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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784062162036
みんなの感想まとめ
テーマは、ある黒人女性の細胞が科学の進展に寄与し続ける一方で、彼女自身や家族がその恩恵を受けられなかったという深い矛盾です。1951年にガンと診断されたヘンリエッタ・ラックスの細胞は、医療の発展に不可...
感想・レビュー・書評
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医学・生物学研究において非常に一般的に用いられている培養細胞HeLa。あまりにも有名なその細胞の提供者となった黒人女性はどのような人物であったのかについてはあまり知られてこなかった。
HeLa細胞が生まれた背景、その有用性と多くの利用例、そして遺族たちのその後の人生を、過去と現在、また一般人と研究者の視点を行き来しながら織りだしていく一級のノンフィクション。
ヒーラ(HeLa)細胞といえば、少しでも細胞培養をやったことがある人なら知らない人はいないだろう。増えやすく、培養初心者でも失敗することがあまりない。私が学生だった20数年前、付着細胞でまず扱うのはHeLaという例が多かったと思う(今でもそうかな・・・?)。
ヒト最初の培養細胞株であり、培養も容易であることから、ポリオのワクチンから遺伝子マッピングにまで利用され、また世界中の研究室で培養されている。
HeLaという名前が、提供した人物の名前から取られたのは有名だが、私の学生時代には、「ヘレン・何とか」らしい、という極めて不確かな話しか漏れ聞かなかった。
アメリカ在住白人である著者は、ふとしたことからこの女性の本名がヘンリエッタ・ラックスであったことを知り、どんな人物だったのかについて調べる決心をする。そこからすべての物語が始まる。
著者が困難の末にようやくコンタクトを取ることに成功した遺族たちは、プライバシーの侵害や、自分たちが理解できない事柄に亡きヘンリエッタが利用されているという事実に戸惑い、また傷ついてもいた。遺族らは貧困や暴力の最中にあり、細胞の何たるかも理解していなかった。
本書はヘンリエッタ・ラックスの一族の物語であるとともに、ヒーラという1つの細胞を軸足とした科学史でもあり、そしてまた、医療倫理を巡る問題に一石を投じるものでもある。
著者は、一線の科学者らの論理と、教育レベルが高いとは言えない一般市民の感情の両方に目を向けつつ、この膨大な物語を出来うる限り公平な視点からまとめるという離れ業を成し遂げている。
遺族の中にはヒーラ細胞から得られている収益を遺族も得るべきであると憤る者もいる。それにも一理はあるが、また、培養を確立した科学者らが決して私腹を肥やしたわけではない。治療の過程で採取された試料に関するガイドラインをどうしていくのかに関しては、まだまだこれから整備されるべき問題も多いだろう。
本書中に登場する研究者の1人、レンガウアーの姿勢は、研究者のあるべき姿として非常に象徴的なもののように私には感じられた。彼がヘンリエッタの子どもたちに染色体写真を送るシーン、そしてヘンリエッタの細胞を見せるシーンでは涙を禁じ得なかった。遺族はやはり、何らかの形で報われるべきだろう。
ヘンリエッタの娘デボラと著者との交流も、本書の軸の1つである。様々な困難を抱えながら、デボラは高潔な魂を持ち続けた人物であるように感じられる。母の死を巡る旅の果てに、デボラが少しでも救われたと感じたことを祈りたい。
*ヘンリエッタの癌とその治療についても記述があった。激烈な症状だったようで胸が痛む。培養細胞の増殖能が高いということは、そういうことか・・・。
*オプラ・ウィンフリー製作でドラマ化も企画されているらしい。
