赤の他人の瓜二つ

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 174
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062168823

作品紹介・あらすじ

血の繋がっていない、その男は、私にそっくりだった。青年の労働の日々はやがて日眩くチョコレートの世界史へと接続する-。芥川賞作家入魂の"希望の小説"。

感想・レビュー・書評

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  • 時々、小説を読む。安部公房みたいなタイトルに期待したが、手に取ったこの本は、間違いだった。脈絡なく、時代も主体も遷移する。二人の肉体や能力、環境などの初期設定が同じなら、その後の人生は、似通ってくるだろうか。まるで双子比較のような思考実験だが、本作は更にメタ。小説家という複数の人生を操る身分が陥る体感を、修辞的に用いた錯視。近接した距離感では気付かない、気付かせない、瓜二つな赤の他人。神=作家のみが知る、関連性や自在性。

    ー これまでに経験し記憶している一切は、自分と言う一人の人間の死と共に跡形もなく消え失せてしまうものなのか。

    テーマや狙いが透けて、読み手に甘えているので面白い小説ではなかった。だからどうした、と。残念ながら、感情がリンクしない。

  • 読みながら、筋を追うことは一切諦めていたが、今読んでいる1行が、次の1行への渇きを起こさせる。それだけで保(も)っている小説。
    最後の1行に辿り着いたとき、もっとも驚いたのは、きっと著者自身だったに違いない。

  • 筋が追いにくいという人もいるが、私はそんなことは無く、読みやすかった。時間がふわっと流れている独特の世界観、雰囲気を感じる小説。もっとこの著者の本を読みたいと思う。

  • 改行のほとんどない呪文みたいな文章と、突然自然に入れ替わる主観で、ふわふわした気分になった。昭和の工場社宅で育ったきょうだいの話なんて、よくあるノスタルジックなものになりそうなところなのに、この話は不安感ばかりだった。好きか嫌いかというと微妙だけど、面白い試みなんだろうなとは思った。

  • 難しい、この手の作品はよく分からない…
    分かる人には分かる、っていう作品なんだと思う。

  • 話の飛び方について行けませんでした。

    噛み合わない気持ち悪さを楽しむ本…なのでしょうか。

  • 資料ID:92111564
    請求記号:

  • 赤の他人なのに、「私」とそっくりの「男」。しかし他人にはそう見えないらしく、それが「私」には不安に感じる。「男」は「私」と同じ社宅に住み、男の子と女の子の二人の子供がいた。男の子は父親が勤める工場から出る白い煙が気になり、父親を心配するが、女の子は「あれはカカオを焼いているにおいに決まっているじゃない」と言う。男の子は以前、父に、工場で作っているという自動車の部品をみせてもらった記憶がある。「それは別の場所に住んでいる赤の他人の話ではないの」と女の子に言われたとたん、男の子の記憶はあっさりすり替わってしまう。
    第2章からは「チョコレートの歴史」が語られ、コロンブスやコジモ三世などのエピソードが綴られる。ひとつひとつの話は不思議で楽しいけれど、一方で、「あれ、第1章と何のかかわりが?そもそもなんの話だったっけ?」と不安になってくる。まるで、おしゃべりな女性の話をだらだらと聞いているように、つぎつぎと違う話が展開する。最後のほうでまた、最初にでてきた社宅に住む人?とそっくりな人?が話に出てきて、作品全体を象徴するようなエピソードで締められる。
    タイトルどおり、「赤の他人だけどそっくり」という話が何度も何度も繰り返され、そのつど主体のアイデンティティーが揺らいだり、話の信頼度がゆらいだりする。自分が自分である、という根拠は何だろうね。

  • ずっと磯崎憲一郎の作品は読みたいな、と思いながら、読んでいなかった。これが初めて手につけた作品ていうことになる。のだけれども、予想以上に読みやすく、そして、面白かった。他のも読んでみようかしら。(12/2/13)

  • 心に迫る場面が、いくつもあった。
    話があちこちに飛びながらも、ひとつの家族が描かれる。時間も時折すっ飛ぶ。普通の小説であれば、その後メロドラマに行くようなエピソードも、淡々とすまして通り過ぎていく。
    凡庸な人生の、そのシンプルな普遍性に、胸を打たれるのだ。
    ひとりの人生には、様々な過去が積み重なって生きている。
    時折顔を覗かせる、人のシンプルな行動に、淡々とした語り口のなかに美しさを見た。

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著者プロフィール

1965年生まれ。2007年、文藝賞を受賞しデビュー。『終の住処』で芥川賞、『赤の他人の瓜二つ』でドゥマゴ文学賞、『往古来今』で泉鏡花賞を受賞。2015年、三井物産を退社。現在、東京工業大学教授。

「2011年 『肝心の子供/眼と太陽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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