NHKスペシャル 灼熱アジア FTA・TPP時代に日本は生き残れるのか

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062167642

作品紹介・あらすじ

ビジネスマン必読!
タイ、中東、インドネシア、中国、韓国の新興巨大市場を制するものが世界経済を制する!

「灼熱アジア」の二つのテーマ
NHKスペシャル「灼熱アジア」は、二つの意味において象徴的なシリーズとなった。一つは「アジアの時代」の到来を現場の映像から実感せざるを得なかった点、もう一つは、日本経済、あるいは日本企業の競争力が揺らぎ始め、アジアの勃興に頼らざるをえない側面があからさまになった点である。「アジアの勃興」と「日本企業の減速」……今回、この二つが一つのテーマとして同居することになった。――<「プロローグ」より>

感想・レビュー・書評

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  • NHKスペシャル取材班著「灼熱アジア」講談社(2011)
    *リーマンショック前年にバブル破綻を予測したことでしられるアナリスト、モハメドエラリアン氏が著書「市場の変相」でこう語っている。(1)新興国は世界経済の重要で持続可能な成長エンジンでありその役割を強めて行く事になるだろう(2)結果としてアメリカ経済のパフォーマンスに影響される度合いが低下する(3)その入れ替わりは新興国経済が輸出主導型から内需主導型へ転換する構造変化と同時におきる(4)新興国は一段と相互依存を深め、特にアジアでその傾向が強くなる
    *中国やインドなどと関税ゼロでつながるタイはいまや世界の製造業の主戦場となっている。日本をはじめとする外国企業のタイ進出の目的は安い労働力からアジア市場への進出に変わった。バンコクの国道7号線はタイの物流大動脈である。バンコクとタイ最大の輸出港レムチャバン港を結び、その沿線には工場団地がたちならぶ。最大の「アマタ工業団地」だ。チョンブリ県とラヨーン県の2つの敷地にトヨタ、ソニー、三菱、リコー、ブリジストン、デンソー、ダイキン等等の日本企業が進出しており17万人が働いている。
    *タイの跳躍の原因は、FTAがある。2000年はじめ頃タイはASEANの中で強いリーダーシップをもっており、その時期にASEANのFTAネットワークを強く推進。それが当時のタクシン首相であった。ASEAN域内だけで貿易自由化するだけでは不十分と感が、インド、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国など矢継ぎ早に独自の2カ国間FTAを締結して行った。こうしたタイ国の戦略が大きく関係している。
    *ASEAN域内の関税撤廃は2010年1月1日からASEAN先行加盟国6カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)ですでにスタートしている。同じく10年1月1日には、ASEANと中国との間の自由貿易協定、そして韓国とのASEANとの間でも関税撤廃がスタートした。関税撤廃のスケジュールはこれからが本番である。ASEAN先行6カ国は2012年オーストラリア、ニュージーランドとの間でも関税を撤廃する。2014年にはインドとの間でも同様に締結予定。2015年にはASEANの後発4カ国(ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)も先行6カ国と同じ関税撤廃のレベルに追いつく。この15年をもってASEAN経済協力体が本格的に誕生する。
    *ただ、この関税撤廃も100%すべての関税がなくなるということではない。約90%の貿易品目は一般的な品目とされて、その関税が撤廃される。それ以外は例外品目とされ、何を例外とするかはそれぞれの国の都合で決められる。タイは現在ASEANだけではなく、独自にインド、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、日本などとも結んでいるためさらに有利といえる。
    *ASEANの6億人、そこに中国、インドをくわえると32億人のアジア巨大市場が形成されようとしている。その中心となることをタイは狙っている。ASEANは、生産基地としてばかりではなく、市場としても急速に成長している。ASEAN10カ国を併せた人口は5億7千万(約6億人)、これはEUの5億人、NAFTA(北米自由貿易協定)の4億人を上回る市場規模である。また、購買力のある中間層が急増しており、ASEANは中国とはまた違う形でこれから世界有数の良質の市場になる潜在力を秘めている。
    *タイはバランス感覚にすぐれこのような戦略を練っている。ASEAN10カ国とインドや中国、韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、32億人の巨大市場の中心的位置にたって各国との良好な関係を保つタイの魅力は計り知れない。
    *イスラム教の相手では、みずから額に汗する事なくお金を貸して利息を稼ぐような行為を否定している。賭け事をはじめ不確定なものにお金を託する事を禁じている。また保険のように死ぬか分からない事にお金を投じることも基本的には禁止である。一般的な人々はあまり銀行口座をもっていない。その理由は宗教的な理由もある。1つにコーランで利子が禁止されているのだ。2つに、銀行への信頼性がなかったことがあげられる。アジア通貨危機のときなどお金が返ってこなくなっていた。3つに物価上昇がつづいており、預金より貴金属などで資産運用を考えていた。
    *イスラム金融では利息はだめだた割賦販売は大丈夫である。そので金融機関がバイクを仕入れ、それをローンではなく何回かの割賦販売でうるという仕組みだ。割賦販売の金額の中にローンの金利に相当する金額が販売手数料として上乗せされている。上乗せ分は利子ではないという理屈になる。

