地の底のヤマ

  • 講談社 (2011年12月1日発売)
4.04
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784062173445

感想・レビュー・書評

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  • まだ1月も終わっていないのでやや気が早いかもしれないが、「質」そして「量」ともにまさに今年のナンバー1だ。

    まずはその大胆な装丁に度肝を抜かれる。全863ページ、上下二段組という圧倒的な存在感に手に取るのをやや躊躇われるのだが、読んでみるとこの装丁で発売した作家と出版社気合いを真正面から受け止めて買った甲斐があるというものだ。流石にこれだけの分量だと面白いからと言って一気読みは難しいし、通勤電車の中でも立っているときには重すぎて持てないので座れた時だけが読書タイムになるので予想外に手間取ったが、ページをめくるのがもどかしい想いで読みとおした。

    物語は九州の炭鉱町である大牟田が舞台。戦後の昭和20ー30年台初頭は石炭景気に沸き活気に溢れた大牟田の最盛期。しかし黒いダイヤと言われた石炭の地位は何時しか石油に取って替わり炭鉱にも大規模な合理化の波が押し寄せる。それに抗する組合運動は激化し、組合潰しとも言える第二組合の結成で労働争議の嵐が吹き荒れる。更に追い打ちをかけるが如く発生する昭和44年の炭鉱爆発事故。事故による一酸化中毒の後遺症に苦しむ鉱夫のその後の人生の悲哀。栄華を誇った大牟田の街も炭鉱の没落と共にさびれ時代も昭和から平成にそして現在に繋がっていくのだが、大牟田の炭鉱の栄枯盛衰とは無縁では居られない。まさに昭和から平成への大牟田史というか炭鉱の街の一大叙事詩とも言える物語だ。

    そんな大牟田を舞台にする物語の主人公は大牟田で生まれ育った警察官・猿渡鉄男。父親もやはり地元で警察官だったが、ヤクザ・新旧組合員・中毒患者など誰に対しても分け隔てなく接していたことから地元では伝説の警察官として慕われていたが、あの炭鉱爆発の有った日に何者かに殺害され殉職。鉄男は警察官への道を歩むものの捜査の一環として秘密資金の謎に触れようとしたことから警察の出世コースから道を踏み外してしまう。地元・大牟田の派出所勤務などの傍流を歩むものの、駆り出された捜査の過程でもつれた糸をほぐすかのように現れる父親の旧知の仲という人物達を通して事件を解決していく。彼らとの繋がりから大牟田の歴史に向き合い、そして何時しか父親殺しの犯人探しをするようになるのだが果たして犯人は見つかるのか。

    尚、冒頭で「今年のナンバー1」と述べたが、実は発売日が昨年の12月20日。なので恐らく年末にあちこちで発表されるであろう「今年のベスト本」の対象外になるであろう事が残念でならない。

  • 863P...二段組。...長かった。九州大牟田の
    三池炭坑を舞台にしたある警察官の半生と
    その街そのものを描いた大作。
    ここまでの自分の中の西村作品を大きく
    覆す作品で読み応えは勿論、ズシリとした
    楔をうつ作品。

    昭和35年から40年の時間を順を追って
    丁寧に、主人公「鉄男」の警察官としての人生、
    そして人間としての葛藤、苦悩、闇、喜び全てを
    内包した人生そのものを矛盾も含んだまま、
    丁寧に描いています。さらには炭坑街としての
    大牟田という街の背景にある過去から現在が
    大きなウネリを持って、書かれているところが
    今作の重みになっているのかもしれません。

    「鉄男」の刑事として関わった事件、そして
    その父にして街の伝説的な刑事の死の真相。
    ミステリとしても読ませる、有無を言わさぬ
    力強さに溢れてます。登場人物も膨大な数ですが
    ほとんど混乱せずに読ませる、配置と力量が光ります。
    特に、「オッチャン」と「ヒカッしゃん」なる脇役は
    西村氏ならではのキャラクターで涙を誘う。

    ただ、主人公「鉄男」という人間の持つ弱さや矛盾。
    逆に強さや正義感。その両方があまりに混沌と人間臭く
    小説の主人公としては感情移入しくい面もあるかもです。
    が....自分は充分にこの作品世界に浸りました。

  • 九州・大牟田、三池炭鉱の町に生きる人々の歴史が丁寧に描かれている。警察官を主人公に、自身の身の周りで起こる事件事故を町の歴史に絡ませストーリー展開していく。西村さんの言葉「おっちゃん、おばちゃんが動いて書かせてくれた」読み応えのある一冊。

  • 福岡県大牟田市/三井三池炭鉱を舞台にした話。
    主人公は地元の警察官 猿渡鉄男
    かつて栄えた全国の炭鉱、人々の暮らし、事故、労働組合、バラバラだった情報がこの本を読んで少しですが理解できた気がします。
    鉄男はたくさんの過去を持った警察官だけれど、心の優しい愛おしい人物像で描かれています。
    この物語で重要な意味をもつことになる江藤のオッチャン、幼なじみの白川、など愛すべき登場人物に心が温まりました

