トヨタ・ショック

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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062153607

作品紹介・あらすじ

赤字転落、人員削減、賃金カット、社長交代。世界ナンバーワンのトヨタがなぜ失速したのか。トヨタは甦るのか。甦るとしたら、それはいつなのか。いま日本経済の根幹が変わろうとしている!トヨタと日本経済の「これから」が見える必読の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 刊行はリーマンショック直後なので、今とは置かれている状況が異なる。
    それはさえおき、当時まさかの赤字に転落したトヨタの失速した背景を追う。台数重視の戦略、自社の強みを活かせない場所での競争、現場と中央の乖離などなど。
    さて、今はどうなっているかというと2021年3月の決算を見ればトヨタ最強の様相を呈している。販売台数は対前年比で15%落ちているのに、営業利益率は落ちるどころか上がっている。販売台数が下がれば固定費が重荷になって利益率が下がる、なんて当たり前のような話が通用しない。
    リーマンショックの反省から生まれた(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれるプラットフォームの共通化と原価低減を実現するクルマ作りが実を結んでいるようだ。

  • 日本を代表する企業である「トヨタ」が、一時は世界一位の販売台数を記録しつつも、赤字転落、人員削減、賃金カット、社長交代などの失速を経て、今後よみがえることが可能なのか。
    『トヨタと日本経済の「これから」が見える。』と帯にあるように、そのトヨタと日本経済の行く末について論じようとした本です。

    目標は大きかったのですが、結局のところ論じきれずといった印象で、内容はイマイチです。

    ただ、
    「カローラのような安くて品質の良い大衆車をこつこつと努力して作るのが得意だった会社なのにいつの間にかトヨタは利益優先主義に陥り大型車や高級車中心の会社になった。しかもIRや政治家マスコミの対応を優先した結果のファンであるお客を失いつつある。」
    「すぐに金になりそうな商品に目をつけ、資本力にものを言わせ、市場投入する。」
    「経営は結果責任である」
    あたりはなるほどと強く共感した内容でした。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:335.4//I57

  • 昨年11月頃から自動車メーカの収益が非常に悪くなり、何度かの修正があった後に、とうとうトヨタは営業赤字となってしまいました。ショックなのは、2008年前期は、2兆2700億円の黒字(p123)だったことです!

    手元資金を10兆円以上も保有して堅実経営をしていたトヨタがなぜ円高、サブプライム問題があったにせよ、一気に赤字にまで転落してしまったのかが腑に落ちませんでした。この本を読んでも完全にはわかったとは思えませんでしたが、トヨタ自身が北米ビジネスにいかに頼っていたのかがわかりました。

    利益の源泉だった北米がおかしくなったら利益が出なくなるのは当たり前ですね、ただ、この数年間は史上最高益を更新し続けていたこともあって、いつのまにか利益を追うことばかりに夢中になっていたようです。これから長いトンネルに入ることでしょう、トンネルを抜けると別世界になっているかもしれませんが、自動車業界の業績が深く影響する業界に身をおいているものとして、悔いのない社会人生活を送って生きたいです。

    以下は気になったポイントです。

    ・2008年11月6日のトヨタショックから、わずか1ヵ月半で7500億円マイナスとなった要因解析:原価改善とコスト削減で+1300、為替変動で2000(対ドル1円で400、ユーロでは60億円の減少)、販売減少で5700、金利スワップ評価で1100億円マイナス、合計でマイナス7500億円(p20)

    ・グローバルマスタープラン(グロマス)、その後に導入されたGPM(グローバル・プロフィット・マネジメント)によって、ボトムアップからトップダウンの会社となった(p37)

    ・テキサス州のタンドラ専用工場が、トヨタ経営を苦しめる元凶となる、国内元町工場ラインでは6車種の混流生産かのうだが、専用工場は柔軟性なし、なので2008年8月から3ヶ月間操業停止することに(p39)

    ・北米向けの輸出車部品を作っているところは、6割から7割減(p66)

    ・80年代まではトヨタ社員が直接下請け会社に出向いて、ノウハウを教えて検討したうえでコストダウンの努力をしていたが、今回は頭ごなしに押し付けられた(p78)

    ・2008年12月の国内での生産台数は、25%減少の24.5万台、世界各地の製造拠点も25%減少した(p92)

    ・カムリを生産(昨年まで50万台)するケンタッキー工場では、昨年半ばから25日間という異例の操業停止、インディアナ工場・テキサス工場(タンドラ、セコイヤ)も同様(p115)

    ・トヨタはアメリカでの収益競争において、小型車・ハイブリッドではなく、大型ピックアップトラックやSUV(タンドラ,セコイヤ)で挑んだ(p129)

    ・英国は2008年に気候変動法2008という法律までつくって、厳しい削減義務を課したのは、排出権取引における主導権を確保するため(p138)

