竜が最後に帰る場所

著者 :
  • 講談社
3.63
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本棚登録 : 1045
感想 : 196
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062165105

作品紹介・あらすじ

闇の中から一歩、また一歩と光射す方へ誘われる、「夜市」の著者の新たな到達点にして最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • R2.12.27 読了。

     「夜市」に続き2作目。不思議な世界観の5編の短編集。恒川さんの小説はとても読みやすく、読後はもっと恒川ワールドに浸っていたかったなあと思いました。
     この5編の中で、パラレルワールドや人生の分岐点を思わせて、冬にしか出会えない夜行の話の「夜行の冬」、不思議なオウムと人の交流を描いた「鸚鵡幻想曲」、親や仲間たちや他の生き物の営みや毛のない猿(人)たちとの交流を通して、自身が成長しながら、竜が最後に帰る場所を求めて旅していく「ゴロンド」が好きな作品です。
     また別の恒川さんの作品も読んでみたいです。

  • 5話収録の短編集。

    「風を放つ」
    短めの一話目。
    ちょっとした悪戯心からしたことに、手痛いしっぺ返しを食らうんじゃないかとドキドキひやひやしたけれど、さらりと終了。ほっとするやら気が抜けるやら。

    「迷走のオルネラ」
    現実の狂気に満ちた事件から、虚実入り混じった物語へ。
    救いを与えるふりをした救いのないお話。

    お話自体に関係ないけれど、
    並行読みしていた「経眼窩式」とかぶる設定があって混乱。
    オルネラという文字になんとなく「ねこひきのオルオラネ」を思い出した。あちらはお爺さんだけど。

    「夜行の冬」
    怖くて幻想的な夜行の光景に、一行に加わりたいと誘惑される。
    結末は好きではないけれど。
    飲み込む闇より、闇に飲み込まれた心が怖い。
    自分が同じ立場でも、同じことをするだろうなと思うのも怖い。

    「鸚鵡幻想曲」
    一番好きなお話。展開に驚いた。
    意外な「偽装集合体」を「解放」したところで終わらず、さらに鸚鵡目線でお話が続く。
    解放者への復讐と、おとぎ話で王子様が呪いを解かれるような結末。
    50ページ強でこれだけ練りこんで、散漫にもならず過不足もない。すごい。

    「ゴロンド」
    竜の半生記ともいえるファンタジー色の濃い一篇。
    彼らが最後に帰った場所はどこだろう。
    広げた想像の翼が起こす風が彼らのもとにも届いたら、
    いつかまた毛無し猿の末裔に会いに来てほしい。

    • 九月猫さん
      まっき~♪ちゃん、こちらにもコメントありがとー!
      お返事はそちらの本棚にφ(・ェ・o)~行くね☆
      まっき~♪ちゃん、こちらにもコメントありがとー!
      お返事はそちらの本棚にφ(・ェ・o)~行くね☆
      2014/07/02
  • 5つの短編集。一番びっくりした話の展開になっているのが、「鸚鵡幻想曲」。この話は、何の先入観なく読んで欲しいなと思います。途中で「えーっ!そっちなの?」ってなります。詳しく書けない。気になったら読んでみて下さい。

    「ゴロンド」は、とても心温まる物語。前に読んだ、「カイムルとラートリー」の話に通じるものがあります。大きくて、一見すると怖い生き物を、愛情たっぷりに描いた作品。私は一番好きでした。どの話も表紙にあるように、動物が関係しています。不思議な話が好きな人におすすめです。

  • とても独特な世界観で、作者の描いた世界に完全に持っていかれるような、不思議な感覚でした。5つの不思議な世界の短編集。
    「迷走のオルネラ」と「夜行の冬」は、柔らかい薄い膜と靄が漂っている様な雰囲気なのに、最後はゾッとする…そんな人間のお話。
    「ゴロンド」が一番好きかなぁ。表題のお話で、とてもとても壮大な生命の物語でした。
    他の作品も読んでみたいな。

