官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062174824

作品紹介・あらすじ

「今すぐ新聞をやめなければあなたの財産と家族が危ない!」。政・官・業そして「報道」で形成する裏支配者たちの全貌。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。アメリカのジャーナリズムと比較して、日本のマスコミ、とくに新聞が抱える問題点を指摘する。頭から新聞の記事を信じてしまうことに危険性があることを知った。
    アメリカのジャーナリズムを賛美し過ぎの感はあるものの、ジャーナリズムの本質を考えさせられた。

  • ガラパゴス化の道をたどり続ける日本の大メディア。権力と一体化し、また既得権益を共に享受し、財務省の増税路線を援護射撃しながら、「プレスリリース原稿」のみを垂れ流す。元日経記者が赤裸々に現実を晒します。

    本書は元日経新聞の記者による、報道機関と『お上』が以下に結びついているかと言うことを詳細に語った一冊で、その内容と量は本当に読み応えがございました。政・官・業そして「報道」で形成する裏支配者たちの全貌が全編に描かれており、日頃我々が重要な情報源にしていると思われる新聞が実は権力側とべったりと言う『現実』ここに書かれていることがもし本当のことだとするのならば、一体なにを信じればいいのかと読み終えた後途方ににくれてしまいました。

    筆者は日経で記者をやり名からコロンビア大学のJ(ジャーナリズム)スクールで学んだそうですが、日本の新聞と欧米各国の新聞の記事の書き方や取材の進め方に最初は面食らったそうです。その一つは情報元や取材対象は日本の新聞の場合は匿名だったり、捜査する側は匿名であり、される側は実名なのが日本の新聞だったりするのですが、欧米では取材する側もされる側も双方ともに実名だからこそ、詳細な記事が書けたり、権力におもねることのない骨太の調査報道があるのだろうかとおっしゃっていたのが印象的でした。

    先日会員制情報雑誌の『選択』に関する本を読んでいたので、日本におけるジャーナリズムのあり方はここに書かれていることを鵜呑みにすることはできませんが、『プレスリリースをそのまま記事にしたような』文章は問答無用で却下されると言うことが述懐されていると、まだまだ、 ジャーナリズムの本当の姿と言うのはあっちの方にあるのかも知れませんし、日本の場合、『情報』の独占と言うことがもし、権力側によって行われているのであり、『権力をチェックする』側であるはずのマスコミが権力に対してベッタリであるのならば、我々は一体なにを信じればいいのかと、そう思わずにはいられませんでした。

  • 新聞を中心とするメディアが権力監視の役割を果たさなくなると民主主義は腐敗し崩壊する。新聞社のエライさんが政府の審議会に入っていたり、同じ施設内で便宜供与どころかネタまでもらう記者しかいない日本で、アメリカ流のジャーナリズムが育つはずもないか。

  • 元日経ニューヨーク駐在capによる日米ジャーナリズム(新聞)比較論。ややアメリカ新聞礼賛のきらいがあるが事実日本の新聞報道のショボさがあるんだと思う。メディアリテラシーを高めるためにも読了してよかった。ちなみに欧州はどうなんでしょうね。FTとかルモンドとか。

  • 面白かったが、ちょっとエピソードがくどい。コラムまとめたみたいだけど、もう少し削った方が読みやすい。
    民主主義にはいいマスコミが不可欠。
    んで、知る権利を履き違えてはいけない。

  • 日本の新聞は官庁のスポークスマン。
    新聞、ジャーナリストにおける日米での違い、なるほどでは済まされないレベル。。
    震災以後、新聞テレビなどの大メディアがいかにひどいものかということが明らかな形で曝け出されたが、3年経った現在、結局何も変わってないということにほぼ絶望。

  • 第一章
    エルスバーグ:ペンタゴンペーパーズを持ちだした
    道でん篤:五菱会関係のマネー・ロンダリングで逮捕起訴されたが、後日無罪を獲得したクレディ・スイス銀行の元行員

