絶望の国の幸福な若者たち

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  • 講談社
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レビュー : 424
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062170659

作品紹介・あらすじ

格差社会のもと、その「不幸」が報じられる若者たち。だが、二〇一〇年の時点で二〇代男子の六五・九%、二〇代女子の七五・二%が現在の生活に「満足」している!これまでの若者論を覆す、「幸せ」を感じている若者の正体を徹底的に取材した最注目の若き社会学者が満を持して立ち上げる、まったく新しい「若者論」。佐藤健(俳優)との特別対談も収録。

感想・レビュー・書評

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  •  執筆当時26歳の社会学者(東大大学院博士課程在籍)が、若者の一人としての当事者目線で書いた若者論。昨年9月の刊行以来、すでに10刷を重ねているという。ベストセラーといってよいだろう。

     仕事の資料として読んだものだが、たいへん面白かった。若者論としてのみならず、幸福論としても秀逸な一冊である。

     大学院生が書いた本などというと生硬で青臭い文章を思い浮かべそうだが、著者の文章は軽やかで読みやすい。若さに似合わず力の抜き加減まで心得ていて、力みがない。26歳にしてすでに物書きとして完成されている、という印象。

     タイトルは、いまの20代の7割が、世論調査で「現在の生活に満足している」と答えた(2010年時点)という事実をふまえたもの。
     格差社会化が言われ、上の世代からは不幸で不遇な世代と見なされがちな若者たちが、じつは大人が思うよりもずっと幸福を感じて生きているというアイロニー。その背景にあるものを、著者は各種データと自らの生活実感、そして多くの若者たちへの取材から探っていく。

     読んでいて痛快なのは、過去から現在までの若者論の数々を、筆鋒鋭くバッサバッサと斬っていくところ。
     私は、著者がこきおろした本の一つ、原田曜平の『近頃の若者はなぜダメなのか』も優れた若者論だと思うし、首肯できない記述もあるが、おおむね同意。

     逆に、感心しなかったのは、ワールドカップで盛り上がる渋谷の街を取材したくだりなど、実際の若者たちの声を集めたルポ的な部分。論評部分は鋭いのに、自らの取材成果を記した部分になると途端に精彩を欠く印象を受けた。

     とはいえ、一冊の本としては上出来。若者にとっても元・若者にとっても、一読に値する好著である。

  • 古市さんの著書を初めて手に取りました。もっととっつきにくい文章を書く方だと思っていたので、想像より随分と読みやすかったです。

    現在27歳である「若者」であるところの私は、今の自分の価値観を形成してしまった時代背景とか、もし自分を括れるカテゴリーがあるのだとしたらそれを知りたいなーといった感じで本書を手に取りました。

    特に興味深く読んだのは、内向きな若者たちの章でした。お恥ずかしながら、私はこの章の中に明らかに自分を発見しました。こうして社会学者の方に、大きな時代の流れの一傾向として一括りにされるのは大変癪ではありますが、そうか自分もそんなものか、と諦めがつきました。笑 社会貢献したがる学生の特徴として書かれていましたが、私を含めそういった学生の多くが「非日常」を求めていたのか、といわれれば、きっと当の本人は否定をするのでは?と思います。幼い頃にみたアフリカの貧困の子どもの映像がきっかけで…とかね。でも自分のことを振り返ると、非日常を求めた先の発露として貧困国が出てきた、というあまりに短絡的で幼稚な発想を認めたくないだけなのかもしれない、とぼうっと思いました。

    いずれにせよ、非日常を求めて今とは異なるステージに向かおうとしていたのに、こうして何かにカテゴライズされるとはなんと皮肉なことでしょう。

    なんだかまとめきれませんが、まだ社会貢献したい!といってモヤモヤしている私は、「若者」から抜けられないのかもしれないです。


    最後の佐藤健との対談も非常に面白かったです。何より、佐藤健の賢さが、紙面からも迸ってくるようで。


    以下、読書メモ
    ------------
    ・若者語りにはパターンがある。「現象」をむやみやたらに価値判断に結びつけてしまうことが問題。「現象」を若者個人の問題とも、若者特有の問題とも考えずに、社会構造の実態や変化とともに考える必要がある。


    内向きな若者たち

    ・「社会貢献ブーム」という括りでマザーハウスやらカンボジアに学校を建てた大学生の話ならが掲載されていた。そうか、わたしもここに分類されるのか、と思うと自分が酷く大衆思考の賜物のように思えて来た。ちっさ、自分。