  • 警察官。炭鉱。大牟田。吉川英治文学新人賞。冒険小説協会大賞。

  • 2015_01_15読
    とても面白かったで‼️

  • 2014/10 長い。主人公の一生をしっかり読んだ。重厚で読みごたえのある本でした。

  • 吉川英治文学新人賞(2011/33回)・日本冒険小説協会大賞( 2011/30回)

  • 大作です。重厚な物語です。

  • #読了。三井三池炭鉱の街”大牟田”を舞台に、猿渡刑事の半生を描く。昭和49年~現代と別れている4部作となっていて、刑事ものミステリーというよりは、炭鉱街を通して時代を描く人間ドラマ。時代背景がちょうど自分と重なり楽しめた。しかし少々長かったかなと(863ページ)。

  • いやー、手強かった。
    時代背景や物語などは「警官の血」を髣髴させるものがあった。

  • 当時の炭鉱町が一番栄えてた頃に行ってみたいと思わせる作品。

    軍艦島一つとってみても炭鉱町には不思議な魅力がある。刹那的に栄えて衰える風情は花火に共通するかもしれない。

  • 2段組みの863ページ。登場人物の紹介ページ見たら、60人近くいました。読む前から、長い・・・読める気がしない・・・と思ったけれど、読み始めたら予想以上の面白さでぐいぐい進む。1人の警察官の半生と三池炭鉱の町の移り変わりがうまくかみ合った警察小説。とても褒められた人生じゃないし、嫌な部分もたくさん見たけど、一緒に人生を歩んだような・・ラストは感慨深かった。炭鉱の盛衰も物悲しかったけれど、近代史を垣間見れたかなと。面白かった!

  • 860頁は読みでがあるわ

  • 九州の大牟田を舞台に、炭鉱に関わった人々の生き様を織り混ぜながら、鉄男という一人の警察官の人生が描かれています。重厚で壮大な物語ですし、ミステリーとしての仕掛けもあるので、かなり読み応えがあります。
    ただ、主人公のもろもろが明らかになるにつれ共感できない部分が出て来るので、最後まで感情移入しきれませんでした。

  • 三井三池炭鉱を舞台としたミステリー警察小説。

    大牟田市と炭鉱の戦後史を背景に、一警官の地縁と血縁をめぐる骨太の物語。
    「炭鉱節」は今でも踊るけど、やくざ映画で九州抗争はよく見たけど、地に足の着いた物語は心に深く響きます。
    ただ、大作(長編)すぎること、展開がゆっくりとしているので、読了に時間がかかったしまいました。

  • 長かった

  • 800P超え、しかも二段組という読み応え充分の作品でした。
    九州の大牟田を舞台に、炭鉱に関わった人々の生き様や、主人公の鉄男の警官としての紆余曲折を経ての成長を描いています。
    鉄男の殺された父親の事件を主軸にしながらも、炭鉱の歴史や背景、人々の様子が丁寧に描かれており、余り長さを気にせずに読めました。
    馴染みの無い九州弁も途中からは気にならなくなりました。
    ラストが感動的。「生かされている」という言葉が胸に響きます。

  • 第2部15(P.333)まで読んだ。限界。次々に読み進めたくなるストーリー展開じゃない。

  • 私の評価基準
    ☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
    ☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
    ☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
    ☆☆ 普通 時間があれば
    ☆ つまらない もしくは趣味が合わない

    2013.3.19読了

    とにかく、長いです。

    文章も読みやすいし、小説としても面白いですが、長い。三池炭鉱を中心の舞台として、猿渡鉄男の少年時代から現在までの流れの中で、時々の事件を四部に分けて書かれた小説ですが、かなり密接に繋がっているので、あまり年代の切れ目の四部の構成は意味がないです。
    また、長くなっているのは主人公の生涯と炭鉱の歴史を綴っているからでも、同じような事件を同じように描いているので、ただ長い事だけが目についてしまいます。
    これは、編集者に責があるように思うけどな。講談社さんてっ、割と分厚い本が多くないですか?

    でも、それ以外では、とても良いです。小説の中にスッと入っていけるし、中の細かい人物描写も優れています。長いけど、飽きることもないです。大牟田の変遷も良く書かれているし、作中の飲食店もほとんど、もしくは全て実在するみたいです。私は大牟田に行ったことがありませんが、この小説で、行って見たくなりました。
    また、読後感も良く、少し取って付けたようではありましたが、人生に希望が持てるようなラストエピソードでした。

    ただ、カリウムの経口摂取では、余程のことがなければ、死に至ることはないのは、知っているものにとっては、興ざめでした。

    長過ぎなければ、四つ星だったんだけどな。

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著者プロフィール

1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。労働省(現厚生労働省)勤務後、フリーライターに転身。96年、『ビンゴ BINGO』で小説家デビュー。『劫火』『残火』で2005年と10年に日本冒険小説協会大賞(第24回、29回)、『地の底のヤマ』で11年に第33回吉川英治文学新人賞と第30回日本冒険小説協会大賞を受賞。14年、筑豊ヤクザ抗争を描いた『ヤマの疾風』で第16回大藪春彦賞受賞。他の著書に『光陰の刃』『最果ての街』『目撃』『激震』などがある。本作は『バスを待つ男』に続くシリーズ第二弾。最新刊は、シリーズ第三弾の単行本『バスに集う人々』。

「2023年 『バスへ誘う男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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