    合衆国憲法のファースト・アメンドメントに言論の自由を守られながら、内部告発を保証するアメリカに対し、日本国内の現状を憂いる。

    第二章
    村上ファンドと堀江貴文について。村上世彰から逮捕当日の朝電話がかかってきたらしい。波取り記者(電波利権)について

    第三章
    ジュディスミラー:NYTの女性記者。イラク戦争前にサダム・フセインが核兵器開発に向けて準備を進めているという誤報を続ける。
    前田恒彦:データ改竄問題においての主任検事
    大坪弘道:特捜部長
    佐賀元明:副部長
    ロバート・クザミ:SEC捜査局長ゴールドマン・サックス追求で活躍した

    匿名について。
    マスコミと権力が癒着していると以下の3点が展開として考えられる。
    内部告発者が匿名性を失う 推定無罪がまかり通る リーク依存型報道が過熱する。日本では検察、裁判所の裁判長など、権力側にいる人物の匿名性が多く見られる。

    第四章
    記者クラブ

    第五章
    市民目線が根付くアメリカの報道機関

    第六章
    ウォルト・モスバーグ:WSJの記者。毎週木曜日に書くコラム「パーソナルテクノロジー」が絶大な影響力をもつ。ジョブズとの関係も。
    モスバーグに関する情報がとても良かった。彼を引き抜こうとするNYT、そしてWSJの意図も分かる。徹底的に消費者の目線にたって、様々なデバイスを吟味。
    シリコンバレーに赴任しなかった理由も納得。

    第七章~第八章
    デイナ・プリースト:ワシントン・ポスト記者。CIAのブラックサイトを調査報道によって暴く

    アメリカの調査報道、および調査報道に特化した機関の取り組みを紹介。ロサンゼルス・タイムスのトヨタリコール問題など。CIAのブラックサイト問題ではブロガーの力を借りたと記されている。ディープウェブ検索について。これはwikileaksにも近い。

    第九章
    フィンク:プロパブリカにてカトリーナハリケーンで襲われた地域の取材でピュリッツァー賞を受賞
    チャールズ・オーンスタイン:プロパブリカ所属記者。看護婦の実情について記し、ピュリッツァー賞最終候補まで残る。
    トレーシー・ウェーバー:同上。
    調査報道の雄として、オンラインメディアやNPOを紹介している。ボイスの運営実態について。収入など新たな経営について記されている。

    第十章
    ウォルター・クロンカイト:CBSイブニングニュースのキャスターを19年間務める
    記事の正確性について。ルパード・マードックの買収が影響しているのでは。ファクトチェックについて。

    第十一章
    第十一章
    「一面トップ記事の条件」は一番の興奮をもって読破してしまった...。第十一章は「近代的フィーチャー記事のパイオニアがWSJ」という言葉を掘り下げた章で、WSJ中興の祖といわれるバーニー・キルゴアの改革から、筆者である牧野洋さんがコロンビア大学Jスクールで学ばれた「WSJ方式」の説明が書かれている。ハンター・S・トンプソンの映画や、カポーティの「冷血」を読んで以降ニュー・ジャーナリズムにも興味があったので、それらとフィーチャー記事が繋がったことも学んだことの一つ。報道に悶々としている人はまずこの章だけでも読んで欲しい。

    第十二章
    ピュリッツァー賞と新聞協会賞。またJスクールの教育について。厳しいが実践的。

  • ・時間が経てばわかることに新聞報道の意義はない。社会を変えうることを報道するのが使命
    ・だけど日本は御用聞きばかり。報道の体をなしていない(そりゃあそうだよ、大政翼賛会の時代からある新聞社で、伝統を自慢してるんだもの)
    ・政治とは対峙し、監視するのが使命(あれ?)



