- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062145558
感想・レビュー・書評
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誰かが私の左手を握っているような気がする。
手を見る。なんでもないようなただの神の手だ。動かしてみる。それでも誰かが、私の手を握っているような気がしてならない。その感触だけがある。弱く、不確かではあるが、そんな感触がある。気味が悪い。得体の知れなさを感じる。しかし、私にとって、得体の知れないものがあるという事がどれだけ救いであるか。私はその気味の悪さを抱きしめたかった。私は少し落ち着いて泣き止んだ。空を見る。青い。細い雲が幾筋か浮かんでいる。ああ私は孤独に憧れている。お前は孤独だと言って欲しい。神よお前は孤独だ、と。だから一緒にいてやると言って欲しい。しかし神にそんなこと言える者はいない。私が死んだみたいに言いふらした人がいたけどらどっこい生きている。私だって出来れば死にたい。私はただ存在しているだけの状況に全然慣れないね、なんでだろう、いっこうに慣れない。無限の時間に囚われていてなんとなく存在している状況に慣れない。
私は別に普通だと思ってた、自分が薄汚れているなんて考えた事がなかった、でも、真っ白な人達の前に出て始めて自分が薄汚れている事に気付いたんだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
よかった!!前田司郎の小説で一番好きかも
いろんな人の視点で、考えていることがぬるっと境目なく入れ替わっていったりする。
神様っていうのが本当に気取りなくさり気なく手を握ってくるようにそばにいる存在ぽくて優しくてたまらんくなる -
『下界を覗く。一応雰囲気を盛り上げる為に、私は湖畔のような所に赴き、鏡のような湖面をひと撫でして、あくまでも演出にすぎないが、湖面から下界を覗く。』
『なんかだからもう一枚、レンズを入れてやってうまく補正すればこうスパンと真っ直ぐ届きそうな気がする。と、こんな喩えを使ってしまうのはわたしの消し去りたい過去ナンバーワン、1年生の時しばらく写真部に居たおいう事実のなせるわざでしょう。』
『名前は言葉だ。全くの暗闇、全くの無、それを言葉が照らし出す、それが世界なんだって、意味わかる?』
『恋っていうのは私が考えたんだけど、これは上手く出来ていえ色々なことが忘れられる。忘れられるというか物凄く視野を狭めてくれる。そして適度な絶望と希望を与えてくれる。この状態にいると人たちは幸福と不幸とをお互いに上手い具合に感じる事が出来る。この「お互いに」っていうのが凄く良く出来ている点なのだ。これが一人で出来ちゃうようだと途端につまらなくなる。ところが私は一人で出来ちゃうのだ。』
『最近の記憶を置いておく台があって、あ、脳の中に、最近だと思える記憶をそこに置いておく。私の最近の記憶を置いておく台は台というよりもテーブルくらいの大きさがあって何でもかんでもそこに置いてあるから大抵の記憶が最近に思える。古い記憶を引っ張り出して来ては仕舞わずにポイと最近のテーブルに置いてしまうから、どんどん古い記憶が最近のテーブルの上にたような溜まってしまう。だから本当に最近の記憶を置く場所に困って古い記憶用の棚の奥に仕舞ったりしちゃうから私の夫への気持ちはもう過去の記憶の様になってしまったんだろうか?』
『私は帰らないといけない。もうとっくに混乱は収まったはずでしょ。いつも通りの混乱に戻ってるはずでしょ。』
『理科の石田先生は言葉と言葉の間にほぼ必ず「ええ」を入れるそれが「いええ」に聞こえて、それを頭の中で分解していると「イエー」に聞こえてきて、それは一昔前のコンサートとかで一昔前の若者がのってるときに発する「イエー」や「イェー」に聞こえてきて、「この法則はイエー!」「現在の最新の研究ではイエー!」どうでも良い。ほんと、どうでも良い。』
『私は快楽に弱い女で、そのことに開き直って生きてきたつもりだったけど、本当はいつもそのことに後ろめたさを感じていた。私はそれを裏庭の奥の方の、あ心の裏庭ね、木の下の奥深くに埋めて土を被せて忘れようとしていた。』
『アルコールは弱い毒のようなものだ。人はいつでも少し死にたいと思っているから、その欲望を適度に満たす程度の毒だ。』
『もし私に名前がなかったら、誰からも名前を呼ばれなくなったら、私はなくなってしまうわけでもない。じゃぁ、この不安はなんだろう。それともこれは不安じゃないのかしら。私が不安と名付けたこれはなんなんだろう。教室の扉のガラスに額を押し付け校庭を見ながらこんな事を考えているなんて。いや、お恥ずかしい。本当に心が体の中にあって外から見えなくて良かった。こんな心を外から見られたら恥ずかしくてやっていけません。』 -
読んですぐに文体に疲れちゃった。
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現在地を見失う感覚楽しかったです。
一息に読んじゃいましょう。 -
ニートの独白かと思ってたら神で、家族のそれぞれと神の視点が入れ替わりながら話が進んでいく。世界ってこういうものかもしれないというひとつの投げかけ。
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「しかし、どうやら私は神のようである。」
図書館でタイトルと、
最初の1ページ目で借りようと思いました。
面白いです。
物語は
一人称がくるくる交代しながら
進んでいきます。
ナオ、ミナコ、タカシ、神様、
全員が「わたし」「僕」で話します。
なので、
誰が誰だかわからなくなりそうですが
ちゃんとわかります。
自殺をしたい神様と
神様の声が聞こえる娘を持つ家族のお話。
神様だって
悩むみたいですよ。
「神様」という囲いを作り出したのは
人間だから。
それなら人間が滅びれば、
神様も終わりを迎えられるんぢゃないか。
エヴァンゲリオンの人類補完計画って、
たぶんこんな感じ。
結末も最初の劇場版に似てるかも。
でもエヴァより、
コミカルだし何より神様が登場しちゃうんです。笑
「わかるかなあ?人間ごときに。あ、失言、失言。」
「人なんてさ、
あいつらなんか辛い辛い言ってる割には
結構楽しくやっててさ、
寂しいとかすぐ言うくせに、
一人になりたいとか言うし、
私なんかどうやったって一人なんだからな。
むかつく。人間、むかつく。」
「人間よ、絶滅せよ」
「やっぱ、今のなし、絶滅なし」
全員がいろんなものに問いかけているので、
ぐるぐるしちゃうトコもあるけど、
文章が読みやすく出来てるので、
ニヤニヤしちゃいます。
神様、とっても可愛い人でした。 -
でんぐりがえしで光速に達しようとする神様がすてき。
異常なまでになだらかな放物線を描いて、とんだボールがはねてゆくようなリズムを感じた。
どうにかこうにか、とにかく前に進まなきゃと頭をフル回転させて、なおかつマイペースに思考する人々のリズム感だろうか。
人物の切れ間がない。
わたしたちは時間や空間を言葉的なもので区切ってどうにか生活しているけれど、本当はひとつの存在かもしれない? -
気づいたら話し手が変わってるけど、それすらたのしくて読み進めるうちに、そのスピード感にもだんだん慣れる。
ナオの言葉が少ない気がする。
結局ナオの言うように、お父さんは瀕死状態で、病院かどこかのベッドで寝てて、この話はお父さんが創ったお父さんが神の世界なのかな。続きそうな終わり方