*アメリカのノンフィクションの底力を感じる。
*数ヶ月前の新聞記事に本書の原書についてちょっと触れられていて、訳書を待っていたところ、別の読書サイトで発刊を知りました。講談社ブッククラブにまで登録してたのに、そっち経由ではなかった・・・。 -
1951年、アメリカの貧しい黒人女性が、ガンと診断され病院で治療を受けた。本人の同意を得ずに採取された組織から培養された細胞は、死ぬことがなく増殖し続けた。そうして増え続けた「ヒーラ細胞」は、ワクチンの開発、化学療法、クローン作製、遺伝子のマッピング、体外受精など、その後の科学にはなくてはならないものとなった。
黒人女性の名前は「ヘンリエッタ・ラックス」
ヒーラ細胞は科学者の間では有名になり、沢山の売買がなされたが、ヘンリエッタ自身はもちろん、彼女の家族も全く知ることができなかった。なぜならその細胞の持ち主は「ヘレン・レイン」と誤った報道をされてきたから。死んだ母親の細胞が生き続けていると知った家族が、ヒーラ細胞について、母親のガンについて、長い年月を経て知ることになる。
ヒーラ細胞は多くの利益を生んだけれど、本人・家族はその恩恵を全く受けることができずにいる。人種差別、細胞の所有権、インフォームド コンセント…沢山の問題を抱えている。
あとがきに書かれている家族の言葉が印象的だった。
「おふくろや、おふくろが科学にしたことを誇りに思っているんだ。おふくろの細胞から利益を手にした連中が、おふくろの功績を称えて、家族の気を晴らしてくれればいいと思っているだけさ。」
丁度この本を読んでいるときに、山中伸弥さんのノーベル賞受賞があった。ips細胞は、新薬の開発、再生医療など、今後の細胞研究にはなくてはならないものになった。
ヒーラ細胞からips細胞へ。タイムリーな読書になったようだ。 -
読了後、ただ”凄まじい”と思った。10年もの歳月を調査と執筆に費やした著者の執念もさることながら、こんなことが現実に起こっていたのか、と驚くような出来事が多く記されていたことに。タイトルから「不死細胞」にまつわる様々なことが書かれている本だと思っていたが、実際には不死細胞だけでなくその元となったヘンリエッタの人生、ラックス一家の人生(とくにヘンリエッタの娘デボラの)、不死細胞による医学の進展という三つの物語まで描かれていた。さらに様々な要素、科学研究と倫理、人種差別、信仰……、本当にいろんなことが絡み合って存在している。面白いどころではなかった。医学や生物学、細胞とかに詳しくなくても存分に読めるので機会がある人には読んでほしい。
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「いつの日かこの子は、曾祖母のヘンリエッタが世界を助けたことを知るだろう!」
「この子も・・・この子も・・・そしてあの子も。この一件は今や、こうした子供たちに関わる話だ。彼らはこの一件を自分たちのものにして、自分たちにも世界を変えられるということを学ばなければならない。」「ハレルヤ!」
1951年ヘンリエッタ・ラックスは子宮頸がんの前身転移で亡くなった、しかし彼女のがん細胞(HeLa細胞)は培養される限り無限に増殖し、今では元々の彼女の体重を超えるほどになり医学に利用されている。それまでは細胞の培養はなかなかうまく行かなかった。これは細胞分裂の回数が予めDNAに組み込まれているためだがHeLa細胞はこの細胞分裂をカウントする仕組みにエラーがあり無限に増殖を続ける。同じことは彼女の前身へのがん転移がものすごく早いということでもあった。今ではHPVと言うウイルスが子宮頸がんの原因になることもこのウイルスがDNAに作用していることも知られている。
