水の柩

著者 : 道尾秀介
  • 講談社 (2011年10月27日発売)
3.29
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062172578

作品紹介

老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が"普通"で退屈なことを嘆いていた。同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より"普通"を欲していた。文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。

水の柩の感想・レビュー・書評

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  • ここ何作かと同じく、悲しく切なく静かな物語だ。辛い運命を生きる登場人物達の姿に胸が痛くなる。初期の頃のようなあっと言わせる仕掛けはないが、深く引き込まれて読んだ。

    本当に端正な文章で、よどみがない。直木賞作家にこういう言い方はなかろうが、うまいなあと思う。

    どの作品からだったか、かすかではあるけれど明らかに救いのある結末が待っているようになって、ずいぶん読みやすくなった。わたしはこの路線が好きだ。だまされる快感のあるお話もまた読んでみたい気がするけれど。

  • タイトルから、殺人事件かと思い手にした作品。
    違いました。道尾秀介作品は「カササギたちの四季」に次いで二冊目。
    どちらもなんとなく、ほの悲しさがある。
    どこがどうと言えないのですが、胸の奥で涙がじわりとする感じです。
    いじめ問題とか将来のこととか、子供の背負うものって忘れていたけど、たくさんあるんですよね。
    忘れていたこと、ポロポロと思いださせるようなジンワリとした作品でした。
    いじめにあう子、いじめる子。
    離婚や親子関係。
    いじめる子はどうしてかわいいのか。
    旅館の経営の難しさ。
    年老いていくことの自然の流れ。
    などなど。
    人生の始まりから終わりまでの個々が描かれています。

  • かつて自分の住んでいた町がダムの底に沈んでしまったら。
    嘘をついてきたいくばぁちゃんはホッとした気分だったに違いないけれど、そうでなければ寂しい気持ちになるんじゃないのかな。
    いくばぁちゃんの幼い頃のつらい気持ちが、孫逸夫の同級生敦子の気持ちと共鳴したに違いない。そういうことは肌で感じるものなんだろう。
    いくばぁちゃん、逸夫、敦子の3人でダムで行った儀式は意味があったと思う。この儀式のおかげでダムの底へつらい気持ちを葬り新しい気分でやり直すことができたのだから。

  • 普通な少年、普通でありたかった少女と哀しい過去を持つ祖母の3人の心理描写が本当に丁寧に描かれていて読み応えがあった。終章で物語の伏線が見事に回収され、救いと希望のあるラストは読後感もいい。帯のコピーに嘘はない素敵な作品だった。

  • タイムカプセルとダムから身をなげる場面が印象的だった。
    タイムカプセルはふつう未来の自分へ希望を込めて書くものだが敦子は死の意志を決めて手紙の内容を変えようとしていた。
    ダムから身を投げることはあきらめの意を込めてすることだが逸夫達は過去をおいて未来への希望を託して人形をダムから投げた。
    登場人物ひとりひとりが強い人物で勇気をもらえた。

  • 水の中に沈んだ村
    学校で、家で行き場をなくしてしまった
    女子中学生
    普通という事への葛藤

    思いが重なっていく。隠されてた秘密。

    うーん!!道尾さんの世界。面白い!

  • 久しぶりの道尾さん。

    いつもこの作家の本を読むと、
    子供時代のちょっと暗い部分を思い出す。

    子どもって、それほど明るくしあわせいっぱいに日々を過ごしてるんじゃなく、
    けっこう悩んだり妬んだり闘ったりしてるんだと
    この本を読んで思った。

  • 人には辛く忘れたい過去がある。家族、イジメ、事故、故郷…。きっとそれは忘れることはできないだろうが、それをどう乗り越えるか。
    いくと敦子の話が並行して進み、最後には交わる。

  • 暗い。
    ひと昔前の設定かと思うような田舎町の話しだったけど、携帯とかでてくるし、いじめとか、あぁ今なんだな、と気づくのに時間がかかった。
    過去と現在が交互に語られるんだけど、最初に20年後の自分への手紙があるからてっきり20年後かと思ったし( ̄▽ ̄)
    なので過去が9ヶ月前のことだともわかりにくかった。
    最後は再生というか、希望的な終わり方なんだけど。
    逸夫、とか、敦子とか、名前が昭和っぽいからかなぁ。

  • 私たちがあの場所に沈めたものは、いったい何だったのだろう。
    五十数年前、湖の底に消えた村。
    少年が知らない、少女の決意と家族の秘密。
    誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。
    いま最も眩しい作家が描く、成長と再生の物語。
    第17作。第十二長編。
    形式:三人称小説(語り手:吉川逸夫、木内敦子)。

    主人公・吉川逸夫は「普通」「平凡」を嫌う中学二年生。
    もう一人の主人公でもある木内敦子は逸夫の同級生で、何よりも「普通」を欲していた。
    敦子から、小学校卒業時のタイムカプセルの中の手紙を取り替えることを提案される逸夫。
    彼女の秘めたる決意とは。
    一方、逸夫の祖母・いくは家族に打ち明けられない過去を抱えていた……。

    文章は必要最低限にまで削ぎ落とされ綺麗な印象を受ける。
    ただ人物の行動に、ちょっと疑問符がつかないでもなかった。
    けれどラストシーンはこれまでの長編でも自分の中で上位にくる。
    「乗り越える」こと、「忘れる」こと――。
    どちらも必死で生きていくことには変わりない。

    ミステリ:☆
    ストーリー:☆☆☆☆
    人物:☆☆☆☆
    読みやすさ:☆☆☆☆☆

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