  • これまで私が読んだ、恒川さんの作品と比べると、より現実的で、人の心の闇の部分を取り上げた作品が、いくつか見られた短篇集というのが、率直な印象。

    そのなかでも、「迷走のオルネラ」は、クニミツに宗岡、その娘ユキが書く漫画に、コジマアヤカといった、キャラクター同士の関わりが絶妙に絡み合っており、物語としての完成度がすごいと思った。しかし、すごく怖い。オチが私の予想に反して、ファンタジックに救済しているように見えるけど、鳥肌立ったなあ。ちょっと村田沙耶香さんのような雰囲気もあった。

    ただ、そういった作品だけではなく、初期の頃の切ない和の怪談を思い起こさせる「夜行の冬」や、竜の成長を人間のそれであるかのように瑞々しく描く「ゴロンド」等、すごくバラエティに富んでいて、楽しめた。

    個人的に一番好きなのは「鸚鵡幻想曲」。最初は性を感じさせる内容かと思ったら、途中から、不思議な爽やかさを持った、ユーモラスな感じに変化していく展開が面白かった。

  • 本屋さんで「素敵な表紙の本だなぁ…」と手に取ったら、恒川光太郎さんの新刊でした!
    そのままレジへ。

    今回も幻想的な美しさを纏った短編集でした。
    「夜行の冬」は恒川さんらしいホラー…ページから冬の風が吹いてきたようにぞくり。
    「鸚鵡幻想曲」が一番好みでした。
    終わり方が救われるから、でしょうか。

    気付けば恒川さんの本は全部読んでるなー…。
    ホラーなのに読めちゃうのは、お盆に飾る回り提灯のような世界の美しさに酔ってしまうから。

  • 少し不思議な話、五つの短編集。
    雰囲気がとても良いのでゆっくり浸ってるときに読むのがオススメ。
    よくこんな発想ができるなと尊敬してしまうすごく好き。

  • 随分前に読んだものを久し振りに再読、あらためて感動。
    とくに表題作は秀逸。
    5歳の生き物好きの子供に読み聞かせたい。

  • 風を放つ ★★★★迷走のオルネラ ★★★★★夜行の夜 ★★★★★鸚鵡(オウム)幻想曲 ★★★★★ゴロンゴ ★★★

  • 人間のドロドロとした部分を描いた作品が多かったように思います。
    恒川光太郎さんは、人間の欲とか悪意を容赦なく描き出すから読んでいて気分が悪くなることも…
    それに恒川ワールドが加わるとなんとも不思議な世界観になるんだけど。
    最初の三編はドロドロで、最後の二編は幻想的で不思議な気持ちになりました。

  • 面白かった!
    これってジャンルはなんなんだろう?ホラー?ダークファンタジー?
    「風を放つ」特に何も起こらなかったな…とちょい不満。高尾さんが主人公の陰口叩いてたのガッカリしたけど、人間とはそういうものかもしれん。
    「迷走のオルネラ」暴力シーンに苦しくなりながら、マスター・ヴラフの選択に唸りました。ただ殺したりする復讐よりも、怖い。
    「夜行の冬」超おっかない。おっ、ちょっと楽しげな雰囲気来たな、と思った直後の暗転すごい。私も同じことをしてしまうと思う。
    「鸚鵡幻想曲」アサノの手つきがなんだかエロティック。面白い発想ですね。一番好きだったかもしれない。ラストがなんだかファンタジーな感じで良い。
    「ゴロンド」ゴロンド可愛いよキュワワ可愛いよ。彼らが到達した場所に行きたい。

  • 『風を放つ』『迷走のオルラネ』『夜行の冬』『鸚鵡幻想曲』『ゴロンド』の5編。


    設定は違うのに全てに共通感を感じる。全ての話しに漂う空気感が一緒だ。
    好きな空気。
    恒川さんの他の本も読もう。

  • 夜行様、ひきずられそう。怖い。でも行ってみたい。でも絶対行ってはいけない。

  • 幻想というか現世と幽世のはざまみたいな短編5話。

    ・面白かった編
    「鸚鵡幻想曲」
    見たことないのに偽装集合体を何となく想像できてしまう不思議。虫とか鼠とか群成す生き物が怖い、と常々思ってるせいなのか。アサノの解放もエロくて誰もいないのにソワソワしながら読む。色とりどりの鸚鵡も想像するに鮮やかで、「アナタオバカサンデスネェ」をやり返した場面では「風を放つ」とかの流れを汲んで性格悪ーい!(でも当然)と思ったし、文章に振り回されてすごく楽しかった。

