島国チャイニーズ

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062163699

作品紹介・あらすじ

「反中」「嫌中」が蔓延する日本に生きる在日チャイニーズたちのひたむきな人生模様。

感想・レビュー・書評

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  • まえがきは、東北へボランティアに行った中国人留学生の女の子の話から。
    多くの中国人が日本から逃げ出したとき、ボランティアにまで行った人がいたのだ。おにぎりを三角に握れるようになったという。

    今の31、2歳以下の中国人は一人っ子政策のため、ほとんど一人っ子。
    親の愛情も期待も一身に受けている。そのため人付き合いはやや苦手だという。
    日本よりも儒教的感覚が生きている中国では、親に電話口で泣いて帰国するように言われたら、逆らえないのだそう。

    劇団四季の中国人俳優。
    日本で大学教授になる中国人。
    中国人芥川賞作家の誕生。
    留学生は反日か。
    北国の中国人妻たち。
    神戸中華同文学校。
    女たちの池袋チャイナタウン。
    といった章立てで、具体的に。
    ものすごい努力をして才能を開花させた人や、留学生のために尽力する人々など、感動させられます。
    日本にある中国学校が、日本の昔の村の学校をモデルにしているとは。これがいじめも学級崩壊もなくて、いいんですよ~。

    日本人の中国へのイメージは、かなり悪くなっている現実。
    だが日本に住んでいる中国人は、もともと希望を抱いて日本にやってきたので、親日的だった。
    孤独に苦しむケースもあるが、満足している人も多い。
    日本のイメージは東京のような都会なので、日本人と結婚した女性は田舎暮らしに失望し、離婚すると不法滞在者になってしまう場合があるとか。

    広大な中国では、民族ごとに顔立ちも言葉も文化も違い、同じ民族同士しか結婚しない。
    日本に来るのは、中国内を移動するのとある意味、大して差がない。
    韓国と違って単一民族ではなく、改姓を強要された史実もない。そのため、帰化も、名前を日本的にすることにも抵抗がないという。

    戦前や戦中の日本軍の行為はもちろんよく思ってはいないが、終戦の時に中国は敗戦国の側ではなかった。
    今の反日運動も、じつは政府への不満を発散している面がある。政府への暴動だともっと弾圧されるので、こういう形でやっているそう。

    文化大革命と天安門事件などで苦労してきた世代は、日本の良さをよくわかっているのだ。
    ただ、今の中国政府は、外国に住んでいるキャリアの高い学者らを優遇することにして帰国を促しているので、今日本にいる優れた人物が遠からず帰ってしまう可能性があるそう。

    日本人と中国人はお互いに信用しきれないと恐れている部分がある。
    知らないことは怖いので、知ることによって少しでも理解が深まればという熱い思いが伝わります。

    著者は1956年東京都生まれ。
    「コリアン世界の旅」でノンフィクション賞を受賞。

  • 1〜2章は今ひとつだったが3章の楊逸以降は読ませる出来。星ひとつ追加。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】

  • 芥川賞作家の話、劇団四季の話、東北の中国人妻の話が興味深かった。

  • 日本にいる中国の人を割と良い面からとらえていた。武先生を思い出した。先生のように、日本でしっかり生きて行こうと、日本にある程度愛着を感じてがんばっている中国の人だって多いのだ。

  • 自分ではそんなに中国に対して嫌な想いもなかったんだけど、
    中国での反日デモのニュースを見かけるたびに何となく「この国って。中国人って。」って思ってしまう。
    自分がそう思ってしまう事自体が少し嫌になりつつあったので、マスコミの断片的な情報ではなく、ちゃんと中国人の事を身近にいる日本に住む中国人の事から知りたいなと思い、手にとった。

    この本では日本で生きる中国人の事が、多方面から取材されていてとても興味深かった。
    多分、1章でも抜けていたら多角から考えることができないと思う。劇団四季の俳優さんから始まり、アカデミックな人、留学生、農村に嫁いで来た人、小説家、同文学校、池袋周辺の人。
    日本に住む中国人といっても、多種多様であること。それは別に日本人でもそうであるように、人それぞれである事、その人のバックボーンによって感じることは違うということを再認識した。

    日本社会に溶け込もうとしている中国人に対して、偏見による思い込みで接するのは、よくないというより、勿体無い気がする。
    世界の中で敢えて日本を選んでくれた彼らが、もっと日本で楽しく生きられるような社会に出来たらと思うし、読んで事実を多方面から知っただけでも価値があったと思う。

  • 「コリアン世界の旅」で在日の人々の声を拾った著者が在日中国人の実情を豊富な取材を基に探った本である。
     反日感情が中国で、嫌中感情が日本で高まるのと比例するように年々中国から日本にやってくる人数は増えている。
     劇団四季も、文壇も、保育園でももちろん働き手として日本社会は中国の人に頼っている。様々な感情を抱きながら日本に住むという選択をする中国人。その人たちの顔をどれだけ見ているだろうか、そして声を聴いているだろうか。他人の状況を慮ることが減ってきた日本社会にあって、なんとか適応しようと頑張る中国人の姿に胸がうたれる。
    今旬の本。
    楊逸の小説をぜひ読みたくなった。

  • 山形の外国人嫁の実情を詳しく知ることができる。

  • 2012/1/16

    334.3||ノ (5階社会科学)

    いま中国と中国人に対する日本人のイメージは戦後最悪である。中国政府のやることなすことが気に入らないから、中国人というだけで毛嫌いするのは、まっとうな判断力を持った大人の対応ではない。
    現在日本に長期滞在したり定住する「在日チャイニーズ」の数は年々急増し、70万人近くになっている。
    「反中」「嫌中」が蔓延する日本に生きる、「在日チャイニーズ」たちのひたむきな人間模様を紹介。

  • 新聞の書評に何度も登場していたので、とても印象的で手に取った。

    正直、わたしは中国を好きか嫌いかでいえば「好きじゃない」になる。でもこの「好きじゃない」は周囲に影響されてると前から思っていた。

    なんでなんだろ?と。

    この本を読んで、少し、わかったような気がした。

    読みやすいので、気負わずに手に取ってみてほしい一冊。

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著者プロフィール

野村/進
1956年、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科中退。78~80年、フィリピン、アテネオ・デ・マニラ大学に留学。帰国後、『フィリピン新人民軍従軍記』で、ノンフィクションライターとしてデビュー。97年、『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞。99年、『アジア新しい物語』でアジア太平洋賞を受賞。現在、拓殖大学国際学部教授もつとめる。主著に『救急精神病棟』『日本領サイパン島の一万日』『千年、働いてきました――老舗大国企業ニッポン』。近著は『千年企業の大逆転』

「2015年 『解放老人 認知症の豊かな体験世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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