私の中の男の子

  • 講談社
3.14
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本棚登録 : 466
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062174589

作品紹介・あらすじ

19歳で小説家としてデビューした雪村は、周囲から当然のように「女性作家」として扱われることに戸惑いを隠せない。性別なんて関係なく、作家として生きたい-。それからの雪村は、担当編集者の紺野と、仕事に意欲を燃やし出す。大学では時田という友人もでき、順調に仕事も増えてきた雪村だったが、またしても自分が「女性」であるがゆえの大きな壁が立ちはだかってきて…!?社会で働き、世界を生きるすべての女性に届けたい、著者随一の「生き方小説」。

感想・レビュー・書評

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  • 文才があり、作家としては成功したものの、
    その容姿については
    ひどいバッシングを受け、
    大ダメージを受ける主人公『雪村』(女性)。

    精神にダメージを受けると、
    オモシロイ小説なんか書いちゃいられない。

    書きたいのに。
    容姿のことなんかにとらわれずに、どんどん書いていきたいのに。

    そこで、
    出した彼女の結論、というのが、
    思い切って、<女性>を捨てる事だった…。

    たかが見た目。
    されど、雪村をここまで追い込むとは、
    侮ってはいられない肉体。

    肉体VS精神!(て、違うか?)

    終盤まで
    痛い雪村の行動にはハラハラさせられるが、
    孤独なファイターである精神もやられっぱなしではなかった。

    容姿、見た目を全く無にしてしまう場所にて
    ようやくそれは目を覚ました様だ。

  • 『あのさ、私、最近急に、世界がある、っていう気がしてきたんだけど、時田くんは最初っから、世界がある、って知ってたの?』

    自分はカメラになって世の中を写しとりたい、自分というカメラで。山崎ナオコーラはどこかでそう言っていた。そしてこの本の中でも主人公の作家に同じようなことを言わせている。そう言う山崎ナオコーラの小説は、確かに見過ごしてしまいそうな世界を山崎ナオコーラ色のレンズを透して描いているのが魅力になっている場合が多い。しかし最近の彼女の小説はどこかしら自律宣言めいたものが多いようにも思う。世界ではなく自分自身を描いてはいないだろうか。この「私の中の男の子」もまた然り。

    もっともこの本は前半と後半で随分と趣きが異なるようにも思う。前半は一人の女性の気持ちが小さな世界の中だけで右往左往する様子が描かれる。その閉じたような世界観があるからこそ後半で一気に世界が広がるような印象が強くはなると思うけれど、小説というよりは誰かの日々のブログを読み続けているような、ちょっとした居心地の悪さが、そこには付きまとう。それは他人の日記を盗み見る時の居心地の悪さとどこかで繋がっている感覚だ。この小説の主人公を山崎ナオコーラ自身に重ねあわせて読まないようにしないと、その感触は増々強くなってしまう。

    そんな私小説的な雰囲気もさることながら、世界を山崎ナオコーラ色のレンズを透して写しとってみたいと公言していた作家の良さが前半の恋愛小説めいた文章の中からは中々見えてこない。もっと、なるほどそういう風に世界をみることもできるなあ、という話を期待しながら読んでいるファンとしては残念な感じがする。

    後半、一人の人間として自律するさま、世界が急に広がるような展開、が描かれるようになると、少々ぶっきらぼうな紋切り型の言葉づかいでありつつも断言した中に同時に許容される不確実性や多様性が存在する、という山崎ナオコーラの独特のイメージが広がってくる。その多少哲学的な物言いこそ自分が好きな山崎ナオコーラなのだ。世界は自分自身の視点からだけ成り立っている。そう宣言しながらも、彼女の小説の主人公は常に世界の小さな変化に敏感だ。その世界を記述する文章がとても印象的なのである。

    それにしても最近の山崎ナオコーラの小説の中で流れる時間の早さは、少し度が過ぎはしないだろうか。確かに大きな精神的な変化が昨日今日の時間の長さの中で起こるのは不自然だとしても、まるで朝の連続テレビ小説の総集編を見ているような時間の流れ方起こる時に、少々置いてけぼりを喰らったような感覚を味あわされることがある。むしろその変化がじっくりと描かれてたらば、と思うこと仕切りなのである。

  • 19歳で作家としてデビューしたとたんに「女性作家」として世間に認識されて、女性、とつくことに対して葛藤を覚えた作家雪村の自分の性別をみとめるまでの軌跡。
    ナオコーラさん自身とかぶる設定に思える。ネットの暴言とかも。

