ジェントルマン

著者 : 山田詠美
  • 講談社 (2011年11月26日発売)
3.43
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062173865

作品紹介・あらすじ

眉目秀麗、文武両道、才覚溢れるジェントルマン。その正体-紛うことなき、犯罪者。誰もが羨む美貌と優しさを兼ね備えた青年・漱太郎。その姿をどこか冷ややかに見つめていた同級生の夢生だったが、ある嵐の日、漱太郎の美しくも残酷な本性を目撃してしまう。それは、紳士の姿に隠された、恐ろしき犯罪者の貌だった-。その背徳にすっかり魅せられてしまった夢生は、以来、漱太郎が犯す秘められた罪を知るただひとりの存在として、彼を愛し守り抜くと誓うのだが…。比類なき愛と哀しみに彩られた、驚愕のピカレスク長篇小説。

ジェントルマンの感想・レビュー・書評

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  • 背伸びして詠美さんの本を読んでいたあの頃を思い出しながら、この本を手に取った。きっと年齢的にはかなり追いついてきてるはずだが、彼女の世界観には相変わらずおっきな差を感じてしまう。自分の覗いたことのない世界へいつも導いてくれる存在だ。
    彼がジェントルマンなら、世の中には無数のジェントルマンがいるに違いない。惹かれてはならないものに惹かれるのが恋というものなのだろう。男同士の関係よりもユメと圭の友情に安らぎを覚えた。二人が結ばれたならどんなによかったか…。
    冒頭部分に戻った最後は、とても美しかった。結びの美しい作品は好きだ。

  • 外見も内面も「完璧」な同級生の本性に触れ、生涯を賭ける恋に落ちた主人公の話。
    30代となった二人を軸に、今と過去を行ったり来たりする。
    なんとまあ完全なるゲイ小説。

    優等生で万人に優しい漱太郎の歪みきった性衝動と、それをひっくるめて漱太郎を愛する夢生。
    漱太郎の犯した罪の話を聞き、二人で過ごす時間に幸せを感じる夢生、
    表面的には緩やかな関係を続けていた二人だったが、夢生の可愛がっている後輩と漱太郎が偏愛している妹が接近したことでバランスが崩れる。

    短い話だけどすごく濃い。
    漱太郎が自分にしか見せない裏の顔が夢生のプライドで、生きる意味なのかと感じた。
    夢生と漱太郎の同級生で、漱太郎の本性を薄々察している圭子が悲しい。
    漱太郎の妻をはじめ、善良そうに見えて裏には生々しい感情を抱えていたり、
    逆にツンケンしながらも情が厚かったりと、
    漱太郎以外の登場人物にも二面性を持たせることで人のままならない部分が浮き彫りになっている。

    ただ、一般文芸作品にしては同性愛や性的暴行など生々しい描写が多くて、ここらへんで無理な人も少なからずいるだろうなと思った。
    私的には面白いと思う、かなり。
    徹底的に歪んだ人を嫌悪しながらも惹かれていくというのは人の残酷な習性かもしれない。

    章立てがなく自然に場面は移り変わり、また現在と過去も境目なく行ったり来たりするので、夢生の一人語りを聞いているような不思議な感覚にもなる。
    ねっとりした話の割に妙にピュアな印象を持つのは夢生の価値観が一貫しているからかも。
    もっとドロドロはちゃめちゃにもできそうなのに、200ページ程度という短さでまとめて、ただ愛の物語にした潔さがよいと思う。

    結局ひとかけらも語られることがなかった漱太郎の本心だけど、
    私はたぶん漱太郎は夢生を愛してはいなかったなと思った。
    そしてそれを夢生もわかっているのではないかと思う。

    でもこれはハッピーエンドじゃないかな、愛の物語としては。

  • 山田詠美の同性愛者を主役にした長篇小説が出て、いよいよかと思いました。今までは短編でしかなかったはず…。
    これは男が男に恋をしないと作り出せない物語だなと思えます。
    かつ、あくまで一個人の恋愛物として読ませてくれるので、
    ユメに共感するところもあり、その強烈な想いにぐいぐい惹かれます。
    罪人の姿だとしても、自分だけが知っている彼の姿があって、
    性行為がなくても二人だけの告解を通じた関係がある、堪らなく痛い片思い。

    ゲイという設定だけに食いついたり、同性愛物は苦手だと敬遠したら勿体ない、
    濃厚な恋愛小説だと思います。

  • 自分用考察めも
    昨夜読んで朝起きてまた色々考えた。
    女の子という言葉は圭子いわくピュアで美しいひとになら
    年齢問わず使って良いとのこと。
    最初に妹に使っていた。
    で、ゆめおにも女の子と言っていた。
    そっか、圭子のなかではゆめおと妹は同じカテゴリなんだなと思ってから
    それってつまりそうちゃんの中でも共通項だったのでは?と思った。
    そうちゃんって、ゆめおが必要なのは分かるけど、あまりにもゆめおが
    そうちゃん全肯定なものだから、読んでる側(ゆめお視点)ではそうちゃん
    →ゆめおの感情が見えづらかったのだけど。

