鉄の骨

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2090
感想 : 394
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  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062158329

作品紹介・あらすじ

「次の地下鉄工事、何としても取って来い」でも談合って犯罪ですよね?謎の日本的システムの中で奔走する、若きゼネコンマン平太の行末は-。

感想・レビュー・書評

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  • 一松組 建設現場で働く富島平太は、素直で真面目な25歳の青年だ。

    建設現場においても、タバコの吸い殻一本の混入も見逃さない。
    コンクリートの作業をいますぐ中止させようとしたり、仕事ぶりは愚直なほど真っすぐだ。

    正直に生きている平太が、ひょんなことから談合事件に関わるキーパーソンになるとは思ってもみなかった。

    25歳という若さで、会社のアンダーグラウンドな話し合いに参加させられて、表立って見えない社会の縮図を知ることとなる。

    ————————

    「正しいことが正しいわけじゃない。かといって、いい加減なことをしてそれでいいってものでもない」

    ズルや不正を許せない平太に、上司が放った言葉だ。
    現場にいた平太が、畑違いの業務課に呼ばれたのはそのあとすぐである。
    実は平太が呼ばれた理由は、とある人物との接触を図るためだった。

    その人物とは、三橋萬造。
    巨大な公共工事を取り仕切り、業界の大物フィクサーと呼ばれている。
    三橋は平太の母の知り合いであり、それを知った上が、平太と三橋の接触を図ったのだった。

    巨大な公共事業を得る為、建設会社はこぞって三橋の元を訪れ談合を持ちかける。

    一松建設の命運は平太に託されていた。


    …しかし、物語の結末は思いもよらない出来事によって幕を閉じることとなる。

    —————-


    仕事一貫の内容に加えて、恋愛要素も絡んできているのがミソだ。
    仕事も恋愛も一筋縄ではいかないのが、もどかしい。

    圧巻の読み応えに加え、平太の成長を感じさせられる展開に感動した。
    すこし長いけど、途中でダレない良さがあったと思います。


  • 初・池井戸潤。
    さすが話題の人気作家さんだけありますな。
    こんなに分厚くてしかも建設業界の談合なんて
    全然未知の世界がテーマでも、
    がっちり引きこまれて一気読みでした。

    ドラマ”倍返し”を観て、硬派な男の世界を描きつつも
    シリアスすぎずちゃんとエンターテイメントになってるんだな、
    という印象を持ってやっと手に取ってみたのですが、
    他のも読みたくなりました。

    否応なしに談合に巻き込まれながらも、
    自分で悩み考えて行動していく平太と
    4年来の恋人平太とイケメンエリートの先輩行員の間で
    揺れる萌の視点で描き分けられていて、
    とっつきにくい話題の中にも恋愛要素があったりで、
    企業小説を読みなれない人でも読みやすく楽しめると思います。

    一松組業務課のメンバーがキャラ立ち過ぎて面白い。
    西田がどんどんかっこよく見えてくるし、
    権力のある神や仏はどんどん人間味を帯びてくる。
    まぁ、平太みたいなのは現実離れしてるとしても
    入札、談合、裏金、公共事業…本当にこんな世界なのかしらん。

    ただ、ラストがあまりにあっけなくて、
    これだけの長さの話に見合うエピローグがほしかったな。

  •  今まで読んだ池井戸作品は、主人公が社長ばかりだった。つまり、結構年いっておられる、企業経営のトップの視点から展開される話が主だったんだけど、今回の主人公は、ぴちぴちの25歳!!おお、親しみが沸く。

     後半、ぴちぴちの25歳、平太くんよりも、めっぽう仕事のできる男、西田さんのほうが活躍してた気がする。まあ、池井戸作品は、仕事のできる男が前に出るからな。キャラが一人歩きしたのかも。
     それにしても、今回も絵に描いたような勧善懲悪。悪役キャラはとことん悪く描写され、最後、やつらは必ず地獄に落ちる。園田さんは、そこまで性格悪く描かなくてもいいのになあ、と思った。むしろ、萌と距離が空いても、まったく平気な平太の方が冷たいやつだなあ、と思った。あと、平太、帰るの遅すぎる・・・

     サラリーマンは、部品そのもの。いなくなれば、新しい部品がそこに収まる、か。うん、そうなんだよな。そうやって、この世は動いているんだから。今回は、ただ、スカッとするだけでなく、自分に置き換えられる要素が多いせいで、ずーんと重い読後感だった。歯車であることを、受け入れた上で、自分の進退を決めていかないといけない。サラリーマンは、歯車だけど、意思を持った戦士なんだから。

