小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 772
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  • / ISBN・EAN: 9784062162227

感想・レビュー・書評

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  • あまりの分厚さに、これ実物見てたら借りなかったかもと思ったくらいで
    前半は「長いなぁ、1話読むのも十分長いなぁ」とややへばり気味でしたが
    後半はするする読んでしまいました。
    最終話は号泣ですわ。

    はじめのほうで蛇足のように書かれていたことが、ちゃんと伏線だったり
    そうだったのかと改めて気付かされるところがあったり
    よく分からない登場人物も後々ちゃんと絡んできたり。
    そうなのか、そうなんだね。
    心霊写真のはなしかと思いきや、苦しくてあたたかく切なすぎるホームドラマです。
    登場人物も小暮写真館もみんな素敵だー。

    ドラマ化するので読みたくなって、ドラマ前に読めなくて
    やっと読めたので、これからドラマ見ようと思います。
    花ちゃんこと英一がとてもおもしろくて最終話の啖呵もかっこよかった。
    神木隆之介くん、好きなので期待してます。

    過去と向き合うことで未来に進んでいける。
    読み終わって表紙を見ると感慨深い。しみじみ。

  • 辞書並みに分厚いこの本の
    長い長い物語を読み進めている間ずっと、
    なぜ表紙が「小暮写真館」の写真ではなく
    春景色の中を走る電車なのか、首を傾げていたのだけれど。。。

    商店街の古い写真館にそのまま住もう!という酔狂な父のせいで
    次々と不可思議な写真を持ち込まれ、
    「心霊写真バスター」扱いされてしまう「花ちゃん」こと、英一。

    でも、写真に写り込んだ「ありえないもの」は皆、幽霊ではなくて
    もがきながら生きているひとの想いが投影されたものだった。

    新興宗教に夫との仲を裂かれた女性。
    仕事先の娘であった婚約者を何重もの不幸に追い込んで苦悩する男性。
    絶対王政よろしく家族に君臨する父と盲従する母に苛立つ小学生。
    母に絶望して「絶対零度女」という殻に自分を封じ込めた垣本順子。

    そんな、写真の謎に導かれて邂逅したさまざまな人生に触れることで
    幼くして病死した妹 風子の死の責任を
    それぞれ心に抱えた両親、弟ピカ、英一自身の
    「冷凍睡眠」させてきた想いが、ゆっくりと解凍されていく。

    そして、英一という「駅」でひととき停車して
    自分の中の壊れた部品を点検し、調整して発車していった垣本順子が
    「あたしはとっくに走り出してる。」と送ってきた写真が
    表紙の謎をすうっと解いてくれた瞬間の、爽やかな感動!

    英一と彼女が、最後にインスタントカメラで撮り合った
    現像しないままのお互いの写真。
    そこに写っている相手の顔は、
    シャッターを切ったふたりの想いを乗せて
    きっと眩しく笑っている。

    • まろんさん
      雀宮さん、コメントありがとうございます♪

      うんうん、確かに!
      前半は、英一くんが、完全に心霊写真バスター化してましたものね(笑)
      宮部みゆ...
      雀宮さん、コメントありがとうございます♪

      うんうん、確かに!
      前半は、英一くんが、完全に心霊写真バスター化してましたものね(笑)
      宮部みゆきさんは、「長編を書くぞー!」と思い立つと
      ほんとにお話がものすご~く長くなる作家さんですよね!
      文章も構成も上手いからこそ許される、暴挙ともいえる長さです(笑)
      2012/06/21
    • 円軌道の外さん

      ええーっ!!!
      やっぱ読むの早いんですね〜(汗)(◎o◎)

      自分もまろんさんと同じく、
      空き時間があれば
      すべて本を読むの...

      ええーっ!!!
      やっぱ読むの早いんですね〜(汗)(◎o◎)

      自分もまろんさんと同じく、
      空き時間があれば
      すべて本を読むのに充てたいくらい、
      常に小説を持参して
      信号待つ時間や
      エスカレーターで上がる間にも
      本読んでます(笑)


      だけど読むんは
      かなり遅いんスよね〜(>_<)

      一回読んでも理解できなくて
      また何ページか戻って
      読み直したりしょっちゅうやし…


      普通で
      一歩進んで
      二歩下がるくらいのペースかなぁ(笑)

      2012/06/27
    • まろんさん
      円軌道の外さん
      そんな風に大切に丁寧に読んでもらえる本は、幸せだと思います!

      娘のところに、一緒にRPGをやろうって遊びに来た男の子の中に...
      円軌道の外さん
      そんな風に大切に丁寧に読んでもらえる本は、幸せだと思います!

