排出権商人

著者 :
  • 講談社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062159173

作品紹介・あらすじ

空気が大金に化ける。これが「排出権ビジネス」の実態だ!温室効果ガス削減か、排出権の購入か。温暖化防止の美名の下で生まれた、まったく新しい国際ビジネス。利権に群がるしたたかな商人たちの、ターゲットは日本-。世界11ヵ国に及ぶ徹底した取材で描く、緊迫のリアルフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 「この経済小説がおもしろい!」に紹介されていた黒木さんの本。
    文庫になるのが待ちきれず、図書館で借りました。

    最近、注目されている排出権取引の現場をレポートした小説。
    主人が排出権取引を成立させるために、
    各利害関係者と交渉を粘り強く進めていく様が
    一番読みごたえのある箇所に感じました。

    初めて知る内容が多かったので、
    ゆっくりゆっくり理解しながら(そして時にはページを戻ったりしながら)、
    読んでいきました。
    決してすらすら読めるような代物ではありませんが、
    読みごたえと読み終わった後の充実感は100%保証できます。

  • 相変わらず大きなしくみルール作りは下手な日本.だけど現場レベルではしっかり取り返す(そうとしてる)姿がよくわかる.臨場感があるから詳しくない業界の日常も親近感がわく.かならずしもハッピーな話でなくてもなんとなく勇気が出るのは 現場への密着感が高いせいかな.黒木さんの本はいつも つくりものっぽくなくて好きです.

  • 直近の経済では何かと温暖化で話題はつきないが、著作ではあっさりこの問題を「温暖化問題バブル」と切り捨て、10年後にはまた新たな構想がそれにとってかわり浮上してくると述べている。それが確かであるかどうか信じるつもりはないが、結局のところ「利益」を創出するためにどう知恵を働かせたらいいのか、という点に帰着してしまうところがこの世間の根底にある寂しさかな、と思ってしまう。
    もちろん、主人公の仕事はグローバルで“社会貢献”真っ盛りの様相を呈している。

    仕事は相変わらず忙しかった。中国各地のPJに加え、アルメニアのごみ処理場のメタンガス回収・発電PJ、インドネシアの油田の随伴ガス回収PJ.エジプトの風力発電PJなどが動き出し、案件調査や、社内での打ち合わせ、各種契約の交渉に忙殺されている。(P.242)

    しかし上記の前提の下にその仕事が成り立つのであれば、それは単なる偽善である。例え自己満足を導く仕事ができたとしても、結局は世間の荒波に踊らされている肉体・精神労働者に他ならないと思うのは、あまりに僕が悲観的に物事を見るだけなのか。
    単純に考えれば、世界中の様々な案件に最前線で関わり、と同時に地球の環境改善にも貢献することができる、と。
    「何のため」を思考して仕事をすることは大事であり、この主人公も「社会にとって必要な貢献・利益を生みだす」ために必死になって仕事に取り組んでいる。けれども、その前提がある限り、あっさり、その善はおじゃんになってしまう。2段階のWhyを追及する、またはしようとすることって意外と大事なのでは。「社会にとって必要な貢献・利益を生みだす」ってどういうこと?と、問いかけてみること。たとえ前提がひっくりかえらないとしても、自分が納得でき、周囲を納得させることができ、ビジネスの及ぶ範囲に少しでも恩恵をもたらせられたのなら、それはそれでひとまずいいと思う。ひとまず。人間そんな全て究極の目標のために頑張れるほど限られている存在かもしれないから。
    この主人公も納得しているのなら・・・

  • 盛り上がりもオチもなく退屈な作品。
    環境問題に興味がない人にとっては読む価値無し。
    まあ小説としても駄作だが・・。

  • 排出権をめぐる国家、企業、個人の動きを描く。国際交渉の機微や主人公松川冴子の人生、国枝の亡き子の葬式で聞いた「物心一如/親鸞」といったサブストーリーも読み応えがある。
    日進月歩の制度変更で古く感じる部分もあるが、温暖化と国際制度、産業、金融を描いたスケールの大きい作品。パリ協定、SDGs、ESGといった言葉が一般化した現代の気候変動をめぐる動きを少し遡って考える一助となる。そもそも温暖化は事実かという10年前の筆者の問いはむしろ今読むことで複雑な読後感を残す。

  • 図書館
    挫折

  • CO2が商売になる。排出権のシステムは実によく考えられている。温暖化は待ったなし。・・・が、私には温暖化の危機感がない。鳩山さんは150億ドルの支援表明? その前に日本という国が存続できるのかな。暫定税率は詭弁だし。

  • 2015/06/21読了

    プラントエンジニアリング会社に勤める主人公が、CDMの枠組みでビジネスを行う小説である。

    排出権取引の詳細が詳しく語られていて勉強になった。

  • 「獅子のごとく」よりも圧倒的に良質かつ難解な小説。だけど「獅子のごとく」の方が面白い。自分は人から学ぶタイプの人間なのだろう。また、金融市場に疎いのだろう。

  • 原発事故以降あまり騒がれなくなった二酸化炭素の排出。アメリカなんかはシェールガス革命に走ってるのですが排出権取引そのものは昨年過去最高だったらしい。
    またこの本での最大の舞台になってる中国もこれから。
    http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0820&f=business_0820_134.shtml

    京都メカニズムの後どうなるかはわからないが当面脱原発、火力シフトなので日本は排出権を買う側になる。この本にある排出権商人は中国などの非効率な事業に投資し地球温暖化ガス削減分にあたる排出権を買い取り、日本の需要家に売りつけさや抜きをすることで儲けると言うものだが実際のところは大変みたい。
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091116/209833/
    この本で書かれた内容は実際にあった事業がモデルに成っているようだ。

    この新日本エンジニアリングと言う会社のモデルは千代田化工建設にIHIの粉飾決算事件を組み合わせたみたいな感じ。排出権事業はどこかわからないがちょっと出てくる命の水の農場はわかった。
    http://yanagida-farm.com/top.html

    ノンフィクションの合間の息抜きのはずが勉強になってしまった・・・

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著者プロフィール

黒木 亮:1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『巨大投資銀行』『エネルギー』『鉄のあけぼの』『法服の王国』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2021年 『カラ売り屋vs仮想通貨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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