同期

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062156677

作品紹介・あらすじ

懲戒免職になった同期の公安刑事が、連続殺人の容疑者に。「教えてくれ。おまえはいったい何者なんだ」男たちの前に立ちはだかる最も高い壁-組織の論理。その壁を突破するのは、刑事たちの誇りと絆。現時点での集大成ともいえる最新警察小説、登場。

感想・レビュー・書評

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  • 捜査一課の宇田川の同期の公安部の蘇我が突然懲戒免職になった上に、姿を消してしまう。納得がいかない宇田川は個人的な調査を始めるが、公安部の横やりが入る。折しも、刺殺事件が暴力団同士の抗争と見なされ、宇田川達捜査一課の刑事たちも駆り出される。しかし、宇田川はこの見立てに疑問を持ち、そこに蘇我が絡んでいるのではないかとも考える。
    この小説は、同期の友情の物語であるとともに、宇田川自身の成長の物語でもある。宇田川と組むベテランの植松や土岐もなかなかいい味を出していて、物語として面白い。事件の決着がどうにもあっけないが、公安が絡むとこうなってしまうのかな。

  • 警視庁刑事部捜査一課第五係、宇田川亮太巡査部長32才の活躍を書いた物語です。

    第五係の班長・名波(ななみ)孝三警部45才は、部下を従えて赤坂六丁目にある関西の広域暴力団の三次団体の「桂谷組」の事務所にウチコミ(家宅捜査)に入ると。組員の一人が事務所から逃走する。

    宇田川巡査部長は、逃走した組員を追っていて突然に初任科で「同期」の公安総務課・蘇我和彦32才に突き飛ばされる。その直後に銃声がする。蘇我に突き飛ばされなかったら死んでいたかもしれない。宇田川は、第五班で一緒に組んでいる植松義彦警部補51才からなぜ蘇我があの場所にいたのかと……。

    それから三日後、蘇我が突然、懲戒免職になる。宇田川は、蘇我が何故に懲戒免職になったのかと思い捜しまわると警察庁警備企画課から圧力がかかる。同期だというのに蘇我の事について何も知らないのに驚く。蘇我は、茫洋(ぼうよう)として、自分からものを言うことがない。聞かれてやっと言うタイプだ。そこを見込まれて公安へ呼ばれたか?

    ウチコミの最中に逃走した桂谷組の組員・石田伸男が刺殺体で発見された。宇田川たち捜査一課第五班は、桂谷組と敵対する関東の地場の暴力団である坂東連合系の「石波田組」の幹部、高田衛(まもる)刺殺事件の捜査本部に呼ばれる。
    捜査本部は、暴力団を取り締まる警視庁組織犯罪対策部第四課(組対四課)が主導していた。名波係長は、高田と石田の刺殺事件は、同一犯の可能性があると捜査本部で発言するが。本部を主導する組対四課・滝田春男課長は、高田と石田の刺殺事件を敵対する組同士の抗争事件として扱うと。宇田川は、組対が何かを隠していると感じる。

    そして、捜査の過程で行方不明の蘇我が、石田に警察情報を流していたとの証言を得ると。捜査本部は、二人の刺殺事件を組同士の抗争事件から、蘇我が二人を殺した連続殺人事件として捜査しだす。宇田川は、蘇我を助けたい一心で桂谷組と石波田組の喧嘩の仲裁をしていると噂される右翼の大物「八十島秋水」に会い二人の刺殺事件の裏側を知る。
    二人の刺殺事件は、日米地位協定に基づく利権を守る「安保マフィア」が、ヒットマンを使って殺させたことが分かる。ヒットマンが蘇我を刺しに来たところを宇田川が、ヒットマンに飛びついた。そして主犯の日系人は、米軍施設の赤坂のニュー山王ホテルから横田基地を経てアメリカへ帰って行った。

    初出「小説現代」2008年3月号~2009年3月号

    【読後】
    読んでいくと、筋書が少しずつ覚えています。前に読んだことがあるようです。字が小さくて読むのに苦労しましたが、物語のテンポがよく、型破りな宇田川刑事が面白く、楽しく読み終りました。続編を読むのが楽しみです。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    同期シリーズの1作目《単行本》
    2009.07発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    2022.10.09~14読了。★★★☆☆
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 『欠落』を読んだうえで遡って読んでみた。
    記憶は薄かったが、やはり一度読んだことがあった。
    撃たれそうになった宇田川が蘇我に助けられたところを読んで思い出した。
    思い出したのはそこだけだったが。

