麒麟の翼

著者 : 東野圭吾
  • 講談社 (2011年3月3日発売)
3.85
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  • レビュー :1167
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062168069

作品紹介・あらすじ

ここから夢に羽ばたいていく、はずだった。
寒い夜のこと。日本橋の欄干(らんかん)にもたれかかる男を巡査が目撃する。男の胸にはナイフが刺さっていた。
大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。

加賀恭一郎シリーズの9作目。2012年『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』として映画化される。

麒麟の翼の感想・レビュー・書評

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  • ある寒い夜、日本橋の麒麟像台座にもたれかかる男に声をかけた巡査は、男の胸にナイフが刺さっているのを発見する。
    男はそのまま息をひきとり、都内で緊急配備がひかれる中、不審者が見つかる。
    不審者は職務質問中に逃走し、車にはねられ意識不明の重体に。
    男の潜んでいた茂みから、被害者の鞄や財布が見つかったため、強盗殺人の容疑者として捜査されることになる。
    捜査の中で、被害者と容疑者の接点が見つかり、捜査本部の中では事件の方向性が固められていくが、加賀は事件の真相は別のところにあると考えていた。

    「殺人事件ってのは、がん細胞みたいなものだ。ひと度冒されたら、苦しみが周囲に広がっていく。犯人が捕まろうが、捜査が終結しようが、その侵蝕を止めることは難しい。」

    「公式を覚えれば、いろいろな問題が解けるようになる。ところが最初に間違ったことを覚えてしまうと、何度でも同じ間違いを犯すことになる。そういうことってありますよね。」

    まさに、がん細胞のように広がっていく苦しみの連鎖を、まざまざと見せつけられた気がする。
    苦しみ癒えないうちにマスコミから追いかけられ、さらには叩かれるようになる被害者の遺族。犯人として扱われる容疑者の恋人。「死人に口なし」とばかりに自分の利害を優先して動く周囲の者たち…。
    加賀さんは、常人なら適当な理屈をつけて無視してしまうような小さなひっかかりを見逃さない。
    なぜ容疑者は穴のあいていない靴下を探したのか?なぜ被害者はコーヒー2つを注文したのか?なぜ被害者は色紙の半分から折りだしたのか?
    そして、被害者は、ナイフが刺さった状態で、なぜ日本橋の麒麟像まで歩いて行ったのか。
    そこにこめられたメッセージはなんだったのか…。

    真相を知ったとき、父の思いに涙する。

    でも一方で。
    人の気持ちにこれだけ敏感で、観察眼の優れた人が、身近な人(お父さん、松宮さん、金森さん…)の気持ちにはあまり頓着しないんですよね。
    いつ見えるともわからない真相の解明に向けて、労を厭わず、小さな事実の断片を拾い集めながら、「父の思い」を辿る加賀さんと、実の父親の三回忌を設けるべきだという周囲の意見に耳を傾けず、金森さんの好意を適当に扱う加賀さんと、この落差をすごく感じさせられる。
    仕事人間で家庭を省みなかったというお父さんを恨めしく思っていたはずなのに、同じ道を歩んでしまっているんですよね。
    加賀さんは事件に関してはスペシャリストでも、完全でも完璧でもない、ひとりの人間なんだなぁ。

    「ほんの少しだけお父様のお気持ちも考えていただけたらと…。私からのお願いです」
    金森さんの言葉は、どこまで届いたのだろうか。
    加賀さんが本当の意味で、お父さんと向き合える日は来るのだろうか。

  • 今まで"ミステリーの類"を好んで読まなかった、と言うのは

    人が、謎解きの為の道具でしかない様な気がしていたから。

    核となる(推理)の為に、人が人を殺したり、
    トリックの辻褄を合わせるために若干苦しいストーリー展開となったり。
    (それでも読者は暗黙の了解)

    当然のごとく、
    (あやつり人形)に心を重ねることは出来ない。
    推理小説の正しい読み方を知らない私は、そんなわけでこのジャンルの類とは疎遠になっていた、わけであるが…。

    東野ミステリーを読んでからは、あっという間にそんな思いが消えた。

    なぜなら
    彼の小説のなかでの登場人物は皆、魂をもっていたからだ。

    この忘れっぽい私が、
    あのシーンでのあの言葉を、何度も何度も思い出してしまう。

    思い出しては、胸に熱いものが込み上げ、
    (読んでよかった!)というよりは
    (出会えてよかった!)
    そう思えてしまう不思議な感情。

    私の生きた鼓動に、もはや架空の人物などではない彼らが、関わりを持とう、としている意志さえ感じられたのだ。

    ふらふらと胸にナイフが突き刺さったまま、歩き続けていた男が、ついに翼のある麒麟の像の前で力尽きた。

    犯人と見られる男は警察からの職務質問を受けている最中に逃げ出した所、運悪くやってきた車にひかれて、死亡。

    二人には関わりがあり、
    犯人には動機も、又被害者にも恨みをかうだけの理由もあった。
    と、いう事で事件は無事解決…したかの様に思われていたのだが。

    被害者、犯人、双方死亡。死人に口なし、と言う状況で、
    これまで彼らと共に生きてきた家族は、
    どこまで
    『完璧で隙もなく、閉じられようとしている一事件のファイル』に
    (誤)を見出すことが出来るのか?

    (誤)を見出すと言うことは、どこまで家族を信頼してきたか?と言う事だ。
    加賀、松宮、頼りになる両刑事と共に、
    普段どれほど家族と心通い合わせているか?

