官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪

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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062174824

感想・レビュー・書評

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  • 新聞を中心とするメディアが権力監視の役割を果たさなくなると民主主義は腐敗し崩壊する。新聞社のエライさんが政府の審議会に入っていたり、同じ施設内で便宜供与どころかネタまでもらう記者しかいない日本で、アメリカ流のジャーナリズムが育つはずもないか。

  • 第一章
    エルスバーグ:ペンタゴンペーパーズを持ちだした
    道でん篤:五菱会関係のマネー・ロンダリングで逮捕起訴されたが、後日無罪を獲得したクレディ・スイス銀行の元行員

    合衆国憲法のファースト・アメンドメントに言論の自由を守られながら、内部告発を保証するアメリカに対し、日本国内の現状を憂いる。

    第二章
    村上ファンドと堀江貴文について。村上世彰から逮捕当日の朝電話がかかってきたらしい。波取り記者(電波利権)について

    第三章
    ジュディスミラー:NYTの女性記者。イラク戦争前にサダム・フセインが核兵器開発に向けて準備を進めているという誤報を続ける。
    前田恒彦:データ改竄問題においての主任検事
    大坪弘道:特捜部長
    佐賀元明:副部長
    ロバート・クザミ:SEC捜査局長ゴールドマン・サックス追求で活躍した

    匿名について。
    マスコミと権力が癒着していると以下の3点が展開として考えられる。
    内部告発者が匿名性を失う 推定無罪がまかり通る リーク依存型報道が過熱する。日本では検察、裁判所の裁判長など、権力側にいる人物の匿名性が多く見られる。

    第四章
    記者クラブ

    第五章
    市民目線が根付くアメリカの報道機関

    第六章
    ウォルト・モスバーグ:WSJの記者。毎週木曜日に書くコラム「パーソナルテクノロジー」が絶大な影響力をもつ。ジョブズとの関係も。
    モスバーグに関する情報がとても良かった。彼を引き抜こうとするNYT、そしてWSJの意図も分かる。徹底的に消費者の目線にたって、様々なデバイスを吟味。
    シリコンバレーに赴任しなかった理由も納得。

    第七章~第八章
    デイナ・プリースト:ワシントン・ポスト記者。CIAのブラックサイトを調査報道によって暴く

    アメリカの調査報道、および調査報道に特化した機関の取り組みを紹介。ロサンゼルス・タイムスのトヨタリコール問題など。CIAのブラックサイト問題ではブロガーの力を借りたと記されている。ディープウェブ検索について。これはwikileaksにも近い。

    第九章
    フィンク:プロパブリカにてカトリーナハリケーンで襲われた地域の取材でピュリッツァー賞を受賞
    チャールズ・オーンスタイン:プロパブリカ所属記者。看護婦の実情について記し、ピュリッツァー賞最終候補まで残る。
    トレーシー・ウェーバー:同上。
    調査報道の雄として、オンラインメディアやNPOを紹介している。ボイスの運営実態について。収入など新たな経営について記されている。

    第十章
    ウォルター・クロンカイト:CBSイブニングニュースのキャスターを19年間務める
    記事の正確性について。ルパード・マードックの買収が影響しているのでは。ファクトチェックについて。

    第十一章
    第十一章
    「一面トップ記事の条件」は一番の興奮をもって読破してしまった...。第十一章は「近代的フィーチャー記事のパイオニアがWSJ」という言葉を掘り下げた章で、WSJ中興の祖といわれるバーニー・キルゴアの改革から、筆者である牧野洋さんがコロンビア大学Jスクールで学ばれた「WSJ方式」の説明が書かれている。ハンター・S・トンプソンの映画や、カポーティの「冷血」を読んで以降ニュー・ジャーナリズムにも興味があったので、それらとフィーチャー記事が繋がったことも学んだことの一つ。報道に悶々としている人はまずこの章だけでも読んで欲しい。

    第十二章
    ピュリッツァー賞と新聞協会賞。またJスクールの教育について。厳しいが実践的。

  • 自分がいかに甘い読者だったかということを思い知らされた。事実を追うことで満足していた。それならインターネットでこと足りる。

    この本を読んでから新聞に目を通してみたが、権力側のコメントは載せているが、非権力者のコメントはほぼなかった。ソースはほぼ匿名。冷静に読めば、ほとんどの記事が権力側の意思を反映したものになっている可能性がある。

    いずれ発表されることを一日早くしったところで嬉しいことは思いつかない。日本の新聞社がそこにそれほどの労力をかけているのはもったいないことだと思う。記者にとっても、読者にとっても。

    匿名を使うので第三者が検証できないという点は、原発における国民のメディア不信につながっていると思う。

    震災を機に、記者クラブの実態や自由報道教会の存在をしった。公共サービスとしての機能をNGOに期待する、という記述があったが、私もNGOやフリージャーナリストに注目し、記事を読み、必要であればサポートするようにしたい。

    著者は日経新聞での勤務経験があり、またUSのジャーナリズムスクールで学んでいるため、比較が詳細かつ豊富。読んでいて、こんなにも違うのかということがよくわかった。
    スクールで鍛えられているためか、日本勤務時の社内の理不尽なやり取りが鮮やかに描写されていて、やりきれなさが伝わってきた。

  • この本の作者曰く、日本のマスコミは政府の発表をそのまま記事にするところが多いらしい。市民の目線から書いてないばかりでなく、政府に都合のいい情報だけを流している。あまり信用しない方がいいかもしれない。

  • 元日経記者による日本の新聞報道に関する問題点を指摘した大著.調査報道主体のアメリカの新聞との対比し,日本の新聞報道は匿名記事やリーク・特ダネ主体など,納得感あり.震災以降,原発問題など各種情報を自ら判断する力が求められている現在,必要な視点であると強く感じる.450Pを超えるボリュームだが,読む価値あり.もちろんここに書かれている内容も,自ら判断必要ある.

著者プロフィール

ジャーナリスト兼翻訳家。慶應大学経済学部卒、コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修士。日本経済新聞社でニューヨーク特派員や編集委員を歴任し独立。早稲田大学大学院ジャーリズムスクール非常勤講師。

「2021年 『官報複合体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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