    既読だったからという部分以外にも、他の作品と印象が被るところが多かった。
    刑事部と組対部のどちらが主導権を握るか、という導入部は
    つい先日見た映画版『ストロベリーナイト』(つまり『インビジブル・レイン』だな)を思い出す。
    八十島秋水のキャラクターは、みなとみらい署シリーズに出てくる
    小さな組の親分さん(名前がどうしても出てこない/汗)を彷彿とさせる。
    まぁこれらはあくまでも個人的な感じ方なんだけど。

    宇田川と蘇我、植松さんと土岐さん、という二組の同期の絆の話。
    『欠落』ではそのベースとなる二組に加えて大石、佐倉さん、新谷が増えて
    強力なファミリーが形成されたということを改めて確認できた気がする。

    当初、刑事部vs組対部と思われていた図式は
    いつの間にか刑事部vs公安部という図式に摩り替わる。
    そしてさらに宇田川が公安の上層部と逢った後には
    そういった対立構造など関係なく一枚岩として纏まっていく。
    現実にここまでのまとまりを見せる職場はそうそうないだろうが
    一点の曇りもなく一致団結してスパッと解決、という結末は爽快だった。

    蘇我が人と逢うのに使っているのがスパニッシュレストランというのが
    ちょっと変わってて面白かった。
    …料理も美味しいんだろうな。実在するなら行ってみたいぞ(そっちか/爆)。

  • 殺人事件の裏の真相に翻弄される刑事たちを描く警察小説。

    タイトル的には三組の同期の警察官が出てきますが、二組はストーリーと大きくかかわりません。
    真相のスケールの大きさには苦笑しましたが、上意下達が当たり前の組織の中で真実を探求する苦労と真相が解明する爽快感はなぜか共感できます。
    友情と信頼が勝利するので、素直に面白いです。

  • 警視庁捜査一課の宇田川は殺人事件の捜査の一環で指定暴力団の家宅捜査中逃走した者に発砲されたところを同期の蘇我に命を助けられる。
    そんな折その蘇我が懲戒免職され、容疑者とされる。 
    不審に思った宇田川は蘇我のことを調べ始めるが公安の横槍が入る…。
    事件の裏には何があるのか…
    ストーリーにぐいぐい引き込まれる、読み始めたら止まらない。

  •  微かにに見え隠れしている壁の存在はかなり大きく、どうなって行くのか先が想像出来ず、ページをめくるのももどかしかった。でもこのリズム感の良さは、読んでいて楽しいです。

     上下関係の厳しい職種では、ちょっと無理な設定かな?と思いながらも、こんな風に動く警官がいる事を願ってしまいました。

  • 評判作なので、買ってみました。
    確かに、おもしろい。
    本を読む手がなかなか止められない。

    でも、推理小説としてみると、ちょっと一本調子かな、と。
    そして、若干ご都合主義。

    そんなのを超えて、おもしろい小説ですけどね。

    同期かあ、いいなあ。

  • 面白い物語は早く次に次にと思うからあっという間に読み終わってしまうね
    出てくる警察官すべてが全てのキャラクターが警察へのリスペクトが根底にあって描かれている気がしました
    たいへんに面白かった
    ちゃんと今野敏さんも調べないとな

  • 読む順番が逆になったが、続編の「欠落」を先に読んで、この「同期」を読んだ。警視庁捜査一課の宇田川亮太の同期は、元公安の蘇我と女刑事の大石の二人だと思っていたが、「同期」には、大石は登場しない。が、それでに、マアーこの作品はそこそこ面白かった。刑事と組対と麻取との絡みは、なかなか複雑で、その線引きや優位性が難しそうな気がした。

  • ストーリーのテンポがよく、緊張感もあってよかった。
    宇田川と同期の蘇我は公安に所属していたが突然
    懲戒免職になる。その謎を追いながら先輩刑事の助けを得ながら
    刑事としてのスキルをあげていく。
    人間味があふれていて面白かった。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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