  • 「灼熱アジア」というNHKスペシャルの書籍版

    タイへ企業が進出する理由はASEANのFTAが目的であること、サムスン躍進の背景には国家の強いバックアップがあったことなど、”アジアの今”が感じられる本だった

  • 世界経済が立ち直れないのを尻目に成長するアジア市場で生き残りをかける日本企業の姿に迫る話題作。僕もこのシリーズはテレビで見ていましたが、書籍化したものを改めて読んで、アジアの力を思い知らされました。

    実のところを言うと、僕はこの番組を見ていて、先日、これが書籍化されたことを知って、今回やっと手に入れて読んでいました。改めて読んでみて、タイ。インドネシア。中国。韓国…。とそして、原油産出国である中東の各国は発展が目覚しいですね。タイでは現地の若者が日本人の指導を受けながら日本と同等かもしくはそれ以上の旋盤技術を持ち、インドネシアでは通勤にバイクを使うようになり、それをローンで買うがゆえに審査をみずほ銀行の現地法人が交渉の末に彼らとともにビジネスをする姿が描かれていたり、アラブ圏では現地の労働者と日本企業の人間がひとつの仕事をする姿が描かれていて、時代は、そして世界は絶え間なく動いているのだな、ということを実感せずにはいられませんでした。

    そして、自分の国の技術を売り込むために中国や韓国がトップが行うトップセールスで発展しようとするアジア各国に出向いているということにも衝撃を受けました。彼らはここまでやるのかと。よく、21世紀は「アジアの時代」といわれ、この本の中でも「脱欧入亜」とまで言われていますけれど、彼らの生み出すエネルギーや昨日よりも今日。今日よりも明日、という姿勢には僕らも見習うべきところが多いのだと感じました。今後、アジアでビジネスなりなんなり、とにかく日本以外で、生き残っていこうと模索している会社や個人にはぜひ読んでいただければと思います。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:332.2//N69

  • 世界経済を制する必要がどこにあるんだ?グローバルって何だ。ささやかな人生を当たり前に生きたい大部分の人たちの役に立つの?

    第一章 タイ 脱日入亜 日本企業の試練
    ASEANのFTAが魅力的に見えるのは、共存共栄のシステムが働いているからだ。アメリカと日本が対等な立場で交渉できるとは思えない。不平等な立場で結ぶFTAは、スマートで現代的な植民地政策になってしまう。

    急成長中で物欲が出てきたアジアの国々も、何十年化したら断舎利とかシンプル主義とかが一番だってなるのかな。経済的な成長と伝統を共存させることができるのかな。

    第二章 中東 砂漠の富の争奪戦
    アブダビは、アラブ首長国連邦の首都。アブダビでは、マスダールシティという名のエネルギーの実験都市を作る計画が進んでいる。世界各国の次世代エネルギー技術をマスダールシティに集めて、ポスト石油時代に備えているのだ。

    石油の恩恵を受けてきた中東諸国は、ポスト石油時代に向かって動き始めている。クリーンエネルギー先進国、輸出国を目指しているのだ。

    第三章 インドネシア 巨大イスラーム市場を狙え
    マイクロファイナンスとは、貧困層への小口金融のことだ。ただの生活支援ではなく、貧困からの脱出を目的としている。商業的に成功しているマイクロファイナンス企業は実はそう多くはない。インドネシアのBRIとバングラディシュのグラミン銀行が数少ない成功例だ。
    BRIは地場銀行、庶民銀行といっても、総融資額は2兆円、これはインドネシアの金融機関の中で最大の規模だ。社会的使命を背負って、きめ細やかなサービスを顧客に提供している。日本の農協や郵貯と似ているらしい。とは言え、農協も郵貯もよく分からない。

    宗教的、民族的な問題が多発している地域では、しがらみを持たない日本人という立場は強みだ。この強みを生かして、民族問題の激しい地域に学校を建てた人の記事を読んだことがある。子どもたちを対立している民族の教師や生徒のいる学校には通わせない現実がある。けれど長年の確執にまったく関係のない第三者が建てた学校なら、対立している民族の子どもたちと机を並べることへの抵抗感が少なくなるらしい。

    日本人の強み。サービス業。文化。無宗教。技術。

    第四章 日韓中 緑色戦争
    韓国企業は、政府の支援を受けつつ、まず相手国、現地の人々を理解したうえで、本当に必要としているものをしっかり見定め、堅実なセールスを展開している。

