マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062165006

作品紹介・あらすじ

昭和3年6月4日未明。張作霖を乗せた列車が日本の関東軍によって爆破された。一国の事実上の元首を独断で暗殺する暴挙に昭和天皇は激怒し、誰よりも強く、「真実」を知りたいと願った-。混沌の中国。張り巡らされた罠。計算と誤算。伏せられた「真実」。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和3年(1928)6月4日未明。 張作霖、列車ごと爆殺 ! 満州の覇権を狙う関東軍司令部の謀略説が横行するなか、誰よりも強く真実を知りたいと願った昭和天皇に届けられた満州報告書 —。 混沌の中国に張り巡らされた罠とは、天津駅で張作霖の側近3人が下車した謎とは、特別列車の密室で何が起きていたのか ? ・・・ 昭和史の闇に迫る浅田次郎氏『蒼穹の昴』シリ-ズ第四弾。〝「ねえ、ちゅんる(春児)。 お願いがあるんだけど」陛下(溥儀)は囁きかけられました。「はい。何なりと」 「ぼくは、もういっぺん、本物の皇帝に
    なりたいの。それがご先祖様やおばあちゃま(西太后)の願いだと思うから」わたくしは陛下のおみ足の先に泣き伏しました。今となっては、叶うはずのない夢でございました。「おまえから、お願いしておくれよ。ぼくがそう望んでいると知れば、将軍たちも賛成してくれるからね」...もはや頼みとすべきは張作霖しかなかった。あなたがお持ちの天命を、宣統陛下にお返し下さいと、何べん説得したことでしょう・・・「天子様が天下を取るのはあたりめえだが、貧乏人が天下を取ってどこが悪い。舐めるなよ、この宦官野郎」・・・。

  • 「蒼穹の昴」から読み継いできた満州シリーズが終わった。
    張作霖の爆死を題材に、大日本帝国という国家の揺らめきと中華/満州の歴史との接触を描く。「珍妃の井戸」と同じく歴史的事件を横合いから見る準当事者のレポートと言う体裁を採る。

    大陸の地図と地平線ととおい山並みを思わせる。スケールの大きな歴史小説だ。

  • 関東軍による張作霖爆殺事件。真相をひた隠す軍・内閣に業を煮やした昭和天皇の密命を受け、若き陸軍将校が満州から書き送る報告書「マンチュリアン・リポート」。

    まず、関係書を読んでもなかなか理解が難しい中国現代史、とくに国民党と北部軍閥の勢力争いについてここまで具体的にイメージを持てたことはなかった。また、西欧列強と渡り合いながら当時なりに配慮を重ねていた山東出兵から、一線を越えて踏み越えていく辺りの過程についても、あくまで「当時の軍人の思考回路」という体裁を取りながらもわかりやすく解説。「厳密に取材されたフィクション」の強さ。

    本書の中核は「英雄 張作霖」の造形だろう。本来は、「蒼穹の昴」に始まる浅田の中国現代史シリーズを最初から読むべきところ、いわば「外伝」的な位置づけであろう本書から予備知識なく読み始めてしまったのだが、北方の貧しい馬賊から身を立て、一時は中国全土に手をかけたこの風雲児に著者がいかに入れ込んでいるかはよく分かる。

    「事件の全貌」については、かなり浅田氏の推察が含まれているようだ。例えば、この暗殺実行のため、関東軍は似たような規模の橋梁を二回も爆破してシミュレーションを重ねていたという。そんな記録よく見つけたな、と感心していたら、後で浅田氏のインタビューを読むと、当時の小さな記事からの浅田氏の推測だという。それはそれですごい。

    浅田節とも言うべきファンタジーは今回も健在で、本事件によって脱線する運命にある機関車が独白の形で物語をかたる体裁となっている。このあたりは読者の趣味によって評価が分かれるところだろう。なお、ストーリーとしては、個人的にはラストの「秘密」はちょっと受け入れ難い展開。ただ、昭和史に残る陰謀を巡る謎解き小説としては存分に堪能することができた。

