図地反転

著者 :
  • 講談社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062157704

作品紹介・あらすじ

総力を挙げた地取り捜査で集められた膨大な情報。そのなかから、浮かび上がった一人の男。目撃証言、前歴、異様な言動。すべての要素が、あいつをクロだと示している。捜査員たちは「最後の決め手」を欲していた-。図地反転図形-図と地(背景)の間を知覚はさまよう。「ふたつの図」を同時に見ることはできない。ひとたび反転してしまったら、もう「元の図」を見ることはできない。

感想・レビュー・書評

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  • 時間をかけて丁寧に書かれた作品なんだろうな...
    という印象の作品。単なる刑事ものと言う事でなく、
    冤罪問題...その原因の一部に成りうるだろう人間の
    意識の脆さに触れた、提起作品でもあるような気がします。

    タイトルが意味する通り人間個人に於いても、
    意識の違う視点から見ると同じ人物でも、
    全く異なる人物描写がされていて非常に面白く読み進めます。

    個人的にはもっとボリュームが増えてもいいので、
    様々な人物達にしっかり決着をつけた読み物が好み。
    やや置き去りにされた感が残り、読後のカタルシス、
    高揚感が物足りなく、やや残念。

  • 初期作品。まだ持ち味が発揮できず、色の薄い内容だったです。

  • 読み終えて「あ~、これちゃんと結末が知りたかった!」と思いました。
    大体、想像の余地を残すような終わり方が好きな方だけどこの話においてはちゃんと知りたかった。

    この本は幼児連続殺人事件を軸として二つのストーリーが進んでいき、交錯するという形の形式になっています。
    二つのストーリーの内の主人公の一人は若い刑事。
    彼は子供の頃に妹が殺害されたという経験がある。
    それが元で彼の家庭は崩壊。
    荒れていた彼は一人の刑事により再生し、刑事になる。
    そんな彼が追うのは妹の事件と似たような事件。
    それで一人の容疑者が浮上し、確たる証拠もないままに自供させられるという形になる。
    もう一つのストーリーの主人公はアパートの家主である初老の男性。
    彼の所有しているアパートの空き部屋に暗い印象の男性が入居する。
    後にその男性は以前、女児殺害の容疑で刑務所に入った事があるという事が分かる。
    実はその事件こそが若い刑事の妹が被害になった事件だった。
    そこに仕事は出来るが人間性に問題のある元刑事が絡み、事件の真相が明らかになっていく。

    読んでいく内に疑心暗鬼になって読んでしまう話でした。
    この本のタイトルとなっている「図地反転」というのが見方によって壺に見えたり人の顔に見えたり・・・というもので、それにより人の記憶の曖昧さ、人は見ているようで見ていない、一度見えてしまうとそれは消えない、というのを表している・・・そう思うと、こちらを欺こうとしているのでは?と登場人物の全てが怪しく見えてきたりしました。
    その辺り、計算して書いてるのかどうか分からないけど、登場人物の性格だとか様子がはっきり見えてくるように書かれているだけに、余計そういう思いがつのりました。
    とにかく人というものをタイプに当てはめるだけでなく、ちょっとした行動やらしぐさやら言葉やら人間性を感じさせ、人間は一方向だけでは分からないというのが見ていても分かるのがすごい。
    特にやる気のない刑事というカテゴリーの男が嫌な感じでない、むしろ呑気でいい感じ、というのがちゃんと丁寧に描いてるな~と思いました。

    人は一度こう思いこんでしまうとその方向で動いてしまって、一度そうなると中々誤りを認める事ができない。
    人の記憶の曖昧さというのは身近な人間と話していてよく気づくことで、それが自分にもあるんだろうな・・・と読んでいて少し恐くなりました。