    ・トヨタの自動車ローンは、2008年3月末で12.2兆円の貸出債権がある、自動車ローンと住宅ローンが連携する米国では、不良債権化が強い(p146)

    ・2009年1月の国内生産は、前年比4割減の約20万台、2・3月は11日間の臨時操業停止日を設けるので、15万台となる(p154)

    ・各国自動車工業会の調べでは、2009年販売予想は、日本がマイナス5%、北米がマイナス21%、その他が10~15%、全体で15%(p157)

    ・奥田、張、渡辺体制で、トヨタが成長のアクセルを踏むことができたのは、円安(110円台)・金融(ゼロ金利、リース)の恩恵である、トヨタの想定為替水準は105円、限界利益率は20%なので、20%近い円高にお手上げ(p175)

    ・ トヨタはGMに対して技術力は上でも、傘下のローン会社に資金を提供して、自らの負債で販売台数を増やすというビジネスモデルはGMと同じであった(p182)

    ・CSMが2008年4Qに発表したデータによれば、2007年にくらべて2014年に生産台数が拡大していると予想されるのは、世界51カ国中38ヶ国、減少は13ヶ国、アメリカは07年1054→783(09)後に、2011年に回復、日本は08、09減少(大底)、2014年に回復、欧州では2014年においても減少、2倍以上はインド、インドネシア、ルーマニア等、中国も80%増加(p199)

  • ジャーナリストが書くと大体こんな感じの本になる。中日新聞の連載の方が面白いな。

  • トヨタの最大の特長である現場主義を離れ、机上の空論になっていたところがそもそもの悲劇の土台で、そこを世界的な不況が襲ったとの論です。マスタープランの存在がその柔軟性を奪ったという主張もありましたが、そこは一長一短のはず。マスタープランがないゆえに迷走する組織も多いのですから。

  • 表題から誤解させるが、最近アメリカで起こったトヨタのブレーキ問題以前の話なので注意してください。
    やっぱり、アメリカ工場で北米専用ピックアップトラック「タンドラ」を作ったことがターニングポイントになったと思う。あの時、インターネットで情報を知ったとき、「この分野に参入してしまったか・・・」と思った記憶がある。アメリカ人の心であり、ビッグ3のドル箱であるピックアップトラックの世界に踏み込むことがどれほど危険なことかは、その後のトヨタで起こったことで証明された。それほどアメリカの政治は恐ろしい。

  • ちょうどトヨタショックのあった後に買ってよみました。あの前後にトヨタ社内で何が行われていたかを知るのには良かったです。
    この本から学ぶのは、外聞と自身の保身を図るために決算見通しが甘いままでいた事で、最後首が回らなくてトヨタショックを引き起こすあの決算発表となり、多くの株主に損害を与えた事。膿は早いうちに出し、失敗は直ぐに認める事が重要だと。

    今後は輸出比率の高さ、新興国のキャッチアップなどが課題になりそうですね。

  • 「今更」で片付けてよい問題だろうか?
    リーマンショックで話題になったトヨタショック
    それに関する本が安売りされていたので、ついつい手を伸ばした


    大企業病と言われる風潮が、トヨタ社内でも充満していたことが分かる
    カイゼン活動とは、「乾ききった雑巾から水を出す」と言われる程、知恵を絞り出すことが求められていた
    しかし、病に気づいた頃には、水が滴り落ちていたほど、カイゼンが行われていない
    それでも大丈夫だと言うおごりが、そこにあったのかもしれない

    「大企業病」
    大企業だからこそ、陥りやすいこの病
    この企業なら大丈夫だろうというおごりが、製品の不良を招いたのかもしれない

    自動車産業の裾野の広さが、経済悪化を拡大させたのかもしれない
    でも、それ以上に見るべき点は「トヨタに依存をしすぎた日本経済」

    もし、トヨタに、自動車産業に依存をしない仕組みを作っていれば
    先日のリーマンショック程の問題は起こらなかったのかも

    リーマンショックの問題は、アメリカに依存した自動車産業、その自動車産業に依存した日本経済

    今は、回復した様に見えるが、同じ状況に陥ったら、また同じ様な事象が発生するだろう

  • いかにトヨタが大きい存在かを改めて実感した。
    これからは中国に軸足を移すのでしょうか?

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著者プロフィール

経済ジャーナリスト。
1964年生まれ。1988年九州大卒。NECを経て1992年朝日新聞社に入社。経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。現在は主に企業経営や農業経営を取材し、講談社や文藝春秋、東洋経済新報社などの各種媒体で執筆するほか、講演活動も行っている。
主な著書に『自動車会社が消える日』『日産vs.ゴーン』(以上、文春新書)、『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)、『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『サイバースパイが日本を破壊する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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