数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062169622

作品紹介・あらすじ

いまいちばんオリジナルな物理学者、マックス・テグマークが導く、過去・現在・未来をたどる驚異の旅!
物理学、天文学、数学をもとに、著者は大胆な仮説「数学的宇宙仮説」――私たちの生きる物理的な現実世界は、数学的な構造をしている――そして、究極の多宇宙理論を展開します。
一般的かつ革新的な科学を用いて、著者はこの誰もが驚く理論をやさしく説明し、さらに科学者としての人生を決定づけた栄光と挫折をも語ります。
人間とは何か? あなたは時間のどこにいるのか? 人間は、取るに足りない存在なのか?
多くの科学者、数学者から称賛を集めた、まったく新しい万物の理論!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルで期待が高かったのだが、読んでみて実際には観測を中心とした数学的統計的処理の話であった。
    本当は数式で説明のある本を期待していたのだ。

  • 内容はやや専門的である。

    最新の宇宙論の記載は良いけれど、30%くらいを占めるやや哲学的な内容はいまいち

  • 数式がほとんど登場せず、豊かな表現力で最新仮説の世界を描き出す。なんとなくは知っていいたけど相互の関係などをよく理解して居なかったので、一つの物語として書かれたこの本は大変おもしくよめた

  • 偶然量の解釈が面白い。

  • 「数学的な宇宙」Max Tegmark

    人間の尺度を超えて実在を覗き見るような高度な技術を使うと、人間の直観は必ず崩壊する。

    鋼鉄の質量の99.95%を占める原子核は非常に微小な球で、鋼鉄の体積のたった0.0000000000001%を占めているに過ぎない。殆ど真空に近い空間が硬く感じられるのは、原子核同士を一定の配置に固定している電磁気力が非常に強いから。

    非常な高温では、電子と陽電子が衝突するとZ粒子に変化する。

    経済学はその殆どが時の権力者が聞きたい事を言う事で報酬が得られるという知的売春の形をとっている。

    物理を通して見ると、周りの世界の美や不思議が大きくなり、物事がよりはっきり見えるようになる。

    宇宙をより遠くまで見る事が可能になるたび、人間は知っていた全てがもっと大きな何かの一部である事を発見してきた。

    コロンブスはアラブとイタリアの距離単位を混同し、東洋に着くまでの距離を正確な19,600キロから3,700キロと誤解していた為に、資金調達が可能となった。

    地球の自転は潮汐摩擦の為に減速している為、2億年後の1日は25時間になる。

    ガス雲は最初少しでも回転していると収縮するにつれて回転が早くなり、強くなった遠心力の為に雲が重力に押しつぶされるのが阻止される代わりにピザのように扁平する。この主原料は水素ガスとヘリウムガスだが、炭素や酸素、ケイ素などの重い元素も含まれていた場合、中心部分が星になる一方で周辺部分は凝集して惑星となる。

    なにものも空間を光速で超える速度で運動する事はできないが、空間自体はどんな速度でも膨張できる。

    水は熱し続けると水素ガスになるが、それをさらに熱し続けると原子が壊れ、陽子と電子が勝手に運動する水素プラズマになる。

    水素の約25%がヘリウムに変換された。水素とヘリウムのプラズマは冷却されて透明なガスになる。その後の数十億年、重力が密度ゆらぎを増幅する事で惑星、星、銀河を作った。

    一生の後期にある星は、ヘリウムを炭素、酸素など人間を作る殆どの原子に変換する。

    宇宙は最初の数分間にヘリウムと少量の重水素とリチウムが作られ、その後星によってほかの原子が作られた。

    幾何学は単なる数学ではなく物理でもある。空間は物質を多く含むほど曲がりが大きくなる。

    宇宙に存在する物質のうち、暗黒エネルギーが68%。暗黒物質が27%、普通の物質が5%。

    我々の宇宙年齢は、137億年か138億年。

    インフレーション物質は半重力を生み、この反重力がインフレーション物質を吹き飛ばし、宇宙を加速膨張させる。そしてインフレーション物質を引き伸ばす為にこの反重力が費やしたエネルギーの為にインフレーション物質の質量が増加し、そのせいで堆積が膨張してもインフレーション物質の密度は一定に保たれる。

