アスペルガーの館

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 147
感想 : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175043

作品紹介・あらすじ

アスペルガーの当事者である私が、言語聴覚士となり、アスペルガー者の妻となるまで。当事者・支援者・家族という3つの立場で「見えない障害」を生きる。

感想・レビュー・書評

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  • 言語聴覚士(医療の専門職)であり、自らがASD当事者である村上由美さんの「発達障害」界隈の感覚や経験を丁寧な言葉で綴った1冊。

    それもご自身がアスペルガー当事者・
    ご主人が同じくアスペルガーという「家族」・
    発達障害の人たちをサポートする「支援者」としての立場
    この3つの視点からの言葉が目から鱗だった。

    近年「毒親問題」や「カサンドラ妻」に関する著作も多く目にするようになったが、こちらに関心のある方も手に取ってみると発見が多いかもしれない。

    ご主人の言動に関する違和感についての描写は、私も「それそれ!」と夫に感じるものに該当することが何か所もあり、溜飲が下がった。

    アスペルガー傾向の人は、現実に目に見えないものや事柄に関する想像力に問題を抱えている人が多く、さらにその欠落の現れ方は人により千差万別とのこと。

    「状況を論理的につなげて推測するという発想を自力ではほとんどしないし、論理的に考えるように私が促しても、彼が組み立てた論理は、状況にあっていないことが多い。」(本文P168)という記述はまさに我が家の夫。

    極めて秀でた分野があるので、日常の家族での生活では、そんなこともわからないのかなと思うのだが、そのバランスの悪さこそ発達障害ということで納得。
    丁寧な説明(「療育」)が逐一必要なのよね…。

  • 「なんて身勝手な」「自閉症では」──違うんです 当事者が実体験語る『アスペルガーの館』: J-CAST トレンド【全文表示】(2012年05月31日)
    https://www.j-cast.com/trend/2012/05/31134001.html?p=all

    アスペルガーの館 講談社|村上由美|note
    https://note.com/yumi_murakami/n/n5b05fba32800

    『アスペルガーの館』(村上 由美)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000187263

  • 著者の村上由美さんは自閉症で、幼い頃から実母から厳しい療育を受け場面場面に応じての膨大なパターンを叩き込まれ、SSTも、「時間、お金、もの」も徹底的に教え込まれたそうです。そして言語聴覚士への道を歩み始める。

    と同時に、「アスペルガーの館」というサイトの管理者で、現在は旦那様の村上真雄さんと出会い、メールのやり取りから交際に発展し、そして結婚という…アスペルガー同士の結婚生活の模様も語られる。

    母娘で血のにじむような努力の積み上げにより、一見障害のないような状態に見られて、講演会などでも「あなたのような人に自閉症や障害を語ってほしくない」と、言われたこともあったようで…読んでいて、どちらの気持ちもわかるような気がした。

    あと最近、どの本でも書かれている障害を持っている人自身の「気づき」がとても大事だと、ここでもわかった。うちの子は「気づき」がなく、そうしたらこうなる、こう思われるなどの「想像力が欠如または不足」しているので、そういう訓練も大事だと感じた。他、客観的に自分を見ることも重要。

    育った環境、経済状態、家族構成などなど…様々なことで差が出てくるので、難しい面が多い。あとどうしても持って生まれてきた性格というか気質のようなものも大いに関係がある。

    村上由美さんのあとがきと、旦那さんのあとがきの温度差が…すごいな(笑)…と思った。細かく決めて計画を立てないと気が済まない由美さんと、ポジティブ思考過ぎて「僕が病気で倒れるなんてありえない、由美はどうしてそういう風に考えるんだ!」という、この差!

    由美さんは結婚してから旦那さんを少しずつ療育しているそうです。すごいお二人だと思った。内容はかなり分かりやすいです。由美さんの言語聴覚能力で意識不明のおじとコミュニケーションをとり、最期まで合図で会話したという話は感動しました!


