流星の絆

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062145909

作品紹介・あらすじ

惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。「兄貴、妹は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」14年後-彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、妹の恋心だった。

感想・レビュー・書評

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  • 最も意外な人物が犯人だった衝撃。
    犯罪の裏には沢山のドラマが有った。
    息子の手術の為に犯罪を犯してしまった柏原刑事。結局子供は手術のかいなく命を落としたのだと言う萩村刑事。そして「天罰だったんじゃないのか」と続けた。こんな言葉、誰しもがつぶやいた事はないだろうか?罪深い言葉だなと思った。
    殺害された親の復讐の為に、生きる為に詐欺を働き続けた3兄弟妹。その罪の一部を自ら被って逝った柏原刑事の心情が伝わってきた。

  • 過去にドラマ化されていることを知らなかったので、先入観なく500ページを一気に読み終えた。「あぁ、ドラマも観ればよかった」と少し後悔。

    14年前、小学生の有明功一、泰輔、静奈の三兄弟妹はペルセウス流星群を観るために家を抜け出した。戻ってきた時、両親の死体を発見する。その時、横浜市の洋食屋「アリアケ」の裏口から出てきた犯人の顔を泰輔が目撃するが、犯人似顔絵も有益な情報とならず、事件解決は困難を極め、進展がなかった。14年後に洋食チェーン店「とがみ亭」の社長・戸神政行を見た泰輔は、事件現場で目撃した人物であると気づく。時効直前に事件は解決へと向かう。

    両親に内緒で、しかも夜中にこっそり抜け出すなんて、なんで大胆な小学生なんだろう…しかも窓から…と、その大胆さに圧倒され(少なくとも私は小学生の時にこんな冒険を経験したことはなかったので)、「子供の親離れの時期なのね」と、思った。それが、メンタルな親離れではなく、フィジカルな意味での親離れになってしまう。

    もし、そうなることが事前にわかっていたら、この兄弟妹は、この日メンタル的な親離れをせず、家に留まっていたのであろうか?起ってしまった事実をどのように受け入れるかと考えるよりも、どうしたら回避できたのであろうかと、これからこの子供たちが受け入れるべき運命を変えることはできないものかと考えてしまう。

    現場に駆けつけた刑事・柏原と萩原が事件の捜査の担当になる。特に柏原は、この時、病気の子供もいたので、3人に対して、彼らの心境を理解し接して欲しいと、期待してしまう。

    孤児となった三人の兄弟妹は、感情多感なこの時期に両親を殺害され、施設にはいる。この3人が歩んできた14年間で、楽しいと感じたことや幸せだと感じた日があったのだろうか?この3人はこれから幸せになれるのだろうか?と考えてしまう。が、この答えは、この後わかる。

    事件から14年後のある日、静奈が資格商法詐欺に騙されたとき、3人の人生が大きく進路を変わるときだ。そう、私は功一が発した「騙されれば、騙し返す」という言葉で兄弟妹の思いを知ることになる。3人は両親の死を通し、両親がいなくても立派に生きていこうという気持ちが芽生えるのではなく、この社会に対する矛盾、絶望感、喪失感を持って年月を重ねていただけで、彼らはあの日を境に幸せから遠のきすぎてしまったのだと、私は思ってしまった。

    これをきっかけに3人は詐欺グループとして行動することになる。

    そして「とがみ亭」の御曹司・戸神行成をターゲットとしたことから、またもや物語の、そして3人の運命が大きく進路を変更することになる。功一の当初のシナリオが、「とがみ亭」社長・戸神政行と会ったことで、書き換えられてゆく。このままシナリオが変わって進んでいくと3人までも警察につかまってしまうのではないかとドキドキ、ハラハラして、ちょっと先に進むのが、怖くなった。(その間に別の本を1冊読んでしまったが、読んでいてもやっぱり気になって、結局すぐに戻ってきてしまった)

    一方で、小説だと割り切って客観的に読み進めていく中で、作者のストーリー構成、展開に感心してしまう。加えて、主人公たちの正確や状況説明の表現もじっくりときて、理解しやすい。

    何より本作のそのクロージングが小説の世界ならではだが、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」同様に暖かみがあって、気持ちのいい終わり方であった。

    やっぱり、ドラマも見てみたかった…

  • 【感想】
    10年ぶりの再読。うん、何度読んでも面白い!!!