HeLa細胞はがんの生検時に採取され本人や家族にはそれがどういう風に使われるかは知らされていなかった。このことが後に彼女の家族を苦しめる。HeLa細胞の最も良く知られる貢献はポリオウイルスの感染の診断に用いられたことであり、他にも放射能の影響や宇宙での影響など人体実験をする前の実験に用いられている。またネズミに移植してがんが発生するかの実験などが行われたこともあり無限に増殖する不死の細胞、動物と人間のキメラなどとセンセーショナルな扱いがされ残された家族にも多くのインタビューがなされたが家族には何が起こったのか正確なことは知らされないままであった。
学生時代にHeLa細胞のことを知った著者はいつかこの物語を書きたいと思いラックス家族を追い求めて行く、やがて興味本位ではなく医学に多大な貢献をしたヘンリエッタ・ラックスがどういう人物でありどういう経緯でHeLa細胞が使われることになったかを調べることを娘のデボラはじめ家族たちに受け入れられて行く。
デボラたちに取っての真実は科学的な事実ではなく、聖書の言葉「わたしを信じるものは、信でも生きる。生きていてわたしを信じるものは誰も、決して死ぬことはない・・・」ということだったようだ。一方でHeLa細胞によって得られた莫大な利益の一部は家族のものだという者もおり必ずしも美しいばかりの話ではない。患者に無断で細胞を採取するのも現時点でも違法ではなく、一方で遺伝子が特許になる時代に提供者には何の恩恵も無いと言うのは釈然としない話だ。 -
良い翻訳書には、①扱うテーマが優れていること、②原著の構成が優れていること、③翻訳が優れていること、の三つが欠かせない。本書は、そのすべてを高い水準で満たしている。
冒頭には、ヘンリエッタの親族の以下の言葉が引用されている。
「もしも人の話し方やその内容をきれいに整えてしまったら、それはもう真実じゃなくなる。その人の人生や経験、その人らしさを消し去ってしまうことになる。」
この一文こそ、本書の翻訳方針を象徴している。
ヘンリエッタの親族の会話は、原文の雰囲気を残しながら、日本語として驚くほど自然に訳されている。私がアメリカで接した黒人の方々と英語で会話するとき、頭の中では、まさにこの翻訳のようなニュアンスで相手の言葉が理解される。その感覚が日本語で再現されていたことに驚いた。
以前、英語表現をそのまま移したような翻訳書に違和感を覚えたことがあったが、本書ではそのようなことは一度もなかった。原文への忠実さと、日本語としての読みやすさ。その両立は決して容易ではないが、本書は見事に実現している。翻訳とは単に言葉を置き換える作業ではなく、著者や登場人物の「声」まで読者に届ける営みなのだと改めて感じた。 -
#科学ノンフィクションを読む
金沢大学附属図書館所在情報
▼▼▼▼▼
https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB06045319?caller=xc-search -
情緒的な物語部分が長すぎる。
まずは生物学、医学的な見地と結論のみ示して欲しい。
P.260まで -
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/56371 -
現在も世界中で培養され続けているヒーラと呼ばれる癌細胞についての話。
ヘンリエッタラックスから1951年当時に回収された細胞が現代医学の歴史を変えることになったその前段階と、顛末。
そして家族が辿ることになった話。
特に娘さんと著者の交流。
アメリカ医学の歴史でもある。
何故ヘンリエッタ・ラックス彼女の細胞でなくてはならなかったということも知れた。
話があちこちに飛ぶのがちょっと難点だが、それぞれが繋がっているので仕方のないことでもある。
興味深い本だった。 -
全く知らなかったヒーラ細胞とその提供者の黒人女性を求めての記録.ヘンリエッタの痕跡を探すことで,彼女の子供達の母親が死んでからのその後の人生を物語ることになった.また,細胞の所有権はどこにあるのかその金銭的な効果、特許権,科学の進歩など問題は解決するのだろうか?