      娘のところに、一緒にRPGをやろうって遊びに来た男の子の中には
      バトルだけに熱中して、ストーリー部分のログを
      ほとんど読まずに飛ばしちゃう子がけっこういて
      本じゃなくてゲームだけど、
      でもお話をもっと大事にしてあげてよ~(ノ_・。)
      と、思ったりしていました。

      私は、生きてる間にあと何冊、本が読めるかなぁと思うと
      ついついせっかちになってしまって。。。
      もっと丁寧に1冊を味わわなくちゃですね!
      2012/06/28
  •  これ、ラブストーリーだったんだ。それも飛びきりの。枝葉が多くて全体がふくらんでいるから見通しがよくないけれど、枝葉を刈りこんでしまえばシンプルな話だ。読み終えてふと帯を見たら、ちゃんと書いてあった。「もう会えないなんて言うなよ」って。
     大船駅のラストシーンが美しすぎる。今どきインスタントカメラかよ。現像しなくていいよ、だと? ふざけんじゃないよまったく。全然似合わないよ。甘ったるくて見ちゃいられないよ。ほら、目から汗が...。
     700頁を越える長編。全体が4話に分かれてはいるものの、主人公の高校生花菱英一の家族と交友関係が中心のひとつながりの長いストーリーになっている。いろいろな事件、出来事が次々に起こるが、錯綜していないので混乱することもなくスラスラ読めてしまう。もともと読みやすい文章を書くことにおいては天下一品の著者だし、豊かな表現力のせいで主要登場人物のキャラが立っていてわかりやすいのだ。
     宮部みゆきの文章については、何度も繰り返し書いたので今さら付け足すこともないが、ほんとうに感心してしまう。この人の頭の引き出しはどうなっているのだろう。たとえば、「笑う」という引き出しにはゆうに100個くらいの表現が詰まっていて、そのつど最適なのを引っ張り出してきてはピタリとはめるから、読み手にはその笑い方ひとつで、作中人物がどんな人でどう感じているかが目の前に見るように浮かんでくる。つい親近感を覚える。そして作品世界に惹きこまれる。そうなったらすでにもうお釈迦様の掌の上だ。
     これはこれでハッピーエンドなんだろうな。諸々のことはほぼ片づいてしまったし。ラブストーリーとしてはどうなのかという気もちらっとはするけれど、常識的にいえば妥当な結末だろう。この作者は読み手を裏切ったり放り出したりするような邪悪な結末が書ける人ではない。人が困っていたり、不幸だったりするのを黙って見ていられない人なんだろう。だから安心して読める。人にも薦められる。でも、やっぱりちょっとかなしい。もう会えないなんて。

  • 街の古い写真館に引っ越すことになった一家の物語。
    ひょんなことから関わるハメになった不思議な写真
    その謎を追ううちにさまざまな人たちと関わりあい・・・

    登場人物がみなすごく魅力的
    ピカちゃんやテンコなど、どれも生き生き
    やはり宮部みゆきは少年が上手いなぁ

    読後感は寂しいけれどほんわか・・
    花ちゃん!歩き出そうよ!

  • 今、NHKのBSでやっているドラマがとてもいいので。
    いずれ総合でもやると思います。
    穏やかな日常の陰に見え隠れする哀しみは、やがて‥
    好評の家族小説。

    高校一年の花菱英一は、元は写真館だった建物に一家で越して来ました。
    両親は一見ごく普通だが、どこかセンスがおかしいと思っている。
    何しろ、息子を友達の呼ぶあだ名の「花ちゃん」と呼ぶ~一家みんな花ちゃんだっつーの(笑)
    越してきた写真館のスタジオを改装もせずにリビングにして、看板まで出したままなのだから。
    そのために、あらぬ誤解を受け、「心霊写真を撮った責任を取れ」と言われてしまう…
    妙な写真にぼんやり写っている…それは、念写だったのか?
    いくつかの出来事に関わり、謎を解きほぐしていく物語です。

    写真の主を訪ねて行ってみた不動産屋で、愛想のない事務員・ミス垣本に出会います。
    独身だからではなく、社会人としてどうよと思われるぐらい欠けているものを感じたので密かに「ミス」とあだ名を付けたという。
    ところが、電車の来る線路にいた現場を目撃してしまい、放っておけなくなる花ちゃん。
    どこか壊れている年上の女性と、何気ないような縁が出来ていき…

    身体の弱い弟のピカこと光(ひかる)は利発で、きれいな顔立ち。
    親友のテンコこと店子力(たなこつとむ)がなぜか似たタイプで、そのせいか二人はすごく仲良し。
    テンコは寝袋を抱えてよく泊まりに来るし、二人だけで遊んでもいる様子。
    比べると自分は平凡と感じつつも、どっちのことも好きな花ちゃん。
    コゲパンというあだ名の女の子も登場。誰の彼女になるのでもないけれど、仲良くなる距離感がなかなかいいですね。

    実は、花菱家の兄弟の間にはもう一人、女の子の風子がいたのだが…
    一緒に生活しているかのように両親は口にすることもある。しかし、もう亡くなっているのだ…。
    家族はそれぞれに痛みを秘めて、自分を責めていた悲しみが次第に明らかに。
    そのことに気づいた家族は、あらためて心が通い合うのでした。
    日常的な描写の積み重ねから、少年が成長する様がじんわり伝わってきます。
    ゆっくり読むのにいいですね。

