- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062158039
作品紹介・あらすじ
サムスンから見えてきた日本企業の真の問題
10年間で世界最大手の総合電気企業に躍り出た韓国サムスン電子。その躍進を中核で支えた元役員と失敗学の権威が、日本の製造業にいま欠けているものを指摘する
感想・レビュー・書評
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サムスンをグローバル企業に押し上げた李会長の改革の真髄。『危機感ではなく、危機意識を持て。』かつて韓国は金融主導で誘発されたIMF危機に苦しみ、それを乗り越えたサムスンは、嵐をじっと耐えるような危機感ではなく、いつ嵐が来ても耐えられる体力をつけるために、危機意識を社員に植え付けた。
過去には日本のマネをし、設計図も無く、それでいてエリート意識は強い集団だったが、それを3つのイノベーション、『3PI活動』により改革した。
3つのPとは、パーソナル、プロダクト、プロセスだ。
パーソナル
人力開発院で社員に現地語のエリート教育、地域専門家を育てる。現地の文化、経済に溶け込ませ、情報を収集させる。
プロセス
デジタルモノづくりとなり、製品開発は『串焼方式』から、企画デザイン〜設計生産までがラップする『刺身方式 』に!
部品メーカーへの見える化を進め、部品の早期手配を可能にした。
技術の先行開発はせず、先行メーカーの技術を、素早いプロセスでキャッチアップして真似をする
プロダクト
日本追従型から、新興国市場を向く
新興国では過度な品質よりも、価格重視。日本メーカーの製品から、主要な部分を真似して、新興国向けにアレンジして販売する。
先進国と新興国では、求めるものが異なる。価格から利益を引いてコストを決めていく引き算方式。
多品種少量生産が可能。
体感不良率を減らす(韓国の洗濯機の例:サービスマンが車に基盤とモーターを積んで巡回。故障の連絡があれば即部品交換。それでもダメなら新品と交換。→毎日使うものだから、いかに早く直すかが顧客満足には重要)
サムスンは真にグローバル企業だ。社員は世界中に溶け込み、情報を集め、製品は多少品質が落ちても、その地域で真に求められているものをきめ細かく投入し、プロダクトで最も大事な顧客満足度を高めている。
日本企業も、品質、部署の利害、だけにこだわるのでは無く、割り切りを持って真に需要のある製品を投入出来るか、が必要。
高いポテンシャルをどう活かしていけるか、考えなければならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
サムスン成功の整理その2。
1.強いリーダーシップ。強い危機意識による変革。
2.戦略の明確化。成長市場である新興市場をターゲットとし、目標に合わせた戦略の策定。
(無いものは追わない、効率的・戦略的な順位付け)
3.日本企業は1,2ともに後手に回っている。危機意識と「変える」意志、
後追いではなく、それぞれが持つ能力を生かした戦略立案が必要。
・「3PI運動」=パーソナル・イノベーション、プロセス・イノベーション、
プロダクト・イノベーション
驕り、相互不信、個人や集団利己主義、権威主義や他律、日和見、無責任などの弊害の
改革のための3PI運動。当初は機能しなかったが、IMF危機による危機意識の高まりにより
改革が機能し始めた。
危機意識に本当に直面したかどうかの違いは大きい。
・トップの最大の役割は、戦略を考え、それを組織全体に示すこと。価値付けを行って
組織全体に徹底させること。どの方向に進むべきかという戦略。
・日本が生き残る道
サムソンは日本追従から強いリーダーシップで方針を変えた。新興国へ、マーケットインへ。
新興国・デジタルの製品作りの時代では、「表の競争力」(=デザインや価格など消費者から
よく見える部分での競争力)が最優先・効果的なことを見極めて、大きく舵を切った。
日本が強い「裏の競争力」(=品質や基礎技術)の追従は時間がかかるし、効率的でない。
今後、中国やインドの企業もサムスンのような戦略を採りうる。サムスンはブランド作りや
次の戦略構築により対策。
日本企業は「裏の競争力」を持っていることが利点。だが、この力が競争力に結びついていない。
結びつける戦略もないのが課題。技術を生かした企画開発力が要求されている。
サムスンのように新興市場に打って出るというのは1つの解に過ぎない。
企業それぞれが持っている能力によって、最適解はちがう。
かつての李健熙会長が持っていたような危機意識と、「変える」という強い意志が必要。
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気になっていた企業であるサムスンについての新しい本だったので手に取りました。,,・IMF危機による社員ひとりひとりの意識改革,・「デジタルものづくり」が可能としたキャッチアップの容易さ,・リバースエンジニアリング(吉川氏定義の広義の意味あい),・新興国の文化レベルまで深堀したマーケティング、ブランドつくり→特派員制度は凄いですね。,,と、平易に解説してくれています。,,しかし、まったく研究開発を行わないと割り切った姿勢で現在のグローバル(主に新興国)展開を推し進めてきたわけですが、今後のメインストリームになる環境関連技術も同様に進めていけるのでしょうか?,実は、この方面は研究開発をコストを投じているのか?,等と興味は尽きません。,,図書館で借りました。
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本書は、元サムソンのエグゼクティブと、失敗学の畑村先生による「ものづくり大国日本の復活のヒント」。戦略無き日本企業の迷走を批判するのだが、ではどうすればよいのかという復活の方法論に迫力は無く、かなりイマイチ。
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サムスン改革の中心にいた著者と失敗額・創造学の権威が明かす、サムスンを通して浮かび上がってきた日本の弱点と強みが書かれています。
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危機の経営とは?
→古くなったいままでのやり方を捨てなくてはならない
社員一人一人が自分で考えながら行動することが大事。そのためにそういった機会を増やす
製品の質は消費者が決める。また、品質は価格に依存している -
ネットおたくであれば「こっちみんな」と言いたくなるほど、サムソンは日本を見て戦略を練っていることがよく分かった。安かろう悪かろうの製品でも、売っていき、マーケットシェアを獲得する姿勢は今の日本にはたしかに無いかもしれない。
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相互不信、個人や集団利己主義、権威主義や他律、日和見、無責任といった弊害に対する改革は、意識革新、全プロセスの革新、革新的製品の創造の三つ。重要なのは、トップの細かいことまで口を出さない姿勢、ライバル企業の戦略に関する情報、プロセスの標準化、インターフェイスの規格の統一化、情報の一元化、広く見える化(セキュリティ確保のうえで)。開発プロセスは、全社、事業部、商品の三層構造とし、段階終了時にデザインレビューを行い、実行、見直し、取りやめを判断。部品表にないものは使ってはいけない。「開発」の早期宣伝によるブランド確立。品質は消費者が決める。
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サムスン再生と飛躍の秘密。技術とは社会が求めていることを実現する手段であり、今、新興国で売る製品を作る技術があるかを問う。真の競争力とは消費者に選ばれる力であり、コスト競争力を抜きにしては語れない。