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◆読んだきっかけ
少し前に、癌つながりで2冊の本を読んでいました。
・『「余命3カ月」のウソ』
本屋で見かけて手にしたもので、「癌は治療しないほうが余命が長くなる」という主張をする先生の本です。(マユツバだそうですが)
・『打ちのめされるようなすごい本』
「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」という言葉が目に留まって購入しました。ロシア語通訳者であり作家でもある女性の書評日記です。
こういった本を読みながら、癌や生死について考えていたときにふと、「自分の精神以外の部分が永遠に生き続けること」について思いつきました。自分の死後に細胞だけが生き残っていたら、それは自分であって自分でないのか…。哲学は苦手ですが、そんなことをふと思ったのです。
・人間の細胞だけが生き続けることは実際ありえるのか
・もし細胞が生き続けていたらどういうふうに扱われるのか
これを解決してくれる本を探して見つけたのがこの本でした。
読んでよかったです。新しい世界を見ることができました。
◆本書の概要
この本では、章ごとに以下のトピックのどれかが登場し少しずつ全容が明らかになっていきます。章ごとに年代や主要人物が変わるので、まるで小説のようです。
・著者がこの本を書くまでの長期にわたる取材記録
・不死細胞ヒーラの持ち主であるヘンリエッタの人生
・ヘンリエッタの時代の医療、科学、法律
・ヒーラ細胞の功績や影響
・ヘンリエッタの子孫(特に著者と深く交流した次女のデボラ)
・現在の医療、科学、法律
翻訳書ですが、不自然な訳もなく、堅苦しくなく、読みやすい本でした。高学歴ではないヘンリエッタの家族のためにも、原著自体が読みやすいように書かれているのかもしれません。
著者はこの本を書くために人生の大半を費やしたそうですが、よくこんなに調べ上げて、よく体系立てた文書に落とし込めたものだと感服します。読み終わったあと、『白夜行』の読後のような、ふわふわとどこかへトリップした感じを抱きました。
ヘンリエッタやデボラのヒューマンドラマとして読んでもいいし、黒人に対する差別の歴史として読んでもいいし、科学や医療の発展の歴史として読んでもいいと思います。
「科学・医療の進歩 vs 人権・プライバシー・倫理」に関する双方向の意見は考えさせられます。
◆読書前&読書中に浮かんだ疑問と解答
Q. 人間の細胞だけが生き続けることは実際ありえるのか
ヘンリエッタ・ラックスという黒人女性の癌細胞が生き続けている。
(ということをあらすじ及び序章で知りましたが、この本で尚も「癌」について触れることになるとは思っていなかったので、少し衝撃を受けました。)
Q. もし細胞が生き続けていたらどういうふうに扱われるのか
体外で生き続ける細胞というのがそれ(1950年頃)までなかったため、ヘンリエッタの不死細胞(ヒーラ)はとても貴重な大発見だった。増殖し続ける彼女の細胞は世界中の研究者に分配され、さまざまな研究に役立ってきた。現在ヒーラ細胞は重さ5千万トン(推定)を超え、大半の人がその恩恵を受けている(ポリオワクチンとか)。
家族にとっては母親がまだ生きているような不思議な感覚がある。遺体を解剖されるのを嫌がる気持ちに似ていると感じた。研究者は細胞の持ち主のイニシャルをとって「HeLa(ヒーラ)」と呼んでいるので、持ち主の人生や人格まで考えを及ばす人は少ないようだ。
Q. ヒーラ以外に不死細胞はあるのか
同じく持ち主のイニシャルをとった「A.Fi」「D-I Re」などと呼ばれる細胞が後年発見されたが、ヒーラのように大量増殖していない。
正常な細胞はあらかじめ決まった回数分裂すると死ぬようにプログラムされている(ヘイフリック限界)。ヘンリエッタの癌細胞(ヒーラ)にはその回数制限がないため死なない。現在の技術では、正常な細胞をある特定のウイルスや化学物質にさらせば人工で不死細胞を作り出すことができる。しかしヘンリエッタの細胞のように自力で不死化する細胞はほとんどない。
