神様 2011

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (50ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062172325

感想・レビュー・書評

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  • 「わたし」と近所に引っ越してきた「くま」の日常、とある一日のお話。

    場面を想像したり、どういう背景なのか考えてみたり、そういう風に読んでいく作業が面白い1冊。

    くまは人によってきっと想像が違うだろう。私はリアル熊(ヒグマ)で読んでいた。歩く時も四足歩行。でもそれをぬいぐるみのようなクマで、二本足で歩いてる場面を想像してる人もいるかもしれない。

    後半はまったく同じ1日を震災後の1日にしたお話。
    同じ事をしている1日なのに、悲しくなった。

    あとがきの神様についての部分がとても好きだ。

  • いやはや。

  • クマに誘われて散歩するというデビュー作「神様」。
    震災後にこのデビュー作をあらためて書いた作品「神様2011」。
    「あのこと」について語られるあとがき。
    短いお話なのですぐに読めます。

    クマと散歩という非日常の世界。
    なのに、「神様2011」のほうでは震災以来、否が応でも関わることになってしまった原発事故の影響が日常として描かれています。
    防護服、被爆累積量、飛散塵堆積量、プルトニウムなどの言葉が散りばめられたほのぼのした作品は、平穏な日常が何かのきっかけで変わってしまう怖さを訴えています。
    手に負えない領域とわかっていながら目先のエネルギー利用を優先してきた結果、起こってしまった放射能被害。政府の出す楽観的にもとれる予見に違和感を感じずにはいられません。
    この取り返しのつかない異常な現実を認め生きていくことを考えるのにとてもわかりやすいお話だと思います。子供たちにも読んでほしいです。

  • 喪失への怒りなのか悲しみなのか、しかしそれはほのぼのとした。恋する原発と合わせて読んだ。

  • 「くまに誘われて川原まで散歩に行く」1993年に書かれた短編と同小説の2011年(震災後)バージョンの2編を掲載。川原に子供はいなくなり、取った魚を食べることはできず、被曝料を日々チェックする日々。それでも日常は続いていく。とても短い物語ですが、突きつけられる内容は深く、重い。

  • ほんとうに、日常は無情にも続いてゆくし、どこにぶつければ良いのかも分からないもやもやが消えることもない。

    ただ、生きるということは、希望を失わないこと。

  • ウランの神様

  • 『あのこと』の後から人間の生活、考え方は変わったのだ。

  • 以前に発表された「神様」に、原発事故後だったらの「神様」が付け加えられたもの。
    原発についての教育の導入として、小学生の教科書にぴったりだと思ったし、原発に関心を持つ入り口として良い本だと思いました。

  • 名作『神様』を3.11の出来事を盛り込んでみたら…悲しい物語になってしまいました。

    あの日を境に、私たちは何を考え、どうするべきなのか。

    この作品から作者のメッセージとともに改めて見つめ直すきっかけになりました。

  • 名久井直子さん装丁の美しい本です。
    1993年の神様と2011年の神様、並べて1冊になっています。あの日を境に被災した方々はもちろん、直接には被災していなくとも世界はこんなにも変わってしまったのだということを思わずにいられません。
    それでも日常は続いていくのですね。
    著者によるあとがきも心に響きます。
    「わたしは何も知らず、また、知ろうとしないで来てしまったのだな」
    この言葉を私自身もしっかり受け止めたいと思います。

  • 熊との散歩。
    この本に収められているのは2作品。
    2作目は、同じ話を、福島クライシスを
    感じて、状況を焼き直した作品。

    こういう作品は、好きなのだが、
    2作目は、敢えて必要だったのか?
    と、ちょっと思いました。

  • 2012.10.06

  • 1993年に書かれたデビュー作を福島の原発事故後新たに書き直した作品。
    作者もあとがきに「日常は続いていく、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性を持つものだ、という大きな驚きの気持ちをこめて書きました」と書かれているが、本当にそうだなあとしみじみ思う。

  • 川上さんの以前の作品の
    2011年版です。

    読んでその意味が分かりました。

    川上さんの作品は、
    どこか浮世離れしているような、
    絵本のような。

    でも、本当にありそうで、
    もしあったなら、
    ちょっと素敵だなと思う
    そんな世界観です。

  • 隣に越してきた熊に誘われ、河原へピクニック。
    至れり尽くせりの熊にすすめられて昼寝をしている間に、熊は捕った魚を持参した包丁で開きにして干物づくり。そして帰宅。
    とても満ち足りている。こんな一日に感謝。

    そして2011。「あのこと」を挟んで、同じ一日がこのように変化する。
    河原には防護服を着た男が。作った干物は食べられない。

    2012,2013とだんだんそれが当たり前の日常になるのだろうか。
    この物語の揺れをないがしろにしてはいけない。
    山菜やキノコ、川魚をピクニック記念の飾りでなく、おいしく食べられるように、いつか早いうちに。これからの子どもたちのために

  • 2011年3月11日を境にして、日本は大きく変わってしまった。
    放射能の影響がどれだけこれから出てくるのか、未知数だけれど、
    だんだん事故や地震の記憶も、少しづつ薄れてきているように
    思う。
    だけれど、絶対に忘れてはいけないのは、同じ間違いを繰り返さないようにすることだと思う。
    知らなかったとか予想外ではすまされない。

  • 8月に入ったら読もう、と決めていた。神様は読んだことがあったけれど、時間をおいてもこの物語の神様は、同じようにくまでした。けれども合作になっている2011の方の神様はいびつで、それは八百万のようで、それはまさに「あのこと」でした。よい、物語です。

  • 2011 12/4

  • くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである。

    全く同じ語り出しの「神様」と「神様2011」。
    行く場所も、行き方も、行った場所ですることも、ほとんど同じなのに、「あのこと」以来、すべてがガラリと変わってしまった。

    得体の知れない恐怖を感じる。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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