- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062146463
作品紹介・あらすじ
夜が明け、朝が来て、また、いつもの一日が始まる。その何でもない日常に、小さなしみがぽつんと一つ。乱歩賞作家が満を持して放つ「人生の哀感と味わい」10編。
感想・レビュー・書評
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前に読んだ赤井さんの「月と詐欺師」が面白かったので、借りた。
お正月には時間が出来たので、いろいろ読んだが、新年早々あまり衝撃的な内容は避けたいので、そこそこ無難なものを選んだ。
ほのぼのと笑えるような内容のものなど、一年の幕開けにふさわしいものを読んだりした。
図書館でも、書架の前に立つと、題名が気になるようになった。
今日、ぶらっと寄った本屋さんで、パトリシア・コーンウェルの「血霧」というのを見た。スカーペッタさんとはご無沙汰だなぁと思ってぱらぱらと読んでみたが、題名もいつものごとく、まがまがしくてなんとなく遠慮してしまった。はじめの10作くらいは一気に読んだが、当時は気力もあったし、検屍官という職業がものめずらしかったかも知れない。
横山 秀夫さんの「64」も評判がよくて面白そうだったが、文庫になるまで待ったほうがよさそうだった。
よく自分にご褒美などというが、自分にお年玉というので買いだめも悪くないかも、と何冊も手が出そうになったが、まぁ年の始めくらいは堅実に、借りたのを読んでしまってからにする、と。
ミステリ仕立ての短編集。作家という人はいつもこういうちょっとしたアイデアやヒントを膨らましているのだろうか。短編でも落ちがあって、形になっているのが面白い。テーマに味があって、短かくても出来上がっているのがいい。
* * *
老猿の改心
金庫破りをした老猿が、足音に驚いて隠れた金庫が閉まってしまった。その金庫がゆさぶられ、その行き着いた先には。
読後は、うふふ、なかなかいい。
遊園地の一齣
銀行強盗の上前をはねようと思った青年の話。これはまぁまぁかな。
クリーン・スタッフの憧憬
テレビ局の清掃員のバイトをしている結花は、出て行った父も戻り家庭は少し安定した。美術学校に行くために働いていたが、テレビ局の小物置き場で、高価な古伊万里のつぼを割ってしまう。そこで、、、
ちょっといい話。
紙ヒコーキの一齣
紙ヒコーキを取ろうとして子どもが4階のベランダから転落、幸いかすり傷ですんだが、5階に監禁されていた私はその紙ヒコーキを作って助けを求めたのだ、、落ちた子どもを助けようと駆けつけた警官に私も助けられた。
これは短いながら面白かった。
三十年後
若いころは、遊び仲間と贋金を作ったり、ビンゴゲームにはまった時期もあった、その頃キョーダイさんという名前の兄貴がいた、京大に在学中という遊び人だったが、上京して警視庁の警部になったという。
三十年後、そのキョーダイさんとカジノでめぐり合ったときなどは、まともには生きられず業務上横領で手配されていたのだった。警部になったキョーダイさんにみつかり、腕にかちりと手錠をかけられた。
これはすばらしく面白かった。
アリバイの一齣
お人よしのかっての同級生鈴木に、アリバイ工作をさせるつもりが、、、
アイデアが面白い。
青の告白
私は結婚寸前で心変わりした佐奈江を殺した、佐奈江の新しい交際相手が犯人になるようにたくみに細工をした。
その細工は稚拙だったが、面白い。
善意の一齣
赤いスポーツカーを盗んだ二人は、赤ん坊が乗っているのでびっくり仰天。お人よしの泥棒が捕まるまで。
花曇り
梅雨のある日、本因坊戦で勝ちを譲ってくれたN八段が亡くなった。その時のN八段のお陰で事故にあった妻の最後に間に合って言葉を交わすことが出来た。同乗していた娘は足が少し不自由になったが、結婚することになった。
N八段は、勝ちを譲ったあとは、勝負に見放されたのか寂しい生涯だった。
娘が嫁ぐ日になった。
しみじみとした余韻の漂ういい作品で、ひそかな隠し手まである。
誘拐の一齣
娘が誘拐された。部屋には刑事が張り込み、パソコンまで用意してきた。それで一億円の札のナンバーを控えている。
あとは犯人からの電話を待つばかり。
それで・・・・
アララ と笑って読めるオチが用意されている。
* * *
短編は読みやすい、出来のいい作品がそろっていて、新年にふさわしい充実した読後感が残った。
あまりひねりすぎではないし、ふさわしいと思えるテーマの多様さも一興で、力のある人だと思える。
文庫版は「花曇り」と改題。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編集
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なかなか優れもの。ゾッとするのもあるけど短くてスピーディでピシッと音が出るくらい気持ち良く決まるものも。憎いなあ。
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老猿とクリーンスタッフはおもしろかった。
なーんか話が続きそうな感じもあったので、
短編だけど、あとでいろいろ繋がってくるのかと思いきや、
最後までバラバラなただの短編集だった。
特に老猿の方は、もうひと事件ありそう感ありありだったので残念。
三十年後と青の告白は、
うーん、ちょっとだらだらした印象。
三十年後は、ラストがあんまり好きじゃなかった。
ラストの花曇りは結構好き。
これは実際の人をモデルにしている、と考えていいのか?
広島での碁の対戦ってのはきいたことがある。
これは、ちょっとしたショートムービーな気配。
短編集です、と言われれば納得するしかないんだが、
なんだかまとまりのない一冊だったなあ。 -
少しハラハラのプチミステリー・サスペンス!結局は"同じ穴の狢""振り出しに戻る"様な話が多い十の短編集。シンデレラストーリーの「クリーン・スタッフ~」、名人位棋士の父親「花曇り」は好きだなぁ♪
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うーん
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うーん、ジャンルはミステリなのかしら?な微妙な短編集。
花曇りはとても好き。 -
<table style="width:75%;border:0;" border="0"><tr><td style="border:none;" valign="top" align="center"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062146460/yorimichikan-22/ref=nosim/" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51vISREjPeL._SL160_.jpg" alt="どこかの街の片隅で" border="0"></a></td><td style="padding:0 0.4em;border:0;" valign="top"><a href="http://blog.fc2.com/goods/4062146460/yorimichikan-22" target="_blank">どこかの街の片隅で</a><br />(2008/05/16)<br />赤井 三尋<br /><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062146460/yorimichikan-22/ref=nosim/" target="_blank">商品詳細を見る</a></td></tr></table>
<blockquote><p><strong>捻りのきいた短篇10編による推理作品集。 街の片隅で、ひっそりと暮らす人々に、ある日、忍び寄る、ほんの小さなボタンの掛け違いが、人を狂わせ、事件を引き起こす。人生の痛みと苦みを描く掌編10編。</strong></p></blockquote>
「老猿の改心」 「遊園地の一齣」 「クリーン・スタッフの憧憬」 「紙ヒコーキの一齣」 「三十年後」 「アリバイの一齣」 「青の告白」 「善意の一齣」 「花曇り」 「誘拐の一齣」
どれも短い物語なのだが、登場人物が息づいている印象である。タイトルのとおり、どこかの街の片隅でひっそりと生きている人の姿が過不足なく描かれていて好感が持てる。しかもラストでがらっと景色を変えるような趣向が施され、ますます面白くなっている。手軽に読めるが、味わいのある一冊である。