第三の敗戦

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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062170987

感想・レビュー・書評

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  • 主張内容自体は、筆者が繰り返し表明してきていることであり、ひとつひとつに目新しさはない。ただ、今回の震災を第三の敗戦と捉え、過去の2度の敗戦の分析・比較を踏まえたうえで方針提起をしており、説得力があるように感じた。

    物財の豊かさを求める規格大量生産型の工業社会から満足の大きさを人間の幸せとする知価社会への転換。
    目指すのは、省資源、多様なコミュニティ、好き好き開国の知価社会、そして好老文化の幕開く新しい日本。
    キーワードは「古い日本に戻さない」「官僚を身分から機能へ」。

    主張はよくわかる。規格大量生産型産業の代表のような企業に勤める者として何を考え、どう行動すべきか。これは自分自身の宿題。

  • 第三の敗戦とはまた大きくでたものだ、と思いつつ最後まで読んでみました。

    本著は近現代の歴史を振り返り、震災後の国のあり方を提言。

    近現代を経済に主軸をおいて的確な洞察をしておられ、「団塊の世代」の名付け親である著者の面目躍如たるものがありました。

    震災後の提言については「規格大量生産工業社会によって繁栄した日本の一時代は終わった」として、国家のグランドデザインを述べておられます。

    脱工業化で知価社会を目指そうという、いつもの著者の持論に始まり、道州制導入、TPP賛成開国論、官僚依存廃止などを披瀝されておられます。

    言うは易く行なうは難し。

    デザインできてもアクションプランがなければ絵に描いた餅ですね。

    そのあたりは優秀な官僚に任せるのかな?

    総論だけで各論が緻密に組み立ててない理想論は、震災後とくに辟易しています。

  • 堺屋節、健在。
    ただ、日本がおかれた明治の開国、太平洋戦争敗戦の流れを踏まえ、現在の状況はよく理解できるが、提言された処方箋の実行度を考えると、何とも虚無感が。

  • ■復興
    1.東日本大震災は単なる天災ではなく、日本という国の「敗戦」とみて日本復興に取り組むべきである。

  • TOPPOINT2011年8月号より。

    著者は堺屋太一氏。

    今回の東北大震災を機に今後の国のあり方を考える。

  • 先日起きた東日本大震災が日本にとっての敗戦とは思いたくありませんが、特に震災後の現政府の対応を見ていると、心配になってきます。

    この本の著者である堺屋氏から見れば今回の敗戦は、幕末、太平洋戦争に次ぐ、第三の敗戦で20年間の下り坂の末に来たということです。

    これから改革すれば日本は再び栄えることができるのでしょうか、数年前に読んだ彼の書いた予測小説(平成30年)を思い出しました。

    たしか何もせずに平成30年を迎えてしまった日本に、織田信長のような世直しをする人が現れて大改革をするという話だったと思いますが、今の政治家や将来政治家になる人にも、日本が栄えるための方策を考えて実行に移してもらいたいものです。

    以下は気になったポイントです。

    ・不都合なことに、日本の法規では復旧は国費の援助でできるが、旧施設より良い施設にするとなれば「新たな資産の取得」として予算査定を受ける必要がある(p17)

    ・2010年には公的資金不足が約40兆円、これに対して企業の資金余剰が約33.6兆円、家計貯蓄が11.5兆円なので、国債発行を国内で消化でき国債が低金利で収まっていた(p22)

    ・日本では関東と関西でサイクルの差があるので、東西間は100万キロワットしか移送できない、西日本で節電しても東京や東北の電力事情は改善しない、ピークは夏の数日、それも昼間の数時間(p27)

    ・徳川幕藩体制は、身分社会、鎖国経済、縮み文化の3つで形成されていた、それを支えた正義は「社会的安定」である(p37)

    ・徳川時代には都市域をでると車両の通行は禁止、大名行列にも車は描かれていない、荷物を運ぶのは人夫か馬背である、道路地盤が軟弱で轍が水たまりになるから(p38)