    光は強度と色以外に偏光という性質を持つ。

    光子20億個当たり原子約1個が存在する。

    ミクロスケールの量子ゆらぎがインフレーションによってマクロスケールのゆらぎに引き伸ばされる。このゆらぎがさらに重力によって増幅され、今日の銀河や大規模構造に成長した。

    構造の種になるゆらぎの大きさは約0.002%。

    私たちの宇宙のサイズは現在、80億年毎に倍増している。

    宇宙はそのサイズが一定時間毎に二倍になる加速成長期から始まり、もっとゆっくりと成長する減速成長期が続いた。

    ビッグバンは宇宙の始まりではなく、空間の1領域でのインフレーションの終わりを表す。

    我々の空間は無限大。そこには銀河、恒星、惑星が無限個含まれ、それらを誕生させた初期条件は量子ゆらぎによってランダムに生成された。

    物理学とみなすか形而上学とみなすかの境界は、考えている理論が実験で検証可能かどうかで定義されるのであり、奇妙かどうかや観測できない対象物が含まれているかではない。

    構造の種となるゆらぎは量子ゆらぎから生成され、量子ゆらぎは事実上ランダムである為、殆どのレベル1並行宇宙は細かいところで異なっている。

    異なるレベル1並行宇宙の学生は、物理の授業では皆同じ内容を学ぶが、歴史の授業では異なる内容を学ぶ。

    レベル1多宇宙の性質として、起こる可能性がある事は全て起こる。

    永久インフレーションによって無限個のレベル1宇宙が作られたなら、そこには考えられる全ての可能性が実現されている。

    レベル2宇宙は光速よりも速い速度で膨張するインフレーションの先にあるので永遠に辿り着けない。レベル1宇宙であれば宇宙膨張が減速的である限り、十分時間をかければどれだけ離れた場所でも原理的には辿り着ける。

    真空は一種の媒体であるだけでなく、相の数は約10の5乗か無限に近い可能性がある。その結果、空間は曲がったり膨張したり振動したり凍ったり蒸発したりする可能性すらある。

    我々の宇宙は、物質を寄せ集めようとする暗黒物質と引き離そうとする暗黒エネルギーの綱引きの歴史。

    物理の基礎方程式(弦理論等)はレベル2多宇宙の異なる宇宙でも正しいが、観測者が発見するであろう見かけの物理法則はその中の宇宙ごとに異なっている。

    振動数の低いものから、電波、マイクロ波、赤外線、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、紫外線、X線、ガンマ線と呼ばれる。これらはいずれも光子からできている。物体から単位時間に放出される光子の数が多ければその物体は明るく見える。

    光電効果とは、金属に光を当てると金属中の電子がはじき出される現象。低振動数の光はエネルギーが足りないので光電効果を起こさない。

    携帯電話は電子をアンテナ内で揺り動かす事で電波を放射している。

    コペンハーゲン解釈は、小さなものは奇妙な振る舞いをするが、大きなものはしないと言っている。→間違い。

    波動関数は粒子にここまたはそこにあるという従来の粒子としての性質に加え、重ね合わせの状態として異なる複数の場所に同時に存在できるという波としての性質も与える。

    我々の宇宙の波動関数は観測が行われるか否かには関係なく、常にシュレーディンガー方程式に従って決定論的に変化する。

    脳のニューロンを一列に並べると地球を約4周する。

    ニューロンは帯電しているナトリウム原子とカリウム原子を輸送する事で電気信号を伝える。

    我々の主観的な意識は我々の脳を構成している粒子が驚くほど複雑な運動を行う結果として生じる。

    ニューロンでは情報が処理されるよりはるかに早くデコヒーレンスが起こる。その為に奇妙な重ね合わせを経験しない。

    物が見えるのは光子が物に跳ね返るからである為、見たい対象が光子に衝突されないように保ったまま物を見るのは不可能。そして光子が当たると量子的な重ね合わせの状態は壊れるので物が一つしか見えない。

