- 本 ・本 (450ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062164474
作品紹介・あらすじ
弾圧の時代をユーモアと文才で生き抜く男達。百年前の大逆事件後、編集プロダクションと翻訳会社を兼ねた活動家の拠点を創ったのが堺利彦。幸徳秋水、大杉栄との交流など新しい視点から明治の社会主義を描く。第62回読売文学賞[評論・伝記賞]受賞。講談社創業100周年記念出版。
弾圧の時代、社会主義者たちは「ユーモアと筆」の力で生き抜いた。
堺利彦の素顔に、文学から光をあてる画期的試み。長編ノンフィクション誕生!
行き場のない社会主義者たちに生計を立てるための会社をつくり、交流の場を用意し、若者を教育したのが、
「日本社会主義の父」と呼ばれる堺利彦であり、その器が売文社だった。
寄る辺なき運動家たちを家族として迎え、また、明治の男には珍しい妻思いのフェミニストだった。
そんな堺の武器は筆とユーモア感覚。
その文才は、夏目漱石、森鴎外に注目され、尾崎紅葉、有島武郎、宮武外骨との親交、松本清張との意外な接点も。
筆の力を十二分に発揮した売文社は、大逆事件が起きた百年前に誕生した日本初の編集プロダクションかつ外国語翻訳会社だった。
<堺利彦のキャッチフレーズいろいろ>
社会主義者で投獄された第一号
女性解放運動に取り組んだフェミニスト
海外文学の紹介者で翻訳の名手
言文一致体の推進者
森鴎外に短篇小説を認められた平易明快巧妙な文章の達人
そして、軍人に襲われて暗殺されかけ
関東大震災では憲兵隊に命を狙われた男
【著者略歴】
黒岩比佐子(くろいわ・ひさこ)
ノンフィクション作家。1958年東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒。
『「食道楽」の人 村井弦斎』で第26回サントリー学芸賞、『編集者 国木田独歩の時代』で第6回角川財団学芸賞を受賞。
主な著書に『音のない記憶―ろうあの写真家 井上孝治』『伝書鳩―もうひとつのIT』『日露戦争―勝利のあとの誤算』
『明治のお嬢さま』『古書の森 逍遙―明治・大正・昭和の愛しき雑書たち』など。
感想・レビュー・書評
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柳広司さんの「パンとペンの事件簿」読了から約2ヶ月半かかりました。古本で手に入れた本書をちびちびと読み進めて今日の午後残りを一気に読みました。
社会主義者堺利彦の生きざまにこころを揺さぶられました。自分たちの前に道を開いてくれた先人たちに誓いましょう。帝国主義戦争反対です。絶対に。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
堺利彦の「売文社」時代に焦点を絞った評伝。社会主義史や大正デモクラシー史では、大逆事件後の「冬の時代」のカムフラージュ稼業として軽視されがちな「売文社」を、編集プロダクションや翻訳エージェントの先駆として高く評価している。「万朝報」「平民社」時代や大逆事件にも紙幅を割いているが、社会主義者・運動家としての姿よりも、文人・編集者としての姿に重きを置いている。
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第32回OBPビブリオバトル「変」で発表された本です。
2018.12.26 -
ふむ
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ノンフィクション
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近代史には特に疎い私。多くの事を学ばせていただきました。
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社会主義者にとってもっとも厳しい時代を現実的に生き抜くために仲間や後輩を支えた堺の売文社の活動を軸に著者が、緻密に積み重ねた資料をもとに克明に描き出す。
パンとペン。これは好きなことなど追い求めたいものをもつ人間にとって、ついてくる問題で、音楽家や小説家、などといった職業にも言える。堺はペンを支えるためにパンを得る手段を創出した。時期を待つために、生き抜き思いを実現するために編み出した知恵といえる。知識階級であるものの、成功したエリートでもなかったという点が、私にも共感というか、どこかに埋もれていた傷に指さされる感覚があって、そこも堺の生き方にひかれたのかも知れない。
膨大な固有名詞が登場し、かなり厄介な作品だけれど、読んでよかったと思う。題材となった堺だけでなく、著者の黒岩氏にとってこれが死の直前の作品だったという点もある意味衝撃だった。研究者のように精密に調べあげ、丹念に練り上げられた文章は圧巻。 -
大逆事件で多くの同士を失うも、文筆の何でも屋、売文社を起こして運動を続けた明治の社会主義者、堺利彦の人生を辿る。
厚い本ながらなかなかに楽しい一冊。
当時に言論の自由がいかになかったか。その中で堺がいかにおおらかに、時にユーモラスに冬の時代を生きたか。
売文社という響きがなんともいい。文筆の何でも屋をやって仲間を養っていく。ペンでパンを稼ぐ。語学を活かした翻訳や代筆などをこなしつつ、運動につながる翻訳や文筆も書いていく。堺の生き方から学ぶことは多い。
堺の生き方で最も参考にしたいところは人望が厚かったところだと思う。誠実に生きるということは時代や場所を問わず大事なことだと改めて実感。
この本ができたのは売文社の成立からちょうど100年。そしてこの本を書いた直後に作者の黒岩比佐子さんは亡くなられている。 -
読みたいタイプの本と違った。
乗りきれず挫折トホホ
時間をおいて再トライやな。
著者プロフィール
黒岩比佐子の作品