    「迷走のオルネラ」
    よく分からないカタカナが出てきて、それから少年の日常が始まって(結構長い)、最初のはよく分かんないけどポエムだったのかなーと思いだした辺りで復讐と夢の実現が始まる所がうまいなと思った。マスター・ヴラフって最初から”虚言”とかヒント付きの名前を付けたのは皮肉なのかどうなのか。最後まで読んで、また最初から読み直して唸る面白さでした。

  • 2020.11.9

    「風を放つ」
    てっきり風を封じた小瓶の力?でマミさんに呪い殺されるのかと思ってちょっとドキドキしたけど、結局何もなくて「えっこれで終わり?」って拍子抜け。
    ぶつりと話が終わってしまって妙に気になる…高尾さんもマミさんもなんだったんだろう。

    「迷走のオルネラ」
    序盤は胸糞悪かったけど、クニミツとコジマのキャラが良かった。クニミツの復讐は優しい。クズ宗岡の娘の描いた漫画からとった名前をクズに与え、洗脳し、かつての自分のような男に制裁を与えるなんて斬新な復讐だ。
    漫画『月猫』のストーリーも幻想的でよかったし、美しいファンタジーと胸糞悪い現実がちょうど良い感じで混ざり合っていた。

    「夜行の冬」
    夜な夜なガイドさんについて歩き続けるとパラレルワールドの次の街に着く。
    縮れ毛の娘が言っていたように、幸せな生活があったのに、一度でもこの夜行に参加してしまうともうもとの生活には戻れないのだから参加してしまったことを後悔して歩き続けねばならない。後悔しても遅い。錫の音が聞こえると次の街ではここより幸せかもしれない、と外へ出てしまうだろう。
    そしていつかアクシデントが起こり闇に呑まれてしまう…。灰色のダウンの男のように錫の音が聞こえなくなってしまった方が幸せなのかもしれない。

    「鸚鵡幻想曲」
    偽装集合体ってなんだよって思ったけどほのかにハッピーエンドで美しい話だった。ほんとに発想がすごい。絶対こんな話、かけらも思いつけない。
    アサノが廃墟の島でネズミを開放したあとはどうなったんだろう?集合体だったものは自分の意思でまた集合体に戻れるのかな。竜郎の妹と幸せになってほしい。

    「ゴロンド」
    竜が海で生まれて天に帰るまで。
    あまりこの手の動物ファンタジーは好みではないかな。

  • ファンタジーっぽい短編集。

    ・バイトの先輩の彼女と電話越しにやり取りする話。ガラスのビンに閉じ込められた妖精は果たして本当に実在するのか。
    ・幼いころ自分の母親を殺したDV男に復讐する話。復讐の方法が有る意味ありがちである意味斬新。
    ・夜に来る不思議な行列に混ざる話。混ざっていく先には別の人生がある。
    ・擬装集合体の話。鸚鵡は南の島に行く。
    ・竜に似た生き物の話。棲家を求めて行く先。

  • この不思議感良い

  • 5つの短編集。
    わたしの知ってる恒川さんの作品とは趣の異なっているものもあって、それはそれで良かった。「夜行の冬」が1番「らしい」感じがした。怖いからかしら?
    「迷走のオルネラ」の復讐の方法が独創的で凄い!こう来たかって唸った。
    「鸚鵡幻想曲」アサノの拡散の手つきが官能的だなあと思ってしまった。仕返し?的な展開も少し痛快でした。割と読み終わったあと寂寥感があるのですが、この作品はちょっと暖かい気持だった。

  • 不思議な話の短編集でした。

    タイトル作は文字通り、龍が生まれて大きく成長し、やがて新天地を目指して旅立つ話。龍が水の中で生まれるというのも初めての設定ですが、なんの違和感もなく読めました。

  • 5つの物語が収録されている短編集。恒川さんの短編はどれもレベルが高くハズレが少ないのが嬉しい。いかに詳しい感想があります。http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou17004.html

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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