    家族が何を思い、何を考えて行動してきたか?
    を、推理とともに、深く慮った時間が、とても貴重に思えてならなかった。

    • kwosaさん
      MOTOさん、こんにちは。

      基本的に未読のミステリのレビューは、ネタバレを恐れて読まないようにしているのですが、MOTOさんの『麒麟の翼』のレビューは冒頭の一文からひきこまれて一気に読んでしまいました。

      僕はミステリは好きなのですが、なぜか東野圭吾を遠ざけてきたところがあります。
      しかし、MOTOさんのレビューで俄然興味が湧いてきました。
      ありがとうございます。
      2013/03/12
    • MOTOさん
      kwosaさんへ

      またまた嬉しいコメントをほんっと~にありがとうございます!
      ぽんっと、心をここに置いただけなのに、そんな風に褒められて、私は大変な幸せ者だなぁ~と、しみじみ感じ入っております♪

      ところで、
      世の中にある本を出来れば全て読破してみたい願望はあるけれど、(おそらく無理だろう)と、認めている本能が、遠ざけている作家さんって、
      私も何人かいます!

      ですが、
      縁があれば目の前にふっと現れるものなんですよ♪本のほうから。^^♪

      東野さんはそんなわけで出会えて良かった!と思えた作家さんのひとりです。
      自分の気持と重なる作家さんとは、出来ればたくさん知り合いたいものですね。


      2013/03/13
  • 先に映画を観てしまったのでどうしても悠人が松坂桃李さん、香織が新垣結衣さんで変換されてしまいます。加賀が阿部寛さんなのは言わずもがな。

    何かが起きてしまったとき、正しい判断が出来るか、またそう行動できるか。最期の力を振り絞って父が息子に伝えたかった想いとは…。

    もう一つの核でもある、派遣切りの話も悲しいなー。

  • 映画を見てから読了、若干のアレンジは加えられているものの、
    丁寧に映像化されていたなと、加賀さんは阿部さんでしか再生されなくなりました。。

    物語は、日本橋での行きずりの殺人から始まります。
    犯人と目された人物は事故で意識不明。

    そのまま収束をはかりたい上層部の意向を気にもせず、
    加賀の粘り強い捜査は、一枚、また一枚と真相をはいでいきます。

    題名でもある“麒麟の翼”に込められた想いは、なんて。

     “人は誰でも過ちを犯す。大事なことは、そのこととどう向き合うかだ。
      逃げたり目をそらしたりしていては、また同じ間違いをする”

    “いのち”に対する様々な答えを喚起させるラストが印象的で、
    人を教え育むことの責任の重さをあらためて、実感です。

    ん、小説は時代を映す鏡とは、よく言ったものだなぁ、とも。

  • 最後がいまいち。
    すっとしない。
    ぼんやりと完結しないまま終わったな~。

    無難にはまとまってるけど、その罪はそれで許されるの?
    それだけ?
    とモヤモヤだったのが残念でした。

  • 加賀恭一郎シリーズ最新作。
    日本橋の欄干にナイフで胸を刺された男がもたれているのが発見された。
    大都会の真ん中で起きた事件に加賀が挑む。
    シリーズ最高傑作と帯に謳われ、しかも書き下ろしということで、尋常ではない期待をして読みました。
    事件の奥に潜む真実を地道な捜査で説き明かしていく様は圧巻です。
    隠された真実はとても深く悲しいものですが、その中にも温かなものを感じ取ることが出来るようになっています。
    また今作は今まで以上に加賀の素の部分が多く描かれており、そういった面でも読みごたえがあります。
    ただ個人的には前作の「新参者」が素晴らし過ぎたので、それと比べると若干ではありますが、間延びした印象を受けてしまいました。

  • 加賀恭一郎シリーズ。今回もなかなか深い内容でした。一つの過ちが、さらに大きな過ちを生み出すなんて、とても悲しい結末ですね。皆が被害者になってしまう前に、解決方法があったはずなのに…コミニュケーションって大切ですね。キリン君が目覚める日が来ますように…。

  • 日本橋で殺された中年男性。犯人と思われる若者は意識不明。
    なぜ被害者はそこにいたのか。
    明かされる被害者と犯人と思われる男の関係。
    見え隠れする被害者とその息子の関係。

    みんな大好き加賀恭一郎シリーズ。

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    被害者が息子たちのために祈りを捧げ、償わせて更生させようとしていたのにはしびれた。
    裏ではいい父親だったのに、本当かわからないけど労災隠しの犯人にされて無念すぎる被害者だった。

    子どもたちのことの過ちと対峙して死んでいった父親と、
    一瞬の過ちで死んでいった、犯人にされそうになった若者とその彼女。

    親がいなかったけど、東京で必死に生きていた若者ふたり。
    子どもたちのことを思ったあまりに殺された被害者。

    非常に重い対比だった。
    せめてもの救いは残された彼女がまた親になること。

    過去のプール事件の被害者の子が一番かわいそう。
    加賀さんの発言(お説教含む)が正しすぎて、金八先生かと思った。

  • 加賀刑事シリーズ。
    「犯人が特定されても、被害者や加害者が苦しんでいる限り、事件は終わっていない」と言って加賀刑事が誤解を解きほぐす。
    お父さんが労災の隠蔽に関与していたのか、それも加賀刑事にはっきりして欲しかった。
    伏線の取りこぼしがあるような印象。

  • 何故、あの場所まで、被害者は歩いてきたのか?
    終盤まで、真犯人わかりませんでした。

    家族って中々分かり合えないもの。
    父親が自分をどう思っているのか?
    何をしているのか?
    最後の最後で救われた気持ちになりました。

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