    メイド・イン・ジャパンであれば何でも売れる時代は終わった。

    「廃水ゼロエミッション化産業技術研究所」は北京にある研究所だ。大和化学工業の土井順一社長を中心として、究極のリサイクル技術の開発を目指している。廃液や廃棄物を再利用することで、将来的にこの世から廃液や廃棄物を無くせるかもしれない。

  • 友人から是非と寄贈されて読了。
    欧州もアメリカも苦しい状況の中で、今熱いのはアジア。
    本書で印象深いのはインドネシア。
    まだ訪れたことがないので、仕事でもプライベートでも、現地に行って熱気を感じたいと思った。

  • 時間切れにつきタイの章しか読めず。映像も観たかったです。

  • TVで見ていたがやはり本で読むとしっかり頭に入る。来れからはアジアの市場がどんどん大きくなる。日本はその波に絶対乗るべきだ。私もまず現地に出向いて息吹を感じて来たい。

  • 脱日入亜のための日本企業の戦略。事例をもとに、日本企業の問題点、なぜ韓国、中国に負けるのかが描かれている。日本企業のなんとかしなければ、というアツい思いに自分もアツくなった。

    「政府のお墨付きのもとで働いている韓国企業に対して、日本の企業は何を頼りに勝負すればいいのか。技術は日本の方が優れていますよ、と言い続けるしかないのか。」/灼熱アジア「日韓中、緑色戦争」

    「日系企業が今後生きていくためには、今までの輸出型でなく、現場に根ざした仕事にどんどんチャレンジしていく。それが生き残っていく道なのかな、と。」三井物産インドネシアBAF/高木さん

    「世界で、これだけ日本人の存在感がなくなって。それを回復するためにも、日本人はこんなにすごいんだと、もう一回見せたいじゃないですか」千代田化工/久保田社長

  • アジアの経済規模が急激な勢いで成長・拡大を続けている。経済規模の拡大に伴い、アジア各国の収入レベルがあがり、大きな市場を形成しつつある。また、各国の企業は、拡大し続ける市場で企業自体の成長を果たすため、勝ち残りを目指してグローバルに、ダイナミックに活動をするようになり、韓国のように、それを政府が政策面で後押し、支援するような動きも始まり、アジア市場での競争も熾烈になりつつある。「灼熱アジア」とは、NHKスペシャルのシリーズの題名であるが、そこでは、勃興するアジア各国の市場を紹介すると同時に、そこでの競争、その競争の中での日本企業の活動を紹介している。本書の中では、アジア市場での日本企業の、どちらかと言えば悪戦苦闘ぶりを中心に紹介している。日本の経済成長率は低下し、成長を求める企業は、成長を続けるアジア市場に活路を見出さざるを得ないが、現地の仕事の仕方に合わせることが出来ないでいるために、あるいは、大型の国家プロジェクト案件などでの日本政府の後押しが充分でないために、あるいは、高コストのために、また、現地のマーケティングが充分ではないために、苦戦を強いられているというような感じでの紹介のされ方である。僕の住んでいるタイの経済成長、その中での日本企業の苦戦ぶりも、本書の第1章、ということは、番組の第一回目で紹介されている。番組の意図から、あえてそういう悪戦苦闘ぶりを中心に紹介したことは分かるのだけれども、若干の違和感を感じる。街を走っている自動車とバイクの大部分は日本の会社のものだ。日本から輸出しているわけではない。タイ現地で生産されているものだ。トヨタやホンダ、日産など、ほとんど全ての日本の自動車メーカーはタイに工場を持っていて、現地で販売するばかりではなく、世界各地に、日本にさえ輸出をしている。トヨタはハイブリッド車の生産もタイで行っている。スーパーマーケットに行けば、あるいは、コンビニエンスストアに行けば、たいていどこの店にも、カルビーやグリコのお菓子を売っている。もちろん、成功している企業ばかりではないはずだ。タイのマーケットを目指して、あるいは、生産基地を持つ目的で進出してきたが、うまくいっていない企業、あるいは、既に撤退した企業もあるだろう。タイには日本企業対象の商工会議所まであるが、毎月、新規会員企業、撤退する脱退企業が紹介される。何が言いたいかというと、成功する企業もあれば失敗する企業もあるということだ。これは、何もアジア市場だからということではなく、日本の、あるいは、欧米のマーケットでも普通にあることだ。日本の中でも全ての企業が成功しているわけではなく、全ての企業が失敗しているわけではない。中国やインドやASEAN諸国が大きなマーケットを構成している、あるいは、構成しようとしていて、そこにビジネスチャンスが存在するということは、企業人であれば誰でも知っていることだ。そもそも言葉からして違うわけだから、そこの市場で受け入れられようとすれば、日本での活動と同じことをしていては駄目だということも、当たり前のことだ。おそらく違和感のもとは、何を今ごろ、ということだったのだと思う。ただ、それでも、ネタ的には面白い話が紹介されていて、これはテレビ番組的には面白かったのではないだろうか、とは思う。

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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