  • NHKでドラマ化されたのを見逃して小説を読もうと思って手に入れたのはいいものの、その分厚さに恐れをなして後回し後回しになっていたが、ラノベ小説部門の文庫が出ているのを知って、何だジュブナイル小説なのかと思ってやっと読むことに。小暮写真館だった古屋に引っ越してきたちょっと変わり者の花菱一家、その長男英一が主人公の物語である、最初は小暮写真館で撮られた思われるちょっと訳ありの心霊?写真、そこに潜む物語が悲しい、花菱一家の中で亡くなった風子にまつわる親者の悪意の連鎖、そして不動産屋に勤める柿本順子の話が切ない。

  • 写真館だった店舗付き空家に四人家族が越してきた。
    長男英一が高校を卒業するまでの三年間。
    家族を巡るほのぼのとした物語というわけではない。

    心霊写真や念写などの不思議話ばかりでもない。
    人は見たいものを見るし、聞きたいように話を聞く。
    では、見たくないもの、嫌なこと、おっかないものに出会ったらどうするか。
    しかも、複数の人間で同じものを見てしまったら、というお話。

    宮部ワールドだから苦い思いばかりでなく、安心して読めます。
    加えて、私にとっての楽しみは東京弁だあ。

    東京弁の醍醐味は間合いにある。
    少々お節介で二、三歩先走り「んなわけないか」と自分突込み。
    そんな言葉が紡ぎ出す日々の機微にほっとするのだ。

  • 久しぶりに読んだ宮部さんの現代物。

    私が好きだった頃の現代物に戻ったようで、嬉しくて読み進んでいくと、そこにはやはり何十年かを生きてきた宮部さんがいた。

    そして、とっても良かったです!

    大人であろうと子供であろうとみんな様々な思いを心に抱いている。
    読み進むうちに、そんないろいろな思いにふれ、人の哀しさ、せつなさ、優しさ、温かさなどを感じることになる。

    宮部作品にはつらい現実も描かれているのだが、作者が人を信じているということが感じられてそこが大きな魅力なのだ。

    それを感じさせてくれるのは主人公の周囲の人々だ。
    友人や両親はじめ周りの大人たち以外に、ふとすれ違ったような人達、そんな人物達こそが宮部作品をこんなにも魅力的にしてくれているのだと思う。

    最近はあまりに読むのがつらくなる作品もあって、現代物はすぐには手がでなかった。
    でも今回はよかった。最後の最後ぐっときた。
    読み終わって表紙の写真をみると、またまたじんときた。

    出版されて2年近くたってしまったが、春のこの季節に読めてそれも私にはうれしいことだった。

  • あぁ、また一つ、いい作品に出逢えた。そう思える作品。やっぱり、宮部さんはすごいなぁ。どんどん物語の中へ惹き込まれていった。700ページを超える長編だが、本作は「模倣犯」や「理由」などとはちょっと異なり、どちらかというとラノベ風な軽妙な筆致で長さを感じさせない。

    ちょっと変わった両親と、8つ年下の賢い弟をもつ高校1年生の「花ちゃん」こと花菱英一くん。両親が思い切って購入した中古住宅は、故・小暮さん(享年85歳)が経営していた写眞館。リフォームもそこそこに暮らし始めると、なぜか古い写真にまつわる謎を解明する羽目に…。

    4話構成、1話進むごとに物語の奥行きが深まっていく。家族、友達、ちょっと気になる人…。人と人との温かい繋がり、かと思えば骨肉の争い。その中で、花ちゃんは少しずつ大人になっていく。このあたり、先日読んだ「魔術はささやく」にもちょっと通ずるような感じもするなぁ。

    最後は、少し切なく、でも心がじんわりとしました。おススメです。

  • 思った以上に深い内容だった。前半は英一とコゲパンが仲良くなるのかなあと思って読み進めていたのだけれど、後半で垣本さんがこんなに鍵を握る人物?になるとは。
    高校生の英一が、たまたま写真館だった家に住むようになる。心霊写真もどきの謎解きを通して人間の強い念を知り、謎解きの過程でかかわったST不動産で社長や垣本さんと出会う。妹が幼くして亡くなったために親類と縁を切り静かに暮らしていた英一の家族ではあったが、祖父の危篤・死去を通してまた一波乱が起きる。
    印象的だったのはST不動産の社長、須藤さん。42才とまだ若いのに、いろいろと事情がありそうな垣本さんを雇い、受け入れ、うっかりすると自殺未遂を繰り返してしまうやっかいな女性を見捨てることなく、どっしりと対応している。この人の度量の大きさ、すごいなと思った。
    ともすれば重くなりがちなテーマだけれど、写真館のご主人の幽霊や、高校生の生活や行事、不登校の子どもたちが通うフリースクールなどを通して、どんどん読み進んでいける。前を向いていくというラストがすっきりする。

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

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