Q. 売買される細胞の印税のようなものが持ち主や家族に支払われるのか
一切支払われない。さまざまな議論があった(今もある)が、法的には持ち主を離れた細胞についてとやかくいう権利はない。
奴隷時代の名残りがあったせいで、当時黒人は病院にかかりづらかった。無料で診てもらえる福祉サービスもあったが、患者に内緒で人体実験をされることも多かった。そんな研究で得た収益の還元なんてあるはずもなかった。
Q. ヒーラ細胞は癌細胞なので、バイオテロができるのではないか
ネズミにヒーラ細胞を注射した実験によると、ネズミは癌を発症する可能性があるようだ。人への感染の可能性は不明。
白血病の女性十数名に対し、内緒でヒーラ細胞を注射した研究者がいた。当時は患者である被験者に同意を取らない実験が横行していた。癌を発症した患者がいたが、もともと癌を持っていたようだ。
健康体への実験では刑務所で被験者が募集されることが多かった。罪滅ぼしのために受けたりするようだ。健康な被験者は癌を発症しなかった。 -
ヒーラ細胞(Hela Cells)。
1951年から分裂、増殖し続ける世界で初めて培養がされた不死のヒト細胞。
この細胞は、ガンを抑制する遺伝子の研究、ポリオ、ヘルペス、白血病、インフルエンザ、血友病、パーキンソン病の治療薬開発、乳頭の消化から、性感染症、虫垂炎、ヒトの寿命、蚊の交尾、下水道内作業が細胞に及ぼす影響など、多岐にわたる広範囲な研究で使われている。
そして、現在も、世界中の研究室に保管、利用されている。
この細胞の持ち主は、ヘンリエッタ・ラックス。
この本は、この細胞がもたらした様々な出来事、ラックス家を苦悩させた様々な出来事、当時の人種差別の実態、医療技術開発にともなう人体実験の実態などが、ヘンリエッタの娘デボラと著者レベッカを通して書かれている。
読み始めてから、一気に読んだ。
時に、あまりのひどい有様に顔をしかめつつ、ラックス家の苦悩に悲しくなったりしながら。
できたら、医療関係の方々には読んでいただきたい本だなーと思う。
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ヒーラ(HeLa)細胞、即ち、ヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)の癌細胞、について。
その採取に本人の同意が必要だったのか。
本人とその子孫は、経済的に優遇されるべきなのか。 -
このテーマで興味をそそられるポイントが2つあった。
1つは、ヒーラ細胞と呼ばれる不死細胞は人間の不老不死へとつながるのか?
もう1つは、医学の進歩に多大に貢献したヒーラ細胞の宿主およびその家族は、無知ゆえにか何も報償されず、普通の医療費さえ払えなかったという事実です。
本書のインタビューがヒーラ(ヘンリエッタ)の娘ということもあり、ヒーラ細胞のもつ可能性の話よりも、医学の進歩に寄与した細胞は誰のものか?という点に重点が置かれたのはある意味仕方がない。
そもそも、医学では当たり前なこの細胞の名を、本書によって世に知らしめただけでも大きな成果です。
では、不老不死の可能性の話ですが、まずヒーラ細胞自体ががん細胞化することで初めて不死細胞となりえた点は重要ですし、ヒーラ細胞が女性からの細胞だったという点も偶然ではない気がします(女性の方が長寿)。
不老不死という夢を実現するためには、がん細胞という増殖の歯止めが利かない異常細胞をどうやって飼いならすのか、そもそもそれはコントロールできるものなのか、もしくは人間を死ぬまで食いつくすがん細胞に代わる安全な増殖因子の発見という難問をクリアする必要がありますが、まだ現状では人間の不老不死の実現性よりも、ヒーラ細胞の生物学的なメカニズム解明の段階なのかもしれません。
不老不死が将来の遺伝子工学の発展で可能になるのかという夢物語の一方で、自らの命を絶つ人間も多いこの世界はやはり不思議で満ちているようです。 -
1951年に悪性の子宮頸癌で亡くなった
30代のアフリカ系アメリカ人の