    ちなみに、ボランティア人口という切り口で、若者の内向き論を論破するための材料として上の事項は語られるが、実際ボランティア人口は変わらないらしい。

    ・現代の若者は幸せらしい。コンサマトリー化している。つまり、「今、ここ」の身近な幸せを大事にしているのだ。

    プラス、「仲間」意識があればより幸福度は高まる。内閣府の幸福度調査にて、幸福度を測る時に重要視した項目は?で若者の60.4%が友人関係と答えている。

    つまり、仲間がいる小さな世界で生きていれば、現代の若者は幸せを感じるのだ。


    東日本大震災と「想定内」の若者たち
    ・東日本大震災のあと起こったのは、ワールドカップの時と同じ日本ブームだった。被災地はカンボジアと機能的に等価な「非日常」になったのである。

    こうみるとナショナリズムにも見えるが、実はそれとは異なる。なぜならば、若者にとって「東北」が「カンボジア」と交換可能なものだとしたら、いくら「日本」が強調されているとしても、結局それは「自分たち」のことではなく「自分たち以外」の問題なのだから。


    幸せの定義
    ・「経済的な問題」と「承認の問題」である。

    ・承認欲求を最もシンプルに満たすためには、恋人がいればいい。全人格的な承認を与えてくれる恋愛は、その人の抱えるほとんどの問題を少なくとも一時的には解決してしまう。だって、たった一人から愛されるだけで誰もが「かけがえのない存在」になることができるのだ。

    →しかし誰しも恋人ができるわけではないから、承認を別のところで満たす必要がある。そこで便利なのがソーシャルメディアだ。

  • 20代の私にとって、この本はまるで自分自身を書かれているような気分になった。確かに、日本は絶望の国といえる。作者もデータを使って示していた通り少子高齢化は進み、社会保障費に関しても損することが分かっている。その絶望の国にいながらも若者の満足度は高いのだ。本文に若者は自分たちだけの世界を作り、その中で幸せを感じるとあった。よく言えば日常のなかに幸せをみつけることができ、悪く言えば自分たちの殻に閉じこもっているのである。大学のゼミやサークル、小中高の友達、アルバイトという社会的集団の中で自分の居場所があり、何気なく生活できることが幸せなのだ。しかしながら、未来に対する不安やこのままでいいのかというモヤモヤした感情があることも否定できない。そのモヤモヤしたものをどうすれば無くすことができるのか?それは今ある生活にある程度満足しているから、結局解決することができないのだ。これに危機感を感じる若者がどのくらいいるのか、疑問に思った。繰り返しになるが、私自身も含め今ある現状に満足しているため何か行動に起こすことはなかなか難しい。
    用語の解説もついていて、分かりやすく一気に読み進められた。最後まで読み終えたとき「絶望の国の幸福な若者たち」その正体をより深く考えることになる。

  •  図書館より

    『だから日本はズレている』の古市さんの著作で『だから日本はズレている』内で言われていたキーワードもいくつか見られます。

     面白かったのは第一章の「若者」がいつのころから社会的な概念として誕生し、そしてどのようにその立ち位置を変えてきたか、ということ。ビックリするほど昔の大人たちと今の若者批判が似通っていて思わず笑ってしまいそうでした。今も昔も大人たちは若者に対し、ある種の似たような期待をし続け、そして裏切られ続けているのですね。

     そうした若者論といっしょにこの本内で語られるのは、日本という国家のことです。成熟し先進国の一員となった日本の限界もこの本では語られているように思います。共通の倒すべき敵を失い、叶えるべき大きな目標がなくてもインフラの充実で生きていける、そうなると自分の身の回りのことを充実させ満足するしかない。国家としては完成形の様な気もしますが、それが絶望の国の正体だと言われるとなんだか複雑な気持ちになります。

     著者は最後に一人一人が生きられるなら日本が終わってしまってもいい、と書いています。ただそれは日本というインフラを過小評価しているような、また日本というインフラなんかなくても生きていける、と自分たちを過剰評価しているような気もします。

     ただ自分が臆病なだけかもしれませんが、自分も含めた1億人以上の人が日本というインフラを頼って生きている以上、絶望の国に簡単に絶望できない気がします。かといって何か行動ができるかと言うと、その手段は非常に限られているわけで結局は徐々に沈んでいく日本を見ていることしかできないような気もしますが…

  • 気鋭の「若者」社会学者による「若者」論。
    本書によれば、こちとらとっくに「おじさん」カテゴリーに分類される側だけど。
    古今の「若者」論をフラットな視点で追いながら、
    今時の「若者」らしい“熱くなさ”(何じゃそりゃ)で論じる。
    現象としての「若者」の生き様分析は、ひとまずわかった。
    さて、バブルな「おじさん」達はいずれいなくなる。
    君たちが「おじさん」になった時、社会との関わりは?生き様は?