    大きな対象物に関して量子力学的に許される全ての状態のうち、デコヒーレンスに対して最も頑強なのは古典的な状態であるからそれが最後まで残る。

    エントロピーは系に関する情報の欠如の度合いを測る尺度。系の量子状態を記述するのに何ビットの情報が必要かを表す。

    対象のエントロピーは、我々がそれを見ている間には減少し、見ていない間には増大する。

    我々は並行宇宙で数えきれない様々な人生を生きている。

    我々は量子力学的な並行宇宙の実在を確かめようと繰り返し量子自殺を試み、その結果死なない世界の存在を知って納得できるかもしれないが、それを他人に見せる事は決してできない。

    世界は確かに奇妙であり、それと折り合いをつける方法を我々が学ばなければならない。

    重要な科学的発見は、最初は完全に無視され、次に激しい攻撃にあい、最後にそんなことは誰でも知っているとすげなく扱われる。

    量子論ではヒルベルト空間と呼ばれる無限次元の場所とその中にある波動関数が基本的な存在。

    量子力学的な測定で見られる偶然性は、我々のコピーが量子的に作られる事によって生じる錯覚。

    量子論はデコヒーレンスと呼ばれる検閲効果の存在を予測する。

    デコヒーレンスは我々の脳で絶えず起きている。つまり、量子脳(意識)は存在しない。

    ある系の波動関数は空間上に存在するその系の無限個のコピーを記述する事になり、量子力学の不確定性は我々が観察しているコピーがそれらのいずれなのかを我々が知らないという事を反映した性質。

    網膜に記録された情報は、極めて複雑なやり方で処理され、脳内に保存されている外の世界のモデルがその情報に基づいて絶えず更新されている。

    脳は実在モデルを利用可能なあらゆる有用な情報(音、触覚、匂い、味等)を使って絶えず更新している。

    我々の心は外の世界を見ているように感じているが、実際には我々の頭の中にある実在モデルを見ているだけ。

    茶色は外的実在としては存在せず、暗いオレンジの色をもっと暗い色をバックに見た時に見える内的実在。

    人間の視覚系が認識するのは波長が400-700ナノメートルという狭い範囲の光だけ。

    外的実在、、物理的世界、人が存在しなくても存在する。
    合意的実在、、物理的世界に関する記述、説明のうち、意識を持つ観測者が合意し共有するもの。
    内的実在、、外的実在の主観的な認識
    実在モデル、、脳によって作られる外的実在のモデル。これを内的実在として認識する。

    実在とは何かという探求は、合意的実在を内的実在と結びつける認知科学と、合意的実在を外的実在と結びつける物理学の二つの取り組みがある。

    我々の脳で作られる内的実在は、外的実在に関する情報のほんの一部が我々の感覚器官によって採取、伝達された情報に基づいている。

    外的実在の数学的記述は、我々が外的実在を認識する仕方と非常に異なっている。

    内的実在と外的実在の中間に合意的実在がある。意識を持つすべての観測者が同意するような物理的世界の記述。

    哲学は宇宙という大書物に書かれており、それを見ようとする者にはいつも開かれている。しかし理解する為にはまずそこで使われている言語と文字を学ばなければならない。この書物は数学という言語で書かれ、使われている文字は三角形や円などの幾何学的図形。それらがなければこの書物は人間の能力では一語も理解できず、人は暗い迷宮の中を彷徨っているのみ。-ガリレオガリレイ

    空間は、次元、曲率、トポロジーなどの数学的性質しか持たない。

    全ての「モノ」は素粒子からできており、その素粒子も電荷、スピン、レプトン数などの数のみであり数学的な対象物。

    我々が住む三次元空間とその中の素粒子よりさらに基本的と考えられる存在として、波動関数およびそれが住むヒルベルト空間と呼ばれる無限次元の空間がある。粒子は生成も消滅も可能で、さらに複数の場所に同時に存在することもできるが、波動関数は現在過去未来いずれにおいても一つで、ヒルベルト空間中をシュレーディンガー方程式に従って発展する。