    =H27年4月 追記=

    ●「相手のいるひとりごと」 この、相手に配慮しない一方的なコミュニケーション=24ページ=

    ●「学校は誰もが云行くところなんだよ。まわりを見てごらん。みんな毎日学校に行ってるでしょ。お友だちと勉強するのはあたりまえのこと」=36ページ=

    ●本を読みながら、台本を覚えるようにして、人と人との言葉のやり取りや感情の動きを知っていった。=40ページ=

    ●母に感謝している反面、ふたりとも相当に無理を重ねてきたとも思う。=58ページ=

    ●アスペルガー当事者の中には、子どもの頃に気づいて適切な療育を受けさせてくれなかったと親を恨んだり、「何をやってもダメなんだ」という絶望から抜け出せない苦悩を深める人もいる。=89ページ=

    ●「積極奇異」と呼ばれるタイプ=99ページ=

    ●自閉症やアスペルガーの特徴である「想像力の欠如」=118ページ=

    ●「この世に永遠なんてないんだよ。この世は一瞬一瞬のできごとの連続なんだ。でも毎日同じことを続けていくと、それがだんだん永遠に近づいていくんだ。」=121ページ=

    ●理学療法士PT 作業療法士OT 言語聴覚士ST=137ページ=

    ●「もの・お金・時間」の三つの管理=141ページ=

    ●「人は死ぬ間際までコミュニケーションを求める生き物だ」=162ページ=

    ●「自閉症の人は想像力に問題がある」=168ページ=

    ●理由を知っただけでは、問題は解決しない。=197ページ=

    ●何より大切なのは、自分に合った努力のしかたを見つけること。=197ページ=

    ●オートマ車とマニュアル車に例えるとわかりやすい。=198ページ=

    ●自分を冷静に客観視すること=200ページ=

    ●家族構成、経済状況、住宅事情など、当事者を取り巻く環境も人それぞれ異なっている。=203ページ=

    ●本来、療育は、生活を快適にし、本人やまわりの人が折り合いをつけやすくする手段を身につけるもの
    =204ページ=

    ●今後は訪問サービスなどの形で、環境整備を、子どもの頃から療育の組み込めるよう、支援者や行政に強く求めていくことも必要。=206ページ=

    ●療育の目的は、まず人と関わることの必要性を理解してもらうこと。=207ページ=

    ●「這ったう障がいとは何か?」ときかれたら、「周囲との折り合いをつけにくい状態」と、今の私は答えるだろう。=217ページ=

    ●折り合いをつける幅が狭いために、本人も周囲も戸惑い、それをなんとかしようとおたがいに不適切な関わりをすることで、さらに混乱を招くという悪循環にる。=217ページ=

    ●「当事者」「家族」「支援者」の3つの立場。=11ページ=

  • アスペルガーである著者が幼い頃に告知されて育ち、アスペルガーである男性と出会い結婚し、言語聴覚士として発達障がいの子供たちを支援する仕事もしている、そんな日々が綴られている。
    著者が育ってきた時代と現在では、ずいぶん発達障がいへの理解も変化してきているように思える。
    それでも、きっと当事者や家族は、多くの苦労を重ねて日常生活を送っている。周囲の人も、別の意味での苦労をしているかもしれない。
    少しずつ知識と対応方法が広まる事で、お互いが過ごしやすく生きやすくなればいいなと思う。

  • たぶん私はアスペルガーではないと思うが、なんだろうこの既視感…。
    給食が食べられなくて居残りさせられたとか、自分の気持ちを言葉で表現するのが苦手で会話だととっさに言葉が出ないしメールの文章を作るのに時間がかかるとか、ヒカルゲンジと聞いて源氏物語しか思い浮かばない世間知らずな子だったとか。発達障害と定型発達の境目がはっきりあるとは思わないけど、ますます違いが分からなくなった…。
    私も「周囲と折り合いをつけて暮らすすべを訓練によって身につけてきた」という気がしてるし、「細かいルール変更は苦手なので、それだけでも大きな負担だった」というのも私がつねづね感じていることだ。
    “普通に生活できているんだから障害がなくなった、とは思ってほしくない”、と著者が言うのと同じように、障害がないからアスペルガーの人が苦手としていることをなんの苦労もなくこなすことができる、とは思ってほしくない、というのが読みながらふと湧いてきた本音です。
    発達障害か定型発達かに関わらずそれぞれが、それぞれの活躍できる場所で生きていければいいなーと願う。

  • 面白かった!(という表現はふさわしくないかもしれないが)当事者の本のなかでもとくに好き。

    おふたりとも努力家でお互いに素晴らしいパートナー。まさに運命の出会い。ご主人のあとがきがあまりにもあっさりしていて、著者の苦労をより実感できる。正反対なのがまたお似合いなのだろう。

    しかし恋人時代のエピソードが赤裸々で、こんなに詳細に書いてくれなくても…ご家族や周囲の方は困惑しそうで他人事ながら心配である。その辺は読者に対する(積極奇異)なのか?編集者の方、カットしてくれてよかったのに。

  • テーマは重そうに見えるけど、シリアスになりすぎない文章が素敵。落ち着いてる。

    兄弟児の事、私は申し訳なくて考えないようにしてたけど。「母が○○のために10頑張ったのなら私も5くらい頑張った」文(うろ覚えで少し違う。ごめん。)
    もっともだな。でもその日々を返せないジレンマ。どっちも必死だったし。切ないな。