    ナオコーラさんの文章、全く気取りがなくて好きだ。かっこいい。今更、って思えるようなことを素直にずばずば書いていることろがいい。いい文章を書くということよりも自分が書くべきことに真剣になっている度合いのほうが大切なんじゃないかって思えてきたこのごろ。

  • わたしが今まで読んだナオコーラさんの小説で一番好きで、一番共感できた。性別の違和感、というよりわたしという人間にはこうであって欲しいという願望、理想がものすごくうまく、繊細に描かれてる。この気持ち、わからないひとはわからないんだろうな。けれどわかるひとにはピンポイントな物語。
    登場人物、全員が好き。とくに時田くんには救われる。
    劣等感で、自分という人間を客観視してしまうひとへ送りたい。

  • ここまで性別を意識したことないけど、当事者は悩んでるし楽しんでるんだろう。最後の展開が意外性もあり、ほっこり

  • ナオコーラさんの作品を、初めて読みました。
    すごく読みやすく、内容は決して共感できるものではないのに、それでも主人公の雪村が感じている描写は、心が揺さぶられました。
    何処までが私自身で、人間なのか。そもそも私自身は人間という器を借りているだけではないのか。漠然と抱く疑問を、読みやすく書くのはすごいと感じました。他の作品も読んでみたいです。

  • 19歳で作家になった雪村の女である容姿と自分の中にある男の部分。

    作家ではなく、女性作家と言われるようになったことで
    雪村は自分が女性だと見られていることへの違和感。

    担当編集者の紺野にたいする思いが、果たして同志なのか恋なのかわからなくなり、
    いっとき紺野と距離を置いてみたり
    大学で知り合った時田との波長の合っている感じが、友情なのか恋なのかわからなくなったり

    作家業に専念し、女性としての胸を取ってみたり、時田と恋人関係になったときもあった雪村だったが
    山に登ったり、ジョギングをしたり、ジムトレーナーの服部との出会い、食事とまじめに付き合っていくことで
    自分の性別と折り合いをつけていく様子。

    私は自分が女性であることに違和感を覚えたことがないので
    正直雪村の考えていることはわかりません。

    でも、食事にたいする姿勢は、無駄食いばっかしてる自分にとってハッとさせられるような、気もした。
    体脂肪が27%は、やばい、と。。。。

  • 53:おとことかおんなとか言う前に作家であり人間だ、と一風変わった主張を掲げ、「女性作家」と紹介されることに違和感を抱く作家・雪村と彼女の周囲の男性たちの物語。ジェンダーについて造詣が深い方が読まれるとまた違ってくるのかもしれませんが、雪村の「こだわり」にすぎなかったものが普遍的な「ひと」や「いのち」を見る視点に広がってゆくにつれ、「わたし」というものが客観性を得ていくのには、爽快というよりは畏れを感じました。もしかすると宗教観のようなものも混じった作品なのかな、と想像するしかないのですが、強い自己愛を抱くがゆえに摂食障害を患い、自分自身のイメージにあれこれ思い悩むさまは、オンラインとオフライン、それぞれに生きる私たちがつまづきがちな部分なのかもしれないと思います。
    雪村の例はかなり極端だし、雪村という存在に違和感を覚える方も少なくないと思いますが、「わかるわかる」と深く頷く自分もいて、時間を空けて読むとまた感想が変わりそう。ちょっと手元においておきたいかも……。文庫待ちかな。

  • 変人の話かと思ったけど変なのは行動だけだった。恋や性や仕事に対してよく理解してなくて他人からの評価で自分のそれを決めてしまう、ということは若い女性ならよくあることだと思う。
    普通ならそのまま人生進めていくけど主人公は考え込んで試行錯誤して成長していく。

  • 自分の中に無いものを求めるのは普通の事なのかもしれない。
    外に求めようと、内に求めようと。

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著者プロフィール

山崎ナオコーラ
一九七八。『人のセックスを笑うな』で文藝賞を、『美しい距離』で島清恋愛文学賞を受賞。その他の著書に『浮世でランチ』『この世は二人組ではできあがらない』『ニキの屈辱』『昼田とハッコウ』『反人生』『ネンレイズム/開かれた食器棚』『偽姉妹』『リボンの男』、エッセイ集『かわいい夫』『母ではなくて、親になる』、絵本『かわいいおとうさん』などがある。

「2020年 『夜ふかしの本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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