    凄惨な殺人事件がこの物語の中でも比重の大きなテーマなんだけど、それを凌駕するくらいほっこりとしたラブストーリーであり、兄妹愛やタイトル通り「絆」の物語という印象が強い。
    それがまた色んな伏線を回収してのハッピーエンドなので、読後の印象もサッパリとしていて、そりゃドラマも大ヒットするよね。

    個人的には、次男の泰輔が一番好き。
    詐欺を実行するにおいて、トリオの中では1番地味でボンクラ?な立ち位置の気もするが、、、
    流れ星を見て涙を流したり、静奈の恋愛を陰ながら応援したりなど、感性の豊かさや他人への思いやりの気持ちの大きさが、人として本当にステキな人だなーと思った。

    まぁ、人情味あふれるテーマが強すぎて、悪く言えばこの作品はサスペンスとしては少し弱かった気もするが・・・
    事実おもしろかったし、「流星の絆」のメインテーマはは家族愛、兄妹の絆、そしてラブストーリーであると思ったので、それはそれでイイかなと思った!


    【あらすじ】
    「大人になったら、三人で、犯人探して復讐しような」
    何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。

    14年後、大人になった彼らは結婚詐欺をして暮らしていた。
    最大のターゲットとして選んだのは、レストラン「とがみ亭」の御曹司。
    ところが、その名物料理は、懐かしい「アリアケ」と同じ味だった。
    「これはお父さんのハヤシライスだ――」

    三人で完璧に仕掛けはずの復讐計画。
    その最大の誤算は、妹の恋心だった。

    「兄貴、妹(あいつ)は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」

    涙があふれる衝撃の真相。
    著者会心の新たな代表作。


    【引用】
    p68
    あの悪夢の夜を挽回するように、次々と流星が漆黒の天上を駆け巡った。わぁ、と静奈が声をあげた。
    泰輔は無言だった。あまりの美しさに声を出せなかったのだ。なぜか涙が出た。
    「なあ」功一がいった。「俺たちって流れ星みたいだな」
    意味がわからず泰輔が黙っていると、彼は続けた。
    「あてもなく飛ぶしかなくって、どこで燃え尽きるかわからない。だけどさ」
    功一は一呼吸置いてからいった。
    「俺たち三人は繋がってる。いつだって絆で結ばれてるだから、何もこわがるな」


    p85
    「おまえたち、金は天下の回り物っていう言葉を知ってるか。静奈の金がその業者のところに回ったんなら、別のところから回収すればいい」
    「この世は騙すか騙されるかだ。政治家や役人を見てみろよ。国民を騙して、自分たちの私腹を肥やしてやがる。それをわかってて、国民が暴動を起こしてるか?諦めてるだろ。」
    「要するに、うまくやった奴の勝ちなんだ。やられたらやり返す。俺たちに騙された奴は、もし自分が損をしたくないと思うなら、別の誰かを騙せばいい。」


    p95
    特に打ち合わせたわけでもないのに、いつのまにか役割分担が決まっていた。
    作戦の立案と調査は功一の仕事だ。泰輔と静奈は実行役となる。
    基本的に、まず静奈が男を騙し、金を騙し取る段階になって泰輔が登場するという手筈だ。

    三兄妹の「新事業」は、じつにうまくいった。
    静奈は美しい容姿を持っているだけでなく、うぶな男の心を掴む天分に恵まれていた。
    一方の泰輔は、功一や静奈にいわせれば「擬態の天才」なのだそうだ。保険の外交員、銀行マン、占い師、野球選手、ホスト、どんなものにも変身できる。


    p353
    「シーが何も迷ってないならいいんだ」横を向いたままで泰輔はいった。「一応、訊いただけだ」
    「馬鹿みたい。あたしはこれから勝負をしに行くんだから、変に水を差さないでよ」
    「わかった。ごめん」
    「行くからね」
    「うん」泰輔は改めて妹に目を向けてきた。「がんばれ」
    静奈はどきりとした。泰輔の目は、優しさと思いやりに満ちていたからだ。


    p431
    眉間に皺を寄せて何事か考え込んでいた行成が、意を決したように顔を上げた。
    「有明さん、もう一度やってみる気はありませんか?」
    「えっ?」功一は当惑した。「やってみるって、何を?」
    「仕掛けをです。あなた方は、レシピノートを隠すという仕掛けに失敗した。だから、もう一度チャレンジする気はないかと尋ねているんです」