    数学とは、数学的構造の形式的研究。

    物理学で最も重要な発見の一つは物理的実在には、回転対称性や並進対称性等、様々な対称性が組み込まれている事。

    我々人間は、巨大な数学的構造の一部をなす意識を持つ存在。

    数学的構造は要素間に関係が定義された抽象的集合の事。対称性の性質を持つ。

    自然の性質はその究極の構成要素の性質から生じるのではなく、構成要素間の関係から生じる。
    構成要素自体は何の性質も持たない。

    時間は幻想ではないが、時間の流れや時間変化時は幻想。時空内では全て同時に存在している。

    光は電磁場に出来たさざ波。宇宙に存在する全ての光は時空の各点に割り付けられた六つの数値(位置三成分、速度三成分)に対応し、マックスウェル方程式に従う。

    人の体重の3/4は水分子で、一ヶ月毎に入れ替わる。皮膚細胞と赤血球細胞は数ヶ月毎に入れ替わる。

    一生を表す時空パターンは時間方向に有限の広がりを持ち、両端では生地がほつれてチリチリに広がったようになっている。

    時間が流れているという主観的感覚は脳内の記憶同士の関係から来ている。

    我々は脳内に存在する編集された映画を最初から最後までいっぺんに見ているので、現在と過去の事象を同時に認識している。そして1秒後には脳内のニュース映画をまたいっぺんに見ているが、末尾に1秒分加えられ、それ以外の部分が短縮されたものを観ている。時間が流れているように感じられるのはこの為。

    我々はこの空間と時間を「ここ」と「今」から観察しているように感じているが、実際には脳内の実在モデルの一部に過ぎない。

    意識は実在モデルそのものだから傍観者は必要ない。あなたが私と呼んでいる主観的な視点は、赤や緑と言った主観的知覚と同じクオリア。

    意識にも多くの種類があるだろうが、液体同様に我々が探求したいと思うような共通の特性があるだろう。

    目的を持って進化あるいは作り出されたSAS(別の世界の自分)は全て、世界と自己についての内的モデルを持つ事の副産物として意識を持つ事になったかもしれない。

    世界の全ての側面を認識するのは有益でなく、むしろ安定性と規則性が十分高くて、それらに関する情報が未来の予測に役立つ側面だけを認識する方が有益。同様に、SASにとって自分自身を局在した唯一の存在と認識する事も有益。

    人類は最良の選択を行いたい為に意識を進化させてきた。

    全ての数学的構造は変化のない恒久的な存在。それは時空中に存在するのではく、時空が特定の数学的構造の中にある。宇宙の歴史を映画に例えると、数学的構造はその映画のDVD。

    時間の流れと時間変化は幻想。

    今あなたが認識している主観的実在は、脳の実在モデルの一部としてあなたの頭の中にだけ存在している。この実在モデルには「ここ」や「今」に関する情報から特に目につくものが切り取られているだけでなく、以前に記録された離れた場所や過去の出来事も含まれている。そしてそれにより時間が流れているという錯覚が作り出されている。

    あなたが外の世界だけでなく、自己も認識しているのは、脳の実在モデルの中に「あなた自身のモデル」と「あなたと外の世界の関係」が組み込まれているから。あなたが「私」と呼んでいる特別な主観的視点の感覚は「赤い」とか「甘い」と言った主観的知覚と同じクオリア。

    数学的構造と物理的構造は等価であり、数学的に存在する構造は全て物理的にも存在する。

    レベル3までは同じ数学的構造。

    数学的構造は、我々の外的実在を単に記述しているのではなく、我々の外的実在そのもの。数学的存在と物理的存在が等価という事は、ある数学的構造に意識を持つ下部構造が含まれていたら、それは自分を「物理的に存在する宇宙に住んでいる」と認識してしまう。

    数学的構造は宇宙を記述しているのではなく、宇宙そのもの。数学的構造は作れないので宇宙を「作る」必要もない。それは単に存在するだけ。時空間の中に存在するのではなく、時空間がその中に存在する。

    数学的に存在する構造は全て存在論的には同じ状況にあるので、どれが物理的に存在するかではなく(どれも存在するから)、どれに生命が含まれるか。

    レベル4多宇宙では、多様な数学的構造が含まれる。光や重力が存在しない数学的構造もあるだろう。時間と空間の次元数が別の一般相対性理論も可能。

    1組の基礎物理法則を持つある数学的構造において、インフレーションは異なる空間領域に異なる実効的物理法則の組を実現し、その結果レベル2多宇宙を作り出している。レベル4多宇宙では、基礎物理法則さえ異なる、例えば量子力学が存在しない並行宇宙さえある。

