遺伝子レベルまでに組み込んだ攻撃抑制と愧死機構(同属の人間を殺す気持ちも起こさないし、もし間違って殺してしまうと自分も死んでしまうという究極の殺人抑止機能)を捨てるという決断をしようとしていた。その結果、この1000年の間に起きた超能力者通しの支配関係と戦争の時代がまた起きるかもしれないということを覚悟しつつも、だ。小説を読んでいない人にはわかりにくいが、結局人間は自分たちの「生」に「鎖」をつけて生きていただけなのである。それはあらゆるところで矛盾を起こしていた。それが結局は、この小説の内容だった。

    これを捨てることは非常に危険な賭けだ。しかし捨てることで、人類はどこへでもいける「自由」を持つことが出来る。つまらない「地球の支配」などには目もくれず、もしかしたら「宇宙開発」にやっと本格的に進出するかもしれない。

    早季と覚はこのような言葉を交わす。
    「ときどき、呪力は、人間に何の恩恵も与えなかったんじゃないかって、思うことがあるわ。サイコ・バスター入りの十字架を作った人間が書いていたみたいに、悪魔からの贈り物だったのかもしれないって」
    「僕は、そうは思わない」
    覚はきっぱりと首を振った。
    「呪力は、宇宙の根源に迫る神の力なんだよ。人間は、長い進化を経た末に、ようやく、この高みに達したんだ。最初は、確かに身の丈にそぐわない力だったかもしれない。でも、最近になって、やっと、この力と共存できるようになってきたんだ」

    この二人の会話は象徴的である。

    呪力は1000年の間に人類の人口の九割以上が死滅するという大惨事を起こす。その過程で自らを縛ったのが、攻撃抑制と愧死機構であった。一方、呪力はエネルギー保存の法則が基本的に通用しない。達人になれば、呪力が持つエネルギーは基本無限大である。良く分からないが、作者は呪力をブラックホールとホワイトホールの関係のように捉えている節がある。そうだとすれば、ヘタをするとひとりの呪力の暴走で地球が滅亡することもありうるだろう。一方、これをきちんとコントロールすれば、人類は宇宙で大活躍が出来るかもしれない。

    この「力」は、きちんとコントロールさえすれば、たった一人で全地球を賄うくらいのエネルギーが出るので、エネルギー問題は解決だ、しかし、原発の安全神話が嘘っぱちだったように、「この高みに達した」かどうかはよっぽど疑ってかからねばならない。いや、「指輪物語」のように、それを棄てる「知恵」も持たなくてはならないのかもしれない。その覚悟を持つことが、が3.11以降の「人類の義務」だと思う。

    わたしたちは、はたして変わることができたのだろうか。今から千年後に、あなたが、これを読んでいるとしたら、その答を知っていることだろう。
    願わくば、その答えがイエスでありますように。

  • 引き続き描写がきつい
    ハラハラし続けて疲れたけどおもしろかった

  • 面白かったけれど色々とヘビー。定期的に入ってくるオーバーキルな殺戮シーン、不快感を起こさせる新種の生物群に死と隣り合わせの逃走劇と、盛りだくさんのグロさだった。
    登場人物の頭の良さに驚くし、底なしの体力気力には舌を巻く。

    どちらかというと前半、業魔関連のパートの方が好みだった。都合の悪いことは全て忘れてしまう、得体の知れない巨大権力に支配された箱庭的世界が好きだった。
    伏線かと思ったらそうでもなかったことが何度かあり、ミステリー脳を反省した。
    はじめの業魔と悪鬼の昔話、変質したお守り、あと鏑木肆星と日野光風を除いて男女で名前の文字数にルールがあるように見えたので、さりげない伏線かと思ったけど、とくに関係なかった

  • 世界観に酔いしれました。大好きです

  • 上、下巻通して圧倒的な世界観に引き込まれました!!私は得体の知れない生き物が出てきたりする作品は怖くて苦手だったのですが、それを上回る魅力でいっぱいで、普段目にしない言葉がたくさんあり難しいと感じるところもたくさんあったのですが、一気に読んでしまいました!

  • わあ、ホラーだぁ。
    と泣き笑いしながら読んだ。
    救世主が村を襲うときの書きかたなんて、モロだった。

    ただ、本書はただのホラーに収まる作品ではない。

    人間は、自分の生命が脅かされそうなら抵抗する。
    それは、われわれが理解でき、実感できる本能であり権利である。
    しかし、その“当然”にのっとった登場人物たちによって淡々と突きつけられるのは、“人間がどこまで残酷になれるか”、という普段は気にしたくない命題だ。

    WW2でドイツが勝った世界の戯画にも見える。
    アーリア人こそが至高、と謳ったヒトラーの軍隊(青年隊?)は、目がよいことを入隊の必須条件に入れていたとか。くわえて、主人公たちとおなじようにキャンプを実施していたらしいし。
    もちろん、「神さま」は特定の人種に発現するものではない。
    けれど、あえてその造形には、濃厚な選民思想や優生学を受け継がされているように思えてならない。

    「新世界」は、われわれにとって、あるかもしれない未来であり、あったかもしれない未来の映し鏡のようだ。
    読了後も無関係ではいさせてくれない。
    そこがわたしにホラー(恐怖)を感じさせたのかもしれない。

  • 一気に読めた。そして読んだ後、世界観にひたれた。細部までよくできた設定で、色んな方向からこの世界をみつめても、破綻した部分がない。
    おもしろかった。

  •  アニメで結末を知ってはいたものの、圧倒的なストーリーに感服しそれ以上にこの物語が暗示する、差別や争い管理教育や出生前診断など、今現在の世界が抱える問題を思うと、神栖66町は私たちのすぐそこにある未来なのだと思えてならない。

  • 何だか今までの貴志さんの作風とは違うように思いながら読んでいたのですが ラスト200?一気読みしてみて 何ともいえない既視感。 同じような読後感の作品を思い出してみたら 貴志さんの作品でした(笑)

    最後はずっとゾワゾワしてました〜

    人間の嫌な部分を見せられたような。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。96年『十三番目の人格-ISORA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2017年 『ダークゾーン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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