    この作者の本を読んだはまだ2冊目ですが、以前読んだ本は発想力とか、只者じゃない、と感じさせる作品だったものの、現実離れした話で「これからこの人の本、こういう傾向でいくのかな~」と思っていただけに、この本を読んで、「こうなったか」と思いました。
    それはいい意味で。
    前に読んだ本は人間味を感じない作品だっただけに、これだけ人間が書ける人なんだ・・・と、改めてすごいと思いました。
    今後もこの人の本は読んでいこうとそう思える話でした。

  • ぐいぐい引き込まれていたのに。あとちょっとで真実がわかると思ってラストを楽しみにしていたのに。まさか、こんな終わり方するなんて・・・って、しばらく放心状態になってしまいましたよ。このモヤッとした気持ち、どうしてくれるのさー!

    私も自分の記憶に自信がない。思い込みというか混同してしまうこと、「見たような気がする」「あったような気がする」なんて、しょっちゅうある。矛盾を突かれたり、本当に?とか聞かれると途端に不安になる。本当に頼りない脳みそで困っちゃう。

  • 子供の頃、幼い妹を変質者に殺された主人公。
    刑事になった今、同じような幼女殺害事件にかかわる。

    人の記憶のあいまいさ
    「図」と「地」は見ようによってクラリと入れ替わる
    その恐ろしさ。

    ラストが、あまりにも「え?ここで?」という感じなのでモヤモヤ・・・・

  • 図と地。
    見方を変えると、別の図が見えてくる。
    タイトル通り、見方の違いを描いていて、面白かった。
    不確かさの証明の仕方が、またうまかった。
    新米刑事としての情熱と、犯罪被害者遺族としての思い。
    悩みつつも動き続ける、主人公の設定もよかった。
    たたみかけるような後半がよかっただけに、ラストがもやもや。

  • 2010年読了。

  • やってしまった。いっぺん読んだのに、また借りた…内容的には面白かった。

  • 最後は「やられた」という感じ。信じていた人が嘘を吐き、過ちを犯し、悪だと思っていた人が真実を言っていた。今まで信じてきた真実が過ちとなり、嘘だと思っていたことが真実になる。文字通り最後に「反転」する。
    正義の人物は誠実に、胡散臭そうな人物は胡散臭そうに書かれている。それらが余りにも徹底されているので見事に騙された。最後は思わせぶりに終わっているが、まだどんでん返しがありそうに思えてならない。次回作が出来ればぜひ読みたいと思わせてくれる一冊。文庫版で『本ボシ』に改題されているらしいがもったいない。「図地反転」は作中通じて重要なキーワードなのに。

  •  二人の人物を中心に進んでいくストーリーでした。どこで接点があるかと思っていたら、それは意外な形で表れて社会派ミステリーの要素が強くなってきました。話自体は面白いのですが、前半は進展が遅くて少し退屈に感じました。
     後半になると、この二人の心境の変化、その経緯も面白くなってきて、入り込んでいきました。さあ、いよいよクライマックスに来たぞ・・と思ったところで、あれ?!と気づいた。。この内容と展開にしては、残りのページが少ないのではないか?と。
     そうです、事件は解決していないのに、いきなり本が終わってしまった!!「この続きは続編を読めばわかります」という意思がはっきりと伝わる終わり方。上巻という表示があったかどうか・・・探しました。
     こんな風に突然終わるなんて、続きが気になってしょうがない、気持ち悪い!と、文句言いながらも続きが出たら絶対に読むんだろうなぁ。。出版作戦にはまっているなぁ・・・私。

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著者プロフィール

1967年、静岡県生まれ。早稲田大学商学部中退。漫画喫茶の店長などを経て執筆活動を開始。2007年「鼻」で日本ホラー小説大賞短編賞、同年『沈底魚』で江戸川乱歩賞を受賞。09年「熱帯夜」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2011年『藁にもすがる獣たち』で第2回山田風太郎賞の最終候補作となる。トリックの効いた異色の作風で注目されている。

「2017年 『暗殺競売』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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