シューマンの指 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
3.05
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本棚登録 : 2305
感想 : 501
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062163446

作品紹介・あらすじ

シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。彼に焦がれる音大受験生の「私」。卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。現場に居合わせた修人はその後、指にピアニストとして致命的な怪我を負い、事件は未解決のまま30年の年月が流れる。そんなある日「私」の元に修人が外国でシューマンを弾いていたという「ありえない」噂が伝わる。修人の指に、いったいなにが起きたのか。鮮やかな手さばきで奏でる"書き下ろし"長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 2020/08/16読了
    #このミス作品42冊目

    天才ピアニストの周りで起こる殺人事件。
    音楽の知識に乏しいせいか
    全く話が頭に入ってこない。
    著者の音楽知識をふんだんに盛り込んだ
    オナニー小説。

    原田マハ氏の「楽園のカンヴァス」
    のような素人でも楽しめる作品
    ではなかった。

  • シューマンは「飛翔」と「予言の鳥」が好きです。
    この小説はシューマンがある程度好きじゃないと
    読み切ることができない、という類の小説です。
    もう冒頭から半ばまではずーっとシューマンの
    解説書かというぐらいの内容です。

    途中までは小説ではなく「シューマン解説の良書」と
    思い読み進めました。
    小説が半ばぐらいから人物がやっと躍動的に動き出して
    最後はミステリー小説、という終わり方でした。

    図書館本ですが読了後にシューマン解説部分を
    再度楽しむため通販で購入しました。

  • 多彩な表現や豊富な語彙で音楽を綴る、筆の力がとても印象的でした。
    若き天才ピアニストの口から語られるシューマンについての講義。
    語り手が手記に綴る、曲そのものや演奏についての熱のこもった描写。
    実際に音楽を聴きたくてたまらなくなり、YouTubeでピアノ演奏を検索しつつ読み進めました。

    ただ、ミステリーとしては個人的にはしっくりこなかった…というのが本音。(レビューでも賛否両論あるようす。)
    音楽の印象が強かったことと、結末がなんとも言えない消化不良だったからだと思います。
    後半の愛憎渦巻く、ねとねとした空気にもなじめず、前半に比べるとページの進みが遅くなりがちでした。

  • とんでもなくマニアックでびっくりした。

  • まるでシューマン教徒のシューマン礼賛書のようだ。シューマンを聞かないとレビューが書けないと思い、図書館でCDを借りてきた。そこまでして私がこの本の書いてある内容を知りたいと思わせた分、この本の勝ち。
    批評の羅列がすごい。よく聞き込んでいるな、と思う。ただ、音の印象による音楽の文章表現がおおくて、具体性にかけると思われる。演奏家同士の批評、感想であれば楽譜の詳細についてもっと触れたほうがよりより現実的なのではないかと思う。シューマン教伝道師と生徒の会話で終わっている。
    オチはちょっとがっかり。もう少し別の着陸点を見つけてほしかった。

  • 面白かった。前半は芸術的な感性が高潔に描かれ、奥泉さんの文章力の確かさがあらためて再確認できる素晴らしい描写の連続であったと思う。中盤からなにやら怪しげな雰囲気が醸し出され、またいつもの奥泉さんの悪い癖(苦笑)が出てくるのかと思い、不安を抱えながら読み進めた。物語は破綻しかけてはまた持ち直す、幻想に傾きかけてはまた現実へ戻る、を繰り返しながら進んでいく。行き着く先はまだ見えない。でもそれはいつものこと。過度な期待をせずに読む。とは、奥泉さんの本を手にとるときにいつもあらかじめ考えることなのです。
    でも、驚いたのは、最後に辿り着いた先だった。
    まさかこう来るとは思わなかったのです。これはきっと何も書くべきではないと思うので書きません。ただ、僕が勝手に考えていた奥泉さんの結末のつけ方とは違っていた。それに驚いたのです。こういうふうにも書けるのか、と。

    さも奥泉さんのことを知ったかぶりで書きましたが、許してください。勝手な思い込みです。でもやはり奥泉さんの描写力はすさまじいですね。音楽のことなんて、しかもクラシックのことなんてこれっぽっちも知らない僕がシューマンにのめりこみそうです。ブクログでの評点は低いようですが、これは傑作だと思います。素晴らしい!!

  • 音大を中退して医者となった主人公「私」が、友人「鹿内堅一郎」からの手紙をきっかけに、かつて憧れ慕って止まなかった後輩天才ピアニスト「永峯修人」について記す回顧録形式のミステリー。
    『ダヴィッド同盟』を結成して音楽談義に花を咲かせた甘酸っぱい高校生活、耳にした3回の修人の演奏、音大受験などのエピソードに、シューマンの楽曲解説を交えながら話は進む。序盤から事件の存在はちらつかせるものの、夜の学校プールでの女子学生殺人事件が起きて本筋が進みだすのは作品の中盤から。後半は急速に展開し、事件の真相が二転三転する形で幕を閉じる。
    『演奏なんかしなくたって音楽はもうすでにある。演奏はむしろ音楽を破壊し台無しにする』という、全般に亘って語られる修人の音楽理論は、伏線とも考えられるが、そうでなくても興味深い。
    萩尾望都の少女漫画を文章で読むような、鮮やかで美しい禁断の香が至る所に感じられる作品。トロイメライとクライスレリアーナ以外はシューマンをよく知らなかったので、楽曲名が出るたびにYoutubeで検索して聴きながら読み進める楽しみがあった。作品前半で修人の弾くシューマンのコンツェルトを旋律に沿って解説するくだりから、曲が脳内再生されてのめりこむように惹きこまれ、読後には作品自体がひとつの音楽だったような印象が残った。
    結末部分はあまりにも「二転三転」を狙い過ぎてあざとい気もした。たまにお目にかかる主人公犯人のミステリーというのは大抵納得がいかないが、作品全体がシューマンの人生とかけあわさって精神的不安定感をもって進むので違和感はなかった。
    しかしすっかり修人に心惹かれていた一読者として、作中人物が実在しないは当然としても、小説の中にすら存在していなかったという結末がどれほどショックであることか・・・。(2011.07)

  •   奥泉光「シューマンの指」(講談社 2010)は、シューマン生誕200周年を
    記念して書き下ろされた小説で、全編シューマンの音楽が流れていると言え
    るほどだ。シューマン好きはもちろん、音楽の好きな人にも、またミステリー
    ファンにも好まれる仕掛けがある。

  • シューマンのピアノソナタを聴きながらのレビューです。
    面白かったぁ〜。
    読み終えてから、読み返しを何度もしてしまいました。
    ラストにえっ?えっ?えっ?と展開していきます。
    まさに帯に書かれた通りの、衝撃のラストです。
    この本を読んでから、シューマンの虜ですww
    思い悩み、迫ってくる、そして煽る感じの曲調。
    ぜひ本を読みながら、登場する曲を一緒に聴いてください。
    より、楽しめること間違いなしです!

  • 「演奏なんかしなくったって音楽はもうすでにある。演奏はむしろ音楽を破壊し台無しにする」
    なるほどと思った。作曲者が描いた世界感を描くためには、演奏者という第三者を介することなく、作曲家と観客が楽譜をとおして1対1で対話をすることのほうがいいのかもしれない。途中までは、ミステリーというより音楽小説という新しいジャンルかと思わせるくらいの出来です。
    最終章のどんでん返しも、見事です。

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著者プロフィール

作家、近畿大学教授

「2011年 『私と世界、世界の私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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