怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること

著者 : 佐野眞一
  • 講談社 (2011年11月16日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062168137

作品紹介

三國連太郎。八八歳。俳優生活六〇年。出演作の役柄以上に、波瀾に富む人生を歩んできた稀代の俳優の正体は何か?戦後映画界を疾走した「生きたフィルモグラフィー」に佐野眞一が挑む。

怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけることの感想・レビュー・書評

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  • 恥ずかしい話ですが、僕は三國連太郎のことを『釣りバカ日誌』のスーさんとしてしか知りませんでした。ここには映画界の『生ける伝説』となった彼のインタビューと自選した主演映画を彼自身の解説で追ったものです。

    僕は三國連太郎のことを『釣りバカ日誌』でおなじみの『スーさん』しかよく知らなかったので、今回、佐野眞一さんが彼の生きてきた足跡を自身へのインタビューと三國連太郎が自ら選んだ10本の映画を自身の解説とともに振り返るという、なんとも豪華な内容になっていました。

    ここに取り上げられている映画は僕自身が不勉強なので恥ずかしい話、ひとつも見てはいませんが映画以上に波乱万丈の人生を三國連太郎が送っていることを、改めてこの本から知ることができました。被差別部落出身ということを自らカミングアウトしたことに始まって、両親の『性の営み』を偶然見たことに端を発する女性への屈折したまなざしと奔放な女性遍歴。さらには戦場での体験や、俳優になるまでの『放浪生活』の話。俳優としてのキャリアをスタートさせたらさせたで、撮影時の役作りの鬼気迫るような入れ込みぶりから共演者との常軌を逸したような撮影エピソードの数々。

    ご存知の方にはいうまでもないことですが、『五社協定』を彼が始めて破り撮影所の前に『犬、猫、三國入るべからず』と張り紙までされたというくだりには並々ならぬ起伏に富んだ人生を生きてきたんだな、というある種の畏敬すら覚えてしまいました。役作りにいたっても歯を抜いてしまうのは序の口で共演者の女優を殴る場面では本気で殴り、田中正造を演じた役では鉱毒にまみれた土を喰らい、千利休を演じたときは役作りのために表・裏。両千家のお茶の稽古を一日8時間行い…。などのことが本人の口から語られております。

    今後、どれだけの時間がかかるかはわかりませんが、ここに取り上げられている作品から三國連太郎主演の映画を見て、この稀代の俳優(わざおぎ)がスクリーンに刻み付けた『生き様』を見てみたいと純粋に思ってしまいました。

  • 以前、三國連太郎が書いた本の方が、生々しかったような気がします。

  • うまい役者でなく、真面目な役者になる。
    全力全霊でやる。
    そうしたら、スカっとする。

  • するすると読み終わりました。だから面白かったんですね。

    どんな本かというと、以前に有線放送か何かの企画で、三國連太郎が自分の出演映画から10本選ぶ、というのがあったらしい。で、その10本について、あるいはその10本を話の入口にして、佐野眞一さんが三國連太郎さんにインタビューした。そのインタビューそのものと、佐野眞一さんの三國連太郎についての考察やルポルタージュ的な記述。そういう本です。

    とにかく、三國連太郎のインタビュー部分が、オモシロイ。
    ぶっきらぼうだったり、役者や監督の批評をしたり、裏話、佐藤浩市について、緒形拳について、そして自分の無茶苦茶な人生について。オモシロイ。

     良くは知らなかったけど、三國連太郎さんは、所謂被差別部落民だった祖父、そこから逃げるために流れ者的な電気工事夫だった父、そして何故か網元のお嬢さんだった母を持っている。
     で、父と母もワケアリな関係で、後年大俳優になってから、母が死んだ後で、父から、「お前は俺の子じゃない」とか言われたりします。ほとんど笑うしかないような生い立ちです。
     10代から不良で、家出、女遍歴、ほぼ最底辺労働者のような流れ者になり、徴兵から逃亡し、だが実母が官憲に告げ口し、連れ戻されて出兵。中国で死線をくぐって終戦。生きるために銃撃戦の中、肥溜めに一晩漬かっていたという。
     中国の収容所でも生きるためにまず、民間人を偽装。夫婦連れの方が日本に帰りやすいと聞いて偽装結婚。そして帰国。その後も流れ者的な破滅人生を歩んでいて、26歳くらいで銀座の路上で松竹の社員にスカウトされて、映画界入り。この映画界入りの挿話は、本当かぁ?と思うんですけどね。あまりに出来すぎというか・・・何か絶対ウラがあるんじゃないかと思うんですが・・・。

