末裔

著者 :
  • 講談社
3.31
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本棚登録 : 333
レビュー : 80
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062167376

作品紹介・あらすじ

家族であることとはいったい何なのか。父や伯父の持っていた教養、亡き妻との日々、全ては豊かな家族の思い出。懐かしさが胸にしみる著者初の長篇家族小説。

感想・レビュー・書評

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  • 100ページ目あたりまで来て涙が出てきて困った。そこからまた50ページぐらい進めるとまた涙が・・・

    私は絲山さんのものの中では「海の仙人」が一番好きで何度も読んでいるが、「末裔」は「海の仙人」に近いものを感じさせた。この本もこれから何度か読むことになりそうだ。

    絲山さんがご自身の「絲山」という名前の由来について語っているのを読んだのはどこの文章だったか。それを読んだ時に「先祖」といったような言葉(もしくはそれが誘発するイメージ)に対して格別な思いを持つ作家であるのだなと感じたことがある。

    私の亡くなった父方の祖父なども教養人というわけではなかったように思うが、その本棚に大岡昇平の「レイテ戦記」などが入っていたのを見て、これを昔祖父も読んだのだろうか、という気持ちと、これを読んで祖父が得られたものは私に伝わってきているのだろうか? 伝わってなかったとしたら祖父の死と共にこの本にまつわる思いも消え去ってしまうのだろうか、という思いを抱いたことがある。

    小説を書く動機というのはいろいろとあると思うが、過去に出会った人の歴史を残しておきたい、という欲望も一つだと思う。亡くなっていく人の記録を残していくのは、まさに今生き残っているものにしかできない仕事であるからである。そのような強い意志を私はこの小説から感じ取り、個人的にだいぶ心を揺さぶられた。福田和也さんが「海の仙人」の解説で書いているように、絲山さんはとても「倫理的」なものを感じさせる小説家なのである。

    奥泉光さんはどこかで「歴史というのは書かれないとなくなってしまうのです」と発言されていた。そんな言葉も「末裔」を読みながら頭をよぎった。

    小説のラストへの向かい方に見られるサービス精神のようなものも「海の仙人」などと共通していると感じられた。

  • よかったです。(*^_^*)58歳、公務員の省三。妻に先立たれ、息子と娘は二人とも家を出ているし、しかも、どこかちぐはぐな関係。と、誰にでも、自分もそうなるのでは…と、背中からすぅすぅするような寂しい予感を持たせる設定なのですが、その彼が「会社」から帰宅した自宅には鍵穴がなくなっていた!!!家に入れず、(その家も妻が亡くなって以来、近所でも鼻つまみモノのゴミ屋敷なのだけど)ふらふらとさ迷い歩く省三。実体があるのかないのかわからない者に声をかけられ、泊まる場所は日々確保し、また、ほとんど「会社」を休まないで勤め続けるところが、哀しいような、可笑しいような。叔父が住んでいた鎌倉の空き家にいた、オキナインコのルネが囁くつぶやきが絶妙に物悲しく、可愛らしい。また、死んでしまった黒い犬が水をねだる様子も、何の象徴なんだろう、と考える必要もないような存在感で好きだった。自分は先祖の「末裔」。その危うさがそのまま人間の立ち位置の不確かさとして提示され、なるほどね・・・と。わけのわからない不安が支配している話なんだろうに、妙に面白く、ふわっと柔らかい気持ちになれた。これはもう一度、時間をかけて読みたい。

  • 文学

  • なんと不思議なお話。自分の家の扉の鍵穴が無くなるんだから。向こうの国とこっちの国が交流する。過去と現在が交流する。

  • 47:「家の鍵穴が消滅する」という不条理。幻想的な雰囲気と世知辛いリアルの狭間で、細い糸を辿るように自らのルーツを遡る主人公。絲山さんの作品に特有のブラックさより、佐久の地で見た雄大な空に代表されるような開放感を強く感じました。自分の前にも後ろにも、目が眩むように大きく広い流れがある。「そう考えたら俺なんかまるでどこにもいないようなもんだ」と誰もが感じ、その誰もが流れの一部を作っている。壮大で雄大で、まさに「末裔」というタイトルが相応しい、家族の物語でした。

  • 妻を失い、子供達にも構ってもらえない主人公の男性の話が、鬱々と進むのに、最後の展開についていけなかった。
    結局、人間は基本、楽観的ってことかな。

  • 2017.11.14読了

  • 家に入ろうとしたら、鍵穴が無くなっていた。入れない。 その瞬間から、不思議な場所、人達との出会いが始まる。
    放浪の末に、手に入れるもの、気づくこと。
    深い。

  • 「末裔」(絲山秋子)電子書籍版を読んだ。これは面白かった。シャガールの絵みたいな幻想的で淡く優しい光を感じさせるね。要約すると『わたしはどこから来て、わたしは何者で、そうしてわたしはこれからどこへでも行けるんだ。』って確認と再生の物語。適度な不条理さと適度なユーモアが絶妙です。

  • 自分の家に入ろうとするが鍵穴がない。困っているところで不思議な男に出会い、泊まるところを紹介され一息をつく。しかし数日たつとそのホテルも跡形なく消え、今は誰も住んでいないと思われるが昔お世話になった叔父の家がある事を思い出し、電気も通わない家に泊まる事にする。そんななかで自分の親の事、親戚の事、家族の事を考える、どんどん不思議な人との縁がうむ出来事に巻き込まれていくという不思議なお話でした。

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著者プロフィール

絲山秋子(いとやま・あきこ)
一九六六年東京都生まれ。二〇〇三年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。二〇〇四年「袋小路の男」で川端康成文学賞、二〇〇五年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、二〇〇六年「沖で待つ」で芥川賞、二〇一六年『薄情』で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2019年 『掌篇歳時記 春夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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