- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062152594
作品紹介・あらすじ
妻は三つの「わたし」を生きていた。交叉する人格に対峙する、夫と医師。それぞれの「わたし」という物語はいかに紡がれたのか?幾つもの人格が解離し、しかも同居する心。日本でも増えつつある解離性同一性障害という心の病いに、文学は救いの手を差し伸べられるのか?記憶と意識、情念と無意識の深い闇に挑んだ畢生の傑作。
感想・レビュー・書評
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多重人格の美佐子の治療の話。生育歴、夫婦関係などの課題に直面する。精神科医杉本と娘沙也佳の物語でもある。
人格とは何か、良い人格とは何か、考えさせられた。自由奔放な人格が出てこなくなったとき、それまでは社会的でないからと邪険にされていたのにも関わらず喪失感を覚える主人公がいた。
今までの人格が変化することは、不安定を生じさせることだから、治すこともある種の危機ではないかと思った。
ハッピーエンドで良かった。 -
H28/9/20
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多重人格と、人の心の仕組み、そして憑依。
人間の心は不思議に満ちていますね。
以前、河合隼雄と村上春樹の対談本で「人は物語を紡ぐことができて、初めて生きていける」ということを知りとても興味深く思っていました。
この本では、それを小説という形で、わかりやすく知ることができます。多かれ少なかれ、人は誰でも多重人格。
私も自分に置き換えながら読みましたが、主人公の医師自身がまた、自分を分析する過程も描かれているところが、この小説をさらに深めている気がします。
また、阿修羅像のこともよくわかって面白かったです。 -
面白い!
精密な構成なのに馬鹿でも読める。
解離性障害の理解を深めるための第一歩になるだろう。 -
物語は、多重人格者の専門的な治療過程を追いながら進んでいきます。主人公の中にある、体験が未消化のまま固まっているしこり。そんなしこりと自分の中にも類似した未消化の体験。はっきりした人格ではなくても、このような側面は生きる者すべての中に潜んでいるのでしょう。誰にでもある変身願望の底をのぞくような、言いがたい気分にもなります。
ただ、突然の終わり方、という感じが残って・・・・・。こんなものなのでしょうが、ちょっと残念感が残りました。 -
解離性同一性障害(DID)をテーマにした内容です。
DIDとは多重人格といわれる症状が現れることで、以前「24人のビリー・ミリガン」という本が話題にもなったことを思い出しました。
仏教真理や霊的な話も織り込んであったけれど、難しい表現はなく 感情移入もしやすくて、わかりやすかった。そして読後はとてもさっぱりした気分でした。
この内容にして、この読後感は不思議な気もしています。 -
奈良などを舞台とした作品です。
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精神医学領域の専門用語を使いたかっただけだろう、という感想。
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解離性同一性障害を冷静な目でわかりやすく書かれていました。ラストはバタバタと畳み掛けるような終わり方だったので残念。