アイスクリン強し

著者 :
  • 講談社
3.36
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本棚登録 : 2091
感想 : 376
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062150064

作品紹介・あらすじ

ビスキット、チヨコレイト、アイスクリン、シユウクリーム、スイートポテト。南蛮菓子から西洋菓子へと呼び名が変わり、新たな品々が数多登場。そんなスイーツ文明開化の東京で、孤児として生まれ育った真次郎は、念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。そこには今日もまた、甘い菓子目当てに若い元幕臣の警官達がやってくる。菓子作りの修業に精を出したい真次郎に、厄介事が次々と…。著者の魅力全開!明治の築地居留地で、西洋菓子屋の若主人と元幕臣の警官達「若様組」が繰り広げる「スイーツ文明開化」騒動記。

感想・レビュー・書評

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  • 思っていたのとはだいぶ違ったタイプの小説。
    売れないお菓子屋さんがアイスクリンで起死回生!みたいな話を予想していたのだけれど、そういうタイプではなかったみたい。
    お話の全体的には、身構えているとちょっと肩透かしな部分もあるけれどまぁまぁ面白いかな、と思ったので星3です。
    同じ登場人物で短編な感じなのでさくさく読めるけど、人に勧める感じではないかな…

  • 明治23年東京。警察官として薄給で働く人々の中には、元士族が多く居た。その中の長瀬、園山、福田達数人は、江戸時代に旗本であった家の息子、世が世なら「若様」と呼ばれる身分の者達で、同じ境遇という事から「若様組」と称しする仲間となっていた。彼らと、築地の外国人居留地で育ち、西洋菓子の店を持つ皆川真次郎や成金商人の娘小泉沙羅などが繰り広げる物語。それぞれに関連する5つの短編。

  • 「誰が『寂しがり屋でお人好し』だ!」

    スイーツ文明開花の東京で、孤児として生まれ育った真次郎は、念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。そこには今日もまた、甘い菓子目当てに若い元幕臣の警官達がやってくる。



    タイトルの「アイスクリン強し」に期待していたけどこのエピソードが表題になるのは次巻を読めば納得いくのだろうか?一番時代背景を感じる話ではありそうだけども……あと語感がとても良い。口に出して読みたいタイトル。
    江戸から移り変わった明治の世を苦心しつつ明るく楽しげに生きていくキャラクターがとても魅力的だった。明治は明治!江戸は江戸!という話を読むことが多いけれども、『江戸から維新後の明治』という時代がその時生きることの複雑さがあってとても面白かった。時代が切り替わっているんだよなぁと改めて思った。長瀬は明るい曲者だし、真次郎は真面目な曲者だしでキャラクターがしっかりしていてストーリーは分かりやすくてとても読みやすい。園山さんの暴れっぷりをもっと見たかった…けど無言で暴れる人なのか?

  • 甘いものだーいすき!おとこの人も甘いもの好きなら好きと言うべきよねー
    流行りものに対する蘊蓄を口にするため、このせいようがしをくちにするしかない
    なんて可愛すぎますね
    しかし有閑倶楽部と言うかF4というか、そんなのを感じますね
    長瀬は完全にTOKIOの長瀬くんで再生されるけどね
    表紙の巡査どのの格好もよろし

  • 明治あたりのお話ですけど、登場人物が若干現代人っぽいなあ、という感想。
    これは作者の作風なんでしょうかね。
    がっつりとした時代ものではないけれど、その代わり読みやすくはありました。
    設定としては明治じゃないと駄目な話の展開も間々あったので、現代小説でもよかったんじゃない?とは言いませんが。
    とりあえず、沙羅ちゃん可愛い。
    真次郎から貰ったお菓子の装飾の安っぽいリボンをつけてるのが可愛い。
    かといって恋愛恋愛しているわけではなくて、良い仲になるのかな?と言う思わせぶりな展開が微笑ましいかったです。
    しかし、これ、各章のタイトルにお菓子が入っていたんですけど事件そのものには関係ないのが多かった気がします。チョコレイトくらいじゃないかな。
    それなのに、アイスクリン強し、ってタイトルなんですね。
    もうちょっと違う方がよかったんじゃないかなあ……。

  • しゃばけシリーズ舞台はお江戸。今回の舞台は明治。…なーんとなく理解できるような出来ないような(笑) まぁ、このお話には妖しは出ないんですけどもね。 

    江戸から明治に代わり、世の中は変化した。髷はザンギリ髪に、アーク灯が並び、鉄道馬車が走る。
    そんな変化の激しい中、幼くして親と死別し居留地でなんとか育った皆川真次郎が開店したばかりの西洋菓子屋・風琴屋に、元旗本士族の巡査ら―自称・若様組―が訪れた。その中のひとり・真次郎の親友・長瀬が取り出した封筒は奇妙なものだった。送り主と欲している何かを探し出し参上した者に報奨を与えるというのだ。それは若様組・そして遅れて真次郎にも届いていた。―――《序章》