    代表イコン=俳優:佐藤健くんが
    「命をかけた明治維新より、今の社会で、
    千葉で友達と一泊二日で旅行に行き、バーベキューをする幸せを選ぶ」
    という「絶望の国で幸福に生きる」感覚が、
    将来「おじさん」になった健くんでも変わらず続くのか。

    例えば、子供を産み・育てるには大いに、
    いやほとんど「自分のこと」の我慢が必要だが、
    我慢というのは外から見た感覚で、
    当事者にしてみれば我慢どころか無償の喜びを感じさせてくれる、
    これ以上ないような幸福だ。
    本書は、そこまでは踏み込まず、
    結婚できない理由や子供を作らない理由を仕事を、
    まるでひと事のように、そうしづらい「社会」のせいにし、
    「何も変わらない」と政治には興味を持たず、
    ハンディな幸せで満足する事が
    「絶望の国で幸福に生きる」あり方だとする。

    かと言って孤独かと言えば、友達は大事にするし、
    社会に無関心かと言えば、ボランティアには積極的だ。
    みんないい子たちだなあ、と
    バーベキュー好きだけど、それだけじゃ物足りない
    現役の「おじさん」としては思ったり。
    まあ高度成長期やバブル期の生き方が
    果たして人間的に幸せだったか?と言われれば怪しいもんだけど。
    苦労と引き換えでしか手に入らない幸せ(子育て等)や、
    スマホなどの便利ツールで満たされる楽しさとは別種の楽しさもある、
    って事も是非実感して、
    バーベキューもあるけど子育てもしやすい、
    いい社会を形成する原動力になって欲しいものだ。
    「おじさん」も手伝うぜ。
    え?上司が飲みに誘うみたいな、余計なお世話しないで欲しいって?
    「おじさん」絶望Orz

  • 私も今が幸せで、確かにそれは将来に対して希望がないからだなと、すごく納得した。いや、なくはないんだけれど...。
    あとは昔から、毎日つまんねーって言う人達に対して、少なくとも自分よりは幸せな環境にいた彼らに、ふざけるなと思っていたけど、何でか分かった。将来に希望を持っているからそんなことが言えるんだろ、という妬みだったんだ。

  • 同い年のイケメン社会学者、古市センセイ渾身の一冊を読み終えた。
    僕も筆者のいうような、国の将来に何か希望を抱いているわけでも無いけどほぼ毎日を楽しく幸せに生きている若者の一人であると思う。が、本の中でこんな世の中でも幸せを感じる理由としている、「将来が今より良くならないと思っているからこそ、今に満足し幸せを感じられるのだ」という分析は、僕が幸せを感じている理由とちょっと違う気がした。

    国が絶望的なのかどうかは、自分でどうこうできるレベルではないのであまり情報も追っておらず正直なところよくわからない。2030年代には消費欲旺盛な団塊の世代がいなくなり、「ひきこもり」や「ニート」が若者問題ではなく高齢者問題になる、という本書の記述を読んで初めて驚いたくらいだ。

    幸せを感じる理由としては、この情報化社会が発達したおかげで新しいことや面白いと感じることをいくらでも自分自身に体験させられるからであるように思う。またそうすることによって、環境は変わらずとも自分自身が変わっていくことが特に楽しい。不幸だと感じるのは、コミュニティからの承認が得られなくなるときでは無く、時間が全く取れなくなり何も変化させられなくなるときではないだろうか。(たまにそうなってしまうので極力避けたい)

    と、何か反論するような感想を書いてしまったが、筆者もあとがきで、研究者として「自分」と「自分のまわり」の世界を明るしていくことは楽しい。と書いているので、何か僕が変な読み取り方をしたのかもしれない。僕も日本を変えるような努力はできないけれど、自分を含めた手の届く範囲を変化させる努力は続けたいように思う。その結果、幸せになれれば満足だ。

  • 『絶望の国の幸福な若者たち』古市憲寿を読んで。

    『物語』からの自由。

    補助線:『ハウルの動く城』
    この映画は主人公ソフィーの2度の人生を描いている。

    1度目:彼女は年をとりました。終わり。めでたしめでたし。
    魔女に魔法をかけられて年をとったというのは比喩で、
    物語のない人生を送ったという表現。
    ※2011年9月『絶望の国の幸福な若者たち』古市憲寿の論点