     で、映画界入りして以来、木下恵介、市川崑、稲垣浩、内田吐夢、山田洋次、小林正樹、今村昌平、勅使河原宏、山本薩夫、高倉健、渥美清、坂東妻三郎、高峰秀子、田中絹代、有馬稲子、伊藤雄之助、三船敏郎、淡島千景、岸恵子、勝新太郎・・・らと仕事。
     そんな人々についての感想などもあり、そのへん、オモシロイ。
     黒澤と小津は、ないんですね。そのへんについても語ってますが。

     松竹入社から、五社協定時代に東宝に移籍。当時の芸能ジャーナリズムに叩かれた。
     女遍歴も奔放で、太地喜和子との恋愛は当時大きな話題に。
     30代でもう演技派の地位を作って、その後も商業主義的な作品にあまり出ず、ギャラの安い独立プロ系の作品も厭わず出演。
     女性と別れるなどのきっかけで数度、文字通り裸一貫になったり、突然インドやら外国に全てを捨てて行ってしまったり。
     一方で異常に俳優としての役作り、演技の深みにこだわり、負けず嫌いで、執念深い。
     と、言うわけで日本映画史の見取り図や戦後日本史の全体像が分かる人には、するする面白く読めちゃう。多分、そうでもない人も、三國連太郎という異常な人に興味もてば引き込まれると思います。
     その自選10作品について、という切り口で本は作られてるんですけど、佐野眞一さんが、それら映画について、こういう場面、とかって言葉で説明するんですね。その辺の文章が、さすが佐野眞一ですね、面白く読めます。観てなくても観たような気になるし、観てみようという気になりますね。

     ただ、佐野眞一さんの本は何冊目かなんですが、まあ、コレはそんなに深い取材は要らない本だよな、という感じですね。映画業界の経済的な歴史やスタッフワークについての言葉とかは、やや、勉強が浅い(笑)。
     あと、三國連太郎の生涯や仕事を、何かと戦後日本の精神史に関連づけていこうとする言葉も、別に要らないですね。そんなに、説得力ないですしね。
     単純にハードボイルドに三國連太郎という役者の公私を見つめるだけで、テーマ性や社会性は読者が勝手に見出せばいいじゃん、と思いました。

     佐野眞一さんの本って、なんだかんだ言って最大の美徳は娯楽的であることだと思うんですよね。ノンフィクションな分だけ余計に、ドラマチックに語る。単純に面白い。それから、やはりある全共闘世代的なインテリ左翼的方向に微妙に傾いた精神ですね。これはまあ、どっちにせよ完全中立とか有り得ないので、それはそれで僕は嫌いじゃないです。

     ただ、この本は、評伝でもあるけどインタビュー本でもあるわけで、とにかく三國連太郎の言葉がオモシロイので、いっそ「ヒッチコック×トリュフォー」的な、インタビュー本、という形式でも良かったのでは、と思います。

     正直、「あー三國連太郎さん死んだなー」と思っていたらジュンク堂で平積みされてたからフラっと買っただけで。本自体は2年くらい前の本なんで、見事に書店さんの誘導にハマった訳ですが、面白い本でした。

  •  著者の著作である「あんぽん」「枢密院議長の日記」等を読むと、まさに当代一流のノンフィクション作家と太鼓判を押したくなるほど、面白くかつ深い内容で感動したが、「昭和が終わった日」と本書「怪優伝」は、まるで別人が書いたかのように面白くない。
     本書は、「三國連太郎」という多くの「伝説」がある「怪優」を取り上げて、その作品群と時代背景を書き込む中で、人物像をうかびあがらせようと、膨大な調査はしていることはわかるが、本書において「映画・演劇」の特殊な世界を、誰もがわかるように描き出しているとは思えない。
     「面白いノンフィクション」とは、普通人が経験できないような「異世界」を、驚きとともに紹介することが欠かせない条件と思うが、本書はそれができていないのではないだろうか。 
     残念な本であると思う。

  • 一人の魅力ある人物を辿ることは
    その人物が生きてきた
    その時代を写し取っていくこと

    10本の映画を縦軸に
    そのときの時代に生きている
    役者たちのありようを横軸に

    最後まで
    たっぷり
    楽しませて
    もらいました

  • 三國の父親が電器修理の技術を身につけて被差別部落から出ていったのは週刊誌あたりでもオープンで話していること(ただし、テレビには出ない)だが、ここでは実の父は母親が奉公していた先の軍人であることが明かされている。では、「血」からいけば部落とは関係ないじゃないということになる。
    もちろん部落差別に根拠があるわけがないのだが、ますます無根拠になったわけで、それでも差別はあったのだから奇怪な話。
    そういう奇怪さが自分以外になりきる力とつながってくるこのデモニッシュな役者のありようがわかりやすく出ています。
    わかりやすすぎてデーモンは少し薄れていますが。

  • 主に本人へのインタビューがベースになっているせいなのか、何となく遠慮がちな文章になっているような気がする。
    同時代を生きた俳優、女優、監督らについての三国氏の印象が、実に正直でその点は面白かった。

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