    他の数学的構造の中には、我々が想像すらできないようなタイプの並行宇宙を持つものもあるだろう。

    数学的存在と物理的存在は同じ。

    古典数理物理学の連続体モデル(波動、拡散、流体を記述する方程式)の多くは、微視的には原子の離散的集合体であるものを単に近似として連続体のように扱っているにすぎない。

    物理学では量子場など連続なものから結晶格子など離散的な解が得られる事があり、しかもその離散的な解が大きなスケールでは連続媒体のように見え、さらにその振動が離散的な粒子(フォノン)のように振る舞う事がある。

    我々の住む数学的構造では、その中にどんな種類の「もの」が存在できるかが対称性を研究する事で明らかになる。

    全体の情報量は部分が持つ情報量の和より少ない事があり、場合によってはある一部分が持つ情報量より少ない事さえある。

    数学的構造にランダムはなく、観測者にとってランダムに見える事があったとしてもそれは錯覚。
    見かけの偶然性は、複数のあなたの存在に由来する。

    数学的に存在する全ての構造は物理的にも存在し、それらは全体としてレベル4多宇宙を形成している事を意味する。

    様々な並行宇宙は入れ子になった4段階の階層構造。
    レベル1:観測できないほど遠方の空間領域
    レベル2:インフレーションの終了した異なる領域
    レベル3:ヒルベルト空間の別の場所
    レベル4:別の数学的構造
    と高レベルほど多様性が高くなる。

    レベル1,2,4多宇宙のほとんどの領域は生命が存在できる条件を満たさず、これらの多宇宙で知的生命体はまれ。

    数学的宇宙仮説が正しいならば、自然の基礎に偶然性は組み込まれていない。偶然性は単に観測者がクローン化される時に観測者が感じる主観的な感じ方に過ぎない。

    数学的宇宙仮説が正しいなら、我々が観測する複雑性のほとんどは見せかけ。それは単に多宇宙における我々の住所情報。

    全体は部分より簡単に記述できる事がある。

    我々の多宇宙は我々の宇宙より単純。特にレベル4多宇宙は最も単純であり、記述するのに本質的に何も情報を必要としない。

    我々はシミュレーションではない。

    数学的宇宙仮説は原理的には検証・反証可能。

    進化の過程で得た我々の直観は、我々の祖先が生存する上で価値のあった物理の日常的側面に関してのみ有効。

    地球では、過去5億年の間に、全動物種の50%がいちどきに絶滅する事象が5回起きている。

    互いに近くに存在するAIの集団は蜂のような集団意識を持つ単一の生物のように感じるかもしれない。

    複雑な系を変化させる最も簡単な方法は不安定性を見つける事。小さな力で大きな変化をもたらす。地球をよりよい場所にする為の最も簡単な不安定性の多くは正しい情報を広める事。

    私たちの宇宙が生命に意味を与えているのではなく、生命が私たちの宇宙に意味を与えている。

    生きる事の意味
    トップダウン:今ここでの人生には充足していないとしても、もっと大きなより意味のある何かの一部である事によって意味を持つ。家族、組織、社会などそこに属する個人が個人を超越したより大きな意味のあるものの一部であるように感じられる事も同じ。
    ボトムアップ:充足感は今周囲で起きている小さな事からもたらされる。多数の粒子の集団が意識を持てるという事実自体がこの上もない感謝。

    140億年の宇宙の歴史を一年とすると、10万年の人類の歴史はわずか4分、百年の寿命は0.2秒。

    進化した生物の細胞は、リボソームを作るために別のリボソームを必要とする。その為進化の過程で一番最初に現れたリボソームがもっと単純な何かから徐々に進化してリボソームになれたのは自明ではない。

    最大と最小のスケールまで行くと、実在が数学的構造で織られている事が解るが、この事実は私たち人間が通常認識している中間スケールでは見過ごされやすい。

    究極の実在が数学的だとすると、実在の全ての側面は原理的に理解可能であり、私たちの理解に限界を与えるのは、私たち自身の想像力だけ。

    レベル4多宇宙は恒久的な存在だが、私たちの宇宙はビッグチル、ビッグクランチ、ビッグリップ、ビッグスナップ、死の泡のいずれかの形で終わりを迎えるかもしれない。

    人類ほど進んだ知的生命体は私たちの宇宙には他に存在しないかもしれない。その理由は、生命の宇宙進出は物理的に可能であり、必要な技術開発の為の期間が100万年もあれば容易にこれを遂行できる。我々の銀河系には生命が生存可能な惑星が何十億個とあり、その多くは地球より数十億年も早く形成された。宇宙に出て他の惑星を植民地化できるようになった文明は、その無視できない割合が実際にそうするだろうから。