    ・日本の幕藩体制が崩壊したのは、武士の文化が信じられなくなったから(p44)

    ・軍隊であるための条件は、1)断然優越した兵器を保有し、組織的に運用可能、2)集団的軍事行動のできる組織と命令系統の常備、3)その集団ですべての行為ができる自己完結性をもつこと(p44)

    ・第一次長州戦争では、幕府を恐れた長州藩主が三人の家老を切腹させておさめたが、それを不満とした第二次長州戦争(2年後の1866)では長州藩の民兵に幕府の大軍が負けた(p46)

    ・幕末のころにイギリスが急いでいたのはインドの支配と中国長江地域の半植民地化であり、日本を領有するほどの意欲はなかった(p50)

    ・版籍奉還の意味は、武士身分の廃止(1591年の豊臣秀吉による身分に関する条規制定以来)であり、これにより封建的身分社会から近代的職能社会に転換した、武士以外のものを多数官軍に組み入れてしまった結果の「やむを得ない措置」であり、劇的場面が少ない(p55)

    ・明治10年には1石=5円70銭だった米が、13ンには12.2円になった、元禄時代には4石=1両、幕末には1石=1両であり、200円で50倍になった(p61)

    ・日本の歴史では、経済文化が下り坂に入ると早々に大災害に見舞われることが多い、1596年伏見大地震、明暦の大火(1657年)、富士山大噴火(1707)、浅間山大噴火(1770頃)、京都大地震(1830)、関東大震災(1923)など(p73)

    ・1940年までは日本の労働者横転率(同じ職種で転職)は世界一高かった、1企業に勤める平均期間は3年程度(p76)

    ・海軍艦艇や戦闘機の分野では優れた製品もあったが、使用者の専門軍人と製造工場の技師とのなれ合いで練り上げられた特殊品であり汎用品ではなかった(p82)

    ・日本の第二の敗戦の敗因は、軍官組織の硬直化、つまり高級軍人や官僚たちの組織と思考の硬直化と、地位の身分化にあった(p89)

    ・1944年の暮れころから大阪では軍人文化が信じられなくなっていた(p93)

    ・産業経済の東京1極集中は、経済や技術の流れで自然とできたものではなく、官僚主導によって圧力と費用をかけて強引に行われた、社長が移動するので社長室、次に調査部や資金部、海外事業部ができて最後に営業本部が移動(p131)

    ・イラク制裁の湾岸戦争において、軍隊を出さなかった日本は同盟国に名を連ねることができなかった、世界は「経済大国・軍事小国を目指す」日本の国家コンセプトの1つを拒否した(p142)

    ・規格大量生産には、1)巨額資金、2)大量に売れる市場、3)大勢の技術者が必要だが、コンピュータ装備の施設、ドル資金の海外垂れ流しにより、アジアの工業化が可能になった(p146)

    ・大正デモクラシーに似た動きとして、1996-2006年には、1)行政改革、2)規制緩和、3)グローバル化をした(p158)

    ・新しい街づくりとして、省エネルギーと地域コミュニティの強化を兼ねて「歩いて暮らせる街」を目指すべき(p207)

    ・農業はカロリー換算による自給率ではなく、「市場価格換算自給率」に変えるべき(p225)

    2011/7/17作成

  • 読了。相変わらずの理想論。でも好きなんです。

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著者プロフィール

堺屋太一

一九三五年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省し、日本万国博覧会を企画、開催したほか、沖縄海洋博覧会や「サンシャイン計画」を推進した。在職中の七五年、『油断!』で作家デビュー。七八年に退官し、執筆、講演、イベントプロデュースを行う。予測小説の分野を拓き、経済、文明評論、歴史小説など多くの作品を発表。「団塊の世代」という言葉を生んだ同名作をはじめ、『峠の群像』『知価革命』など多くの作品がベストセラーとなった。一九九八年から二〇〇〇年まで小渕恵三、森喜朗内閣で経済企画庁長官、二〇一三年から安倍晋三内閣の内閣官房参与を務めた。一九年、没。

「2022年 『組織の盛衰 決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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