    取材に応じるのは覚悟がいる。

  • 軍産複合体をもじったのが本書のタイトル。副題といい、帯の惹句と
    いい、かなり扇情的なのだが中身は著者の経験をベースとして、
    冷静に日米の新聞報道の相違点を論じている。

    この点で上杉隆のヒステリックな記者クラブ批判とは大違い。
    加えて本書では上杉がしきりに絶賛するニューヨーク・タイムズの
    権力に与した報道とその後の同紙の検証記事にも触れている。

    上杉隆を妄信している向きには本書の一読をお勧めしたい。彼は
    手放しでアメリカ・メディアを礼賛しているので、騙されるなよ。笑。

    さて、本書である。日米の新聞記事の違いについて一番分かりやすい
    のが、著者が日本経済新聞に在籍したまま、コロンビア大学大学院
    ジャーナリズムスクール留学中の出来事だ。

    日本人補習学校へ出向き取材したことを原稿にする。指導教官に
    提出したところ、「これでは記事として成立していない」と突き
    返される。取材した先は校長や教師。これでは「権力側」にしか
    話を聞いていないことになるからだ。

    後日、著者は再度学校に赴く。今度は授業を見学し、子供たちに話を
    聞く。そして出来上がった原稿はOKをもらう。

    よしっ。これなら日経の英文サイトにも掲載できるだろう。会社に送った
    ところ、子供たちへ取材した部分がばっさりと切り取られサイトに掲載
    されていた。

    誰に話を聞き、誰に向けた記事なのか。日米の違いはこんなところに
    も存在する。

    語学の才能がないので英字新聞が読めないのが残念なのだが、
    日本の新聞に限って言えば本当に「発表報道」が多い。「警視庁に
    よると・・・」とか「政府は…」とか。

    それに対し、誰がどう感じているなんてないものなぁ。新聞ではないが、
    テレビ・ニュースで「○○(テレビ局名)の取材で分かりました」なんて
    フレーズをよく聞く。「ほぅ、それは誰が誰に聞いて分かったのかね?」
    なんてテレビに向かって突っ込んでいることがあるのだが。笑。

    その報道は誰の為?誰が誰に何を伝えたいの?権力側の発表を
    垂れ流すだけしか能がないのなら、それは報道ではないのだよね。

    「新聞は情報を読者に届けるためだけに存在する。他に理由はない。
    読者にとっての新聞の価値とは何か。いま何が起きているのかについて
    真実を明らかにし、きちんと伝えること。これに尽きる。
     広告主などからの圧力で伝えるべきニュースを伝えなくなったら、
    新聞は広告主も含め誰にとっても何の役にも立たなくなる。読者を
    すひなってしまうからだ。」

    ウォールストリート・ジャーナルの親会社社長キルゴアが、同紙が
    自動車メーカーGMの逆鱗に触れた時の言葉だ。

    広告主と闘える新聞社は、日本にあるのだろうか。ないだろうな…。

  • 自分がいかに甘い読者だったかということを思い知らされた。事実を追うことで満足していた。それならインターネットでこと足りる。

    この本を読んでから新聞に目を通してみたが、権力側のコメントは載せているが、非権力者のコメントはほぼなかった。ソースはほぼ匿名。冷静に読めば、ほとんどの記事が権力側の意思を反映したものになっている可能性がある。

    いずれ発表されることを一日早くしったところで嬉しいことは思いつかない。日本の新聞社がそこにそれほどの労力をかけているのはもったいないことだと思う。記者にとっても、読者にとっても。

    匿名を使うので第三者が検証できないという点は、原発における国民のメディア不信につながっていると思う。

    震災を機に、記者クラブの実態や自由報道教会の存在をしった。公共サービスとしての機能をNGOに期待する、という記述があったが、私もNGOやフリージャーナリストに注目し、記事を読み、必要であればサポートするようにしたい。

    著者は日経新聞での勤務経験があり、またUSのジャーナリズムスクールで学んでいるため、比較が詳細かつ豊富。読んでいて、こんなにも違うのかということがよくわかった。
    スクールで鍛えられているためか、日本勤務時の社内の理不尽なやり取りが鮮やかに描写されていて、やりきれなさが伝わってきた。

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著者プロフィール

ジャーナリスト兼翻訳家。慶應大学経済学部卒、コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修士。日本経済新聞社でニューヨーク特派員や編集委員を歴任し独立。早稲田大学大学院ジャーリズムスクール非常勤講師。

「2021年 『官報複合体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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