腫瘍細胞を採取して培養すると、この細胞はそれまでのものと違い
簡易に培養出来て、それが普通なら死滅してしまうのに対して
培養地があればあるだけ永遠に増え続けると言う特殊性があった。
この細胞はその簡易に増やせる所から、ありとあらゆる研究に使われた。
その婦人の名前はヘンリエッタ.ラックス、その頭文字をとって
通称『ヒーラ』と呼ばれる。
あまりに増えて、あらゆる研究に使われたため、短い期間に
世界中の人由来の研究の使われる事になった。
あとがきにも、多くのページは、現在アメリカでは
ほとんどの医療を受けた人の細胞は保管されていると
思って間違いなく、医療措置後、廃棄物と見なされる
細胞や組織はどんな研究に使われて、どんな成果を上げようと
ドナーである患者に、何も還元されないし
DNAを見れば個人が確定されるにもかかわらず
個人のプライバシーの問題をはらんでいると、
いう事に多くさかれているが、本編は違う。
この作者,レベッカ.スクルートは
普通高校1年の時に不登校になって
そんなドロップアウトした生徒が単位を取るために通う学校で
受けた授業の中で
現在世界中で使われている細胞の持ち主の名前
を知る事に。。。。
その細胞を使う事で現代の我々が受ける恩恵の数々。
赤ん坊が受けるポリオワクチン、ヘルペス、白血病、
インフルエンザ、血友病、パーキンソン病の薬
全てヒーラ細胞によって作る事が出来たのだ。
だが、ここで、レベッカはそれだけで良いの?と思う。
その名前も知られずに死んで行ったドナーは?その家族は?
そこから、奨学金をもらい勉強する学生だったレベッカの
地道で謙虚な取材が始った。
レベッカが描いていたのは、もちろん科学的な事例も
それにまつわる前例もあげながら、
事実を丹念に、掘り起こしているのだが、
私が一番感銘を受けたのは
私たちがいきている今、大昔とは到底呼べない時に
あこがれのアメリカでは、まだまだ人種差別があって、
ウソのような仕打ちを受けた人々が居て
日本では考えられないような教育の不平等、権利の不平等
その険しい境遇の中で生き抜いた
ラックス一族の境遇や
亡き母の細胞だったと聞かされた時の激しい怒り。
そんな人間ドラマに惹き付けられた。
激しく自分をも壊してしまうような怒りの塊から、
レベッカとのふれあいの中、変わって行くヘンリエッタの娘や息子。
亡き母への想いや葛藤、人種問題、最新医療の問題など、、、。
たくさんの要素が巧く描かれてさすがは
2010年のアメリカのベストセラー -
生物学や生化学を修めようとしたことがある人ならヒーラ細胞については必ず聞いたことがあるでしょうし、扱ったことすらあるかもしれません。
本書はヒーラ細胞そのものと、ドナーであるヘンリエッタ・ラックスさんにまつわる歴史というか物語です。
ふとしたきっかけでヒーラ細胞についてWebで検索したのですが、その時にちょうど本書が邦訳で出たことを知り手にしてみました。
この細胞については知識として学んでもその由来となった人にまで思いを巡らせることはありませんでしたが、それが出来てホントによかった。
訳者の中里さん、どこかで見た名前だと思ったら『ハチはなぜ大量死したのか』の訳も手掛けた方でしたね。日本語としてこなれた読みやすい訳だと感じました。 -
ヒーラ細胞をご存知でしょうか?1951年黒人女性ヘンリエッタから、本人や家族の同意もなく採取されたがん細胞は、医学の発展に大きな貢献をしていきます。このドミュメンタリーの背景にある様々な社会問題、医療倫理の問題があり、とても多面的な内容を包括している本でした。
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中里京子の作品
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感想 :

コメントありがとうございます。
アメリカの歪みを描きつつ、一方でまた、人間の持つ力・可能性・希望も感じさせる好...
コメントありがとうございます。
アメリカの歪みを描きつつ、一方でまた、人間の持つ力・可能性・希望も感じさせる好著と思います。