    功一は眉をひそめ、行成の顔を見つめた。彼の厳しい目には、崖を背にしているような切迫感があった。
    おれを引っ掛けようとしているんじゃないよな。どうして、そんなことをおたくが…」
    「決まってるでしょう。真相を知りたいのは、僕だって同じです」そういって行成は、ようやくアイスコーヒーのグラスに手を伸ばした。


    p433
    「こんなこと、本当はいっちゃあいけないんだとはおもうさ」静奈を見つめた。「おまえがあの男に惚れた理由、何となくわかるよ」

  • #3293ー116

  • 両親を殺害された三人兄弟が、両親を殺害した犯人に復讐を試みる物語。
    読み進めていくうちに、点と点が繋がって線になっていく気持ちになりました。
    被害者遺族の報われない気持ちと、犯人の動機が相交わります。
    犯罪によって大切な人の命を奪われたのに、自分たちも犯罪を犯す、しかし、犯罪によって悲しい思いをしたからこそ、三人兄弟が犯罪を犯しても1種の免罪切符のような形になっている気もしました。
    最後の描写もとても素敵でした。
    ここがこう繋がってくるのか〜と思いました。

  • 4.1
    面白かった。
    ラストがもう一歩物足りない感じ。

  • 本は まずまず面白かったです。
    ハヤシライスが美味しそうでした。
    ドラマは笑いもあると聞いていますが、本の中には笑いは全くありませんでした。

    ドラマもちょっと見てみたいと思います。
    でも、東野氏の作品の中では「容疑者Xの献身」が一番好きです。

  • 読者という視点からみると、結末が納得のいかないような、でもよかったと思えるものに感じた。しかし、かなり三兄妹に感情移入をしてしまっていて、途中で一緒になって感情が起伏してしまっていたとも思う。そこまで人の気持ちになって物事を考えることはあまりないと思うから、この話を通して貴重な体験ができたと思う。

  • 横須賀の「アリアケ」は、特製ハヤシライスが自慢の洋食店。その店の三人の異母兄妹(功一・泰輔・静奈)は、親の眼を盗み<ペルセウス座流星群>見物のため、家を抜け出す。その夜は、生憎と雨が降り出し、やむなく家に戻ると、長男の功一が両親が血まみれで死んでいるのを発見。 次男の泰輔は、男が家から飛び出して来るのを目撃するのだった・・・それから14年。「洋食店夫婦殺害事件」は、容疑者不肖のまま、時効寸前にまで追い込まれる・・・卓越した物語に張り巡らされた伏線、三兄妹の仕掛けた復讐計画の行方に、読者はくぎ付けになる。

  • 冒頭の掴みが素晴らしい。
    次の展開はどうなるのだろうと一気に読み進めてしまった。
    親を殺されてしまった三人の子どもたちが詐欺グループになり、その復讐を果たそうとしている。
    長男の功一はあれほどまでに頭が切れるのだから、犯罪に手を染めてしまったことが心苦しかった。
    妹の静奈は幼い頃は可愛らしかったが、成長した彼女はとても不安定な女性のように思えて、だからこそ感情が最も揺れ動いていたのが彼女のように思った。
    それにしても静奈のヒーローである戸神行成がカッコよすぎる。
    凄まじい安定感でダントツにカッコよかった。
    東野圭吾さんの小説は最後数ページにどんでん返しがあるのがいつものことなので、やっぱりそうきたかぁーという感じ。
    小説が面白かったのでドラマ版はどうなっているのだろうと動画を漁ってみると、かなり原作とは違うようなイメージを受けた。
    数分しか観てないからなんとも言えないが…。
    東野圭吾さんの小説は安定して面白い!

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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