    2度目:ソフィーはハウルその他との物語(家族)をつくった。
    ※2004年11月『希望格差社会』山田昌弘の論点

    『希望格差社会』は未来に期待(しすぎている)人の絶望を書き、
    『絶望の国の幸福な若者たち』は未来に期待していない人の(今の​)幸せを論じている。

    わずか7年でこんなに変わるんだという感想。

  • 【内容】
     からかい筆致のメタ若者論。
     分類としては、学術と一般の狭間にある本。
     本の完成度は、後半やや失速しつつ無事完走という感じなので、おそらく編集の力量も大きいのだと思う。

    【抜き書き】
     つまり、若者論というのはすごく無理をして何とか成立しているものなのだ。〔……〕それでもなお世代としての「若者」を語ろうとしたのが若者論であった。/しかし、そうも言っていられなくなった。中流崩壊論と格差社会論の流行である。〔……〕/このまま若者論は消えてしまうのだろうか?/結論から言えば、「若者」語りがこれからも当分終わることはないだろう。たとえば、若者論よりも、もっと大ざっぱな議論も健在だ。かの有名な「日本人論」である。「日本人論」は一億二〇〇〇万人の日本国籍保有者に共通の特徴を語ろうとしている。格差社会論なんて素知らぬ顔で、内田樹(五九歳、東京都)の『日本辺境論』のような「日本人論」が時々大ヒットしている。うらやましい。/さらに若者論には「日本人論」にはない魅力がある。
    (古市憲寿[2011:58-59])


    【詳細目次】
    http://d.hatena.ne.jp/Mandarine/20140113


    【簡易目次】
    第一章 「若者」の誕生と終焉 018
     1 「若者」って誰だろう 018
     2 若者論前夜 021
     3 焼け野原からの若者論 037
     4 「一億総中流」と「若者」の誕生 047
     5 そして若者論は続く 058

    第二章 ムラムラする若者たち 070
     1 「内向き」な若者たち 070
     2 社会貢献したい若者たち 072
     3 ガラパゴスな若者たち 082
     4 モノを買わない若者たち 091
     5 「幸せ」な日本の若者たち 098
     6 村々する若者たち 107

    第三章 崩壊する「日本」? 114
     1 ワールドカップ限定国家 114
     2 ナショナリズムという魔法 125
     3 「日本」なんていらない 136

    第四章 「日本」のために立ち上がる若者たち 154
     1 行楽日和に掲げる日の丸 154
     2 お祭り気分のデモ 161
     3 僕たちは立ち上がるのか? 170
     4 革命では変わらない「社会」 182

    第五章 東日本大震災と「想定内」の若者たち 192
     1 ニホンブーム 192
     2 反原発というお祭りの中で 203
     3 災害ディストピア 214

    第六章 絶望の国の幸福な若者たち 228
     1 絶望の国を生きるということ 228
     2 なんとなく幸せな社会 242
     3 僕たちはどこへ向かうのか? 254

    補章 佐藤健(二二歳、埼玉県)との対話 270

    あとがき [295-299]
    謝辞   [300-301]

  • テレビで見る古市さんの本が読みたかった。どれから読んでいいか分からかったけど、とりあえずこれから読んでみました。
    実は、このタイトルだけはよく目にしていましたが、著者と古市さんが一致していなかったです。

    読んだ第一印象は、テレビのイメージと違ってかなり分かりやすく書いてあり、きちんと研究もされている人だとうけました。
    テレビのイメージだと研究者というイメージではないんですけどね。
    自分のイメージは、若いコメンテーターというイメージでした。
    しかし、かなりの本を読み、フィールドワークもしていたり、プロフィールを読むと珍しい経験をしているのが分かり、苦労や経験が顔や態度に出ないタイプの人なんだと印象が変わりました。

    読後感もいろいろ考えさせられるいい本でした。
    もちろん、社会学の用語も出ているので、分からなかった用語を調べるだけで、勉強にもなります。
    きちんとやっていたりするのに、年上にはちゃんとやれみたいな印象を持たれていたり、年下には、うまいことやってるな、みたいな印象を持たれていそうな古市さんがみてとれました。
    厚さのわりには、スルスル読めました。

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著者プロフィール

古市憲寿(ふるいち のりとし)
1985年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。株式会社ぽえち代表取締役。専攻は社会学。若者の生態を描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)で注目される。大学院で若年起業家についての研究を進めるかたわら、マーケティングやIT戦略立案、執筆活動、メディア出演など、精力的に活動する。著書に、『誰も戦争を教えられない』(講談社+α文庫)、『保育園義務教育化』(小学館)、『だから日本はズレている』(新潮新書)、『希望難民ご一行様』(光文社新書)などがある。2018年から小説を書き始めている。小説作に「彼は本当は優しい」(『文學界』2018年4月号)。「平成くん、さようなら」で第160回芥川賞ノミネート。

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