    自分の心に従って自分が本当に情熱的になれる事に取り組む事。

  • 第5章「私たちの宇宙の起源」までは、現在主流のインフレーション理論が分かりやすく説明されていて、おもしろかった。第6章「多宇宙の世界へようこそ」からは、著者が主張する多宇宙論の説明だが、これがもう難しくて頭がくらくらしてしまった。私たちの宇宙は、ビッグバンから140億年以内にそこから光が私たちに到達できた球形の空間領域である。これは納得できる。また、空間はその外側にも広がっていて、ただ、そこからの光はまだ届いていないだけというのも、理解できる。しかし、その外側の空間は無限に広がっていて、そこには私たちの宇宙と同様の空間領域(レベルⅠ並行宇宙)が無限個存在するというところが、もう分からない。その先のレベルⅡ並行宇宙、レベルⅢ並行宇宙、レベルⅣ並行宇宙に至っては、もはや何がどうなっているのやら。大学で経済学を学んでいた著者が物理学に転向したのは、友人からもらった『ご冗談でしょう、ファインマンさん』を読んで、お父さんの本棚にあった『ファインマン物理学』の最初の巻を読み始めたことがきっかけだったそうだ。なんとまあ、うらやましい。悔しいことに、『ファインマン物理学』なら私の父の本棚にもあったのだ。悔しいから、もう一度読もう。2016年12月4日付け読売新聞書評欄。日経サイエンス2017年1月号「森山和道の読書日記」。
    (2018/01/21追記)
    ビッグバンから140億年以内にそこから光が私たちに到達できた球形の空間領域、つまり、私たちの宇宙の外側にも空間(レベルⅠ並行宇宙)が広がっていて、仮にその空間からの光がこれから私たちに到達するのだとすると、いったい何が見えてくるのだろう。遠くからの光を観測することは、つまり、宇宙の過去の姿を見ることだが、そうすると、ビッグバンより前の宇宙の姿が見えてくるとでもいうのだろうか。レベルⅢ並行宇宙の存在を予測する量子力学のエヴェレット解釈は、もう一度読んでもやっぱり分からない。

  • 物理と数学を縦横無尽に行き来する、とても楽しい物理学者がいる

  • 並行宇宙とか。内容は難しい
    何だかんだでNewtonや日経サイエンスの特集がわかりやすい

  • 必読

  • SFの大作を読んだときのような読後感。それでいて、宇宙論も素粒子論も最新の成果がきちんと要領よくまとめられている。結論は意外すぎるほど意外だが、納得感がないわけではない。面白い。

  • とても面白く読んだ。日ごろ並行宇宙を考えてみるとどうにも疑問が生じてしまう点について、この本ではほぼ全て検討した結果が述べられていることに関心する。特に今我々が存在する宇宙の観測結果が確率的に典型的なものとして観測されるために必要な母集団としての並行宇宙という考え方に関心した。

  • 請求記号 443.9/Te 18

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著者プロフィール

【著者】マックス・テグマーク(Max Tegmark)
マサチューセッツ工科大学(MIT)教授、理論物理学者。宇宙論の研究者だったが、超知能AI による人類絶滅の危険性に注目し、近年はAI研究に軸足を移している。2014 年に、AI の安全な研究を推進するための非営利団体「生命の未来研究所(Future of Life Institute, FLI)」を共同で設立。2017 年に発表された「アシロマAI 原則」の取りまとめを同団体が先導した。2019 年6 ~ 7 月にNHK E テレで放送された「超AI 入門特別編」に出演。邦訳された著書に『数学的な宇宙――究極の実在の姿を求めて』(講談社、2016年)があり、数学的存在そのものが宇宙であるとする斬新な「数学的宇宙仮説」を論じて脚光を浴びた。理論物理学者としては、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)との銀河団に関するコラボレーションが、「サイエンス」誌の「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー2003」を受賞している。

「2019年 『LIFE3.0──人工知能時代に人間であるということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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