  • 「蒼穹の昴」のシリーズ作品。
    志津邦陽陸軍中尉...治安維持法改悪に対する意見書を撒いたが為
    投獄されるも、さる方の命を受け、張作霖爆殺事件の真相を調べる事に。
    陸軍中佐 吉永将...張作霖爆殺の際、左足を失う被害を受ける。志津の極秘任務を知る一人。張作霖の軍事顧問。
    大元帥府書記 岡 圭...張作霖の側近。志津の任務の手助けを引き受ける。
    鋼鉄の公爵...西太后のお召し列車としてイギリスからはるばる北京へ。25年の眠りを経て再び凱旋の旅と出た。

    中原の虹で馴染みの名前が出てくる度、懐かしい友と再会した様に
    胸が熱くなる。
    張作霖の生き様が回りの者の証言で浮き彫りになって行く。
    張作霖が生きていたら....もう少し彼の時代を見たかった。

  • 『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』に続くシリーズ最終章?
    昭和天皇の密勅を受けた志津中尉の報告書と、西太后の御料車「鋼鉄の公爵」の独白から迫る「張作霖爆殺事件」の謎。
    列車の「公爵」が話し始めた時には、どうなるかと思いましたが、最後にこの「公爵」が泣かせてくれました。

  • 張作霖爆殺事件調査の勅命を受けた志津中尉の満州報告書(マンチュリアン・リポート)。それと張作霖が最後に乗った列車(擬人化)の独白。
    浅田次郎さん、さすがですね。
    最終章、何を持ってくるかと思いながらページをめくると。。。

  • 図書館で借りようとしたら、89人もの人が予約していたので諦めて買いました。シリーズのファンがそれだけ多いということなんでしょうね。
    機関車の語り部分が好きです。志津のキャラクターにはあんまり共感できないというか魅力的に思えませんでした。次作は是非ラストエンペラーふぎを主人公にしていただきたいです

  • 「蒼穹の昴」シリーズの4作目。
    張作霖爆殺事件の真相を探る、というも形になっていて、シリーズの中では「珍妃の井戸」に似ていると感じた。過去の出来事を振り返るという形になっているので、若干、疾走感に欠ける気がした。
    個のシリーズを読んで、中国史に興味を持ったので、他の本も読んでみようと思った。

  • 『蒼穹の昴』シリーズを読んでなかったけれど、話が分からないことはなかったです。ただ要所要所でそこに繋がる物語の存在を感じました。面白かったので『蒼穹の昴』から読んでみようと思います。

  • 浅田 次郎 作品。 『蒼穹の昴』シリーズ 第4部。

    前作、『中原の虹』で、長城を越えた張作霖が奉天で列車ごと暗殺される。その最期の物語。

    陸軍少尉の報告書(A Manchurian Report)と、張作霖が爆殺時に乗った蒸気機関車の独白(A Monologue of Iron)が、並行して展開してゆく。

    が、序章のほうが内容が濃い。結局、明治・大正は、西洋に模倣できなかったのか、追いつけなかったのか、と。日本神道普及のために、大規模な廃仏毀釈までしたというのに。
    そして語る。「かつて貧しい河北の農民たちが糧を求めて長城を越えた。日本人も同様に食わせるだけの耕地がない、産業を支える資源もない。餓死するくらいなら海を越えて満州へ」と。
    しかし、考える。私たちは、そのお陰?で、今日があるのかもしれない、と。
    満州報告書は、残念ながらレポートの枠を超えられず、今までの作品に比べ深みがなかった気がします。ボリューム的にも仕方がないか?


    印象的なフレーズ:「名誉ある撤退だよ、将軍」「負けは負けだぜ」天の星々は、かくも勇敢な人間にどうして冷たいのだろう
    星は一人で読むものさ。男の旅は孤独で、連れ合いは星空ばかり。

    さて、次は大作『天子蒙塵』に挑戦。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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