神様 2011

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 926
レビュー : 154
  • Amazon.co.jp ・本 (50ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062172325

感想・レビュー・書評

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  •  川上弘美が福島原発事故を受けて、デビュー作『神様』を書き直したという話題は知っていた。本屋でたまたま見つけてその薄っぺらさにびっくりしたが、迷うことなく購入した。どちらも、初めて読む。
     熊との会話も自然で違和感はない。熊の神様というのも分かる気がする。大きくて獰猛で、しかし憎めない動物だからか。アイヌは熊を崇拝したというが、アイヌの人々は人間の卑小さを直感的に知っていたのかもしれない。自然の恵みに感謝していたからこそ、熊を神と崇めたに違いない。著者があとがきで書いているように、自然とともに生きていた日本人は、万物に神が宿ると信じていた。自然に対する畏怖の心を忘れるとどんなことが起こるかを、3.11の原発事故は突きつけたとも言える。石原慎太郎の言う意味とは違って、<罰が当たった>のかもしれない。
     そう言えば、中沢新一と内田樹が、原発を<一神教的技術>であり、<荒ぶる神>だと指摘していたことが思い出される(『大津波と原発』、『日本の大転換』、『日本の文脈』)。
     熊の神様の背後に、ウランの神様がいることを忘れていたと感じて、川上弘美は書き直しを思い立ったのではないかと、勝手に考えたりもした。

  • 「神様」は、ほわーんとしたメルヘンチックな作品で、取り立てて大事件が起きるわけでもない、ほのぼのとした物語です。それが「神様2011」になると、ほとんど同じストーリーなのに、物語ちょっとしたところに3・11が顔をのぞかせてきます。些細なこととして流せるようでいて、決して流せない、些細なくせに妙に引っかかって気になってしまう。ちょうど歯に挟まった小骨のような3・11。恐らく被災された方々は、なんてことないように暮らしているけど、こういうチクッチクッとした日常の違和感にさいなまれながら暮らしているのでしょう。「この地域に住みつづけることを選んだのだから」(P.35)という言葉が胸に突き刺さります。

  • 神様 のほんわかした感じがすき。このくま、すき。

  • 一度ハマると抜け出せない作家、と愛する小川先生が著書で述べていらっしゃったので、図書館で、書店で、ふと目につく名前になった川上弘美作品。

    これ以上好きな作家を一同時期に持ちたくないなァという意味不明なセーブがかかってて、気になってるのにそれほど作品を読んでいない川上作品ですが、今作はタイトルと背表紙の質感に呼ばれました。

    川上先生は、クマと青年のファンタジックな交流を描いた「神様」という作品で1993年にデビューを果たしました。

    本作は、そのデビュー作をリライトした作品です。

    2011年、3月11日。

    当時を生きた全ての日本人の心に、深い影を落とした大震災。
    あの悲劇に触発され、きっと矢も盾もたまらず改稿されたのではないでしょうか。
    こういう作品を読むと、言葉で伝えることの力を改めて感じるよなー。言葉そのものは力持たないと思うんだけど。言葉を並べて誰かに発信する、その言葉で誰かの心の琴線に触れるものを書くことを仕事にしてる人達、ほんと尊敬するわー(語彙…)。

    1993年当時、誰も想像だにしなかっただろう原発事故。
    あえてリライト作にデビュー作を選んだ川上先生の心中はいかばかりだったのでしょう。
    日常生活のシーンの中に差し挟まれる、かつての非日常に、思わず息が詰まるようでした。

    川上先生の静かに訴える声が聞こえてくるような作品です。

    でも、元々の作品のファンで、今作にはガッカリしたって人も少なくないだろうし、その気持ちも分かるんだよね。難しいなぁ。

  • 川上弘美のデビュー作である『神様』は、人間の言葉を話す熊が魅力的な短編であるが、このリメイク版。3.11の東日本大震災後に書かれた本リメイクでは、通常版の「神様」で繰り広げられる熊との日常生活が、原発事故などの影響により、捻じ曲げられる様子が描かれる。しかも、通常版とリメイク版が両方収録されているため、比較しながら、福島が失った日常生活とは何か、が静かに描かれている。

    決して声高に叫ばれるわけではないけれど、静かな怒りがここにある。

  • 1993年に書かれた「神様」を東日本大震災を受けてリライトしたもの。1993年版と2011年版が収録されています。短いのですぐに読めます。非日常は日常に変わりつつあり、風化されずとも薄まる情報や報道に対しての著者なりの怒りや警鐘が伝わってきます。大人はもちろん、子どもにも是非読んでほしい。震災はこれからも続いてしまうのです。評価し難いので、★3にしています。

  • 熊のような人でなはく、熊。
    熊は熊として産まれ、熊の運命を受け入れて、ただ生きていること。
    これを読んで切なくなるのは、偏見を持つ側だからか、持たれる側だからか…。

  • 「単なる書き換え」と「単なる並置」という手法が、この作品を読んだ後に味わう胸くそ悪さを産み出すのだろう。

  • 収録作品は「神様」と「神様2011」。一瞬木で鼻をくくったような内容に戸惑いも。短いし何のこっちゃっ。それでも次第に熊との自然な関わりがじんわり伝わってくる感覚が何だか凄くよかった。原発事故後の2編目も静かな怒りが心に深く染みた。

  • 2013.9.15
    前から『神様』好きだったけど、2011が出てるのは知らなかった。

    書かずにはいれなかったんだろうな。たんたんとしていて、良い。

著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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