恋する原発

著者 :
  • 講談社
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感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062173377

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災の被災者たちを救うため、チャリティAVを作ろうという不謹慎おもしろ小説。読んで見る価値あるよ。

  •  うーん。
     すごく「良くわかる(良くわかる気になる)」箇所と、極端に「なんかどうでもいいじゃん」箇所の差が激しい。
     そもそも僕にとってこの著者の作品って「とんでもなく面白い」と「死にたいほどにつまらない」の差が激しい。
     そんな両極端が一つの作品の中に混在している感じ。
     玉石混交ってところか。
     決して不謹慎だとも思わないし、連発されるいわゆる「放送禁止用語」にも特に嫌悪感は覚えなかったが、電車の中では少々読みづらいか。
     いずれにしても読む人を選ぶ作品……あ、それっていつものことか。

  • ポップ文学の最高峰(と個人的に思っている)「さよなら、ギャングたち」と同じように楽しめました。

  • あなたは、この小説に、賛成ですか、反対ですか?
    ―表現の自由をかけた過激な言葉の羅列。原発事故がもたらした日本の混乱に鋭く切り込み、私たちが人間であるために、そして、人間である意味を問う、愛と悲しみの超エンターテインメント―

    東日本大震災の被災者たちを救うため、チャリティAVを作ろうと制作スタッフが立ち上がった。その前に立ちはだかったのは現代ニッポンのモラルと言葉の厚い壁だ。制作会社の社長も、監督も、自分自身の人生と生活をかけて、プロジェクトに挑む。そして、元72歳のAV女優・ヨネさんの福島で行われた葬儀で、スタッフは姪のヨシコさんに再会する。郷里は放射能汚染で帰れない。
    そこに、近所の小学生サオリちゃんがやってきた。ヨシコさんとサオリちゃんは愛の問答を開始する。
    過激な表現のなかに優しい詩情が入りまじるストーリーと、想像を超えた美しい結末が感動を呼ぶ渾身の長篇小説。放射能に汚染された時代に、表現の自由をかけて挑んだ現代日本小説の勇気と愛!
    ---------------------------
    これはすごい。。。!さすが高橋源一郎、彼でなくては書けない小説。
    後半のナウシカの引用は、あまりに現実とシンクロしていて戦慄した。大傑作。

  • アダルトヴィデオを原発事故のメタファーに見事に描き切った名作。アダルトヴィデオは著者の好きな?テーマの一つとはいえ、ここまで構成しきったことに敬意を表する。

  • トンデモなくエログロいのに面白く、そしてなんとなく知的。エキセントリックでアヴァンギャルドな作風の高橋源一郎の真骨頂。あんなバカらしいエンディングにホロリとさせられてしまうのは、「あの日」を経たせいなのかしら?

  • AV監督である主人公が、東日本大震災のチャリティAVを作る話。
    震災は物語のちょうど真ん中くらいで起こり、その後主人公はAV製作会社の社長にチャリティAVを作れと命じられる。震災の情景描写はほとんどない。ただ背後にほのめかされている。

    冒頭にはこうある。「いうまでもないことだが、これは、完全なフィクションである。もし、一部分であれ、現実に似ているとしても、それは偶然にすぎない。そもそも、ここに書かれていることが、ほんの僅かでもら現実に起こりうると思ったとしたら、そりゃ、あんたの頭がおかしいからだ。」
    これが結構ずしんと来た。

  • ちょっとバカっぽい内容・・
    嫌いじゃないわ~。こういうの。笑
    楽しく読めた。

    後半の「震災文学論」。なかなか読み応え有り。

    P228 【おそらく震災はいたるところで起こっていたのだ。わたしたちは、そのことにずっと気づいていなかっただけなのである】同感です!!

    ちなみに著者は、
    1951年広島県生まれ。

    ◾︎内容(「BOOK」データベースより)
    大震災チャリティーAVを作ろうと奮闘する
    男たちの愛と冒険と魂の物語。 ← !!!

  • 個人的にはアリだったし、軽やかな文が含む痛烈な毒が心地よかった。
    不謹慎の極みである。まったくだ。チャリティーAVなど!(褒めてます)
    ただ、震災後、一息に書かれたであろう本作は明確な意図の下に書かれているのではないか。書き散らしたというと印象が悪いが、情報は膨大だった。そこを目がせいて仕方なかった。著者のいいたいことをもっともっとと。
    途中の震災文学論も面白かった。引用されている作品はいずれ読んでみたい。とりあえず、ナウシカを引っ張り出さなければ。

  • 東日本大震災のチャリティーAVを撮るよう命じられた男の苦悩と葛藤を描いた小説。

    ちょっと前に著者が東浩紀のネット番組にゲストで出た際、主に原発に関して「それまで安全安心と盲信していたのに事が起きた途端に手のひらを返したように避難する。こんな馬鹿馬鹿しいことはない」というようなことを言っていた。

    チャリティーAVも相当馬鹿馬鹿しいが、現実の方が何倍も馬鹿馬鹿しいだろというわけだ。

    深刻な現実を馬鹿馬鹿しく描き出した作品としては『ジョン・レノン対火星人』が挙げられるだろう。

    僕はこの作品や『さようなら、ギャングたち』など著者の初期作品が好きで、前述のネット番組で東浩紀が「『恋する原発』は高橋さんの中でも好きな作品で、読んだとき『ジョン・レノン対火星人』や『さようなら、ギャングたち』のときの高橋さんが戻ってきたような印象を受けた」と言っていたので本作にはかなり期待していた。

    結果的には僕の好きな2作品の奔放さが見られたのは3割くらいで、残りの7割はわりと普通の小説小説していた。

    だから★ひとつ減らして4つ★とした。

    ただ、その3割がとてつもなく面白い。

    具体的にどこかというと、セリフだけで構成されているところ。

    地の文が全くなく、それどころか「」すらついていない。

    それでもそれが誰のセリフかわかるのだ。

    以前ライトノベル好きの友人がこんなことを言っていた。

    「ライトノベルはセリフ中心だから読者はセリフのリズムで文章を追っていくのだが、その際、どうしても地の文のところでそのリズムが狂ってしまう。今後の課題はリズムを狂わせない地の文をどう書くかで、その先にライトノベルの進化があるんじゃないか」と。

    僕はその友人の言っていたライトノベルの新たな地平を前述の3割に見た気がした。

    いや、ライトノベルに限らず、これは文学の新たな地平のひとつでもあるんじゃないか。

    もちろんあの3割の記述方法だけで全体を構成しようとすると、イメージを広げやすい反面、広げた風呂敷たためない問題が出てくるのは否めない。

    それでもそれだけの価値があの3割にはあるような気がする。

    高橋源一郎はやっぱり面白い。

著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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