    結果ゆめおは自分が男だから諦めていたことを、
    ただの媒介としてだけどしげには為されてしまって、それが許せず
    ゆめおの罰を与えた。(他の要因はないと私は思っている)
    のだけど、ゆめおは自分が妹と同事項として
    「こじ開けられない鍵」を持つ存在だった=特別だったことに
    気付けれたら、と思いつつ気づけないのが恋だよねと思ったり。
    もちろんそうちゃんが言えば、ゆめおは喜んで自分を差し出したと
    思うけれど、これこそ大切だからそうちゃんはしなかった訳で。
    (罪の意識とはまた違うだろうけど)

    他にも色々と考えたいとこが多すぎる濃い一冊。
    今ふと思ったけれど小池真理子の「恋」も少し何かちかいのかな。
    絵描きさんの少女という要素ははぐちゃん、そうちゃんの完璧具合は
    森田さんを連想したりしたけど、最後はとんでもなかった。
    あ、ねこに対するあたりもちょっと森田さんだな。
    ふりきっちゃった森田さん。
    キエーの山岸漫画のひとに妹さんはいずれなるんだろか。

    ゆめおがいかにして、今の生活を作り上げたかを丁寧に描いていた分
    最後のあっけなさが際立ってました。

    あーーー。口のなかに入れた美味しいものをいつまでもいつまでも
    もぐもぐ租借していたい。
    文章の美しさはもう一文字も過不足ない勢いですさまじく完成されているので
    ここまでお話にのめりこめたのだと思います。

    追記
    学問の主人公二人と、そうちゃんとゆめおはもしかしたら表裏一体
    のような感じなのかも。

  • 久しぶりに読んだエイミー本。
    私は読書量はそこそこだけれど、文学を語れるほどでもないので高尚な書評は書けませんが、山田詠美を長年読みつくしてきたファンとして、この作品について評価をするならば…う~ん(-"-)という感じ。。。かつてなく、薄っぺらい感じ。ヤングライトノベルに挑戦したのかな?みたいな。だとしても!
    確かに筆力は健在で、ページをめくる手のスピードは落ちませんでした。でも、一方で「?」が頭によぎりながらのページ捲り。
    そしてこれだけはいちファンとして断言できる。いくつかのコメントに「エイミー節は健在!」みたいなのがあったけど、往年のエイミー節はこの小説には全然活きていない。ちがうちがう(>_<)
    そう思う人たちは、どこからの読者なのかな。『蝶々の纏足』『風葬の教室』『24/7』『ひざまづいて足をお舐め』etc..このあたり、このあたりを読んでみて~(T_T)

  • うううううぬ…。読後感ワルっw (いい意味で)
    仲良しのお姉さんに勧められて、久々に読んだエイミーさん。

    ところどころに散見するわたしの青臭いアドレッセンスを彩った山田節に郷愁めいたものを感じつつ、その頃のそれとは比べ物にならないドス黒いリビドーと哀しい純愛物語の重々しさといったら。「恋」をかくも陳腐なものに貶める破滅的な純愛。なんというか、正しきものへのアンチテーゼのようにも思える。自虐的な意味では、善悪を超越した情動的エロスを俯瞰する享楽的読書体験でした。はい。

    しかし帯の禍々しさがぱないですわ。山田作品は未だもってアニマル・ロジックが最強です。個人的に。

    登場人物の中ではケイさんがとても好きだな〜。「…友情」/「友情ならば、裏切れる」。悲しい言葉です。

  • 好き とか わかる とか
    そういうものとは少し違うけれど
    哀しいな、切ないな、というかんじ。

  • 詠美さんにしか書けない。

  • 本当に、女性が書く男性同士の感情の運び合いの嘘くささというのは、拭い去れるものではないなあ、と改めて。夢生は真の意味では本質として男性ではないし、漱太郎も女性が書く幻想としての男性だし、その2人のやりとりといったらもう、女同士でしかない。カニンガムとか、フォックス(小説内に出てきたけど)を貪るように読んだ身としては、ただのおふざけの延長線上のように感じられる。人間というものを全く書いていない。都合のいい人形を動かしているかのよう。ただ、この手の小説でそれなりに質の良いものというのは、娯楽小説と割り切れば受け入れられる。ストーリーはわくわくするものだったし、恍惚、という言葉が絶え間なく頭の中でチカチカするような、そんなかんじ。こういう本を読むたびに読書とは何なのかということを考えてしまう。人形を動かしているのに人間を書いているつもりでいる本か、本当に人間を書いている本か、人間を書くことの難しさを理解した上であえて人形を動かすような本を書いているか。

  • 久々の山田詠美。
    衝撃的な一冊でした。

    悪の教典読了後だったのもあって、いい意味で後味の悪い本ををたて続けに読んでしまったな、という感じ。

    エグくてグロい展開ではあるのだけれど、官能的で美しい描写に仕立て上げているのは、さすがの山田詠美。特にラストシーンは、頭の中にはっきりとイメージが浮かび、ため息が出ます。

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