整形前夜

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  • 講談社
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レビュー : 96
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062153966

感想・レビュー・書評

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  • 再読です。

    印象的だったのは江戸川乱歩作品の「運命のふたり」要素について。
    明智と二十面相、単なるライバル同士というだけではなく、どこか恋愛めいた相手への信頼と期待があるとの説に納得してしまいました。
    それから、「ああ、あれは、まぼろしでしょうか」などの、読者への呼びかけ。
    しかし、呼びかけの形をとる一方で、実は乱歩自身が自らの仕掛けた異様な事態に夢中になっている陶酔感の表れでもあるのですね。
    そんな後ろ暗い悦びがつまっているからこそ、少年探偵団モノの魅惑は色あせないのでしょう。

    それから「共感と驚異」についてもふむふむと納得。
    人間は年をとるにつれて「驚異(ワンダー)」よりも「共感(シンパシー)」を求めるというもの。
    現代のメディアが提供するテレビ番組や音楽を見ていても、視聴者の「共感」を求める内容や煽りのものが多いです。
    「驚異」を「驚異」として楽しむことができる感覚を失わずにいたいものです。

  •  私は3年ほど前に穂村の魅力に“開眼”し、当時出ていたエッセイ集をすべて読んだのだが、なんとなく飽きがきて、その後はしばらく遠ざかっていた。

     久しぶりに読んでみたら、やはりバツグンに面白い。
     芸風は、相変わらず。自らの「世界音痴」ぶりをネタにした、いわば“キュートな自虐”が笑いを誘うユーモア・エッセイである。
     相変わらずではあるが、言語感覚の鋭敏さと意表をつく発想の面白さが抜きん出ているので、マンネリ感はない。

     収録エッセイのおよそ半分は女性誌『FRaU』と『本の雑誌』に連載されたもので、残りは各紙誌に寄せた単発エッセイ。

     そのうち、『FRaU』『本の雑誌』連載分は総じて出来がよい。
     『FRaU』に寄せたものは、女性一般に向けた畏敬の念や違和感をユーモアでくるむ手際が鮮やか。

     『本の雑誌』連載分は、本好きの読者に向けて書かれた「文章と言葉や本について書いた」エッセイが中心で、穂村の表現者としての核を垣間見せるものになっている。
     とくに、それぞれ3回にわたって同じテーマが追求される「共感と驚異」と「言語感覚」は、今後誰かが「穂村弘論」を書くとしたら必ずや引用されるであろう内容だ。しかも、それがけっしてお堅い文学論にはならず、ちゃんとエッセイとして愉しめるものになっている。

     単発エッセイは雑多な内容だが、少年期~青春期の思い出を振り返る文章が多いのが本書の特長。「ほむほむ青春記」ともいうべき一群のエッセイは、笑えると同時にリリカルで切ない。

     ところで、本書には何度か穂村の奥さんが登場するのだが、彼女の職業は図書館司書となっている。
     あれ? 『現実入門』に登場する編集者「サクマさん」と結婚したのではなかったのか? 『現実入門』の最終回はフィクションだったのだろうか?

  • 内容が濃くボリューミーな一冊。
    容姿についてや文学についてや過去について。

    青春時代の心理とか精神世界と現在との違和感みたいな話があった。あぁ、こういう風に感じてるのあたしだけじゃなかったんだ。こんな日常の中でふと思うけど深く考えず通り過ぎてしまうことを、もっとたくさん、この人に表に出してほしい。

    情けない話が少なめで、穂村さんて立派なひとなんだなって思った。

  • 信号のこととか、虫のこととかなんか呼んでいてつらくなってくる

  • 特にサイン会の話が何度読んでも笑っちゃう

  • だが、と私は思う。日本女性の美への進化もまだ完璧ではない。例えば、踵。あの踵たちもやがては克服され、「おばさんパーマ」のように絶滅してゆくのだろうか。かっこ悪い髪型からの脱出を試み、大学デビューを阻む山伏に戦く。完璧な自分、完璧な世界を強く求めながら、平凡な日常の暴走に振り切られる生ぬるき魂の記録。人気歌人の頭からあふれ出す、思索のかけらを集めたエッセイ。(文庫本裏表紙)

    段々読むのが辛くなってきた。文章の、言葉の端々にある切っ先のようなものが苦しい。
    「いちばん恥ずかしかったこと」の恐怖。ここ最近読んだあらゆる本の中で、最もぞっとしました。

  •  安定の面白さでした。
     生きる・生き延びるの話は、短歌入門でも詳しく書かれていたけれど、ハッとさせられます。「感性」や「心の闇」で簡単に片付けてしまうその乱暴さにも気付かされました。便利な言葉は思考を停止させる。また、「わかる」とか「共感」とか、つい心地いいことばかり求めてしまうけれど、ほむほむも短歌にわからない部分が40%もあると聞いて、なんだか安心できました。共感の末にあるのが「お天道様にも雑草にも石ころにも感謝」「今日一日が有り難い」的なものに行き着くのか。。。やだ。。
     この本のハイライトは、ほむほむが森見登美彦氏の作品を褒めていたところ。好きな作家が好きな作家を褒めてると嬉しい。

  • 2016.06.30 読了。

    図書館にて。

    雨だから迎えに来てって言ったのに
    傘も差さず裸足で来やがって

  • 普段あまり活字を読まない私でもサラッと読めた。すごく読みやすい。そしてすごく面白い。『共感と驚異』の話がとても興味深くて繰り返し考えてしまう

  • 日常の1コマに関するほむほむの所感が書かれた本。
    斬新な視点のようで、どこか自分にも心当たりがある感覚。そんな感覚が言語化されている。何気ない日常の風景が、カラフルに色付けされているよう。
    こうやって書くと堅苦しい本に見えるが、内容はとてもゆるく、すき間時間に読めて、思わずニヤけてしまう本。

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著者プロフィール

穂村弘(ほむら ひろし)
1962年、北海道生まれの歌人。1990年歌集『シンジケート』でデビュー。その後、短歌のみならず、評論、エッセイ、絵本、翻訳など幅広い分野で活躍中。2008年『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、『楽しい一日』で第44回短歌研究賞、2017年『鳥肌が』で第33回講談社エッセイ賞、2018年『水中翼船炎上中』で第23回若山牧水賞をそれぞれ受賞。歌集に『ドライ ドライ アイス』、『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』。その他代表作に、『本当はちがうんだ日記』『絶叫委員会』『世界音痴』『整形前夜』『蚊がいる』『短歌ください』『野良猫を尊敬した日』など著書多数。

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