    • bluebird-ryuryuさん
      コメントくださり、ありがとうございます。

      私も平太くんと同世代かつ同い年なので、平太くんを自分自身と重ね合わせて読みました。

      もし自分自...
      コメントくださり、ありがとうございます。

      私も平太くんと同世代かつ同い年なので、平太くんを自分自身と重ね合わせて読みました。

      もし自分自身が平太くんと同じ境遇に立っていたら、自分なら一体どのように社会の現実と向き合っていただろうかと、いろいろと考えさせられました。

      萌と距離が空いても、まったく平気な平太の方が冷たいやつだというのは、私も同感です!笑
      2012/09/13
  • 建設業界の談合にスポットをあてたストーリーです。

    中規模建設会社の一松組。現場で働く若手社員の平太が突然の人事で業務課に配属される事になります。
    業務課は別名”談合課”とも呼ばれ、公共事業の受注獲得の為に駆けずり回るいわば受注の最前線。「談合は必要悪だ」と言い切る先輩の言葉にとまどいつつも、まだまだ古い体質が残る建設業界に身を置くサラリーマンとして流れに呑まれていきます。

    ゼネコン、銀行、検察、政治家、あらゆる角度から物語が進んで行き、またもやページをめくる手が止められない状態に!
    誰がどうこうという訳じゃなく、仕事に打ち込む男はやっぱりカッコイイ!!権力やしがらみや駆け引きの中で自分を見失わなかった平太もまた良かったし、なんか男の社会だな~と女には無い人間関係が見れた気がしました。

    また、この作品は仕事だけじゃなく平太の恋人との関係も描かれています。学生から社会人になってお互いの置かれている環境の違いや、仕事に対する考え方の違いで徐々に気持ちがすれ違っていく様が淋しく感じました。だけどそれは、それぞれ人間として色んな経験をして成長している事であってどっちが悪いとかではないんですよね~。

    まだまだ池井戸さんの作品は読み始めたばかりですが、他の作品も期待大です。

  • 策士の罠に引きずり込まれる話だった(*⁰▿⁰*)
    ただ、恋愛話は無くても良かったな。。。

  • 若手社員、平太から見た土木業界と談合の話。内容がリアルでドキュメンタリーかと思います。企業小説ですが、業界の予備知識がなくてもすんなり読み進められます。談合は根絶すべきなのか、はたまた社会の潤滑油としての必要悪なのか、社命を受けて談合の一翼を担う平太の葛藤が描かれています。
    フィクサーと呼ばれる大物に対して意見が言える平太はかっこいいのですが、現実にはそんなことは不可能だろうと思います。
    ところで、この本には大なり小なり色々な悪人が出てきますが、私が思う悪人トップ3は、3位:城山代議士、2位:尾形常務、そして1位は野村萌でした。皆さんはどうでしょうか?

    • besso0903さん
      1位と3位は、同意です!
      1位と3位は、同意です!
      2018/12/24
  • この本の第二章半ばを読んでいるあたりで、なんと現実の官製談合事件がニュースになった。
    本書の二章半ばまでしか読んでいないのに、そのニュースで書かれていることの意味が、「談合」素人の私にも手に取るように理解できたのでビックリした。
    この本が教科書というか解説書というか、そんな感じ。

    読み終わって本当は色々と考えることはある。

    けれどここではあえてお気楽に単純に小説内の人物に対して悪態をつくだけにとどめておくなら、一番の悪は私腹を肥やすだけの大物政治家。
    経営努力をしてこなかった側の会社やら、いけすかない銀行員、そんな薄っぺらい男になびいて二股かけた女。

    クライマックスの入札シーンは最高にドキドキしたし、良かった。
    取調室での平太のセリフも良かったぁ。
    面白かった!

  • 建設業界の談合をテーマにした作品。談合の玄人集団の中で奔走する平太の姿が初々しい。持ち上げるだけ持ち上げておいて、ラストが少し手抜きだったかなぁ、って言う気がする。

  • 「下町ロケット」が最高に良く、図に乗ってこの本を選んでみた。 NHKでドラマ化されたのを見たので、ストーリー的には覚えていた。 やっぱり、本を先に読めばよかったなあ。。。 ところどころに主役を演じた俳優がアタマの中にチラつく。
    話は、さすが池井戸さんの経済小説。初心者にも分かり易い。談合を悪者にするだけではなく、必要悪との見方や、ちょっとは光が見出せる終わり方。 次は池井戸さんの何を読もうっかなあ。。。

  • おもろい。

    おもったよりサクサクと読めた。池井戸作品特有の軽快なテンポ。談合ってちょっと重いテーマでありながら。
    行間に込められた内容が濃いので、ドラマ化とかはまぁ難しいだろうな。

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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