小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 4690
レビュー : 756
  • Amazon.co.jp ・本 (722ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162227

感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んできた宮部作品とはどこか違う。伏線の張り巡らされた緊張感ある作風が今回は見られない。

    主人公は高校生の花菱英一と年の離れた弟、光。花ちゃん、ピカちゃんと周りから親しまれている(両親まで彼らをこう呼ぶ)。店舗付き住宅を家ごと買い取り、少しだけリフォームして住みついた花菱家。 味のある「小暮写眞館」の看板はそのまま、ウインドウあり・フォトスタジオありのこの新しい家になかなか馴染めずにいるのは英一くらい。この 「小暮写眞館」に女子高生から心霊写真が持ち込まれ、英一は親友テンコらと共にその謎を追う羽目になるのだが・・・

    歯科医の息子テンコや、甘味屋の娘コゲパン、弁護士の息子 橋口、乗り鉄のヒロシやブンジ。激しくコミュニケーション下手の不動産屋事務員 順子。

    英一を取り巻くのは個性豊かな面々だが、手に汗握るようなハラハラものの展開にはならない。

    この作品は宮部さんにとって現代小説では初の「ノンミステリー」。「何も起きない小説」なのだ。

    これまで多くの殺人事件を描き、登場人物を不幸にしてきた彼女だから・・・「 『理由』の一家4人殺害事件。『模倣犯』の連続誘拐殺人事件――。「書いてつらくなるような事件は『もう書きたくない』という気持ちが、正直、出てきてしまいました」。執筆に寄せてこう語る。


    ------かつての社会派推理小説のように、伏線が絶え間なく連鎖するスリリングな展開にはならない。花ちゃんと友だちの会話など、「本筋とは関係ない無駄話をたらたらと書いているんです」。感情が盛り上がるような場面も、あえて筆を抑制した。「ゆるさを大切にしたかった」からだ。

     そんな気持ちの根は、『模倣犯』にある。「たくさん人を不幸にしたので……。あと引っ張っちゃったんですね」

     回復には時間が必要だった。現代小説から離れ、時代小説やファンタジーを書きながら、物語の楽しさを再発見していった。大きなきっかけは、アニメ映画化もされた『ブレイブ・ストーリー』だった。「新しい所は何にもないファンタジーなんですが、たくさんの人に気に入られて。勇気づけられました」

     執筆にあたり、意識したことがある。1998年の作品『クロスファイア』で描いた女性のことだ。彼女は周囲との対話がうまく行かず、苦しむ。今回、その女性と人物造形が重なる順子という女性を描いた。「同じような女性が、周りの人との出会いと支えで、明るく元気に生きていけるように書こうと思った」。順子は、緩やかな対話のなかで幸せを見つける。「今回は『ブレイブ・ストーリー』と同じぐらい、書いていて楽しかったんです」

     40代の自分が描く「高校生の青春小説」にリアリティーがあるか不安もあったが、背中を押したのは、20歳で小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』だった。同賞の選考で読み「言葉遣いは違うけれど、登場人物が同じメンタリティーをもっているじゃないかと、自信が持てました」

     デビュー23年目。脱稿してから、新人のような気持ちで本ができるのを待った。「タフでない、しおしおと書くものを面白いなと思ってもらえたらいいな。私はタフじゃないんだ、と正直に打ち明けて」------


    厚さにして4センチ、722ページの量感は、読むだけで筋トレになりそう。でも、この本に宮部さんが込めた思いの強さはうかがい知れる気がした。

  • 両親の気まぐれみたいな選択に付き合わされて古い家付き土地に引っ越した4人家族、なんと昔 写真館を営んでいたと言う店舗付き住宅。看板まで敢えて外さずのまま、それが「小暮写眞館」で主人公は高1の花菱英一 あだ名は花ちゃん。曰く付きの店に曰く付きの写真が続いて持ち込まれて来てその謎に迫る4つの物語です。とりわけ最終の話は切ないようなスカッとするような面白さです♪ 宮部さんのユーモアセンスに溢れた言葉の選び方 使い方はやっぱり好きです。

  • 分厚いのに全く長さを感じさせない連作中編集。ファンタジーやミステリーも良いけど、宮部さんのこういう話をずーっと読みたかったので大満足です。本文読了して、表紙の写真を見返すとじんわりとこみ上げてくるものがあります。また会えるといいな。出会ってほしいな。
    いつものことながら、目には見えない人の心の、瞬間の感情の襞をすくい上げるのがほんとに上手いです。読んでて何度もざわっとなりました。もし、もしも漫画化されるとしたら、羽海野チカさんで見てみたいです。とくにテンコくんやクモテツの面々を。

  • 「怖くてあってはならないこと」は本当はたくさんあって、「それでいい」と流されて、真実をどれだけ自分が知っているのかを想像した。
    最近はSNSが流行し簡単に自分の気持ちを書きこむ場所が増えたけれど、流れに同調した意見か、真実に近づいた発言なのか、本当に自分の意見なのか…自分自身も安易に使っているけれど、その発言に責任を持ち、かつその内容を見極めるだけの力を養いたいと考えさせられた。
    全ての事の真実を知る事は無理でも近しい存在の真実は大事にしたい。その中で見極めた真実を力にかえて走り出せたらそれが良いとも…
    久しぶりに宮部先生の作品を読みましたが、読後はとてもスッキリしました。

  • 713ページの大作。本が厚すぎて読みにくく、文庫にしたら良かった。第三話目までは淡々と読めた。
    風ちゃん出てこないんかーと思ってたら第四話。
    結構泣いてしまった。
    英一もテンコちゃんもピカもお父さんお母さん学校のみんな、全員のキャラクターが良くてとても良かった。

  • 高校生にしては頭いいなー思ったけど、物語としてはそれが正解だった。
    ゆるーい日常と、その陰に隠されている冷たい何かを現実に溶かしていくバランス感覚はさすが。
    もう一つの人生をじっくりと味わえたよう。

  • 英一もひかるも垣本さんも、みんなが影響しあって成長したんだね。人は人に否応なく影響されて悪くなったりよくなったりしていくんだ。良くも悪くも人は一人じゃ生きていかれないんだなと思った。

  • 人間は、辛すぎると、記憶を、封印する。花ちゃんの言うところの冷凍状態の記憶。私にも、ありはしないだろうか。

  • 分厚い本だったけど意外とさらりと読めた。
    多少のつながりはあれど短編集という感じ。

    どの話もそれぞれテーマが違っていて、そのテーマごとに心に訴えかけられる内容。

    どんなに明るくても、どんなに乗り越えたつもりでも、
    どうしても残るものはある。
    残ってていいと思う。

    読んだ後は温かい気持ちになれた。
    物語にはあんまり関係ないけど
    「ごめんください」と言える人になりたい。

  • 宮部みゆきさんの作品を初めて読みました!
    前から読んでみたいと思っていて、ようやく読むことができました。
    1人1人の個性がしっかりしていて、登場人物がどんどん増えていっても混乱することなく読めました(^ ^)
    そして、1人1人のエピソードが共感できて、読んでいてあったかい気持ちになりました(o^—^)ノ

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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