    支援者と母(父)の二足のわらじで当事者を自立出来る様に育てていくって、どれだけ大変なんだろうと思った。母として優しくしたいときもあったろうし。

    遅くに障害がわかるのと、始めに聡い身内にわかってもらって育てられるのどっちも大変なんだろうな。早くにわかった方って、お母さん(お父さん)が細かく考えて冷静に必死に育てておられる様に思う。
    同時に当事者もめちゃくちゃ頑張ってきたんだろうなって思った。
    ご夫婦とも手に職があり、だから安心して読めた。みんな幸せでいてほしい。。

  • 妻が図書館から借りてきて、面白いから読んだらと勧められた本。寝る前にほんのちょっと読んでと思って読み始めたらやめられなくなった。しかし、目も疲れたのでその日は半分で終えたが、とても人を引きつける本である。そもそもこの題名が魅力的である。著者の由美さんはアスペルガーで、表紙に出ている猫を抱えたやさしそうな男性は由美さんの夫。実はこの夫もアスペルガーで、「アスペルガーの館」とは夫である真雄さんの開いていたブログなのである。2人のアスペルガーがこのブログで知り合い、そして結婚するという話だ。そう書くとなんの変哲もなさそうだが、とてもドラマチックな話なのである。由美さんは4歳までことばを話せなかったそうで、お母さんは早くから由美さんが自閉症(当時はそう呼んでいた)であることに気づき、医者の助けも借りたが、自ら「療育士」として由美さんをふつうの人にしようと頑張ってきた。だから、由美さんが講演をすると、「あなたはアスペルガーではない。そんなことを語る資格はない」などと言われるが、ここまで来るまでには親子の涙ぐましい努力があったのである。面白いのは、由美さんは4歳まで話せなかったが、文字認識はできて、声が出るようになってからの読みが人よりは早かったことだ。子どもの場合、文字を一つ一つ拾って読んでいくのだが、由美さんは、文字を塊としてとらえる習性を身につけていたのである(これができないと英語など早く読めない)。これは人の顔の認識でも役に立つ。後に、彼女が言語聴覚士になってから、人の顔をすぐ覚えるのに役立ったそうだ。由美さんは、いじめを受けたりしながらも普通学級で学び、大学で心理学を学んだ後言語聴覚士をめざし「国立障害者リハビリテーション学院」で2年間学ぶ。しかし、卒業を前にしてもなかなか就職が決まらない。そんなときに知ったのが「アスペルガーの館」というブログであり、真雄との出会いであった。実は真雄さんはプログラマーとして自活しているが、自分がアスペルガーと気づいたのは30を過ぎてからだという。こうしてみるとアスペルガーと呼ばれる人にもさまざまな段階があることがわかる。由美さんは最初アスペルガー同士だから理解もしやすいと思ったようだが、実はそうでもなく、3年の同棲、結婚後もさまざまな問題にぶつかる。本書はそんな二人のほほえましい生活の記録である。ぼくがちょっと気になったのは、由美さんとお母さんとの関係で、由美さんにとってお母さんは療育士としての面が強すぎたために、母親として見られないようになってしまったことである。これはお母さんとしてもいたたまれないだろう。また、お姉さんとの関係も気になるところだ。

  • アスペルガーなど発達障害に関心のある方は、ぜひ読んでみて頂きたい本です。
    村上さんがアスペルガーに対して、当事者・家族・支援者という3つの立場に位置しており、それぞれの立場からの体験がつづられています。
    ただ、アスペルガーという話は置いておいて、ある夫婦の物語、として読んでも大変興味深い内容だとも思います。
    表紙の写真がすごくいいですね。魅力的です。
    実は、村上さんの講義(発声方法)は数年前に受講したことがあります。
    大変チャーミング、かつ面白い方だという印象が強くあります。

  • 幼少時アスペルガーと診断され、母から療育を受けてきた筆者の半生記。発達障害の子は、症状が様々で、本人の特性によってどう進むか千差万別なので、どう成長していくんだろうとドキドキしながら読み進めました。
    素敵なご主人と出会い、多くの人の支援に回る現在に、心からの喝采を送ります。

    身体感覚の不器用さ、あるいは対人関係の不器用さ、それにマニュアルで一つづつ対応を積み重ねていく過程に共感できました。

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著者プロフィール

Voice manage代表/言語聴覚士(2020年4月現在)

「2020年 『発達障害の人の雇用と合理的配慮がわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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