死支度

著者 :
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本棚登録 : 27
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062165365

作品紹介・あらすじ

愛する妻をなくして、心にぽっかりと穴が空いてしまった"儂"。そして強まっていく死への思い。やがて儂は、羽毛のかわりに女性の体毛だけをつめた寝具にくるまれて、自ら死の国へ旅立つという、途方もない計画に取り憑かれたのだった。しかし自死は妨げられ、妻の待つ冥土は遠くなり、女性の体毛でしつらえた死の床は、いつしか"儂"の飽くなき性への妄執をはぐくむ、異界のステージへと化していく。

感想・レビュー・書評

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  • 女性の体毛で作った枕と掛布団を着て寝ている老人の妄想。

  • 自と他・男と女の境界
    以前から名前だけは知っていた勝目梓さん。男性なのか女性なのか、あるいは両性具有者なのか…今もわかりませんが、この小説の作者紹介記事に1932年生まれとあったので、81歳になられた方のようです。2010年にこの小説第一刷ということは、発行時78才!
    若輩のワタシにはどう評価したものやらさっぱりわかりません。さまざまな女性の陰毛や腋毛を集めて掛け布団と枕をつくるということの「変さ」に興味を持って読み始めましたが、自と他・男と女の境界を飛び越えた体験たち本当にドキドキさせられました。電車の車内でこの小説の女性描写を読みつつ、ちらと横を見るとにぎやかなおばちゃんたちがおしゃべりをしている…日常とこの小説の格差に慄然とさせられました。

  • 勝目梓78歳、今まさに円熟の境地に立つ。
    バイオレンスでも官能でもない、人生の達人の光と闇うずまく桃源郷への誘いを、けっしてあなたは拒否できはしない!

    42歳からのデビューもものともせず、その後の33年間で300冊になんなんとする著作をものする流行作家となり、バイオレンス官能小説家の名をほしいままにした勝目梓が、にわかに純文学に回帰したとでもいうのか、次々と名作といってしまってはもったいないような燻銀の絶品を、『叩かれる父』『小説家』『老醜の記』と発表し続けています。

    保高徳蔵が主宰した伝説の文学同人雑誌『文藝首都』で中上健次と同席したことも、三十代のころ芥川龍之介賞や直木三十五賞の候補にもなったことがある、彼の作家としての出自を知る者としては大歓迎・大絶賛で迎える一方、熱狂的なその筋のファンからは、バイオレンスも官能もない勝目梓なんて、クリープの入らない珈琲みたいに味気ない刺激のないもの、とでも感じておられるのかどうか。

    それでも本書は、99歳なのに109歳だと吹聴するぼけ老人の儂が、自身をけっしてボケているとは思わず(そらそうです、自覚したボケ老人なんて聞いたことがありません)、ひろげもひろげたり7話にわたって性的妄想を開陳するという官能路線の延長という体をなしています。

    妻を失った儂は、至福の悦楽の境地で死のうと決心し、女性の体毛を大量に集めて詰めて掛け布団と枕を作り、それらに包まれて断食死するというとんでもないことを思いつく。25年と5億円をかけて実行に移す寸前、近所の人に見つかって施設に移されてしまった彼は、ベッドに横たわりながら看護師やほかの老人たちに性的な話を語り続ける。

    中には、愛撫された義足で快感を感じる女性や、女の身体を触ることだけで深く感じ入る彫刻家とか、自分が女になったようにして恍惚然とする者だとか、ともかくさまざまなあらぬ妄想が次から次と登場してヘトヘト状態になること間違いなし。

    2006年の『小説家』で文学遍歴・恋愛遍歴を洗いざらい激白したあと、さて勝目梓はどこへ行く、と私たちに大いなる期待を持たせた彼ですが、ついに川上宗薫のような、老いてもなお若い異性を求めて奔走するという、もっともらしい性のパイオニアにはならずに、老境のなかで性を見つめ直すという新たな世界へと出帆したのです。

    そこには、達観よりも涙が出るほど滑稽な、無様でみっともない、人間の業のようなものが見出されますが、それは、けっして情けなくも悲しくもなく、それこそ私たちは人間だものという思いに、とても深くじわあと感じ入りました。

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著者プロフィール

1932年、東京生まれ。さまざまな職業に就きながら、同人誌『文藝首都』で執筆活動を続け、74年に「寝台の箱舟」で小説現代新人賞を受賞。『獣たちの熱い眠り』がベストセラーとなり、以降、官能とバイオレンスを軸に著作は300冊以上。70代で発表した自伝的な作品『小説家』は読書界で大きな反響を呼び、その後も『死支度』『秘事』『叩かれる父』などを上梓。20年3月、逝去。最新作は遺作となった『落葉の記』(文藝春秋)。

「2021年 『家族会議』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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