    ひょんなことから追っ手から助けた青年・小弥太を、風琴屋で匿うことになってしまった。正直なところ、店の先行きを左右するパーティー料理の準備や親しい女学生・沙羅が元気のないことが気がかりで、彼の抱えるお家騒動に関わってる余裕はないのだが…―――「チョコレイト甘し」
    長瀬に同行し貧民窟を訪れた真次郎らは、親分の協力で目的の人捜しはすぐに片がついた。しかし情報提供者であるもうひとりの親分・安野から、つい最近母親を亡くしたかの子という娘のところに入る泥棒の解決を頼まれる。―――「シユウクリーム危うし」
    女学校で行ったアイスクリン講習について事実無根の破廉恥記事を書かれた真次郎は、若様組の記事に文句を言いに行く長瀬と共に新聞社に赴く。しかしそこでは刀を振り回す暴漢が若い記者を追い回していた。―――「アイスクリン強し」
    成金・小泉商会のひとり娘である沙羅は父親から、真次郎らの現在の窮状の情報を条件に見合いを推し進められていた。一方、コレラが蔓延する帝都で若様組は危険な最前線に就かされ、意図的に差し向けた警視から長瀬は人捜しの任務を与えられていた。―――「ゼリケーキ儚し」
    常よりさらに金欠になっていた若様組の一面は、以前の差出人不明の手紙を解決し報奨をもらおうと動き出した。しかし、長瀬そして真次郎は、若様組の問題児・園山がひとりで行動していると知り、彼の行く先を探し出す。―――「ワッフルス熱し」
    以上、5作の短編集。

    ワッフルス・チョコレイト・シユウクリーム・ゼリケーキ・アイスクリン・エクレア・ビスキット・パンバタプリン…真次郎が作っていたお菓子の名前です。まだあったかなー? 真次郎はお菓子のほかにもシチューや鶏の丸焼き、南瓜のパイなんかも作ってます。美味しそうであるヨ。
    ちなみに真次郎さんは、翻訳(通訳)のお仕事もできます。正直、コッチの方が儲かるんじゃないかとか思うんですけど(笑)。でもきっと、彼が本当にやりたいのはやっぱり『西洋菓子』なんでしょうね。チョコレイトでの、あの剣幕は演技では決してないのでしょうから。
    若様組だってそうですよ。士族が廃止され、就職先が無いから巡査になったように長瀬らは言ってますが、人捜しやら捕り物やらの手際の良さは充分有能だと思う…案外向いてるのか?(笑)
    まぁ彼らがどんどん先へ、明るい未来へ猛進していくには、まずは警視や小泉商会の社主や、そのほかにも江戸→明治の激動を乗り切った食わせ者の先人たちを乗り越えていかなきゃなりませんけども。大変だぞー本当に食わせ者だらけっぽいから!
    でも、彼らの若くきらきらした力なら、全然大丈夫!という気になるから、このお話はとても好きですv 
    あと、やっぱり沙羅ちゃんかわいいですねv ゼリケーキの「天誅!」騒動はやっぱりじぇらしぃってヤツだと思うの。 あの2人の仲も(小弥太じゃないけど)気になります。 短編でいいから、続編読みたいなぁ。

  • 2012/5/16
    borrow a book from Osaka Municipal Central Library

  • タイトルと装丁のかわいらしさにやられた一冊。
    中身は畠中さんらしい人と人とのふれあいの人間臭さとあたたかさにあふれた一冊になっていると思います。

    江戸から明治に移る時代、ゆったりとした生活の流れがあわただしく変わっていく中、なんてことはない日常なのに登場人物の個性がきらりと光って物語を面白くしていると思いました。親を亡くし幼少期から外国人遺留地で育った元若様の洋菓子職人、同じく元若様ながら幕府解体により若様生活ができなくなった警察官、いわゆる成金と呼ばれるお家の御嬢さん。いきいきと生きる登場人物たちに元気をもらえる気がします。

    個人的にはこの時代の洋菓子の名前の響きと字面のかわいさにも癒されてます。お菓子の描写が出てくると作りたくなるし食べたくなる。アイスクリンとかワッフルスとかビスキットとか、今でも通じるけど、今じゃあんまり使わない呼ばれ方で登場するお菓子がどうしようもなくかわいいです。

  • しゃばけシリーズの作者、畠中恵の作品。小説の舞台は本作で江戸から明治へ移る。内容に新鮮味は感じられないけれども、その分安心して読める。薬問屋からお菓子屋さんへ。いっしょに行動するキャラクターは妖怪たちから没落した武家の若様たちへ。「コレラ」の話はドラマの『JIN-仁-』でさんざん情報を得てしまっているしな~。

  • 江戸から明治に時代が移り変わり、ひとびとが時の流れに置いていかれていくような疎外感を感じているとき。混沌とした時代の中で生きていくひとびと。
    登場人物がみな生き生きとしていて、生きる力に満ち溢れている。なんの変哲もない、どたばたとした日常のストーリーなのに、たまに文明開化の弊害、問題が織り込まれていてあの時期に生きるひとびとの苦悩というものを思い知らされる。けれど、この先は明るいはずだと思いながら生きるひとびとはすてきだなあと思う。

    (266P)

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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